通勤手当とは?計算方法や非課税範囲、導入のポイントを解説

更新日:2024年12月06日

通勤手当とは

通勤手当とは、従業員の通勤にかかる費用を会社が負担するために支払うお金です。この記事では、通勤手当の計算方法や非課税となる範囲を解説します。また、通勤手当の導入を検討しているのであれば、ぜひ覚えておきたいポイントも紹介します。通勤手当の支給を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

通勤手当とは?

通勤手当とは、通勤にかかる費用を手当として支給するお金です。通勤手当はあくまでも福利厚生の一環とされており、労働基準法に定めはありません。そのため、支給の有無は企業に任されています。

支給の義務はありませんが、通勤手当を支給すれば社員の満足度向上や交通費の削減、社員の通勤ルートの把握などにつながるため、多くの企業が導入しています。

ここではまず、通勤手当の相場と交通費との違いを確認しましょう。

通勤手当の相場

厚生労働省が実施した令和2年就労条件総合調査によると、1ヶ月当たりの通勤手当の相場は1万1,700円でした。企業規模ごとの相場は、以下のとおりです。

企業規模 通勤手当の相場
30~99人 1万300円
100~299人 1万800円
300~999人 1万1,400円
1,000人以上 1万3,300円

このように、通勤手当を出している企業の多くは、1万円以上を支給しているようです。

通勤手当の額は、社員の通勤距離やリモートワークの利用割合などによっても変わります。ここで紹介した相場を目安に、それぞれの企業に適した金額を設定しましょう。

参考)厚生労働省 令和2年就労条件総合調査

通勤手当と交通費との違い

交通費とは、営業や出張などの業務を遂行するために発生する移動費です。交通費は役員や従業員が立替払いをして、月締めなどで目的・経路・運賃と合わせて実費精算するのが一般的です。また、交通費は非課税所得であり、会計科目上では、「旅費交通費」という勘定科目で処理されます。

通勤手当の計算方法

次に、通勤手当の計算方法を見ていきましょう。通勤手当は、何を使って会社に行くかによって算出方法が変わります。ここではバスや電車などの公共交通機関やマイカー、自転車で通勤するケースを紹介します。

なお、通勤手当の算出において法律の定めはありません。以下で紹介する内容は、一般的な事例として覚えておきましょう。

マイカーを利用する場合

マイカーを利用する際は、一般的に以下の式で通勤手当を算出します。

1日当たりの通勤手当=1キロ当たりのガソリンの単価×片道距離×2

仮に、ガソリン代が1キロ16円で会社までの距離が片道10キロとすると、1日の通勤手当は320円(16円×10キロ×2)です。20日出勤した場合の1ヶ月の通勤手当は、6,400円(320円×20日)と計算できます。

公共交通機関を利用する場合

公共交通機関を利用する際は、無駄がなく運賃が安い経路で算出するのが一般的です。電車賃やバス代の支給方法は、出社日数によって変わります。

1ヶ月で20日程度出勤するのであれば、最長期間の定期代が支給されるケースがほとんどです。ただし、バスの定期券は割引率が低く、定期券を購入したほうが高くつくことがあります。その場合は、「往復日額×出勤日数」で支払われるようです。

パートやアルバイト、リモートワークが多いなどの理由で会社に行く日数が少ない場合は、通常「往復日額×出勤日数」の金額を計算して毎月支給されます。

近年は、リモートワークの広がりにより、都市部から離れた場所に住む方も増えています。そのような場合、特急や新幹線、飛行機などを使い会社に行くことで通勤費が嵩むケースもあるでしょう。そのため、通勤手当に限度額を設けている会社もあります。

自転車を利用する場合

自転車による通勤では、費用はかかりません。そのため、会社によって対応はまちまちですが、通勤距離が2キロを超えると支払われることが多いようです。

自転車通勤における支給額は、自宅から会社までの距離に関わらず一律の場合や、距離に応じて支払われる場合があります。通勤に使用するための駐輪場の代金は、通勤手当に含まれない会社がほとんどです。

通勤手当が非課税になる範囲は?ケース別に解説

通勤手当の大きな特徴の1つが、一定額まで所得税や復興特別所得税が非課税になる点です。税金がかからずお金を受け取れるというのは、社員にとって大きな魅力となります。

非課税になる範囲は、通勤方法によって異なります。ここでは、具体的な3つのケースを見ていきましょう。

ケース1.公共交通機関で通勤する

バスや電車などの公共交通機関で会社に行く場合の非課税限度額は、1ヶ月当たり15万円です。15万円を超えて発生した費用は給与として扱われ、税金の対象となります。

公共交通機関を利用した通勤手当が非課税枠として認められるには、無駄がなく運賃が安い合理的なルートでなければなりません。合理的かの判断に法律の規定はなく、運賃や通勤時間等を総合的に考慮し企業が決定します。

参考)国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当

ケース2.交通用具(マイカーや自転車)で通勤する

交通用具で会社に行く場合の非課税限度額は、以下のとおりです。

片道の通勤距離 1ヶ月当たりの非課税限度額
2キロメートルまで 全額課税
2キロメートルから10キロメートルまで 4,200円
10キロメートルから15キロメートルまで 7,100円
15キロメートルから25キロメートルまで 1万2,900円
25キロメートルから35キロメートルまで 1万8,700円
35キロメートルから45キロメートルまで 2万4,400円
45キロメートルから55キロメートルまで 2万8,000円
55キロメートル以上 3万1,600円

