更新日:2026年02月09日
配偶者控除とは、納税する人に所得要件などを満たした配偶者がいる場合に受けられる所得控除のことです。配偶者が要件を満たさない場合でも、配偶者特別控除の対象になる可能性はあります。本記事で、配偶者控除の適用方法や要件について確認していきましょう。
目次
配偶者控除とは、納税者に控除対象配偶者がいる場合に受けられる所得控除を指します。
所得控除とは、所得税額を計算する際に各納税者の個人的事情を加味し、要件を満たす場合に各種所得の合計額から一定額を引ける制度です。配偶者控除を含め、合計16種類の所得控除があります。
ここから、配偶者控除を受けるための要件や控除額について確認していきましょう。
納税者本人の年間合計所得が1,000万円以内で、年間合計所得が58万円以下の控除対象配偶者がいることが配偶者控除を受けるための要件として設けられています。合計所得とは、以下の合計額に退職所得と山林所得を足した額のことです。
たとえば、年間合計所得が700万円で配偶者の年間合計所得が50万円であれば、配偶者控除を受けられる可能性があります。
配偶者控除の控除額は、納税者本人の合計所得金額や控除対象配偶者の分類によって異なります。それぞれの控除額を以下の表にまとめました。
たとえば、納税者本人の年間合計所得が700万円で、年間合計所得が50万円の「一般の控除対象配偶者」がいる場合の控除額は、「38万円」です。
なお、老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人を指します。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
配偶者特別控除とは、配偶者の合計年間所得が58万円を超えていて配偶者控除の対象外であっても、配偶者の所得次第で受けられる可能性のある所得控除のことです。ここから、配偶者特別控除の要件や控除額を解説します。
納税者本人の年間合計所得が1,000万円以内で、年間合計所得が58万円超133万円以下の控除対象配偶者がいることが配偶者特別控除を受けるための主な要件です。たとえば、年間合計所得が700万円で配偶者の年間合計所得が70万円であれば、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
ただし、配偶者特別控除の対象であっても、配偶者の年間合計所得によって控除額が異なることがあるため、注意が必要です。
配偶者特別控除の控除額は、納税者本人の年間合計所得と配偶者の年間合計所得によって決まります。納税者本人の合計所得が「900万円以下」「900万円超950万円以下」「950万円超1,000万円以下」の場合の控除額は、それぞれ以下のとおりです。
【納税者本人の合計所得900万円以下】
【納税者本人の合計所得900万円超950万円以下】
【納税者本人の合計所得950万円超1,000万円以下】
たとえば、納税者本人の年間合計所得が750万円で配偶者の年間合計所得が60万円の場合は、38万円の配偶者特別控除を受けられる可能性があります。一方、納税者本人の年間合計所得が990万円で配偶者の年間合計所得が131万円の場合は、1万円の配偶者特別控除しか受けられません。
参考)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
2025年12月1日に施行された税制改正により、合計所得に応じて基礎控除額が改正されて、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。一方で、配偶者控除や配偶者特別控除の控除額には変更がありません。
ただし、「配偶者」の所得要件に変更がある点に注意が必要です。税制改正後、配偶者控除における配偶者の所得要件は「48万円以下」から「58万円以下」、配偶者特別控除における配偶者の所得要件は「48万円超133万円以下」から「58万円超133万円以下」に変更されています。
自身が控除を受ける際や、年末調整で従業員の申請を確認する際は、間違えないよう注意しましょう。
参考)国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
配偶者控除と同様に、納税者の配偶者に関する所得控除(人的控除)として、配偶者特別控除があります。配偶者特別控除とは、配偶者が所得条件を満たさず、配偶者控除を受けられない場合に適用できる可能性がある所得控除のことです。
配偶者控除との主な違いとして、以下の点が挙げられます。
一方で、納税者本人の合計所得は同じです。それぞれ確認していきましょう。
対象となる配偶者の所得要件が、ひとつ目の違いとして挙げられます。配偶者控除で配偶者の合計年間所得が「年間合計所得金額が58万円以下」であることを条件として定めているのに対し、配偶者特別控除では「58万円超133万円以下」が条件です。
関連して、配偶者特別控除には源泉徴収の有無に関する要件が設けられている点も、配偶者控除との違いとして挙げられます。
適用できる控除額も、ふたつの所得控除の違いです。
配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額(3段階)や、一般の控除対象配偶者か老人控除対象配偶者かによって、控除額が13万〜48万円で設定されています。一方、配偶者特別控除では、配偶者の合計所得金額を9段階、納税者本人の合計所得金額を3段階に分け、1万〜38万円の控除額が設定されている点が特徴です。
