更新日:2024年10月29日
配偶者特別控除とは、配偶者控除を受けられないケースで適用できることがある所得控除のことです。ただし、適用にあたっては所得要件などを満たさなければなりません。本記事では、配偶者特別控除の適用方法や税金計算のシミュレーションも紹介するため、参考にしてください。
目次
配偶者特別控除とは、配偶者控除の対象外の場合に受けられる可能性がある所得控除を指します。
所得控除とは、納税者の生活状況を考慮して所得額から一定の額を引く制度のことです。配偶者控除・配偶者特別控除・基礎控除など、合計15種類あります。
所得控除は、納税する人自身やその配偶者・親族といった人に関わる「人的控除」と、納税する人の支出に関する「物的控除」に分類可能です。配偶者控除・配偶者特別控除は、配偶者(人)に関わる控除のため、人的控除に該当します。
配偶者特別控除は、「納税する人の合計所得が1,000万円以下」で、配偶者が一定の要件を満たす場合に適用可能です。ここから、控除対象の配偶者や控除額について解説します。
配偶者特別控除を受けるには、配偶者が以下の要件をすべて満たさなければなりません。
1〜3の要件については、配偶者控除と同じです。
また、夫婦で互いに配偶者特別控除を受けられないため、「配偶者が配偶者特別控除を適用していない」ことも求められます。さらに、配偶者が「扶養控除等申告書」や「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないことも要件です。ただし、配偶者が年末調整・確定申告で適用を受けなかった場合は除かれます。
なお、源泉控除対象配偶者とは、合計所得が900万円以下の納税者と生計を一にし、合計所得が95万円以下の配偶者のことです。
配偶者特別控除の額は、納税者本人の合計所得(900万円以下・900万円超950万円以下・950万円超1,000万円以下)と配偶者の合計所得(9段階)の組み合わせによって異なります。それぞれ、以下の表にまとめました。
たとえば、配偶者の合計所得が85万円で納税者の合計所得が850万円であれば、控除額は38万円です。一方、同じく配偶者の合計所得が85万円でも、納税者の合計所得が970万円であれば、控除額は13万円まで下がります。
参考)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者特別控除と配偶者控除の主な違いは、以下のとおりです。
それぞれ解説します。
そもそも配偶者特別控除は配偶者控除を受けられない人のための制度のため、要件が異なります。
配偶者控除では、配偶者の「年間合計所得が48万円以下」か「給与収入103万円以下(給与収入のみの場合)」が要件です。それに対し、配偶者特別控除では、年間合計所得が48万円超133万円以下と定められています。
よりわかりやすくするため、コンビニのパートで給与収入のみを得ている配偶者のケースで考えてみましょう。
たとえば、配偶者の給与収入が100万円(給与所得45万円)の場合、配偶者控除の対象です。そのため、配偶者特別控除は受けられません。
一方、配偶者の給与収入が127万円(給与所得72万円)の場合、配偶者控除の要件は満たしていませんが、その代わりに配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
なお、上記のケースで仮に配偶者が配達員などの仕事で70万円の事業所得や雑所得を得ている場合、合計所得が133万円を超えるため配偶者控除も配偶者特別控除も適用できません。
控除額も配偶者特別控除と配偶者控除の違いです。配偶者控除では、以下の控除額が適用されます。
配偶者特別控除の控除額は1万〜38万円、配偶者控除の控除額は13万〜48万円です。配偶者特別控除と異なり、配偶者控除では配偶者の合計所得が直接控除額に関係しません。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
「年収の壁」とは、税金や社会保険料の負担に影響を与える可能性のある年収のラインを示した言葉です。年収の壁は、税金の負担が増える「税制上の壁」と、社会保険料の負担が増加する「社会保険上の壁」に分類できます。
主な年収の壁は、以下のとおりです。
税制上の壁のうち、配偶者特別控除に関係するものについて、詳しく解説します。
年収150万円の壁とは、配偶者の年収が150万円以内であれば配偶者特別控除を満額受けられる可能性があることを示した言葉です。
