数ある税金の中でも身近な税金の一つである「所得税」。所得税について正しい知識を持つことは給与計算や賞与計算時に欠かせません。所得税の計算は2020年から計算方法が変更しています。そこでそもそも所得税とは何か、所得税の新たな計算方法やおすすめの所得税計算ソフトをご紹介します。※2021年6月24日に更新
所得税の計算方法を知る前に、まずは所得税とは何かについて確認しましょう。 「所得税」とは1月1日から同年12月31日までの1年間で得た所得から所得控除によって差し引いた金額に、一定の税率を用いて算出する税金のことです。所得がある全ての人に納税の義務が課せられます。
所得税の税率は「超過累進税率」を用いています。「超過累進税率」を用いることで、所得が増えれば増えるほど多くの税金を納めなくてはならないシステムになっています。「超過累進税率」については、次項で詳しく解説します。 そんな所得税は源泉徴収や住民税と混同している人も少なくありません。しかしこれらは全くの別物です。ここからはそれぞれの違いについて解説します。
まず「源泉徴収」は、事業者が従業員の給与から所得税を算出し納税しています。本来、所得税は本人が確定申告をして納税しますが、事業者が給与から天引きした所得税を本人に代わり納めた税金を「源泉所得税」といいます。源泉徴収は毎月10日までに事業者が納付していますが、12月に行われる年末調整により多く支払っていた場合には還付を受け、不足していた場合には追徴を受けます。
次に「所得税」と「住民税」の違いです。所得税も住民税も給与から天引きされるため同じと思われがちですが、2つの大きな違いは納税先です。所得税は国税のため国に納税するのに対し、住民税は都道府県や市区町村など、お住まいの地方自治体に納付します。また税率にも違いがあります。所得税の税率は前述の通り「超過累進税率」を採用しているのに対し、住民税の税率は「所得割」は一律10%、「均等割」は例外を除き原則として全ての人が同額となるよう設定されています。このように所得税の「超過累進税率」は所得額に応じて税率が変わるのに対し、「所得割」と「均等割」の税率は対象者全員同等です。
所得税と混同されやすい源泉徴収や住民税との違いを把握し、所得税について正しい知識を持ちましょう。
「累進課税」とは所得や資産が増えれば増えるほど、課税額が高くなる制度のことです。「単純累進課税」と「超過累進課税」の2種類がありますが、所得税では「超過累進課税」を用います。「超過累進課税」とは、課税の対象額が一定額を超えた場合、超えた金額に対してのみ高い税率を適用する制度のことです。超過累進課税で算出される最低税率は5%、最大税率は45%と定められており7段階に区分されます。具体的には下記の表に分けられます。
参考: 国税庁『No.2260所得税の税率』
このように所得税を計算する際には、超過累進課税の該当する所得税率を用います。上記の表を参考に、所得総額から所得税率及び計算方法を確認しましょう。
超過累進課税について把握し、税率が確認できたら実際に所得税を計算します。 所得税の計算方式は「課税所得金額×税率-税額控除額」です。税率は上記の表から確認できるものの、課税所得金額や税額控除額が不明という人もいます。まずは課税所得金額の算出方法と、税額控除額の算出方法を確認しましょう。
「課税所得金額」とはその名の通り、課税の対象となる合計額のことです。所得税は1月1日から同年12月31日までの所得が課税対象となるため、1年間の総所得額から所得控除を差し引いた金額のことを指します。つまり課税所得金額を算出するためには、まず1年間の総所得額を算出しなければなりません。総所得額の算出の際に、収入額を算出するのは間違いです。「収入」は1年間に得た金額のことを指しますが、「総所得額」は収入から非課税手当を差し引いた金額のこと。非課税手当とは通勤手当や出張の旅費など、必要経費のことです。つまり収入から必要経費を差し引いた金額が「総所得額」に該当します。なお所得は利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得の10種類があります。10種類に該当する所得全てを合計しましょう。