配偶者控除と配偶者特別控除では、いずれも納税者本人の合計所得が1,000万円以下であることが利用条件とされています。そのため、たとえば年間の合計所得が1,005万円の場合は、配偶者の収入状況にかかわらず、どちらの控除も適用されません。
また、納税者本人の合計所得が「900万円以下」「900万円超950万円以下」「950万円超1,000万円以下」のいずれに該当するかによって控除額が調整される点も、両制度で共通しています。
配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)対象の「配偶者」とは、以下4つの要件に該当する人のことです。
ここから、配偶者控除や配偶者特別控除の要件について詳しく解説します。
民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者であることが、要件のひとつです。
民法第739条には、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることで効力が生じる」旨が定められています。「内縁の妻」のように事実婚の相手方である場合は民法の規定で効力が生じているとはいえないため、配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)対象の「配偶者」に該当しません。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」 参考)e-Gov 法令検索「民法第七百三十九条」
配偶者が納税者と生計を一にしていることも要件として定められています。
「生計を一にしている」とは、日常生活の財産を共有しているということです。たとえば、同居している夫婦が、水道光熱費や食費などの生活費を互いの財産から出し合って暮らしている場合は「生計を一にしている」に該当します。
「生計を一にする」を満たすにあたって、同居は必須条件ではありません。別居している場合でも、一方から他方に定期的に生活費などの仕送りがある場合は、条件を満たす場合があります。
一方、たとえ同居していても、家の中で生活空間を明確に分けてそれぞれの生活費を自分の収入からまかなっている場合は、「生計を一にする」といえない可能性があるでしょう。
配偶者の年間の合計所得金額や給与収入が上限に収まることも、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるための要件です。配偶者控除の場合は、収入が給与のみの場合は給与収入が123万円以下、給与収入以外がある場合は年間の合計所得金額が58万円以下であることが求められます。
なお、所得とは収入から必要経費を引いた額のことです。ただし、給与所得は給与収入から必要経費を引けない分、あらかじめ定められた一定額(給与所得控除)を引いて計算します。
配偶者が、青色申告者の事業専従者として対象年を通じて一度も給与を受け取っていないことや、白色申告者の事業専従者でないことも、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるための要件として定められています。
青色申告とは、一定水準の記帳に基づき正しい申告をすることでいくつかのメリットがある申告制度で、白色申告は青色申告の申請をしていない事業者が申告する制度のことです。事業専従者とは、納税者が経営する事業に従事している配偶者やそのほかの親族(いずれも生計を一にしていることが条件)を指します。
配偶者控除や配偶者特別控除は、年収123万円の壁・年収160万円など年収の壁との関係が深い制度です。年収の壁とは、年収の増加に伴い、税金や社会保険料の負担が増すボーダーラインを指します。
ここで、配偶者控除や配偶者特別控除と年収の壁の関係を押さえておきましょう。
年収123万円の壁とは、配偶者の年収が123万円を超えると納税者本人が所得税で配偶者控除を受けられなくなることを意味する言葉です。ただし、年収123万円の壁を越えても、配偶者特別控除を受けられる可能性はあります。
なお、2025年度の税制改正前までは、年収103万円の壁が存在していました。税制改正で配偶者の所得要件が引き上げられたことに伴い、年収123万円の壁に変わっています。
年収160万円の壁とは、配偶者の年収が160万円までであれば、配偶者特別控除を満額で受けられることを意味する言葉です。壁を越えるにつれて、控除額が逓減します。
従来、年収150万円の壁が存在していました。税制改正により所得控除における配偶者の所得要件が変更されたことに伴い、年収150万円の壁から160万円の壁に変わっています。
なお、年収160万円の壁は、本人の所得税が発生するボーダーラインも意味する言葉です。税制改正に伴い、年収103万円の壁から160万円の壁に変わりました。
配偶者控除や配偶者特別控除を受ける際は、以下の点に注意しましょう。
それぞれ解説します。
配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるかどうかは、原則として対象年の12月31日時点の状況で判断することが重要です。
たとえば、1年の途中で離婚した場合は、当時配偶者が所得要件などを満たしていても、配偶者控除を受けられません。なぜなら、12月31日時点で配偶者がいなければ、その年は1年を通じて配偶者がいなかったものと判断されるためです。