納税者の合計所得が900万円以下で、配偶者の合計所得が「48万円超95万円以下」であれば、配偶者特別控除を満額(38万円)適用できます。また、給与収入が162万5,000円までの給与所得控除額は55万円です。
そのため、配偶者の給与収入が150万円(95万円 + 55万円)以下であれば、数字上配偶者特別控除を満額適用できることになります。
年収201万円の壁とは、配偶者の年収が201万円を超えると基本的に配偶者特別控除を受けられなくなることを意味する言葉です。
配偶者特別控除には、配偶者の所得要件(48万円超133万円以下)が定められています。所得上限に給与所得控除を考慮すると、給与収入201万円が上限と判断できることが、年収201万円の壁の由来です。
実際に計算してみましょう。
給与収入201万円の場合、給与所得控除額は「収入金額 × 30% + 80,000円」で計算した金額です。式に当てはめると、68万3,000円と計算できます。
201万円から68万3,000円を引くと、132万7,000円です。このことから、万単位であれば「201万円」が要件を満たすギリギリのラインであることがわかります。
なお、従来控除対象の範囲となる配偶者の給与収入の上限は141万円でした。2018年度の制度改正に伴い、適用対象の範囲が広がっています。
配偶者特別控除を適用した場合に、どれくらいの税金がかかるのか、実際に計算してみましょう。計算例や税金の計算をする際に便利な早見表を紹介します。
納税者本人の合計所得が700万円で、配偶者がパートで155万円の給与収入を得ているとしましょう。また、今回適用できる所得控除は配偶者特別控除と基礎控除(48万円)のみです。
まず、配偶者の給与所得は100万円と計算できます(155万円 − 給与所得控除55万円)。よって、受けられる配偶者特別控除の控除額は36万円です(国税庁のサイトの表などで確認)。
続いて、配偶者特別控除を適用する納税者の課税所得を計算します。合計所得から所得控除を引きましょう(700万円 − 48万円 − 36万円)。
最後に計算した課税所得(616万円)に所定の税率をかけて、控除額を引けば、所得税の額を求められます。今回の所得税は、80万4,500円(616万円 × 20% - 42万7,500円)でした。
なお、2037年までは所得税とあわせて復興特別所得税の申告・納付も必要です。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
配偶者の給与収入から配偶者特別控除や配偶者控除の額を計算しようとすると、手間がかかるでしょう。毎回、給与所得控除額を確認して、給与収入から引かなければなりません。
そこで、国税庁のサイトに掲載されている配偶者(特別)控除額の早見表を確認すると便利です。表を見れば、今回のように配偶者の給与収入が155万円の場合は「36万円」の控除額を適用できることがひと目でわかります。
参考)国税庁「家族と税」
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と年税額を一致させる手続きです。年末調整で配偶者(特別)控除を受けるには、以下の流れで進めます。
「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の「給与所得者の配偶者控除等申告書」で個人番号・生年月日など配偶者の情報や、収入・所得などを埋める点がポイントです。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得とそれに対する所得税の額を計算して確定させる手続きのことです。会社員でも、収入や適用する所得控除の種類によっては、確定申告が必要な場合があります。
確定申告で配偶者(特別)控除を受けるための流れは、以下のとおりです。
配偶者特別控除を適用する場合は、第一表の「配偶者(特別)控除」の「区分1」に「1」と記入することがポイントです。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
配偶者特別控除に関して、従業員や会社側が注意しなければならない点は、以下のとおりです。
各注意点について、詳しく解説します。
配偶者特別控除を適用した納税者は税負担を軽減できる一方で、配偶者自身に税金がかかる可能性がある点に注意しましょう。
給与収入のみの場合、基本的に配偶者の収入が「103万円超201万円未満」であれば配偶者特別控除の対象です。一方、一般的に「103万円」は基礎控除・給与所得控除との兼ね合いで所得税がかかるかどうかの判断基準でもあります。
