労務管理とは~重要性、仕事の内容、労働環境に関する2022年以降の法改正も解説~

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近年、ブラック企業の社会問題化や、働き方改革の推進、コロナ禍の影響によるテレワークの増加などによって適切な労務管理の重要性が高まっています。従業員を適切な労働環境に整え、企業としても法令を遵守しリスク回避するためにも労務管理、2022年以降に実施される法改正について知っておきましょう。※2021年5月13日に更新

労務管理の意味

労務管理とは従業員の給与計算、福利厚生、手当など社内の「労働条件」に関する管理や施策を行うことを指します。人事管理と兼任する場合もありますが、人事管理は採用業務から入退社の際の手続き、人員配置など社内の人材に関することを管理する仕事を指します。

労務管理の役割

労務管理は企業を運営するにあたり2つの重要な役割があります。1点目は「リスク回避」です。労務管理は様々な法律(労働基準法・男女雇用機会均等法・パートタイム労働法・育児介護休業法など)を遵守し、法令違反により企業が罰則を受けるリスクを回避すること重要です。2点目は「生産性の向上」です。労働時間や給与を適切に管理することで職場環境を改善し、会社全体として従業員の生産性向上を図る役割があります。従業員がやる気をもって業務に取り組めるようにサポートし、企業の発展に繋げるためには適切な労務管理が必要不可欠です。

労務管理の仕事内容

労務管理の仕事内容は従業員の労働に関する多岐に渡る業務があります。中でも、労務管理は労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3つの帳簿の作成と管理が基本です。

労働者名簿

労働者名簿は従業員の氏名や生年月日、雇用年月、移動の履歴、退職日などの情報が記された労働基準法第107条で作成が義務づけられている帳簿です。

賃金台帳

賃金台帳は従業員それぞれに就業日数や就業時間、残業時間、基本給、手当などの項目があり、給与支払に関する情報を記録した労働基準法第108条で作成が義務付けられている帳簿です。

出勤簿

出勤簿は従業員それぞれの出勤状況を記録した帳簿です。労働日数や労働時間、時間外労働時間などが記載されており労働基準法第109条で作成が義務付けられている帳簿です。

上記3つの帳簿を作成するために給与、勤務時間を適切に管理するのが労務管理の基本となります。それに付随して社会保険や雇用保険の手続き、福利厚生業務、安全衛生管理なども業務に含まれます。

労務管理と勤怠管理の違い

労務管理と混同されやすいのが勤怠管理です。この2つは別物ではなく労務管理の業務の中に勤怠管理が含まれます。給与や福利厚生、労働時間を適切に管理することで従業員の働く環境を作るのが労務管理であり、その中でも出勤・退勤などの勤怠や出社の日数を把握することが勤怠管理です。

労務管理における諸問題

労務管理の中で毎日行う業務であり、給与計算にも大きく関わるのが勤怠管理です。特に従業員との間で問題となりやすく、コンプライアンス違反に陥りやすいのが残業時間や休憩時間です。また、昨今のコロナ禍の影響により多くの企業が導入したテレワークにおける労務管理についても説明します。

残業時間の労務管理

時間外労働(残業時間)は法定労働時間を超えて働いた時間を指します。法定労働時間とは労働基準法第32条に規定されている労働時間の限度であり、1日8時間、1週間で40時間と決められています。この範囲を超えて働いた場合時間外労働となります。混同しやすいのが所定労働時間ですが、所定労働時間は会社独自で決めた時間です。

例えば、1日7時間勤務の会社で1時間残業しても合計8時間勤務となるため法定労働時間を超えないため時間外労働にはなりません。なお、労働基準法の改正により、時間外労働の上限は月45時間、年360時間とされています。変形労働時間制の場合は、上限が月42時間、年320時間です。

休憩時間の労務管理

休憩時間は労働基準法第34条で、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされています。また、休憩時間は労働者が一斉に取らなければならず、休憩時間に仕事をさせてなりません。

