更新日:2026年02月10日
配偶者特別控除とは、配偶者控除を受けられないケースで適用できることがある所得控除のことです。ただし、適用にあたっては所得要件などを満たさなければなりません。本記事では、配偶者特別控除の適用方法や税金計算のシミュレーションも紹介するため、参考にしてください。
目次
配偶者特別控除とは、配偶者控除の対象外の場合でも一定の所得控除が受けられる制度のことです。「納税する人の合計所得が1,000万円以下」で、以下4つの要件をすべて満たす配偶者がいる場合に、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
ただし、夫婦で互いに配偶者特別控除は受けられません。そのため、「配偶者が配偶者特別控除を適用していない」ことも求められます。
また、配偶者が「扶養控除等申告書」や「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないことも要件です。源泉控除対象配偶者とは、合計所得が900万円以下の納税者と生計を一にし、合計所得が95万円以下の配偶者を指します。
※所得控除〜納税者の生活状況を考慮して、所得額から一定の額を引く制度のこと。配偶者特別控除を含めて16種類の所得控除制度が存在する(2025年12月1日時点)。
参考)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者特別控除の額は、納税者本人の合計所得(900万円以下・900万円超950万円以下・950万円超1,000万円以下)と配偶者の合計所得(9段階)の組み合わせによって異なります。それぞれ、以下の表にまとめました。
たとえば、配偶者の合計所得が85万円で納税者の合計所得が850万円であれば、控除額は38万円です。一方、同じく配偶者の合計所得が85万円でも、納税者の合計所得が970万円であれば、控除額は13万円まで下がります。
配偶者特別控除と配偶者控除の主な違いは、以下のとおりです。
一方で、納税者本人の所得要件は共通です。それぞれ確認しておきましょう。
そもそも配偶者特別控除は配偶者控除を受けられない人のための制度のため、要件が異なります。
配偶者控除では、配偶者の「年間合計所得が58万円以下」か「給与収入123万円以下(給与収入のみの場合)」が要件です。それに対し、配偶者特別控除では、年間合計所得が58万円超133万円以下と定められています。
よりわかりやすくするため、コンビニのパートで給与収入のみを得ている配偶者のケースで考えてみましょう。
たとえば、配偶者の給与収入が120万円(給与所得55万円)の場合、配偶者控除の対象です。そのため、配偶者特別控除は受けられません。
一方、配偶者の給与収入が127万円(給与所得62万円)の場合、配偶者控除の要件は満たしていませんが、その代わりに配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
なお、上記のケースで仮に配偶者が配達員などの仕事で75万円の事業所得や雑所得を得ている場合、合計所得が133万円を超えるため配偶者控除も配偶者特別控除も適用できません。
控除額も配偶者特別控除と配偶者控除の違いです。配偶者控除では、以下の控除額が適用されます。
配偶者特別控除の控除額は1万〜38万円、配偶者控除の控除額は13万〜48万円です。配偶者特別控除と異なり、配偶者控除では配偶者の合計所得が直接控除額に関係しません。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
控除を受けるために、納税者本人の合計所得が1,000万円以下であることが要件として求められている点は、配偶者特別控除と配偶者控除で共通しています。仮に納税者の年間合計所得が1,000万円を超えていると、たとえ配偶者が要件を満たしていたとしても配偶者控除や配偶者特別控除を受けられません。
また、納税者本人の合計所得が「900万円以下」「900万円超950万円以下」「950万円超1,000万円以下」のいずれかに該当するかで控除額が変動する点も、2つの控除制度の共通点です。
2025年度の税制改正で、基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の創設などがありました。改正内容は2025年12月1日に施行され、2025年分以後の所得税について原則として適用されています。
2025年度の税制改正において、配偶者特別控除の控除額については特段変更がありません。ただし、配偶者の合計所得⾦額の要件が「48万円超133万円以下」(給与収入のみの場合:年収150万円超201.6万円未満)から「58万円超133万円以下」(給与収入のみの場合:年収160万円超201.6万円未満)に変更されている点に注意が必要です。