納税者本人の所得が配偶者控除・配偶者特別控除の額に影響する点にも注意しなければなりません。
たとえば、配偶者の合計所得が95万円以下でも納税者本人の合計所得が「950万円超1,000万円以下」であれば、配偶者特別控除の額は13万円です。一方、配偶者の合計所得が115万円超120万円以下でも、納税者本人の合計所得が「900万円以下」であれば16万円の控除額を適用できます。
子どもがいる場合は、配偶者控除・配偶者特別控除だけでなく特定親族特別控除のことも理解しておきましょう。
特定親族特別控除は、2025年度の税制改正で新たにできた所得控除です。生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族などがいる場合に、その親族の所得に応じて一定の控除を受けられる可能性があります。
ただし、共働き世帯で特定親族特別控除を受ける場合には、子どもに対して夫婦どちらか一方しか適用できない点に注意が必要です。
参考)国税庁「No.1177 特定親族特別控除」
年末調整とは源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させるための精算手続きのことです。給与の収入金額が2,000万円を超えるなど一定の場合を除き、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人は基本的に年末調整で対応できます。
配偶者控除を年末調整で受けるための手続きは、以下のとおりです。
各手順について解説します。
年末調整時期(11〜12月)が近づいたら、必要書類を用意します。書類は勤務先の所管部署から渡されることが一般的です。
年末調整書類を以下にまとめました。
書類の記載例やフォーマットは、国税庁のサイトからも確認できます。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和7年分)」
担当者から書類を受け取ったら、必要事項に記入して提出します。
配偶者控除の適用にとくに関係する書類が、「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。「給与所得者の配偶者控除等申告書」欄に、配偶者の氏名やマイナンバーなどを記載しましょう。
また、配偶者の収入金額や所得金額などの記載も必要です。本年中の合計所得見積額を算出したうえで、表から該当する配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)の額を確認して記載しましょう。
確定申告とは、1年間(毎年1月1日から12月31日まで)に生じた所得とそれに対する所得税額を計算して確定するための手続きのことです。給与収入が2,000万円以内の会社員でも、副業による一定の所得がある場合や医療費控除を受ける場合、年末調整で所得控除を適用し忘れていた場合などで、確定申告することがあります。
配偶者控除を確定申告で受けるための流れは、以下のとおりです。
各手順について、解説します。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
確定申告書類を用意し、収入や所得を記入していきましょう。配偶者控除を受ける場合は、確定申告書第一表の左側にある「所得から差し引かれる金額」にある「配偶者(特別)控除」に記入することがポイントです。
配偶者控除の場合、区分1への記載は必要ありません。また、区分2は、配偶者が国外居住親族の場合に限り、記入する部分です。さらに、「0000」の前に今回の適用額(万円)を記入します。
配偶者控除を受けるにあたって、第二表の「配偶者や親族に関する事項」にも記入が必要です。配偶者の氏名・マイナンバー・生年月日などの基本情報を記入しましょう。
また、配偶者が障害者の場合に、障害者であれば「障」、特別障害者であれば「特障」に◯をつけます。配偶者が国外に居住している場合は、「国外」「別居」にも◯をつけなければなりません。
確定申告書の記載や入力を終えたら、所轄の税務署に提出します。提出方法は、以下の3種類です。
なお、確定申告書の提出期限は対象年の翌2月16日から3月15日までです。忘れずに申告しましょう。
配偶者控除とは、控除対象配偶者の年間合計所得が58万円以下(給与収入のみなら年収123万円以下)の場合に、受けられる可能性がある所得控除のことです。2025年度の税制改正に伴い配偶者の所得要件が引き上げられているため、申請者も人事担当者も間違えないようにしましょう。
また、配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者の所得次第で配偶者特別控除を受けられることがあります。適用を漏らさないように、関連する控除制度について理解を深めておくことが大切です。
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配偶者控除とは、納税する人に所得要件などを満たした配偶者がいる場合に受けられる所得控除のことです。配偶者が要件を満たさない場合でも、配偶者特別控除の対象になる可能性はあります。本記事で、配偶者控除の適用方法や要件について確認していきましょう。
目次
配偶者控除とは
配偶者控除とは、納税者に控除対象配偶者がいる場合に受けられる所得控除を指します。