配偶者控除を受けている間は配偶者に所得税がかかっていなかったのに、配偶者特別控除を受けるまで収入が増えたことで所得税がかかるケースもあるでしょう。
配偶者特別控除の対象であるにもかかわらず、年末調整や確定申告時点で失念していた場合は、別途手続きが必要です。
会社員で年末調整を済ませてしまった場合は、気づいた段階で勤務先の所管部署に伝えましょう。修正に間に合う可能性があります。
また、担当者が書類を税務署に提出している場合は還付申告で手続き可能です。対象年の翌年1月1日から5年間であれば、還付申告できます。
個人事業主などが確定申告したあとに手続きを失念していたことに気づいた場合は、更正の請求書を税務署に提出しましょう。確定申告の期限から5年以内であれば、更正請求できます。
参考)国税庁「No.2030 還付申告」 参考)国税庁「【申告が間違っていた場合】」
従業員の年末調整に対応する会社側は、配偶者の年収に間違いがないかを確認しましょう。ただし、正式な金額確認は困難なため、従業員に対して年収を正しく記入することを求めることがポイントです。
また、従業員が配偶者特別控除の適用額を誤っていたり、計算を間違えたりすることもあるため、チェックしなければなりません。
配偶者が所得要件を満たさず配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者特別控除であれば適用できる可能性があります。配偶者の年間合計所得が48万円超133万円以下である点が、適用するうえでのポイントです。
適用する際は、年末調整や確定申告で手続きを進めます。次回の手続きまでに、自分が該当するか確認しておきましょう。
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配偶者特別控除とは、配偶者控除を受けられないケースで適用できることがある所得控除のことです。ただし、適用にあたっては所得要件などを満たさなければなりません。本記事では、配偶者特別控除の適用方法や税金計算のシミュレーションも紹介するため、参考にしてください。
目次
配偶者特別控除とは
配偶者特別控除とは、配偶者控除の対象外の場合に受けられる可能性がある所得控除を指します。
所得控除とは、納税者の生活状況を考慮して所得額から一定の額を引く制度のことです。配偶者控除・配偶者特別控除・基礎控除など、合計15種類あります。
所得控除は、納税する人自身やその配偶者・親族といった人に関わる「人的控除」と、納税する人の支出に関する「物的控除」に分類可能です。配偶者控除・配偶者特別控除は、配偶者(人)に関わる控除のため、人的控除に該当します。
配偶者特別控除は、「納税する人の合計所得が1,000万円以下」で、配偶者が一定の要件を満たす場合に適用可能です。ここから、控除対象の配偶者や控除額について解説します。
控除対象の配偶者
配偶者特別控除を受けるには、配偶者が以下の要件をすべて満たさなければなりません。
1〜3の要件については、配偶者控除と同じです。
また、夫婦で互いに配偶者特別控除を受けられないため、「配偶者が配偶者特別控除を適用していない」ことも求められます。さらに、配偶者が「扶養控除等申告書」や「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載された、源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないことも要件です。ただし、配偶者が年末調整・確定申告で適用を受けなかった場合は除かれます。
なお、源泉控除対象配偶者とは、合計所得が900万円以下の納税者と生計を一にし、合計所得が95万円以下の配偶者のことです。
控除額
配偶者特別控除の額は、納税者本人の合計所得(900万円以下・900万円超950万円以下・950万円超1,000万円以下)と配偶者の合計所得(9段階)の組み合わせによって異なります。それぞれ、以下の表にまとめました。
たとえば、配偶者の合計所得が85万円で納税者の合計所得が850万円であれば、控除額は38万円です。一方、同じく配偶者の合計所得が85万円でも、納税者の合計所得が970万円であれば、控除額は13万円まで下がります。
参考)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者特別控除と配偶者控除の違いとは
配偶者特別控除と配偶者控除の主な違いは、以下のとおりです。
それぞれ解説します。
受けるための要件が異なる