1年間の総所得額を算出したら「課税所得金額」を算出します。課税所得金額の計算方式は「所得金額-所得控除」です。所得控除には雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・寄付金控除・障害者控除・寡夫(寡婦)控除・勤労学生控除・扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除・基礎控除の14種類があります。該当する所得控除額を合計し、所得金額から合計額を差し引いて課税所得金額を算出しましょう。 なお、所得控除を算出する際は特に「基礎控除」に注意が必要です。基礎控除は2019年まで一律38万円でしたが、2020年から所得金額により変動し、所得金額が増えるほど控除額は少なくなるようになりました。具体的な所得金額における控除額は下記の表の通りです。
参考: 国税庁『No.1199基礎控除』
次に税額控除額の算出方法です。税額控除は20種類ありますが、個人で支払う所得税に関する税額控除は主に配当控除・外国税額控除・政党等寄附金特別控除制度・認定NPO法人等寄附金特別控除・公益社団法人等寄附金特別控除・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除・住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除の8種類です。該当する税額控除を合計して税額控除額を算出しましょう。 税率は累進課税の早見表から確認できます。 これで課税所得金額、税率、税額控除額が算出できました。あとは「課税所得金額×税率-税額控除額」に当てはめて、所得税を算出しましょう。 つまり所得税の算出方法は、下記の手順で算出できます。
所得額が高くなればなるほど所得税も高くなります。例えば年収1,000万円の人の場合、所得控除が何も無ければ、所得税だけで約120万円納税しなければなりません。しかし所得税は削減する方法があります。削減する方法を知り、所得税を節税しましょう。
このように各控除の条件を満たすことで、大きな節税ができます。
また下記の2つの事情がある場合、控除を活用しなくても所得税が削減できます。
①は所得控除の「雑損控除」に該当する可能性があります。「雑損控除」とは被害を受けた原因が火災、震災、盗難、横領のいずれかであり、被害に遭ったのは住宅、家財、衣服など生活に必要な財産であった場合に適用される控除制度です。そのため被害に遭ったものが自宅ではなく別荘だった場合や、骨董品、貴重品だった場合は対象となりません。 ②は「上場株式等の売買損失は、その年の配当所得と損益通算できる」という制度を活用します。配当を受け取った時にはあらかじめ所得税が控除されていますが、株取引の損失と通算させることで、配当の利益を消す又は少なくすることで、控除された所得税を取り戻せる場合があります。
ここまでご紹介した通り、所得税を算出するためには総所得額を算出したり、税額控除額を算出したりする必要があり、一人の所得税を算出するだけでもかなり時間を要します。そのため所得税計算はソフトに任せて業務の効率化を図りましょう。 所得税計算ソフトは「フリーウェイ給与計算」がおすすめ。フリーウェイ給与計算は5名まで無料で利用でき、所得税の自動計算だけではなく健康保険料や厚生年金保険料も自動計算ができるほか、年末調整機能もあります。特に所得税自動計算機能では、一定の項目を入力するだけで所得税の自動計算が可能。最新の税法に自動更新されるため、税法に沿った計算を行います。さらに毎月の給与や賞与をソフトに入力しておくだけで、自動で所得税徴収高計算書に転記され、簡単に所得税徴収高計算書も作成できます。 所得税を始め各種保険料の自動調整をするフリーウェイ給与計算ソフトを導入し、面倒な計算業務の手間を省きましょう。
この記事は、給与計算ソフト「フリーウェイ給与計算」の株式会社フリーウェイジャパンが提供しています。フリーウェイ給与計算は、従業員5人まで永久無料のクラウド給与計算で、WindowsでもMacでも利用できます。
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数ある税金の中でも身近な税金の一つである「所得税」。所得税について正しい知識を持つことは給与計算や賞与計算時に欠かせません。所得税の計算は2020年から計算方法が変更しています。そこでそもそも所得税とは何か、所得税の新たな計算方法やおすすめの所得税計算ソフトをご紹介します。※2021年6月24日に更新
所得税とは何か
