離職票とは、退職者が失業手当を受け取るために必要な書類です。離職票交付にあたって、会社は離職証明書を作成しなければなりません。
本記事では、離職票の書き方や離職証明書発行時の注意点について詳しく解説します。※2024年2月27日に更新
目次
離職票とは、退職者が各種手続きに必要な公的証明書類を指します。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」です。
ここから、退職者が離職票を必要とする理由や、離職票と離職証明書の違いについて解説します。
退職者が離職票を必要とする主な理由は、失業手当(基本手当)を受け取るためです。失業手当とは、雇用保険の被保険者が定年・契約期間の満了などで離職した際、失業期間中の生活を心配せず新たな仕事を探せるように支給する手当を指します。
そのため、病気・怪我や出産などの理由ですぐに就職できない場合は、失業手当支給の対象外です。
参考:ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」
失業手当申請にあたって、離職証明書も用意しなければなりません。離職証明書は勤務先が発行してハローワークに提出する書類であるのに対し、離職票は離職証明書を受け取ったハローワークが発行する書類である点が主な違いです。
なお、離職票は離職票1と離職票2の2部に分かれています。離職証明書は、離職票2にあたる書類です(正式名称:雇用保険被保険者離職証明書)。
離職票の交付は、退職者が勤めていた会社を介して手続きします。そのため、退職者がハローワークに発行依頼することはありません。離職票はハローワークから会社に交付され、その後に会社から退職者の自宅に郵送されます。郵送されるまでの期間は、退職日から10日前後です。2週間を過ぎても、離職票が届かない場合、退職者は会社に対して請求できます。退職後に求職申込や失業手当受給の申請をする場合、退職者が必要項目を離職票に記入し、ハローワークへ直接提出します。
退職希望者が離職票を手にするまでの手順は、以下の通りです。
離職票の交付手順については、以下で詳しく解説します。
離職票を発行するためには、退職希望者が会社の雇用保険に加入していなければなりません。退職希望者が雇用保険に加入しているかどうかは、「雇用保険被保険者証」または「資格取得確認等通知書」の有無で確認できます。雇用契約によっては、労働者が雇用保険に加入していない可能性があるため、必ず確かめておきましょう。
会社は以下の条件を満たしている従業員に対し、原則的に雇用保険へ加入させる義務があります。
1週間あたり20時間以上勤務しており、31日以上継続して勤務する見込みがある
そのため、基本的にフルタイム契約の従業員は雇用保険に加入しているでしょう。
退職希望者と事業主との間で退職日が決まれば、退職者は離職票の発行を依頼します。退職前に離職票の発行を依頼する方法は、事業主によって異なります。書面で依頼する場合もあれば、口頭で依頼する場合もあります。また、離職後のトラブルを避けるため、退職者からの依頼がなくても離職票を用意する会社もあります。
事業主は、従業員が退職後の翌日から10日以内にハローワークへ「離職証明書」と「雇用保険の資格喪失届」を提出します。離職証明書とは、退職者に支払っていた給与・離職日・離職理由を記入した書類です。離職証明書は退職者本人が記載内容を確認し、署名する箇所があります。しかし、退職後である場合は、内容確認などの手順を省いて手続きできます。
ハローワークは、会社が届けた離職証明書と雇用保険の資格喪失届を確認し、離職票を交付します。発行される離職票は、雇用保険被保険者離職票1・雇用保険被保険者離職票2の2種類です。交付された離職票は事業者宛に発行され、その後退職者の自宅へ郵送されます。
ハローワークが退職後の会社に対して離職票を交付した後、会社が退職者に離職票を送付します。一般的に退職日から10日前後で、退職者に郵送されます。離職票の発行に2週間以上かかっている場合は、退職者が再度会社に書類の申請をしなければなりません。離職票が発行された退職者は、ハローワークで失業手当の申請や求職申込の手続きをします。
離職票(離職証明書)が必要とされるケースは、主に以下の通りです。
それぞれのケースについて、解説します。
退職者が失業手当の受給や求職手続きをする場合、離職票が必要です。