そもそも配偶者特別控除は配偶者控除を受けられない人のための制度のため、要件が異なります。
配偶者控除では、配偶者の「年間合計所得が48万円以下」か「給与収入103万円以下(給与収入のみの場合)」が要件です。それに対し、配偶者特別控除では、年間合計所得が48万円超133万円以下と定められています。
よりわかりやすくするため、コンビニのパートで給与収入のみを得ている配偶者のケースで考えてみましょう。
たとえば、配偶者の給与収入が100万円(給与所得45万円)の場合、配偶者控除の対象です。そのため、配偶者特別控除は受けられません。
一方、配偶者の給与収入が127万円(給与所得72万円)の場合、配偶者控除の要件は満たしていませんが、その代わりに配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
なお、上記のケースで仮に配偶者が配達員などの仕事で70万円の事業所得や雑所得を得ている場合、合計所得が133万円を超えるため配偶者控除も配偶者特別控除も適用できません。
控除額が異なる
控除額も配偶者特別控除と配偶者控除の違いです。配偶者控除では、以下の控除額が適用されます。
合計所得金額
一般の控除対象配偶者
老人控除対象配偶者
配偶者特別控除の控除額は1万〜38万円、配偶者控除の控除額は13万〜48万円です。配偶者特別控除と異なり、配偶者控除では配偶者の合計所得が直接控除額に関係しません。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
配偶者特別控除に関係する「年収の壁」
「年収の壁」とは、税金や社会保険料の負担に影響を与える可能性のある年収のラインを示した言葉です。年収の壁は、税金の負担が増える「税制上の壁」と、社会保険料の負担が増加する「社会保険上の壁」に分類できます。
主な年収の壁は、以下のとおりです。
税制上の壁のうち、配偶者特別控除に関係するものについて、詳しく解説します。
年収150万円の壁
年収150万円の壁とは、配偶者の年収が150万円以内であれば配偶者特別控除を満額受けられる可能性があることを示した言葉です。
納税者の合計所得が900万円以下で、配偶者の合計所得が「48万円超95万円以下」であれば、配偶者特別控除を満額(38万円)適用できます。また、給与収入が162万5,000円までの給与所得控除額は55万円です。
そのため、配偶者の給与収入が150万円(95万円 + 55万円)以下であれば、数字上配偶者特別控除を満額適用できることになります。
年収201万円の壁
年収201万円の壁とは、配偶者の年収が201万円を超えると基本的に配偶者特別控除を受けられなくなることを意味する言葉です。
配偶者特別控除には、配偶者の所得要件(48万円超133万円以下)が定められています。所得上限に給与所得控除を考慮すると、給与収入201万円が上限と判断できることが、年収201万円の壁の由来です。
実際に計算してみましょう。
給与収入201万円の場合、給与所得控除額は「収入金額 × 30% + 80,000円」で計算した金額です。式に当てはめると、68万3,000円と計算できます。
201万円から68万3,000円を引くと、132万7,000円です。このことから、万単位であれば「201万円」が要件を満たすギリギリのラインであることがわかります。
なお、従来控除対象の範囲となる配偶者の給与収入の上限は141万円でした。2018年度の制度改正に伴い、適用対象の範囲が広がっています。
配偶者特別控除で税金をシミュレーション
配偶者特別控除を適用した場合に、どれくらいの税金がかかるのか、実際に計算してみましょう。計算例や税金の計算をする際に便利な早見表を紹介します。
配偶者特別控除(所得控除)を使った計算例
納税者本人の合計所得が700万円で、配偶者がパートで155万円の給与収入を得ているとしましょう。また、今回適用できる所得控除は配偶者特別控除と基礎控除(48万円)のみです。
まず、配偶者の給与所得は100万円と計算できます(155万円 − 給与所得控除55万円)。よって、受けられる配偶者特別控除の控除額は36万円です(国税庁のサイトの表などで確認)。
続いて、配偶者特別控除を適用する納税者の課税所得を計算します。合計所得から所得控除を引きましょう(700万円 − 48万円 − 36万円)。
最後に計算した課税所得(616万円)に所定の税率をかけて、控除額を引けば、所得税の額を求められます。今回の所得税は、80万4,500円(616万円 × 20% - 42万7,500円)でした。