今まで配偶者特別控除を適用していたケースでも、税制改正に伴い配偶者控除を受けられる可能性があります。
参考)国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
配偶者特別控除は、「年収の壁」との関係が深い所得控除のひとつです。年収の壁とは、所得に対して税金や社会保険料が発生したり、配偶者の収入が変動したりするボーダーラインを指します。
配偶者特別控除と関係がある年収の壁は、主に以下のとおりです。
それぞれ解説します。
年収160万円の壁とは、配偶者の年収が160万円以内であれば配偶者特別控除を満額受けられる可能性があることを示した言葉です。
従来、年収160万円の壁の代わりに年収150万円の壁が存在していました。税制改正に伴い配偶者の所得要件が変更されたことで、年収150万円の壁から年収160万円の壁に変わっています。
なお、年収160万円の壁は、所得税の負担が発生するボーダーラインも意味する言葉です。合計所得132万円以下の場合の基礎控除95万円と給与所得控除の最低保障額65万円が、根拠とされています。
年収201万円の壁とは、配偶者の年収が201万円(201万6千円)を超えると、配偶者特別控除をまったく受けられなくなることを意味する言葉です。配偶者の給与収入が201万円までは、最低でも1〜3万円の配偶者特別控除を受けられる可能性がありますが、以降控除できる額がなくなります。
2025年度の税制改正後も、ボーダーラインに変更はありません。
年収123万円の壁とは、配偶者控除を受けるために満たす必要がある配偶者の年収上限を示しています。2025年度の税制改正により配偶者の所得要件が引き上げられたことで、年収103万円の壁から年収123万円の壁に変わりました。
なお、年収123万円の壁を越えた場合でも、代わりに配偶者特別控除を受けられる可能性はあります。
配偶者特別控除を適用した場合にどれくらいの税金がかかるのか、実際に計算してみましょう。また、計算例や税金の計算をする際に便利な早見表も紹介します。
以下のケースで、配偶者特別控除を用いた所得税の計算例を紹介します。
納税者本人の年間合計所得:709万円 配偶者のパート収入年間合計:170万円(収入はパート収入のみ) ※所得控除は基礎控除と配偶者特別控除のみを想定
配偶者のパート収入は170万円のため、合計所得金額は105万円です(170万円 − 給与所得控除65万円)。今回、納税者本人の合計所得が「900万円以下」、配偶者の合計所得が「100万円超105万円以下」のため、配偶者特別控除の控除額は「31万円」と算出できます。
また、納税者本人の合計所得が「655万円超2,350万円以下」のため、基礎控除額は「58万円」です。よって、納税者の課税所得は620万円と計算できます(709万円 − 基礎控除58万円 − 配偶者特別控除31万円)。
最後に計算した課税所得(620万円)に所定の税率をかけてから控除額を引いて、所得税を計算しましょう。今回のケースでは、81万2,500円がかかる所得税です(620万円 × 20% - 42万7,500円)。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
配偶者の給与収入から配偶者特別控除や配偶者控除の額を計算しようとすると、手間がかかるでしょう。毎回、給与所得控除額を確認して、給与収入から引かなければなりません。
そこで、国税庁のサイトに掲載されている配偶者(特別)控除額の早見表を確認すると便利です。表を見れば、今回のように配偶者の給与収入が170万円の場合は「31万円」の控除額を適用できることがひと目でわかります。
参考)国税庁「家族と税」
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と年税額を一致させる手続きです。年末調整で配偶者(特別)控除を受けるには、以下の流れで進めます。
「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の「給与所得者の配偶者控除等申告書」で、「配偶者の氏名等」に、個人番号・生年月日など配偶者の情報を記載しましょう。また、「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算」に収入・所得などを埋めたうえで、控除額を判定して「配偶者特別控除の額」もしくは「配偶者控除の額」に記載する点がポイントです。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和7年分)」
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得とそれに対する所得税の額を計算して確定させる手続きのことです。会社員でも、収入や適用する所得控除の種類によっては、確定申告が必要な場合があります。