所得税の計算方法を知る前に、まずは所得税とは何かについて確認しましょう。 「所得税」とは1月1日から同年12月31日までの1年間で得た所得から所得控除によって差し引いた金額に、一定の税率を用いて算出する税金のことです。所得がある全ての人に納税の義務が課せられます。
所得税の税率は「超過累進税率」を用いています。「超過累進税率」を用いることで、所得が増えれば増えるほど多くの税金を納めなくてはならないシステムになっています。「超過累進税率」については、次項で詳しく解説します。
そんな所得税は源泉徴収や住民税と混同している人も少なくありません。しかしこれらは全くの別物です。ここからはそれぞれの違いについて解説します。
源泉徴収と所得税
まず「源泉徴収」は、事業者が従業員の給与から所得税を算出し納税しています。本来、所得税は本人が確定申告をして納税しますが、事業者が給与から天引きした所得税を本人に代わり納めた税金を「源泉所得税」といいます。源泉徴収は毎月10日までに事業者が納付していますが、12月に行われる年末調整により多く支払っていた場合には還付を受け、不足していた場合には追徴を受けます。
所得税と住民税の違い
次に「所得税」と「住民税」の違いです。所得税も住民税も給与から天引きされるため同じと思われがちですが、2つの大きな違いは納税先です。所得税は国税のため国に納税するのに対し、住民税は都道府県や市区町村など、お住まいの地方自治体に納付します。また税率にも違いがあります。所得税の税率は前述の通り「超過累進税率」を採用しているのに対し、住民税の税率は「所得割」は一律10%、「均等割」は例外を除き原則として全ての人が同額となるよう設定されています。このように所得税の「超過累進税率」は所得額に応じて税率が変わるのに対し、「所得割」と「均等割」の税率は対象者全員同等です。
所得税と混同されやすい源泉徴収や住民税との違いを把握し、所得税について正しい知識を持ちましょう。
所得金額によって変動する税率(累進課税)
「累進課税」とは所得や資産が増えれば増えるほど、課税額が高くなる制度のことです。「単純累進課税」と「超過累進課税」の2種類がありますが、所得税では「超過累進課税」を用います。「超過累進課税」とは、課税の対象額が一定額を超えた場合、超えた金額に対してのみ高い税率を適用する制度のことです。超過累進課税で算出される最低税率は5%、最大税率は45%と定められており7段階に区分されます。具体的には下記の表に分けられます。
参考: 国税庁『No.2260所得税の税率』
200万円×10%-97,500円=102,500円
2000万円×40%-2,796,000円=5,204,000円
194万円×5%-0円=97,000円
このように所得税を計算する際には、超過累進課税の該当する所得税率を用います。上記の表を参考に、所得総額から所得税率及び計算方法を確認しましょう。
所得税の計算手順
超過累進課税について把握し、税率が確認できたら実際に所得税を計算します。
所得税の計算方式は「課税所得金額×税率-税額控除額」です。税率は上記の表から確認できるものの、課税所得金額や税額控除額が不明という人もいます。まずは課税所得金額の算出方法と、税額控除額の算出方法を確認しましょう。
課税所得金額の計算
「課税所得金額」とはその名の通り、課税の対象となる合計額のことです。所得税は1月1日から同年12月31日までの所得が課税対象となるため、1年間の総所得額から所得控除を差し引いた金額のことを指します。つまり課税所得金額を算出するためには、まず1年間の総所得額を算出しなければなりません。総所得額の算出の際に、収入額を算出するのは間違いです。「収入」は1年間に得た金額のことを指しますが、「総所得額」は収入から非課税手当を差し引いた金額のこと。非課税手当とは通勤手当や出張の旅費など、必要経費のことです。つまり収入から必要経費を差し引いた金額が「総所得額」に該当します。なお所得は利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得の10種類があります。10種類に該当する所得全てを合計しましょう。
1年間の総所得額を算出したら「課税所得金額」を算出します。課税所得金額の計算方式は「所得金額-所得控除」です。所得控除には雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・寄付金控除・障害者控除・寡夫(寡婦)控除・勤労学生控除・扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除・基礎控除の14種類があります。該当する所得控除額を合計し、所得金額から合計額を差し引いて課税所得金額を算出しましょう。
