離職票とは何か~種類、記載項目、交付手順、離職証明書との違い~

離職票と離職証明書

離職票は、退職者が失業手当や求職申込を申請する際に必要な書類です。離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、離職を公的に証明する書類を指します。退職者が離職票を受け取るためには、退職前に事業主がハローワークへ手続きをしなければなりません。本記事では、離職票を交付するまでの手順や離職証明書との違いなどを解説します。また、退職者と事業主との間で起こりうるトラブルも紹介します。※2022年11月30日に更新

離職票を交付する手順

離職票の交付は、退職者が勤めていた会社を介して手続きします。そのため、退職者がハローワークに発行依頼することはありません。離職票はハローワークから会社に交付され、その後に会社から退職者の自宅に郵送されます。郵送されるまでの期間は、退職日から10日前後です。2週間を過ぎても、離職票が届かない場合、退職者は会社に対して請求できます。退職後に求職申込や失業手当受給の申請をする場合、退職者が必要項目を離職票に記入し、ハローワークへ直接提出します。

退職希望者が離職票を手にするまでの手順は、以下の通りです。

  1. 退職者が雇用保険に加入しているかを確認
  2. 退職者が事業主に離職票の発行を依頼
  3. 事業主が退職者に対し、離職証明書を発行
  4. ハローワークが離職票を交付
  5. 事業主が退職者に離職票を送付

離職票の交付手順については、以下で詳しく解説します。

①退職者が雇用保険に加入しているかを確認

離職票を発行するためには、退職希望者が会社の雇用保険に加入していなければなりません。退職希望者が雇用保険に加入しているかどうかは、「雇用保険被保険者証」または「資格取得確認等通知書」の有無で確認できます。雇用契約によっては、労働者が雇用保険に加入していない可能性があるため、必ず確かめておきましょう。

会社は以下の条件を満たしている従業員に対し、原則的に雇用保険へ加入させる義務があります。

1週間あたり20時間以上勤務しており、31日以上継続して勤務する見込みがある

そのため、基本的にフルタイム契約の従業員は雇用保険に加入しているでしょう。

②退職者が事業主に離職票の発行を依頼

退職希望者と事業主との間で退職日が決まれば、退職者は離職票の発行を依頼します。退職前に離職票の発行を依頼する方法は、事業主によって異なります。書面で依頼する場合もあれば、口頭で依頼する場合もあります。また、離職後のトラブルを避けるため、退職者からの依頼がなくても離職票を用意する会社もあります。

③事業主が退職者に対し、離職証明書を発行

事業主は、従業員が退職後の翌日から10日以内にハローワークへ「離職証明書」と「雇用保険の資格喪失届」を提出します。離職証明書とは、退職者に支払っていた給与・離職日・離職理由を記入した書類です。離職証明書は退職者本人が記載内容を確認し、署名する箇所があります。しかし、退職後である場合は、内容確認などの手順を省いて手続きできます。

④ハローワークが離職票を交付

ハローワークは、会社が届けた離職証明書と雇用保険の資格喪失届を確認し、離職票を交付します。発行される離職票は、雇用保険被保険者離職票-1・雇用保険被保険者離職票-2の2種類です。交付された離職票は事業者宛に発行され、その後退職者の自宅へ郵送されます。

⑤事業主が退職者に離職票を送付

ハローワークが退職後の会社に対して離職票を交付した後、会社が退職者に離職票を送付します。一般的に退職日から10日前後で、退職者に郵送されます。離職票の発行に2週間以上かかっている場合は、退職者が再度会社に書類の申請をしなければなりません。離職票が発行された退職者は、ハローワークで失業手当の申請や求職申込の手続きをします。

離職票が必要なケース

退職者が離職票を必要とするケースは、主に2つあります。

1つ目は、退職者が失業手当の受給または求職申込を希望するケースです。ハローワークでこれらの手続きをする際、離職票の提出が求められます。さらに、提出された離職票の情報を判断基準にし、失業手当の給付金額や期間が設定されます。

2つ目は、退職者が59歳以上であるケースです。60歳以降に支給される可能性のある「高年齢雇用継続給付」の金額を決定するために必要な要素のため、提出が必要です。

離職票の種類と記載項目

離職票は「離職票1」と「離職票2」の2部に分かれています。それぞれ異なる内容が記載されており、退職者が記入する項目も異なります。ここでは、それぞれの記載事項と記入部分を解説します。

参考:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き

離職票1の記載事項

離職票1は、退職者が雇用保険の資格を喪失したことを通知する書類です。そのため、退職した会社で使用されていた雇用保険の被保険者番号・離職日・離職者氏名などが記載されています。また、離職票1は退職者がハローワークに対して、失業手当の振込先を指定する届出としても使用されます。