確定申告で配偶者(特別)控除を受けるための流れは、以下のとおりです。
配偶者特別控除を適用する場合は、第一表の「配偶者(特別)控除」の「区分1」に「1」と記入することがポイントです。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
配偶者特別控除に関して、従業員や会社側が注意しなければならない点は、以下のとおりです。
各注意点について、詳しく解説します。
配偶者特別控除を適用した納税者は税負担を軽減できる一方で、配偶者自身に税金がかかる可能性がある点に注意しましょう。配偶者特別控除は、配偶者の所得が一定の金額におさまる納税者が受けられる制度のため、対象の配偶者自身にかかる税金には直接関係していません。
納税者本人の所得が1,000万円以内で、配偶者のパート収入(給与収入のみの場合)が「123万円超201万6千円未満(所得が58万円超133万円以下)」であれば、基本的に配偶者特別控除の対象です。一方、配偶者自身に所得税がかかるかどうかを判断するボーダーラインとして、「160万円の壁」が存在します。
そのため、配偶者控除を受けている間は配偶者自身に所得税がかかっていなかったのに、配偶者特別控除を受けるまで収入が増えたことで160万円の壁を越えてしまい、所得税がかかるケースもあるでしょう。
所得税と住民税では、配偶者特別控除の控除額が異なる点に注意しましょう。所得税の場合、納税者と配偶者の合計所得に応じて最大38万円の配偶者特別控除が適用可能であるのに対し、住民税の場合は33万円が控除できる最高額です。
なお、住民税で配偶者特別控除を受ける際に求められる配偶者の所得要件が、「48万円超133万円以下」から「58万円超133万円以下」に2025年度の税制改正で変更された点については、所得税と共通しています。
参考)葛飾区「住民税の配偶者特別控除」
税制上の壁とは別に、社会保険に関する壁が存在することも理解しておかなければなりません。たとえば、130万円の壁は、年収130万円を超えると勤務先の規模や就業時間にかかわらず、国民年金や国民健康保険に加入する義務が生じます。
配偶者控除・配偶者特別控除の所得要件にだけ注目して配偶者が労働時間を増やし、一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生する可能性があります。
参考)厚生労働省「「年収の壁」への対応」
配偶者特別控除の対象であるにもかかわらず、年末調整や確定申告時点で失念していた場合は、別途手続きが必要です。
会社員で年末調整を済ませてしまった場合は、気づいた段階で勤務先の所管部署に伝えましょう。修正に間に合う可能性があります。
また、担当者が書類を税務署に提出している場合は還付申告で手続き可能です。対象年の翌年1月1日から5年間であれば、還付申告できます。
個人事業主などが確定申告したあとに手続きを失念していたことに気づいた場合は、更正の請求書を税務署に提出しましょう。確定申告の期限から5年以内であれば、更正請求できます。
参考)国税庁「No.2030 還付申告」 参考)国税庁「【申告が間違っていた場合】」
配偶者の年収によって適用の可否や控除額が異なります。そこで、従業員の年末調整に対応する会社側は、配偶者の年収に間違いがないかを確認しましょう。正式な金額確認は困難なため、従業員に対して年収を正しく記入することを求めることがポイントです。
また、従業員が配偶者特別控除の適用額を誤っていたり、計算を間違えたりすることもあるため、チェックしなければなりません。特に、税制改正に伴い、今までと配偶者の所得要件が異なるため、注意が必要です。
配偶者が所得要件を満たさず配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者特別控除を適用できる可能性があります。
年間合計所得が58万円超133万円以下であることが、配偶者特別控除における配偶者の所得要件です。2025年度の税制改正に伴い要件が変更されているため、自身で申請する際や従業員の年末調整をチェックする際に間違えないようにしましょう。
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配偶者特別控除とは、配偶者控除を受けられないケースで適用できることがある所得控除のことです。ただし、適用にあたっては所得要件などを満たさなければなりません。本記事では、配偶者特別控除の適用方法や税金計算のシミュレーションも紹介するため、参考にしてください。
目次
配偶者特別控除とは