雇用保険法施行規則第7条第1項第1号には、従業員が雇用保険の資格を喪失してから10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届に「離職証明書」を添えて公共職業安定所(ハローワーク)に提出しなければならないことが明記されています。
ただし、本人が交付を希望しない場合は、離職証明書を添えないことが可能です。退職者が発行を希望する場合に限り、会社は離職証明書を発行しなければならないと理解しておきましょう。
59歳以上の従業員が退職する場合も、離職票が必要です。60歳から64歳までの人が高年齢雇用継続給付の手続きをするときに提出を求められることが、必要とされる主な理由として挙げられます。
雇用保険法施行規則第7条第3項ただし書きで明記されているため、会社は59歳以上の退職者が希望しない場合でも、退職証明書を発行しなければなりません。
参考:厚生労働省「雇用保険法施行規則」
一般的に、以下のケースに該当する場合、退職者は離職票を必要としません。
そのため、退職者に特段の事情があって必要になる場合を除き、基本的に上記のケースで会社は離職証明書の発行が不要です。
離職票は「離職票1」と「離職票2」の2部に分かれています。それぞれ異なる内容が記載されており、退職者が記入する項目も異なります。ここでは、それぞれの記載事項と記入部分を解説します。
参考:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」
雇用保険被保険者「離職票1」とは、被保険者番号・離職日・氏名など、退職者の情報が記載された書類です。離職票1は、「雇用保険資格喪失確認通知書」も兼ねています。
退職者が離職票1に記載するのは、以下の項目です。
それぞれ簡単に解説します。
「6.個人番号」の欄に、退職者のマイナンバーを記入します。ただし、あらかじめ記入せず、雇用保険や求職申込手続きでハローワークを訪れた際に、本人が窓口で記入しなければなりません。
手続き時に持参する、マイナンバーカード・通知カード・個人番号の記載のある住民票のいずれかを見れば、マイナンバーがわかります。
離職票1下部の「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」には、給付金の振込を希望する銀行口座の情報を記載します。
この欄は事前に記入可能ですが、自信がない場合はハローワークで記入しましょう。手続き時に、本人名義の預金通帳やキャッシュカードの持参が必要です。
離職票1の具体的な書き方については、以下ハローワークの記入例も参考にしてください。
参考:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-1」
雇用保険被保険者「離職票2」とは、退職者の退職理由や直近6か月の給与などを記載した書類です。会社が作成する離職証明書(3枚複写)の3枚目が、離職票2に該当します。
離職票2の左側は会社が記入するため、退職者は右側にある以下の項目の記入が必要です。
「離職理由」の選択肢の中から、該当する理由をひとつ選択し、「離職者記入欄」の四角の中に丸印を記入します。選択肢は、「事業所の倒産等によるもの」「定年によるもの」「労働契約期間満了等によるもの」「事業主からの働きかけによるもの」「労働者の判断によるもの」などさまざまです。
「離職者記入欄」の左に「事業主記入欄」があるため、会社側の考えと同じか確認しておきましょう。
離職理由の選択肢の下に、具体的事情記載欄があります。会社側で記入した「具体的事情記載欄(事業主用)」を確認したうえで、異議がない場合は「具体的事情記載欄(離職者用)」に「同上」と記載しましょう。
なお、退職理由によって失業手当の給付日数が変わるため、必ず事実を記入しましょう。
「16離職者本人の判断」では、「有り」「無し」のいずれかを丸で囲みます。会社側が丸をつけた離職理由に異議がなければ、「無し」を丸で囲みましょう。
なお、万が一離職理由に異議がある場合は、提出するハローワークに対応方法を相談してください。その場合は、ハローワークが事実関係を調査して離職理由を判定します。
すべての内容を確認したうえで、問題がなければ「17 7欄の自ら記載した事項に間違いがないことを認めます。」の下に退職者本人が署名します。
離職票2の具体的な書き方については、以下ハローワークの記入例も参考にしてください。
参考:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-2」
会社は離職証明書を作成する際、離職者氏名をはじめ以下の項目の記載が必要です。