退職者による記入や確認が必要な箇所は以下の通りです。

  • 個人番号
  • 求職者給付等払渡希望金融機関指定届

さらに、個人番号については個人情報の漏洩を防ぐために、退職者がハローワークの窓口で記載する必要があります。※出典:ハローワーク「雇用保険被保険者離職票1

離職票2の記載事項

離職票2には、離職直前の6か月間の給与詳細と離職理由が記載されています。退職した会社側を介してハローワークに提出されているため、ハローワークが内容を確認し、押印しています。

退職者による記入や確認が必要な箇所は以下の通りです。

離職理由 選択肢のなかから離職理由に該当する項目を1つ選び、◯をつける。
具体的事情記載欄(事業主用) 離職理由を確認し、内容に相違がなければ、「同上」と記入する。
離職者本人の判断 事業主が事前に記載している離職理由に対して誤りがないかを確認し、「有り」か「無し」に◯をつける。
署名 すべての内容を確認したあと、退職者本人が署名する。

退職者は、支払われていた給与や、退職理由に対する認識の相違の有無を必ず確認します。そのため、会社側は離職前に退職者と離職理由について、よく話し合っておく必要があります。出典:ハローワーク「雇用保険被保険者離職票2」(書き方の参考にもなります)

離職証明書の必要な記載項目

離職証明書は、事業主が記載して提出する必要がある書類です。退職希望者は、事業主が記載した内容について相違がないかどうかを確認します。

記載項目は以下の通りです。

  • 退職者の被保険者番号
  • 離職者の氏名
  • 離職日
  • 事業所情報
  • 離職者の住所
  • 離職理由
  • 被保険者期間算定の対象期間
  • 対象期間における賃金支払基礎日数
  • 賃金支払いの対象期間
  • 賃金額

退職者の情報を詳しく記載する必要があるため、事業主は退職希望者の情報を整理する必要があります。

参考:雇用保険被保険者離職証明書についての注意

退職者と事業主の間で発生しがちなトラブル

退職者と事業主の間で起こりやすいトラブルについて、さまざまな例を挙げて解説します。事前に内容を知ることで、トラブルを回避しましょう。

離職票の未発行

もっとも多いトラブルとして、離職票が発行されないことが挙げられます。離職票が未発行となる理由は、以下の通りです。

  • 会社の対応が間に合っていない
  • ハローワークの発行が遅い
  • 会社が発行しなければいけないことを認識していない

退職後2週間以上経っても離職票が届かなければ、退職者から催促の連絡が入ることがあります。退職者から離職票の発行を依頼されると、事業主には発行する義務が生じます。

離職理由に対する認識のズレ

離職理由は、退職者が失業手当を受給する際に、金額や期間を左右する重要な項目です。基本的には離職証明書に企業が記載した後、退職者本人が内容を確認する必要があります。しかし、本人の確認を省いて離職票を発行できるため、トラブルが起こってしまうことがあります。たとえば、解雇ひとつとっても、本人に責任がある重大な理由での解雇(重責解雇)なのか、そうではない解雇なのか、という違いがあります。また、労働者の自己都合退職だったにも関わらず、また、「一身上の都合」が離職理由である場合、離職票に記載されている項目に近いものへと分類されます。その分類により受給資格区分が変わる可能性があるため、退職前に退職者と事業主の間に見解の相違がないようにしておきましょう。さらに、退職後に相違点が発見された場合は、ハローワークで協議し、事業主に調査が入る可能性もあります。

退職者によるSNS等でのネガティブな情報発信

近年、退職後にインターネットや口コミで、退職者が事業主へのネガティブな情報発信をするというトラブルが発生するケースがあります。そのようなトラブルを起こさないためには、退職を希望する理由・時期・離職票発行の希望などをヒアリングしておくことが必要です。万が一、言われのないネガティブな情報発信を繰り返す被害を受けた場合は、弁護士や公的機関に相談し、解決しましょう。

離職票と離職証明書まとめ

離職票は退職希望者が辞職前に会社へ要望し、ハローワークから会社に発行される書類です。退職希望者が現れた際は、退職前に離職票が必要であるかを確認しておきましょう。また、退職者と事業主との間で起こりやすいトラブルを知っておくことで、トラブルの回避が可能です。正しい離職票と離職証明書の発行方法をぜひ参考にし、退職希望者にはこれまでの労をねぎらい、離職後も真摯に向き合うようにしましょう。

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