なお、所得控除を算出する際は特に「基礎控除」に注意が必要です。基礎控除は2019年まで一律38万円でしたが、2020年から所得金額により変動し、所得金額が増えるほど控除額は少なくなるようになりました。具体的な所得金額における控除額は下記の表の通りです。
参考: 国税庁『No.1199基礎控除』
税額控除額の計算
次に税額控除額の算出方法です。税額控除は20種類ありますが、個人で支払う所得税に関する税額控除は主に配当控除・外国税額控除・政党等寄附金特別控除制度・認定NPO法人等寄附金特別控除・公益社団法人等寄附金特別控除・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除・住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除の8種類です。該当する税額控除を合計して税額控除額を算出しましょう。
税率は累進課税の早見表から確認できます。
これで課税所得金額、税率、税額控除額が算出できました。あとは「課税所得金額×税率-税額控除額」に当てはめて、所得税を算出しましょう。
つまり所得税の算出方法は、下記の手順で算出できます。
所得税を削減する方法とは
所得額が高くなればなるほど所得税も高くなります。例えば年収1,000万円の人の場合、所得控除が何も無ければ、所得税だけで約120万円納税しなければなりません。しかし所得税は削減する方法があります。削減する方法を知り、所得税を節税しましょう。
各種の所得控除を活用する
所得税の算出方法からわかる通り、所得税は控除額を差し引けます。つまり各控除をうまく活用すれば節税できるということです。特に所得控除の医療費控除・生命保険料控除・地震保険料控除・扶養控除・配偶者控除は、条件を満たせばすぐに節税につながります。例えば「配偶者控除」は総所得額が1,000万円以下で配偶者がいれば最大38万円(70歳以上の配偶者であれば最大48万円)の控除が可能。自分や家族が1年間で合計10万円以上の医療費を支払った場合には「年間に支払った医療費−保険金などの各種補てん金−10万円」が控除されます。生命保険や地震保険に加入している場合も一定額の控除ができます。生命保険においては最大12万円、地震保険においては最大5万円、それぞれ所得控除が可能となります。このように各控除の条件を満たすことで、大きな節税ができます。
控除を活用しない方法
また下記の2つの事情がある場合、控除を活用しなくても所得税が削減できます。
①は所得控除の「雑損控除」に該当する可能性があります。「雑損控除」とは被害を受けた原因が火災、震災、盗難、横領のいずれかであり、被害に遭ったのは住宅、家財、衣服など生活に必要な財産であった場合に適用される控除制度です。そのため被害に遭ったものが自宅ではなく別荘だった場合や、骨董品、貴重品だった場合は対象となりません。
②は「上場株式等の売買損失は、その年の配当所得と損益通算できる」という制度を活用します。配当を受け取った時にはあらかじめ所得税が控除されていますが、株取引の損失と通算させることで、配当の利益を消す又は少なくすることで、控除された所得税を取り戻せる場合があります。
所得税計算ソフトによる業務効率化
ここまでご紹介した通り、所得税を算出するためには総所得額を算出したり、税額控除額を算出したりする必要があり、一人の所得税を算出するだけでもかなり時間を要します。そのため所得税計算はソフトに任せて業務の効率化を図りましょう。
所得税計算ソフトは「フリーウェイ給与計算」がおすすめ。フリーウェイ給与計算は5名まで無料で利用でき、所得税の自動計算だけではなく健康保険料や厚生年金保険料も自動計算ができるほか、年末調整機能もあります。特に所得税自動計算機能では、一定の項目を入力するだけで所得税の自動計算が可能。最新の税法に自動更新されるため、税法に沿った計算を行います。さらに毎月の給与や賞与をソフトに入力しておくだけで、自動で所得税徴収高計算書に転記され、簡単に所得税徴収高計算書も作成できます。
所得税を始め各種保険料の自動調整をするフリーウェイ給与計算ソフトを導入し、面倒な計算業務の手間を省きましょう。