所得控除とは、所得税額を計算する際に各納税者の個人的事情を加味し、要件を満たす場合に各種所得の合計額から一定額を引ける制度です。配偶者控除を含め、合計16種類の所得控除があります。
ここから、配偶者控除を受けるための要件や控除額について確認していきましょう。
要件
納税者本人の年間合計所得が1,000万円以内で、年間合計所得が58万円以下の控除対象配偶者がいることが配偶者控除を受けるための要件として設けられています。合計所得とは、以下の合計額に退職所得と山林所得を足した額のことです。
たとえば、年間合計所得が700万円で配偶者の年間合計所得が50万円であれば、配偶者控除を受けられる可能性があります。
控除額
配偶者控除の控除額は、納税者本人の合計所得金額や控除対象配偶者の分類によって異なります。それぞれの控除額を以下の表にまとめました。
合計所得金額
(一般の控除対象配偶者)
(老人控除対象配偶者)
たとえば、納税者本人の年間合計所得が700万円で、年間合計所得が50万円の「一般の控除対象配偶者」がいる場合の控除額は、「38万円」です。
なお、老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人を指します。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
配偶者特別控除とは
配偶者特別控除とは、配偶者の合計年間所得が58万円を超えていて配偶者控除の対象外であっても、配偶者の所得次第で受けられる可能性のある所得控除のことです。ここから、配偶者特別控除の要件や控除額を解説します。
要件
納税者本人の年間合計所得が1,000万円以内で、年間合計所得が58万円超133万円以下の控除対象配偶者がいることが配偶者特別控除を受けるための主な要件です。たとえば、年間合計所得が700万円で配偶者の年間合計所得が70万円であれば、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
ただし、配偶者特別控除の対象であっても、配偶者の年間合計所得によって控除額が異なることがあるため、注意が必要です。
控除額
配偶者特別控除の控除額は、納税者本人の年間合計所得と配偶者の年間合計所得によって決まります。納税者本人の合計所得が「900万円以下」「900万円超950万円以下」「950万円超1,000万円以下」の場合の控除額は、それぞれ以下のとおりです。
【納税者本人の合計所得900万円以下】
【納税者本人の合計所得900万円超950万円以下】
【納税者本人の合計所得950万円超1,000万円以下】
たとえば、納税者本人の年間合計所得が750万円で配偶者の年間合計所得が60万円の場合は、38万円の配偶者特別控除を受けられる可能性があります。一方、納税者本人の年間合計所得が990万円で配偶者の年間合計所得が131万円の場合は、1万円の配偶者特別控除しか受けられません。
参考)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
2025年度の税制改正による配偶者控除・配偶者特別控除への影響
2025年12月1日に施行された税制改正により、合計所得に応じて基礎控除額が改正されて、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。一方で、配偶者控除や配偶者特別控除の控除額には変更がありません。
ただし、「配偶者」の所得要件に変更がある点に注意が必要です。税制改正後、配偶者控除における配偶者の所得要件は「48万円以下」から「58万円以下」、配偶者特別控除における配偶者の所得要件は「48万円超133万円以下」から「58万円超133万円以下」に変更されています。
自身が控除を受ける際や、年末調整で従業員の申請を確認する際は、間違えないよう注意しましょう。
参考)国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
配偶者控除と配偶者特別控除の違い・共通点
配偶者控除と同様に、納税者の配偶者に関する所得控除(人的控除)として、配偶者特別控除があります。配偶者特別控除とは、配偶者が所得条件を満たさず、配偶者控除を受けられない場合に適用できる可能性がある所得控除のことです。
配偶者控除との主な違いとして、以下の点が挙げられます。
一方で、納税者本人の合計所得は同じです。それぞれ確認していきましょう。
違い1:対象となる配偶者の所得
対象となる配偶者の所得要件が、ひとつ目の違いとして挙げられます。配偶者控除で配偶者の合計年間所得が「年間合計所得金額が58万円以下」であることを条件として定めているのに対し、配偶者特別控除では「58万円超133万円以下」が条件です。
関連して、配偶者特別控除には源泉徴収の有無に関する要件が設けられている点も、配偶者控除との違いとして挙げられます。
違い2:控除額
適用できる控除額も、ふたつの所得控除の違いです。
配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額(3段階)や、一般の控除対象配偶者か老人控除対象配偶者かによって、控除額が13万〜48万円で設定されています。一方、配偶者特別控除では、配偶者の合計所得金額を9段階、納税者本人の合計所得金額を3段階に分け、1万〜38万円の控除額が設定されている点が特徴です。
共通点:納税者本人の合計所得[