配偶者特別控除とは、配偶者控除の対象外の場合でも一定の所得控除が受けられる制度のことです。「納税する人の合計所得が1,000万円以下」で、以下4つの要件をすべて満たす配偶者がいる場合に、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
(1〜3の要件については、配偶者控除と共通)
ただし、夫婦で互いに配偶者特別控除は受けられません。そのため、「配偶者が配偶者特別控除を適用していない」ことも求められます。
また、配偶者が「扶養控除等申告書」や「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないことも要件です。源泉控除対象配偶者とは、合計所得が900万円以下の納税者と生計を一にし、合計所得が95万円以下の配偶者を指します。
※所得控除〜納税者の生活状況を考慮して、所得額から一定の額を引く制度のこと。配偶者特別控除を含めて16種類の所得控除制度が存在する(2025年12月1日時点)。
参考)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者特別控除の控除額
配偶者特別控除の額は、納税者本人の合計所得(900万円以下・900万円超950万円以下・950万円超1,000万円以下)と配偶者の合計所得(9段階)の組み合わせによって異なります。それぞれ、以下の表にまとめました。
たとえば、配偶者の合計所得が85万円で納税者の合計所得が850万円であれば、控除額は38万円です。一方、同じく配偶者の合計所得が85万円でも、納税者の合計所得が970万円であれば、控除額は13万円まで下がります。
配偶者特別控除と配偶者控除の違い・共通点とは
配偶者特別控除と配偶者控除の主な違いは、以下のとおりです。
一方で、納税者本人の所得要件は共通です。それぞれ確認しておきましょう。
受けるための要件が異なる
そもそも配偶者特別控除は配偶者控除を受けられない人のための制度のため、要件が異なります。
配偶者控除では、配偶者の「年間合計所得が58万円以下」か「給与収入123万円以下(給与収入のみの場合)」が要件です。それに対し、配偶者特別控除では、年間合計所得が58万円超133万円以下と定められています。
よりわかりやすくするため、コンビニのパートで給与収入のみを得ている配偶者のケースで考えてみましょう。
たとえば、配偶者の給与収入が120万円(給与所得55万円)の場合、配偶者控除の対象です。そのため、配偶者特別控除は受けられません。
一方、配偶者の給与収入が127万円(給与所得62万円)の場合、配偶者控除の要件は満たしていませんが、その代わりに配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
なお、上記のケースで仮に配偶者が配達員などの仕事で75万円の事業所得や雑所得を得ている場合、合計所得が133万円を超えるため配偶者控除も配偶者特別控除も適用できません。
控除額が異なる
控除額も配偶者特別控除と配偶者控除の違いです。配偶者控除では、以下の控除額が適用されます。
一般の控除対象配偶者
老人控除対象配偶者
配偶者特別控除の控除額は1万〜38万円、配偶者控除の控除額は13万〜48万円です。配偶者特別控除と異なり、配偶者控除では配偶者の合計所得が直接控除額に関係しません。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
納税者本人の所得要件は同じ
控除を受けるために、納税者本人の合計所得が1,000万円以下であることが要件として求められている点は、配偶者特別控除と配偶者控除で共通しています。仮に納税者の年間合計所得が1,000万円を超えていると、たとえ配偶者が要件を満たしていたとしても配偶者控除や配偶者特別控除を受けられません。
また、納税者本人の合計所得が「900万円以下」「900万円超950万円以下」「950万円超1,000万円以下」のいずれかに該当するかで控除額が変動する点も、2つの控除制度の共通点です。
2025年度の税制改正に伴う配偶者特別控除の変更点
2025年度の税制改正で、基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の創設などがありました。改正内容は2025年12月1日に施行され、2025年分以後の所得税について原則として適用されています。
2025年度の税制改正において、配偶者特別控除の控除額については特段変更がありません。ただし、配偶者の合計所得⾦額の要件が「48万円超133万円以下」(給与収入のみの場合:年収150万円超201.6万円未満)から「58万円超133万円以下」(給与収入のみの場合:年収160万円超201.6万円未満)に変更されている点に注意が必要です。
今まで配偶者特別控除を適用していたケースでも、税制改正に伴い配偶者控除を受けられる可能性があります。
