新型コロナウイルス感染症の影響により、やむを得ず従業員を休業させる会社が増えています。従業員を休業させた場合、休業手当を支払わなければならない場合があります。今回は、休業手当の支給要件や計算方法を解説します。※2020年12月21日に更新
賃金は企業と従業員との労働契約を根拠に発生します。一般的には「ノーワーク・ノーペイの原則」に即して、賃金は従業員の労働の対価として発生するとしている労働契約が多いため、仕事をしていなければ支払う必要はないと考えられがちです。しかし、それは従業員側の都合で仕事を休んだ場合で、企業の都合で従業員に休業をさせた場合は、労働基準法に規定されている「使用者の責に帰すべき事由」に該当する可能性があります。
使用者の責に帰すべき事由による休業の例
上記のような「使用者の責に帰すべき事由」がある場合は、企業は休業する従業員に対して平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと労働基準法第26条で定められています。
休業手当と休業補償は言葉が似ているために混同されやすいのですが、支給事由や支給元が異なる別の制度です。どちらも労働基準法で定められた制度で労働者を守る点では共通しています。
休業補償は、業務中に生じた怪我や病気が原因でやむを得ず働けなくなった従業員を補償することが目的です。企業は従業員が業務上の怪我や病気を負った場合に、災害補償責任を負う義務があります。災害補償責任とは、例えば怪我や病気などの治療費を負担する療養補償や、働けない間の生活保障のための休業補償があります。休業補償は労働基準法の76条で定められていて、休業補償給付と休業特別支給金と合わせて平均賃金の80%が支払われます。
休業手当は従業員が働けるにもかかわらず企業の都合で休ませる状態のことを指し、休業補償は業務上の怪我や病気によって従業員が働けない状態のことを指します。つまり、休業手当と休業補償では、「休業」の原因が異なるのです。
休業手当を支給しなければならないのは「使用者の責に帰すべき事由が認められる場合」であり、「不可抗力による場合」は支給しなくてもよいとされています。具体的にみていきましょう。
雇用契約の下に賃金の支払いをしている場合は、雇用形態を問わず全ての従業員が支給対象者となります。正社員だけでなく時短勤務、アルバイト・パートなどのシフト勤務、日払い制の勤務形態も含まれます。派遣社員の場合も支給対象ですが、派遣先企業の事情で休業を余儀なくされた場合であったとしても、派遣元企業に支給義務が生じます。
企業と業務委託契約を結んでいる企業や個人事業主の場合、一般的には支給対象外となります。しかし、委託企業による指揮命令の内容や程度によっては例外的に労働者として認められ、支給対象となる可能性もあります。
休業手当を支給しなければならないのは、例えば仕事がなくなり自宅待機となった場合など「使用者の責に帰すべき事由」に該当する場合です。よって地震や台風などの天災は企業にとって不可抗力※なため、天災が原因で休業となった場合は支給対象外となります。
新型コロナウイルスの休業については厚生労働省より企業向けへのQ&Aが出されています。個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきとしながらも、例えば、従業員が新型コロナウイルスに感染し、医師による指導で従業員が休業する場合は休業手当を支払う必要はないとしています。これは労働安全衛生法第68条および労働安全衛生規則第61条で伝染病などの疫病にかかった労働者の就業を禁止しているからです。しかし、感染拡大防止の観点から企業が自主的に一斉休業を実施した場合は「使用者の責に帰すべき事由」に当たると判断されます。また、自宅勤務、テレワークなどで業務継続が可能であるにも係わらず休業している場合などは、休業の回避の努力を尽くしていないとされ「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、休業手当の支払いが必要となる可能性があります。
不可抗力とは①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお避けることのできない事故であることと解されています。
休業手当は労働者の生活を保障するためにあるので、通常の生活賃金をありのままに算定することを基本としています。そのため、休業の日以前3カ月間に支払われた賃金の平均を使い休業手当を算出します。休業手当は平均賃金の100分の60以上支払われます。ここでいう平均賃金とは給与の相場という意味でなく、その従業員に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(歴日数)で除した金額です。
企業が従業員を休業させる場合、その休業理由が企業の都合であれば休業手当を支給しなければなりません。休業手当の支給が必要かどうかを状況ごとに正しく判断するためにも、事前に専門家へ相談することをお勧めします。
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新型コロナウイルス感染症の影響により、やむを得ず従業員を休業させる会社が増えています。従業員を休業させた場合、休業手当を支払わなければならない場合があります。今回は、休業手当の支給要件や計算方法を解説します。※2020年12月21日に更新