なお、無駄がなく費用が安いルートであると認められれば、高速道路の使用も通勤手当の対象となります。

参考)国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当

ケース3.公共交通機関と交通用具を併用する場合

居住地が駅から遠い場合などは、駅までマイカーや自転車で向かい、電車に乗り換えて会社に行くこともあるでしょう。バスや電車といった公共交通機関と交通用具を併用する場合の非課税限度額は、15万円(公共交通機関と交通用具で支給する額の合算)です。

15万円を超えた場合は、税金の対象となることは押さえておきましょう。

通勤手当を導入する際に押さえておくべき6つのポイント

次に、企業が通勤手当を導入する際に考慮しておきたい6つのポイントを解説します。会社の設立や従業員の雇用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

1.通勤手当は社会保険料の計算の基礎になる

所得税の計算では一定額までが非課税となりますが、社会保険料の計算においては全額が計算の基礎になりますので、標準報酬月額に含める必要があります。

2.通勤手当は消費税の課税仕入れになる

非課税限度額は消費税ではなく、所得税の非課税限度額です。通勤に通常必要とする範囲内の通勤手当であれば、所得税の非課税限度額を超えている場合であっても、その全額が消費税の課税仕入れに該当することになります。

3.シンプルな内容にする

通勤手当を導入している場合、申請手続きは社員にとって必要な作業です。支給のルールや計算方法、支給方法などをシンプルにすることで、どの社員でもスムーズに利用できるようになるでしょう。申請の業務負担が減り、社員満足度の向上にもつながります。

また、通勤手当を支払う会社にとっても、シンプルな内容にすることで支給に関わるミスの軽減が期待できます。

4.就労規則に明記する

通勤手当を導入するのであれば、社員がいつでも確認できるよう就労規則に明記することが肝心です。記載する項目は、以下のとおりです。

  • 支給要件
  • 支給金額の算出方法
  • 通勤手段ごとの取り扱い方法
  • 通勤手当の申請方法

通勤手当の計算方法や認められる範囲といったルールを規則に明文化することで、一律な対応が可能となり、支給に関するトラブルを軽減できるでしょう。

5.リモートワークへの対応を考えておく

リモートワークの広がりにより、そもそも出社をしない社員も増えています。それに伴い、通勤手当で従来どおり定期を購入すると、高くつくケースも発生しています。

リモートワークを採用している会社は、対応した支給方法を考える必要があるでしょう。対処方法の一例を、以下に紹介します。

  • 通勤手当を廃止し在宅勤務手当(テレワーク手当)を支給
  • 出社日数を基に費用を算出し、通勤手当として支給
  • 出張費として通勤ごとに費用を精算

6.雇用形態による待遇差を付けない

会社の規模や業種によっては、正社員や派遣社員、パートアルバイトといったさまざまなスタッフを雇用していることもあるでしょう。通勤手当の支給で重要なのは、雇用形態により待遇差を付けないことです。

ただし、出勤日数が少ない方への支給額が少なくなったり、定期の購入ではなく実費の支払いになったりすることは問題ないとされています。

通勤手当の不正受給が発生する主なケース

最後に、通勤手当の不正受給が発生する主なケースを解説します。不正受給が発生すると、懲戒解雇や受給額の返金などの対応をしなければなりません。

不正受給が発生するケースを知っておくことで、不正やトラブルを未然に防ぎましょう。

通勤手当を受け取りながら自転車や徒歩で通勤する

不正受給が発生するケースの1つ目は、通勤手当を受け取りながら交通費がかからない方法で通勤し、支給額を不正に受け取る場合です。

例えば、バス代や電車賃の支給を受けながら、自転車や徒歩で会社に行くといったケースが挙げられます。このような不正は悪質とみなされ、懲戒解雇といった厳しい対応をとる会社も多いようです。

申請と違うルートで通勤する

不正受給が発生するケースの2つ目は、申請したルートより交通費が安いルートで通勤し、差額を不正に受け取る場合です。不正が発生したときは、会社は不正受給した差額分の返納や返還といった対応をとりましょう。

このような不正が発生した場合も、上記と同様に懲戒解雇を検討する方もいるかもしれません。しかし、処分が重すぎる不当解雇とされた判例もあります。不正受給の金額や期間にもよりますが、解雇には慎重な判断をしたほうが良さそうです。

虚偽の住所を申請する

不正受給が発生するケースの3つ目は、虚偽の住所を申請するまたは、引っ越しの申請をせずに不正受給する場合です。

引っ越しのときは、やることが多く会社への住所変更が後回しになることもあるでしょう。しかし、わざと申請をせずに差額を受け取り続けると、不正受給になります。引っ越し後は、できるだけ速やかに新しい住所の申請をすることが重要です。

通勤手当まとめ

通勤手当とは、通勤にかかる費用を手当として支給する制度です。通勤手当はあくまでも福利厚生の一環とされており、労働基準法に定めはありません。そのため、支給の有無や金額、支給する範囲は各企業によります。

通勤手当は、一定額まで所得税や復興特別所得税が非課税になります。非課税の範囲は、公共交通機関を利用した場合は毎月15万円、マイカーといった交通用具による通勤の場合は距離によって0~3万1,600円です。

通勤手当は社員の満足度向上が期待できる一方で、不正受給が発生する可能性もあります。トラブルを未然に防ぐには、シンプルな内容とし、就労規則に明記しておくことが重要です。運用方法を事前に十分検討し、社員の満足度が高い通勤手当の導入を目指しましょう。

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