参考)国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
配偶者特別控除に関係する「年収の壁」
配偶者特別控除は、「年収の壁」との関係が深い所得控除のひとつです。年収の壁とは、所得に対して税金や社会保険料が発生したり、配偶者の収入が変動したりするボーダーラインを指します。
配偶者特別控除と関係がある年収の壁は、主に以下のとおりです。
それぞれ解説します。
年収160万円の壁
年収160万円の壁とは、配偶者の年収が160万円以内であれば配偶者特別控除を満額受けられる可能性があることを示した言葉です。
従来、年収160万円の壁の代わりに年収150万円の壁が存在していました。税制改正に伴い配偶者の所得要件が変更されたことで、年収150万円の壁から年収160万円の壁に変わっています。
なお、年収160万円の壁は、所得税の負担が発生するボーダーラインも意味する言葉です。合計所得132万円以下の場合の基礎控除95万円と給与所得控除の最低保障額65万円が、根拠とされています。
年収201万円の壁
年収201万円の壁とは、配偶者の年収が201万円(201万6千円)を超えると、配偶者特別控除をまったく受けられなくなることを意味する言葉です。配偶者の給与収入が201万円までは、最低でも1〜3万円の配偶者特別控除を受けられる可能性がありますが、以降控除できる額がなくなります。
2025年度の税制改正後も、ボーダーラインに変更はありません。
年収123万円の壁
年収123万円の壁とは、配偶者控除を受けるために満たす必要がある配偶者の年収上限を示しています。2025年度の税制改正により配偶者の所得要件が引き上げられたことで、年収103万円の壁から年収123万円の壁に変わりました。
なお、年収123万円の壁を越えた場合でも、代わりに配偶者特別控除を受けられる可能性はあります。
配偶者特別控除で税金をシミュレーション
配偶者特別控除を適用した場合にどれくらいの税金がかかるのか、実際に計算してみましょう。また、計算例や税金の計算をする際に便利な早見表も紹介します。
配偶者特別控除(所得控除)を使った計算例
以下のケースで、配偶者特別控除を用いた所得税の計算例を紹介します。
納税者本人の年間合計所得:709万円
配偶者のパート収入年間合計:170万円(収入はパート収入のみ)
※所得控除は基礎控除と配偶者特別控除のみを想定
配偶者のパート収入は170万円のため、合計所得金額は105万円です(170万円 − 給与所得控除65万円)。今回、納税者本人の合計所得が「900万円以下」、配偶者の合計所得が「100万円超105万円以下」のため、配偶者特別控除の控除額は「31万円」と算出できます。
また、納税者本人の合計所得が「655万円超2,350万円以下」のため、基礎控除額は「58万円」です。よって、納税者の課税所得は620万円と計算できます(709万円 − 基礎控除58万円 − 配偶者特別控除31万円)。
最後に計算した課税所得(620万円)に所定の税率をかけてから控除額を引いて、所得税を計算しましょう。今回のケースでは、81万2,500円がかかる所得税です(620万円 × 20% - 42万7,500円)。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
配偶者特別控除・配偶者控除と年収の関係(早見表)
配偶者の給与収入から配偶者特別控除や配偶者控除の額を計算しようとすると、手間がかかるでしょう。毎回、給与所得控除額を確認して、給与収入から引かなければなりません。
そこで、国税庁のサイトに掲載されている配偶者(特別)控除額の早見表を確認すると便利です。表を見れば、今回のように配偶者の給与収入が170万円の場合は「31万円」の控除額を適用できることがひと目でわかります。
参考)国税庁「家族と税」
年末調整で配偶者特別控除・配偶者控除を受ける方法
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と年税額を一致させる手続きです。年末調整で配偶者(特別)控除を受けるには、以下の流れで進めます。
「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の「給与所得者の配偶者控除等申告書」で、「配偶者の氏名等」に、個人番号・生年月日など配偶者の情報を記載しましょう。また、「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算」に収入・所得などを埋めたうえで、控除額を判定して「配偶者特別控除の額」もしくは「配偶者控除の額」に記載する点がポイントです。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和7年分)」