休憩時間は8時間の労働時間の間で取らせるべきものであり、8時間連続で勤務し最後の1時間を休憩時間とすることは認められていません。また、従業員が一斉に休憩時間を取ることが難しいとされる特定の職種(運輸交通業、商業、金融・広告業など)は違反にあたらないとされています。

テレワークの労務管理

コロナ禍の影響により増加したテレワークにおいても労働基準法が適用されるため適切な労務管理が必要です。厚生労働省は下記について留意するよう求めています。

  • 事業主は労働契約締結に際し、就業の場所(在宅勤務の場合は従業員の自宅)を明示する必要がある。
  • 労働時間を適正に管理するために、従業員の始業と終業時刻を確認し、記録しなければならない。
  • 業績評価や人事管理について出社する従業員と異なる制度を用いるのであれば、その内容を説明しなければならない。
  • 従業員に通信費や通信機器等の費用負担をさせる場合は休業規則に規定する必要がある。
  • 在宅勤務を行う労働者について社内教育や研修制度に関する定めをする場合にも、就業規則に規定しなければならない。

※出典:厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」

2022年以降の法改正

労務管理は労働に関する法令を遵守し、企業をリスクから守り、従業員の労働環境を整える必要があります。その守るべき法令は改正が繰り返されているので、その都度労務管理を見直さなければなりません。2022年以降に重要となる法改正を紹介します。

雇用保険法改正(2022年1月1日から)

2022年1月1日から雇用保険法が改正され65歳以上複数就業者に対する雇用保険適用が拡大されます。

現行では1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者が雇用保険の被保険者とされています。

改正後には2つ以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者で、2つ以上の事業所において1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であれば雇用保険の被保険者となります。

なお、労働者からの申し出により適用されるものであり自動的に全員加入となるわけではありません。

※出典:厚生労働省「第144回労働政策審議会職業安定分科会資料_資料No.1_ 雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」

労働施策総合推進法などの改正(2022年4月1日から)

2022年4月は様々な法令が改正されるため、概要だけまとめます。

  • 改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)について大企業は2020年6月から施行されていますが2022年4月からは中小企業も適用されるようになります。出典:厚生労働省 東京労働局「パワーハラスメント対策等」
  • 年金制度改正法が施行され、60~64歳の在職老齢年金制度について、年金の支給が停止される基準が現行の賃金と年金月額の合計額28万円から47万円に緩和されます。賃金と年金月額の合計額が28万円から47万円の方は年金額の支給停止がされなくなります。
  • 65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者は、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映する制度(在職時改定)が導入されます。※出典:厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
  • 一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。※出典:厚生労働省「女性活躍推進法の改正

法定割増賃金率の引上げが中小企業への適用開始(2023年4月から)

現行では中小企業は、法定労働時間を超える時間外労働について25%以上割増賃金を支払わなければなりませんでした。2023年4月からは1カ月60 時間以上の法定労働時間に対しては50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。これまで大企業にだけ支払う義務が課せられていましたが、中小企業についても適用されるようになります。

また、22時から翌朝5時の間の時間帯に1カ月60 時間以上の法定労働時間を行わせた場合は、深夜割増賃金率25%以上も加わるため、75%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

※出典:厚生労働省「改正労働基準法のポイント

法改正に対応できる給与計算ソフト

最後に紹介をした「法定割増賃金率の引き上げ」のような法改正は、給与計算方法が根本から変わってしまう法改正です。その都度システムの計算式を変更していると非常に手間がかかります。何より法改正を知らずに現行システムのまま給与計算を行い、法令に違反することも考えられます。そうならないためにもクラウド型の給与計算ソフトがおすすめです。

クラウド型給与計算ソフトの場合は、保険料率の変更や法定割増賃金率の変更など法改正があった際もすぐに情報のアップデートでき、最新の機能を利用できます。

クラウド型の給与計算ソフトにはさまざまなものがあり、それぞれ特色があります。無料お試し期間があるソフト実際に使用してみて、給与形態や就業規則でも対応ができるかどうか、他の社員にとっても使いやすいかなど操作性を確認することも大切です。

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