休業手当とは
休業手当とは、企業側の事情で休業した場合に休業した従業員に対して支払う手当のことです。休業手当は「労働者の最低限の生活を保障すること」を目的に、労働基準法上のすべての労働者を対象としています。休業手当の考え方
賃金は企業と従業員との労働契約を根拠に発生します。一般的には「ノーワーク・ノーペイの原則」に即して、賃金は従業員の労働の対価として発生するとしている労働契約が多いため、仕事をしていなければ支払う必要はないと考えられがちです。しかし、それは従業員側の都合で仕事を休んだ場合で、企業の都合で従業員に休業をさせた場合は、労働基準法に規定されている「使用者の責に帰すべき事由」に該当する可能性があります。
使用者の責に帰すべき事由による休業の例
上記のような「使用者の責に帰すべき事由」がある場合は、企業は休業する従業員に対して平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと労働基準法第26条で定められています。
休業補償との違い
休業手当と休業補償は言葉が似ているために混同されやすいのですが、支給事由や支給元が異なる別の制度です。どちらも労働基準法で定められた制度で労働者を守る点では共通しています。
休業補償とは
休業補償は、業務中に生じた怪我や病気が原因でやむを得ず働けなくなった従業員を補償することが目的です。企業は従業員が業務上の怪我や病気を負った場合に、災害補償責任を負う義務があります。災害補償責任とは、例えば怪我や病気などの治療費を負担する療養補償や、働けない間の生活保障のための休業補償があります。休業補償は労働基準法の76条で定められていて、休業補償給付と休業特別支給金と合わせて平均賃金の80%が支払われます。
休業手当は従業員が働けるにもかかわらず企業の都合で休ませる状態のことを指し、休業補償は業務上の怪我や病気によって従業員が働けない状態のことを指します。つまり、休業手当と休業補償では、「休業」の原因が異なるのです。
休業手当の支給要件
休業手当を支給しなければならないのは「使用者の責に帰すべき事由が認められる場合」であり、「不可抗力による場合」は支給しなくてもよいとされています。具体的にみていきましょう。
支給対象者
雇用契約の下に賃金の支払いをしている場合は、雇用形態を問わず全ての従業員が支給対象者となります。正社員だけでなく時短勤務、アルバイト・パートなどのシフト勤務、日払い制の勤務形態も含まれます。派遣社員の場合も支給対象ですが、派遣先企業の事情で休業を余儀なくされた場合であったとしても、派遣元企業に支給義務が生じます。
企業と業務委託契約を結んでいる企業や個人事業主の場合、一般的には支給対象外となります。しかし、委託企業による指揮命令の内容や程度によっては例外的に労働者として認められ、支給対象となる可能性もあります。
支給要件
休業手当を支給しなければならないのは、例えば仕事がなくなり自宅待機となった場合など「使用者の責に帰すべき事由」に該当する場合です。よって地震や台風などの天災は企業にとって不可抗力※なため、天災が原因で休業となった場合は支給対象外となります。
新型コロナウイルスの休業については厚生労働省より企業向けへのQ&Aが出されています。個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきとしながらも、例えば、従業員が新型コロナウイルスに感染し、医師による指導で従業員が休業する場合は休業手当を支払う必要はないとしています。これは労働安全衛生法第68条および労働安全衛生規則第61条で伝染病などの疫病にかかった労働者の就業を禁止しているからです。しかし、感染拡大防止の観点から企業が自主的に一斉休業を実施した場合は「使用者の責に帰すべき事由」に当たると判断されます。また、自宅勤務、テレワークなどで業務継続が可能であるにも係わらず休業している場合などは、休業の回避の努力を尽くしていないとされ「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、休業手当の支払いが必要となる可能性があります。
※不可抗力とは
不可抗力とは①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお避けることのできない事故であることと解されています。
休業手当の計算方法
休業手当は労働者の生活を保障するためにあるので、通常の生活賃金をありのままに算定することを基本としています。そのため、休業の日以前3カ月間に支払われた賃金の平均を使い休業手当を算出します。休業手当は平均賃金の100分の60以上支払われます。ここでいう平均賃金とは給与の相場という意味でなく、その従業員に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(歴日数)で除した金額です。
まとめ
企業が従業員を休業させる場合、その休業理由が企業の都合であれば休業手当を支給しなければなりません。休業手当の支給が必要かどうかを状況ごとに正しく判断するためにも、事前に専門家へ相談することをお勧めします。