「【退職者向け】離職票2(離職証明書)の記載事項・書き方」で説明したように、万が一退職者が会社の記載した内容に異議がある場合、ハローワークが調査します。手続きが滞らないように、あらかじめ退職者と理由についてよく話し合っておきましょう。
退職者と事業主の間で起こりやすいトラブルについて、さまざまな例を挙げて解説します。事前に内容を知ることで、トラブルを回避しましょう。
もっとも多いトラブルとして、離職票が発行されないことが挙げられます。離職票が未発行となる理由は、以下の通りです。
退職後2週間以上経っても離職票が届かなければ、退職者から催促の連絡が入ることがあります。退職者から離職票の発行を依頼されると、事業主には発行する義務が生じます。
離職理由は、退職者が失業手当を受給する際に、金額や期間を左右する重要な項目です。基本的には離職証明書に企業が記載した後、退職者本人が内容を確認する必要があります。
しかし、本人の確認を省いて離職票を発行できるため、トラブルが起こってしまうことがあります。たとえば、解雇ひとつとっても、本人に責任がある重大な理由での解雇(重責解雇)なのか、そうではない解雇なのか、という違いがあります。
また、労働者の自己都合退職だったにもかかわらず、また、「一身上の都合」が離職理由である場合、離職票に記載されている項目に近いものへと分類されます。
近年、退職後にインターネットや口コミで、退職者が事業主へのネガティブな情報発信をするというトラブルが発生するケースがあります。そのようなトラブルを起こさないためには、退職を希望する理由・時期・離職票発行の希望などをヒアリングしておくことが必要です。
万が一、いわれのないネガティブな情報発信を繰り返す被害を受けた場合は、弁護士や公的機関に相談し、解決しましょう。
退職者に退職理由を確認することを怠らないようにしましょう。万が一、会社と退職者で認識が異なる場合、「雇用保険被保険者離職票記載内容補正願」を提出して修正しなければならない可能性があります。
また、極力早めに離職証明書を発行しましょう。発行が滞ると、離職者が失業手当を受け取るタイミングが遅れかねません。
なお、会社側が正当理由なしに証明書の発行を拒むと、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(雇用保険法第83条)。
参考:e-Gov「雇用保険法第八十三条」
退職者が万が一離職票を紛失した場合は、ハローワーク窓口に「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」(公式ホームページでダウンロード可能)を提出すれば、再発行手続きが可能です。申請は、退職者本人・会社どちらもできます。
また、インターネット申請(e-Gov)での申請も可能です。具体的な申請方法については、以下を確認してください。
参考:ハローワークインターネットサービス「申請等をご利用の方へ」 参考:ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」
以下の書類は、離職票や離職証明書と混同されやすいです。
それぞれの概要を紹介します。
雇用保険被保険者資格喪失届は、会社が退職者を雇用保険から外す(退職したことを届け出る)ために、所轄のハローワークに届ける書類です。離職だけでなく、従業員が役員に昇格するケース、従業員が死亡したケースなどでも提出します。
なお、要件を満たす会社は、2020年4月より雇用保険被保険者資格喪失届の提出を電子申請で対応しなければなりません。
参考:厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。」
退職証明書とは、退職者が転職先から求められた際に退職したことの証明として提出したり、離職票の代わりに使用したりする書類です。離職票・離職証明書が公的証明であるのに対し、退職証明書は私的文書である点が異なります。
労働基準法第22条により、会社は退職者から退職証明書を請求された場合、遅滞なく交付しなければなりません。ただし、退職者が2年間行使しない場合は、時効となります(労働基準法第115条)。
参考:e-Gov「労働基準法第二十二条」 参考:e-Gov「労働基準法第百十五条」
離職票は退職希望者が退職前に会社へ要望し、ハローワークから会社に発行される書類です。退職希望者が現れた際は、退職前に離職票が必要であるかを確認しておきましょう。また、退職者と事業主との間で起こりやすいトラブルを知っておくことで、トラブルの回避が可能です。正しい離職票と離職証明書の発行方法をぜひ参考にし、退職希望者にはこれまでの労をねぎらい、離職後も真摯に向き合うようにしましょう。