確定申告で配偶者特別控除・配偶者控除を受ける方法
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得とそれに対する所得税の額を計算して確定させる手続きのことです。会社員でも、収入や適用する所得控除の種類によっては、確定申告が必要な場合があります。
確定申告で配偶者(特別)控除を受けるための流れは、以下のとおりです。
配偶者特別控除を適用する場合は、第一表の「配偶者(特別)控除」の「区分1」に「1」と記入することがポイントです。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
配偶者特別控除の注意点
配偶者特別控除に関して、従業員や会社側が注意しなければならない点は、以下のとおりです。
各注意点について、詳しく解説します。
配偶者自身に税金がかかる可能性がある
配偶者特別控除を適用した納税者は税負担を軽減できる一方で、配偶者自身に税金がかかる可能性がある点に注意しましょう。配偶者特別控除は、配偶者の所得が一定の金額におさまる納税者が受けられる制度のため、対象の配偶者自身にかかる税金には直接関係していません。
納税者本人の所得が1,000万円以内で、配偶者のパート収入(給与収入のみの場合)が「123万円超201万6千円未満(所得が58万円超133万円以下)」であれば、基本的に配偶者特別控除の対象です。一方、配偶者自身に所得税がかかるかどうかを判断するボーダーラインとして、「160万円の壁」が存在します。
そのため、配偶者控除を受けている間は配偶者自身に所得税がかかっていなかったのに、配偶者特別控除を受けるまで収入が増えたことで160万円の壁を越えてしまい、所得税がかかるケースもあるでしょう。
所得税と住民税では控除額が異なる
所得税と住民税では、配偶者特別控除の控除額が異なる点に注意しましょう。所得税の場合、納税者と配偶者の合計所得に応じて最大38万円の配偶者特別控除が適用可能であるのに対し、住民税の場合は33万円が控除できる最高額です。
なお、住民税で配偶者特別控除を受ける際に求められる配偶者の所得要件が、「48万円超133万円以下」から「58万円超133万円以下」に2025年度の税制改正で変更された点については、所得税と共通しています。
参考)葛飾区「住民税の配偶者特別控除」
社会保険に関する壁も理解しておく
税制上の壁とは別に、社会保険に関する壁が存在することも理解しておかなければなりません。たとえば、130万円の壁は、年収130万円を超えると勤務先の規模や就業時間にかかわらず、国民年金や国民健康保険に加入する義務が生じます。
配偶者控除・配偶者特別控除の所得要件にだけ注目して配偶者が労働時間を増やし、一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生する可能性があります。
参考)厚生労働省「「年収の壁」への対応」
配偶者特別控除を失念していたら手続きが必要
配偶者特別控除の対象であるにもかかわらず、年末調整や確定申告時点で失念していた場合は、別途手続きが必要です。
会社員で年末調整を済ませてしまった場合は、気づいた段階で勤務先の所管部署に伝えましょう。修正に間に合う可能性があります。
また、担当者が書類を税務署に提出している場合は還付申告で手続き可能です。対象年の翌年1月1日から5年間であれば、還付申告できます。
個人事業主などが確定申告したあとに手続きを失念していたことに気づいた場合は、更正の請求書を税務署に提出しましょう。確定申告の期限から5年以内であれば、更正請求できます。
参考)国税庁「No.2030 還付申告」
参考)国税庁「【申告が間違っていた場合】」
会社側は従業員に配偶者の年収に間違いないか確認が必要
配偶者の年収によって適用の可否や控除額が異なります。そこで、従業員の年末調整に対応する会社側は、配偶者の年収に間違いがないかを確認しましょう。正式な金額確認は困難なため、従業員に対して年収を正しく記入することを求めることがポイントです。
また、従業員が配偶者特別控除の適用額を誤っていたり、計算を間違えたりすることもあるため、チェックしなければなりません。特に、税制改正に伴い、今までと配偶者の所得要件が異なるため、注意が必要です。
配偶者特別控除まとめ
配偶者が所得要件を満たさず配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者特別控除を適用できる可能性があります。
年間合計所得が58万円超133万円以下であることが、配偶者特別控除における配偶者の所得要件です。2025年度の税制改正に伴い要件が変更されているため、自身で申請する際や従業員の年末調整をチェックする際に間違えないようにしましょう。