退職金制度とは~経営者が知っておきたい導入のポイント~

退職金制度

「退職金制度」といえば、一般的に定年退職を迎えた従業員に退職金を支給する制度のイメージがありますが、実は「支払わなければならない」と法律で決まっているわけではありません。しかも、退職金は受け取り時期や回数、支給元によっていくつかの種類に分かれます。そこで今回は、退職金制度の導入を検討している方に向けて、導入する際に知っておきたい退職金制度の種類やメリットとデメリット、活用できる助成金制度などについて解説します。※2021年5月21日に更新

退職金制度について

退職金とは、退職する際に雇用主から退職者に支給される金銭のことです。定年退職するときに支払われるイメージが強いかもしれませんが、自己都合での退職や解雇を受けたとき、従業員が死亡した場合なども退職を支給する対象になります。

冒頭でも触れたとおり、退職金制度は法律で定められているものではありませんので、退職金制度を設けていなくても問題はありません。では、なぜ退職金制度を設ける会社があるのでしょうか?

退職金制度がある場合のメリット

退職金制度を取り入れた場合の長所は以下の3つが考えられます。

採用活動で優位に立てる可能性がある

求職者が転職、または新卒で就職活動するときに重視する情報の1つに「退職金制度の有無」があります。例えば、労働条件や給与・ボーナスの額が同等のA社とB社があった場合、退職金制度があるA社と、退職金制度がないB社では、求人の応募はA社に人気が出て、優秀な人材を採用しやすくなるかもしれません。

社員の勤続年数が長くなる傾向にある

勤続年数に応じて退職金が増える制度であれば、B社よりA社の従業員の勤続年数は長くなると考えられます。また、>退職金を一時金として支給すると「退職所得控除」により勤続年数が長いほど非課税額が大きくなり税負担が軽減されるため、ボーナスよりも税金の面で有利です。

業績が上がる(かもしれない)

制度設計にもよりますが、職位が上がれば退職金が増える制度であれば、出世のために仕事に励む従業員が増えて、業績が上がるかもしれません。

退職金制度が無い場合のメリット

では、退職金制度がない場合、すぐにでも導入した方が良いのでしょうか?退職金を出すには資金の準備が必要です。会社の業績が悪い時に従業員が退職する場合もありますので、何らかの形でお金を積み立てる必要があります。それでも、多数の従業員が同時期に退職する場合には、事業の資金に影響が出ることも考えられます。退職金制度がなければ、日々の給与やボーナスを払っていれば、退職時の資金の心配はありません。退職金制度が無いことにも、メリットはあるのです。

退職金の種類

年金手帳と電卓と1万円札

退職金には、退職時にまとめて一度に支払うものと、年金のように支払うものがあります。

退職一時金

会社が独自に制度を設け退職時に一時金として支払う退職金は、会社により内容は様々です。会社が資金の積み立てる必要があり、積立金は課税されます。

中小企業退職金共済(中退共)

中小企業退職金共済法に基づく、国による中小企業のための退職金制度です。事業主が毎月掛金を納付し、従業員の退職時には、中小企業退職金共済からその従業員に退職金が直接支払われます。掛金は非課税です。ちなみに、自己都合退職、会社都合退職によって受け取る退職金額は変わりません。

企業型確定拠出年金(DC)

国が定めた確定拠出年金法による年金制度で、会社が毎月掛金を拠出し、従業員が年金資産を運用します。定年退職を迎える60歳以降に、積み立ててきた年金資産を退職一時金、もしくは年金の形式で受け取り、受取額は運用成果によって変わります。

確定給付企業年金

確定給付企業年金法による年金制度で、規約型と基金型の2種類があります。規約型の設立には300人以上の加入者が必要で、信託銀行や保険会社などに掛金を拠出し、年金資産を管理・運用し、年金を給付します。基金型に人数要件はなく、企業年金基金が年金資産を管理運用します。退職時の一時金としては受け取れず、年金給付は終身または5年以上の有期年金になります。

※3、4に関しては、厚生年金に加入している必要があります。

活用できる助成金制度

上記2の中小企業退職金共済制度に新規で加入する事業主は、掛け金に応じて国から助成金を受け取れます。加入後4カ月~1年間は、掛金月額の半分(上限5,000円/人)、さらに短時間労働者の退職金には、掛け金2,000~4,000円に対して300~500円の特別掛金特例掛金月額が上乗せして助成されます。

また、掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額変更する事業主には、増額分と増額後の掛金月額の差額の3分の1が、1年間助成されます。

退職金制度を導入する際のポイント・まとめ

年功序列の終身雇用が薄れた現在では、退職金制度は適切ではないとする考え方もあります。個人の成果に対する報奨金を支給したり、部門や会社の業績に応じたボーナスを手厚く支給したりすることで、退職金制度がなくても、それ以上の効果を出せる場合もあります。

退職金制度は一度導入すると長く続くもので、変更や廃止は簡単ではありません。制度の内容をよく理解したうえで、その会社に合った退職金制度を導入することが大切です。助成金制度が受けられる場合なども、助成金目当てに安易に導入したあとに制度の運用に息詰まることがないよう、十分に検討してから行動に移りましょう。

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