この記事は、給与計算ソフト「フリーウェイ給与計算」の株式会社フリーウェイジャパンが提供しています。フリーウェイ給与計算は、従業員5人まで永久無料のクラウド給与計算で、WindowsでもMacでも利用できます。
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離職票とは、退職者が失業手当を受け取るために必要な書類です。離職票交付にあたって、会社は離職証明書を作成しなければなりません。
本記事では、離職票の書き方や離職証明書発行時の注意点について詳しく解説します。※2024年2月27日に更新
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離職票とは
離職票とは、退職者が各種手続きに必要な公的証明書類を指します。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」です。
ここから、退職者が離職票を必要とする理由や、離職票と離職証明書の違いについて解説します。
退職者が離職票を必要とする理由
退職者が離職票を必要とする主な理由は、失業手当(基本手当)を受け取るためです。失業手当とは、雇用保険の被保険者が定年・契約期間の満了などで離職した際、失業期間中の生活を心配せず新たな仕事を探せるように支給する手当を指します。
そのため、病気・怪我や出産などの理由ですぐに就職できない場合は、失業手当支給の対象外です。
参考:ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」
離職票と離職証明書の違い
失業手当申請にあたって、離職証明書も用意しなければなりません。離職証明書は勤務先が発行してハローワークに提出する書類であるのに対し、離職票は離職証明書を受け取ったハローワークが発行する書類である点が主な違いです。
なお、離職票は離職票1と離職票2の2部に分かれています。離職証明書は、離職票2にあたる書類です(正式名称:雇用保険被保険者離職証明書)。
離職票の発行(交付)手順・流れ
離職票の交付は、退職者が勤めていた会社を介して手続きします。そのため、退職者がハローワークに発行依頼することはありません。離職票はハローワークから会社に交付され、その後に会社から退職者の自宅に郵送されます。郵送されるまでの期間は、退職日から10日前後です。2週間を過ぎても、離職票が届かない場合、退職者は会社に対して請求できます。退職後に求職申込や失業手当受給の申請をする場合、退職者が必要項目を離職票に記入し、ハローワークへ直接提出します。
退職希望者が離職票を手にするまでの手順は、以下の通りです。
離職票の交付手順については、以下で詳しく解説します。
①退職者が雇用保険に加入しているかを確認
離職票を発行するためには、退職希望者が会社の雇用保険に加入していなければなりません。退職希望者が雇用保険に加入しているかどうかは、「雇用保険被保険者証」または「資格取得確認等通知書」の有無で確認できます。雇用契約によっては、労働者が雇用保険に加入していない可能性があるため、必ず確かめておきましょう。
会社は以下の条件を満たしている従業員に対し、原則的に雇用保険へ加入させる義務があります。
1週間あたり20時間以上勤務しており、31日以上継続して勤務する見込みがある
そのため、基本的にフルタイム契約の従業員は雇用保険に加入しているでしょう。
②退職者が事業主に離職票の発行を依頼
退職希望者と事業主との間で退職日が決まれば、退職者は離職票の発行を依頼します。退職前に離職票の発行を依頼する方法は、事業主によって異なります。書面で依頼する場合もあれば、口頭で依頼する場合もあります。また、離職後のトラブルを避けるため、退職者からの依頼がなくても離職票を用意する会社もあります。
③事業主が退職者に対し、離職証明書を発行
事業主は、従業員が退職後の翌日から10日以内にハローワークへ「離職証明書」と「雇用保険の資格喪失届」を提出します。離職証明書とは、退職者に支払っていた給与・離職日・離職理由を記入した書類です。離職証明書は退職者本人が記載内容を確認し、署名する箇所があります。しかし、退職後である場合は、内容確認などの手順を省いて手続きできます。
④ハローワークが離職票を交付
