給与デジタル払いとは~解禁までに押さえておきたいメリット・デメリット~

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メディアでも最近話題になっている「給与デジタル払い」。今まで金融機関の口座に振り込まれることがほとんどだった給与がスマホ決済アプリなどで受け取れるようになる仕組みのことを指しますが、解禁されると企業や従業員にとってどのような変化がおこるのでしょうか?そこで今回は、給与デジタル払いについて解禁までに概要を押さえておきたい方に向けて、開始時期、具体的な仕組み、メリット・デメリット、政府が制度を変更する理由などについて解説します。※2021年4月26日に更新

給与支払いの原則

賃金の支払いについては労働基準法24条で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定められています。ただし、厚生労働省令で定める確実な方法で支払う場合には、通貨以外での支払いが可能なため、金融機関の口座への振込による支払いが例外として認められています。では、金融機関の口座への給与振込と、給与デジタル払いは何が違うのでしょうか?

デジタル払いの仕組み

デジタル払いは、銀行以外の資金移動業者が管理するキャッシュレス決済口座への送金で、代表的なものにPayPay、LINE Pay、楽天Pay、PayPalなどスマートフォンの決済アプリがあります。資金移動業者は100万円までの少額取引に限定されますが、銀行法上の為替取引と同等の取引が可能です。資金移動業者が発行するペイロールカードが〇〇Pay決済サービスと結びつけられ、銀行口座を介さずに直接決済サービスを通じて給与支払いができるというものです。

政府が制度変更をする理由

現在、日本のキャッシュレス決済比率は2~3割であり、キャッシュレス決済が普及している韓国で9割以上、イギリスや中国では約7割など、世界と比べて日本は低い水準にとどまっています。そこで政府は2025年にキャッシュレス決済比率を4割まで引き上げることを目標に掲げ、2019年10月の消費税率引上げにあわせて、中小事業者によるキャッシュレス決済を支援するポイント還元のキャンペーンも打ち出しました。

キャッシュレス決済を進める主な理由として、現金の取り扱いに関するコスト削減と生産性向上、訪日外国人による消費の拡大、などがあります。そのためには、銀行口座からの引き落としが基本となるクレジットカード決済だけでなく、スマートフォンを活用したQRコード決済、プリペイド式のICカード決済など、キャッシュレス決済の種類も増やして全体としての利用を増やしていく必要があります。

また、銀行口座を介さないキャッシュレス決済口座へ直接、給与の振り込みを可能にすることで、キャッシュレス決済の利用をさらに大きく広げる狙いがあります。

給与デジタル払いのメリット

給与のデジタル払いの仕組みは、銀行口座を持たない労働者を対象にした給与の支払い手段として海外で提供が開始されました。そのため、銀行口座の開設が難しい外国人労働者、日雇い労働者、アルバイトなどの非正規労働者に給与を支払う場合には、利便性が高いとされています。

資金移動業者の口座への送金は銀行口座への送金よりも手数料が安く、送金手数料を削減できるメリットがあります。銀行口座を介さず、外国人労働者が海外の家族へ送金できるシステムもあり、今後さらに利用が拡大していくと予想されます。

給与デジタル払いのデメリット

資産などの厳しい要件を満たし審査を受けて許可された金融機関と異なり、資金移動業は登録要件を満たせば営業ができます。また、不正利用に対しても、預金者保護法という法律で定められている金融機関とは異なり、資金移動業の場合、補償内容は個々の会社で決めているため、法律による共通の補償規定はありません。

現時点では、資金移動業者が経営破綻したときの補償や、迅速な払い戻し、資金の保全、ハッキングやセキュリティの不備による不正送金などに対する課題への対応が十分ではありません。また、100万円の上限があるため、高額な給与の振り込みには適さないというデメリットもあります。

給与デジタル払いはいつから始まる?

政府は2021年春に給与のデジタル払いを解禁する準備を進めていました。しかし、日本労働組合総連合会は、給与の振込先になる資金移動業者には法律に基づく共通の補償規定がなく安全性に問題があると反対して、決着がつきませんでした。

政府は、資金移動業者が経営破綻した場合は保証機関などが支払いを肩代わりする仕組みや、不正取引の補償、ATMなどで1円単位で現金化できることなどを条件とし、一定の条件を満たす資金移動業者の決済アプリを給与の振込先として認める方針です。

給与デジタル払いまとめ

安全性の問題など解決すべき課題はありますが、日本がさらなるキャッシュレス化を進めるうえで、給与のデジタル払いは鍵になるとも言われています。実際に制度化されると、給与支払いの仕組みや方法を変更する必要がありますので、今後の動きに注目です。

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