なお、2037年までは所得税とあわせて復興特別所得税の申告・納付も必要です。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
配偶者特別控除・配偶者控除と年収の関係(早見表)
配偶者の給与収入から配偶者特別控除や配偶者控除の額を計算しようとすると、手間がかかるでしょう。毎回、給与所得控除額を確認して、給与収入から引かなければなりません。
そこで、国税庁のサイトに掲載されている配偶者(特別)控除額の早見表を確認すると便利です。表を見れば、今回のように配偶者の給与収入が155万円の場合は「36万円」の控除額を適用できることがひと目でわかります。
参考)国税庁「家族と税」
年末調整で配偶者特別控除・配偶者控除を受ける方法
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と年税額を一致させる手続きです。年末調整で配偶者(特別)控除を受けるには、以下の流れで進めます。
「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の「給与所得者の配偶者控除等申告書」で個人番号・生年月日など配偶者の情報や、収入・所得などを埋める点がポイントです。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」
確定申告で配偶者特別控除・配偶者控除を受ける方法
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得とそれに対する所得税の額を計算して確定させる手続きのことです。会社員でも、収入や適用する所得控除の種類によっては、確定申告が必要な場合があります。
確定申告で配偶者(特別)控除を受けるための流れは、以下のとおりです。
配偶者特別控除を適用する場合は、第一表の「配偶者(特別)控除」の「区分1」に「1」と記入することがポイントです。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
配偶者特別控除の注意点
配偶者特別控除に関して、従業員や会社側が注意しなければならない点は、以下のとおりです。
各注意点について、詳しく解説します。
配偶者自身に税金がかかる可能性がある
配偶者特別控除を適用した納税者は税負担を軽減できる一方で、配偶者自身に税金がかかる可能性がある点に注意しましょう。
給与収入のみの場合、基本的に配偶者の収入が「103万円超201万円未満」であれば配偶者特別控除の対象です。一方、一般的に「103万円」は基礎控除・給与所得控除との兼ね合いで所得税がかかるかどうかの判断基準でもあります。
配偶者控除を受けている間は配偶者に所得税がかかっていなかったのに、配偶者特別控除を受けるまで収入が増えたことで所得税がかかるケースもあるでしょう。
配偶者特別控除を失念していたら手続きが必要
配偶者特別控除の対象であるにもかかわらず、年末調整や確定申告時点で失念していた場合は、別途手続きが必要です。
会社員で年末調整を済ませてしまった場合は、気づいた段階で勤務先の所管部署に伝えましょう。修正に間に合う可能性があります。
また、担当者が書類を税務署に提出している場合は還付申告で手続き可能です。対象年の翌年1月1日から5年間であれば、還付申告できます。
個人事業主などが確定申告したあとに手続きを失念していたことに気づいた場合は、更正の請求書を税務署に提出しましょう。確定申告の期限から5年以内であれば、更正請求できます。
参考)国税庁「No.2030 還付申告」
参考)国税庁「【申告が間違っていた場合】」
会社側は従業員に配偶者の年収に間違いないか確認が必要
従業員の年末調整に対応する会社側は、配偶者の年収に間違いがないかを確認しましょう。ただし、正式な金額確認は困難なため、従業員に対して年収を正しく記入することを求めることがポイントです。
また、従業員が配偶者特別控除の適用額を誤っていたり、計算を間違えたりすることもあるため、チェックしなければなりません。
配偶者特別控除まとめ
配偶者が所得要件を満たさず配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者特別控除であれば適用できる可能性があります。配偶者の年間合計所得が48万円超133万円以下である点が、適用するうえでのポイントです。
適用する際は、年末調整や確定申告で手続きを進めます。次回の手続きまでに、自分が該当するか確認しておきましょう。