配偶者控除と配偶者特別控除では、いずれも納税者本人の合計所得が1,000万円以下であることが利用条件とされています。そのため、たとえば年間の合計所得が1,005万円の場合は、配偶者の収入状況にかかわらず、どちらの控除も適用されません。
また、納税者本人の合計所得が「900万円以下」「900万円超950万円以下」「950万円超1,000万円以下」のいずれに該当するかによって控除額が調整される点も、両制度で共通しています。
配偶者控除・配偶者特別控除対象の「配偶者」とは
配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)対象の「配偶者」とは、以下4つの要件に該当する人のことです。
ここから、配偶者控除や配偶者特別控除の要件について詳しく解説します。
民法の規定による「配偶者」である
民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者であることが、要件のひとつです。
民法第739条には、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることで効力が生じる」旨が定められています。「内縁の妻」のように事実婚の相手方である場合は民法の規定で効力が生じているとはいえないため、配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)対象の「配偶者」に該当しません。
参考)国税庁「No.1191 配偶者控除」
参考)e-Gov 法令検索「民法第七百三十九条」
納税者と生計を一にしている
配偶者が納税者と生計を一にしていることも要件として定められています。
「生計を一にしている」とは、日常生活の財産を共有しているということです。たとえば、同居している夫婦が、水道光熱費や食費などの生活費を互いの財産から出し合って暮らしている場合は「生計を一にしている」に該当します。
「生計を一にする」を満たすにあたって、同居は必須条件ではありません。別居している場合でも、一方から他方に定期的に生活費などの仕送りがある場合は、条件を満たす場合があります。
一方、たとえ同居していても、家の中で生活空間を明確に分けてそれぞれの生活費を自分の収入からまかなっている場合は、「生計を一にする」といえない可能性があるでしょう。
年間の合計所得金額や給与収入が上限に収まる
配偶者の年間の合計所得金額や給与収入が上限に収まることも、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるための要件です。配偶者控除の場合は、収入が給与のみの場合は給与収入が123万円以下、給与収入以外がある場合は年間の合計所得金額が58万円以下であることが求められます。
なお、所得とは収入から必要経費を引いた額のことです。ただし、給与所得は給与収入から必要経費を引けない分、あらかじめ定められた一定額(給与所得控除)を引いて計算します。
青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていない
配偶者が、青色申告者の事業専従者として対象年を通じて一度も給与を受け取っていないことや、白色申告者の事業専従者でないことも、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるための要件として定められています。
青色申告とは、一定水準の記帳に基づき正しい申告をすることでいくつかのメリットがある申告制度で、白色申告は青色申告の申請をしていない事業者が申告する制度のことです。事業専従者とは、納税者が経営する事業に従事している配偶者やそのほかの親族(いずれも生計を一にしていることが条件)を指します。
配偶者控除・配偶者特別控除と年収の壁の関係
配偶者控除や配偶者特別控除は、年収123万円の壁・年収160万円など年収の壁との関係が深い制度です。年収の壁とは、年収の増加に伴い、税金や社会保険料の負担が増すボーダーラインを指します。
ここで、配偶者控除や配偶者特別控除と年収の壁の関係を押さえておきましょう。
配偶者控除と年収123万円の壁の関係
年収123万円の壁とは、配偶者の年収が123万円を超えると納税者本人が所得税で配偶者控除を受けられなくなることを意味する言葉です。ただし、年収123万円の壁を越えても、配偶者特別控除を受けられる可能性はあります。
なお、2025年度の税制改正前までは、年収103万円の壁が存在していました。税制改正で配偶者の所得要件が引き上げられたことに伴い、年収123万円の壁に変わっています。
配偶者特別控除と年収160万円の壁の関係
年収160万円の壁とは、配偶者の年収が160万円までであれば、配偶者特別控除を満額で受けられることを意味する言葉です。壁を越えるにつれて、控除額が逓減します。
従来、年収150万円の壁が存在していました。税制改正により所得控除における配偶者の所得要件が変更されたことに伴い、年収150万円の壁から160万円の壁に変わっています。
なお、年収160万円の壁は、本人の所得税が発生するボーダーラインも意味する言葉です。税制改正に伴い、年収103万円の壁から160万円の壁に変わりました。
配偶者控除・配偶者特別控除を受ける際の注意点
配偶者控除や配偶者特別控除を受ける際は、以下の点に注意しましょう。
それぞれ解説します。
対象年の12月31日時点の状況で判断する
配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるかどうかは、原則として対象年の12月31日時点の状況で判断することが重要です。
たとえば、1年の途中で離婚した場合は、当時配偶者が所得要件などを満たしていても、配偶者控除を受けられません。なぜなら、12月31日時点で配偶者がいなければ、その年は1年を通じて配偶者がいなかったものと判断されるためです。
納税者本人・配偶者それぞれの合計所得を確認する
納税者本人の所得が配偶者控除・配偶者特別控除の額に影響する点にも注意しなければなりません。
たとえば、配偶者の合計所得が95万円以下でも納税者本人の合計所得が「950万円超1,000万円以下」であれば、配偶者特別控除の額は13万円です。一方、配偶者の合計所得が115万円超120万円以下でも、納税者本人の合計所得が「900万円以下」であれば16万円の控除額を適用できます。
特定親族特別控除のことも理解しておく
子どもがいる場合は、配偶者控除・配偶者特別控除だけでなく特定親族特別控除のことも理解しておきましょう。
特定親族特別控除は、2025年度の税制改正で新たにできた所得控除です。生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族などがいる場合に、その親族の所得に応じて一定の控除を受けられる可能性があります。
ただし、共働き世帯で特定親族特別控除を受ける場合には、子どもに対して夫婦どちらか一方しか適用できない点に注意が必要です。
参考)国税庁「No.1177 特定親族特別控除」
配偶者控除を年末調整で適用する方法
年末調整とは源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させるための精算手続きのことです。給与の収入金額が2,000万円を超えるなど一定の場合を除き、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人は基本的に年末調整で対応できます。
配偶者控除を年末調整で受けるための手続きは、以下のとおりです。
各手順について解説します。
1. 必要書類を準備する
年末調整時期(11〜12月)が近づいたら、必要書類を用意します。書類は勤務先の所管部署から渡されることが一般的です。
年末調整書類を以下にまとめました。
書類の記載例やフォーマットは、国税庁のサイトからも確認できます。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和7年分)」
2. 勤務先に書類を提出する
担当者から書類を受け取ったら、必要事項に記入して提出します。
配偶者控除の適用にとくに関係する書類が、「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。「給与所得者の配偶者控除等申告書」欄に、配偶者の氏名やマイナンバーなどを記載しましょう。
また、配偶者の収入金額や所得金額などの記載も必要です。本年中の合計所得見積額を算出したうえで、表から該当する配偶者控除(もしくは配偶者特別控除)の額を確認して記載しましょう。
配偶者控除を確定申告で適用する方法
確定申告とは、1年間(毎年1月1日から12月31日まで)に生じた所得とそれに対する所得税額を計算して確定するための手続きのことです。給与収入が2,000万円以内の会社員でも、副業による一定の所得がある場合や医療費控除を受ける場合、年末調整で所得控除を適用し忘れていた場合などで、確定申告することがあります。
配偶者控除を確定申告で受けるための流れは、以下のとおりです。
各手順について、解説します。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
1. 確定申告書に金額を記載する
確定申告書類を用意し、収入や所得を記入していきましょう。配偶者控除を受ける場合は、確定申告書第一表の左側にある「所得から差し引かれる金額」にある「配偶者(特別)控除」に記入することがポイントです。
配偶者控除の場合、区分1への記載は必要ありません。また、区分2は、配偶者が国外居住親族の場合に限り、記入する部分です。さらに、「0000」の前に今回の適用額(万円)を記入します。
2. 配偶者や親族に関する事項に記載する
配偶者控除を受けるにあたって、第二表の「配偶者や親族に関する事項」にも記入が必要です。配偶者の氏名・マイナンバー・生年月日などの基本情報を記入しましょう。
また、配偶者が障害者の場合に、障害者であれば「障」、特別障害者であれば「特障」に◯をつけます。配偶者が国外に居住している場合は、「国外」「別居」にも◯をつけなければなりません。
3. 確定申告書を提出する
確定申告書の記載や入力を終えたら、所轄の税務署に提出します。提出方法は、以下の3種類です。
なお、確定申告書の提出期限は対象年の翌2月16日から3月15日までです。忘れずに申告しましょう。
配偶者控除まとめ
配偶者控除とは、控除対象配偶者の年間合計所得が58万円以下(給与収入のみなら年収123万円以下)の場合に、受けられる可能性がある所得控除のことです。2025年度の税制改正に伴い配偶者の所得要件が引き上げられているため、申請者も人事担当者も間違えないようにしましょう。
また、配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者の所得次第で配偶者特別控除を受けられることがあります。適用を漏らさないように、関連する控除制度について理解を深めておくことが大切です。