ハローワークは、会社が届けた離職証明書と雇用保険の資格喪失届を確認し、離職票を交付します。発行される離職票は、雇用保険被保険者離職票1・雇用保険被保険者離職票2の2種類です。交付された離職票は事業者宛に発行され、その後退職者の自宅へ郵送されます。
⑤事業主が退職者に離職票を送付
ハローワークが退職後の会社に対して離職票を交付した後、会社が退職者に離職票を送付します。一般的に退職日から10日前後で、退職者に郵送されます。離職票の発行に2週間以上かかっている場合は、退職者が再度会社に書類の申請をしなければなりません。離職票が発行された退職者は、ハローワークで失業手当の申請や求職申込の手続きをします。
離職票(離職証明書)が必要なケース
離職票(離職証明書)が必要とされるケースは、主に以下の通りです。
それぞれのケースについて、解説します。
退職者が失業手当の受給や求職の手続きをする場合
退職者が失業手当の受給や求職手続きをする場合、離職票が必要です。
雇用保険法施行規則第7条第1項第1号には、従業員が雇用保険の資格を喪失してから10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届に「離職証明書」を添えて公共職業安定所(ハローワーク)に提出しなければならないことが明記されています。
ただし、本人が交付を希望しない場合は、離職証明書を添えないことが可能です。退職者が発行を希望する場合に限り、会社は離職証明書を発行しなければならないと理解しておきましょう。
従業員(59歳以上)が退職する場合
59歳以上の従業員が退職する場合も、離職票が必要です。60歳から64歳までの人が高年齢雇用継続給付の手続きをするときに提出を求められることが、必要とされる主な理由として挙げられます。
雇用保険法施行規則第7条第3項ただし書きで明記されているため、会社は59歳以上の退職者が希望しない場合でも、退職証明書を発行しなければなりません。
参考:厚生労働省「雇用保険法施行規則」
離職票交付(離職証明書の発行)が不要なケース
一般的に、以下のケースに該当する場合、退職者は離職票を必要としません。
そのため、退職者に特段の事情があって必要になる場合を除き、基本的に上記のケースで会社は離職証明書の発行が不要です。
離職票の種類
離職票は「離職票1」と「離職票2」の2部に分かれています。それぞれ異なる内容が記載されており、退職者が記入する項目も異なります。ここでは、それぞれの記載事項と記入部分を解説します。
参考:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」
【退職者向け】離職票1の記載事項・書き方
雇用保険被保険者「離職票1」とは、被保険者番号・離職日・氏名など、退職者の情報が記載された書類です。離職票1は、「雇用保険資格喪失確認通知書」も兼ねています。
退職者が離職票1に記載するのは、以下の項目です。
それぞれ簡単に解説します。
個人番号(マイナンバー)
「6.個人番号」の欄に、退職者のマイナンバーを記入します。ただし、あらかじめ記入せず、雇用保険や求職申込手続きでハローワークを訪れた際に、本人が窓口で記入しなければなりません。
手続き時に持参する、マイナンバーカード・通知カード・個人番号の記載のある住民票のいずれかを見れば、マイナンバーがわかります。
求職者給付等払渡希望金融機関指定届
離職票1下部の「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」には、給付金の振込を希望する銀行口座の情報を記載します。
この欄は事前に記入可能ですが、自信がない場合はハローワークで記入しましょう。手続き時に、本人名義の預金通帳やキャッシュカードの持参が必要です。
離職票1の具体的な書き方については、以下ハローワークの記入例も参考にしてください。
参考:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-1」
【退職者向け】離職票2(離職証明書)の記載事項・書き方
雇用保険被保険者「離職票2」とは、退職者の退職理由や直近6か月の給与などを記載した書類です。会社が作成する離職証明書(3枚複写)の3枚目が、離職票2に該当します。
離職票2の左側は会社が記入するため、退職者は右側にある以下の項目の記入が必要です。
それぞれ簡単に解説します。
離職理由
「離職理由」の選択肢の中から、該当する理由をひとつ選択し、「離職者記入欄」の四角の中に丸印を記入します。選択肢は、「事業所の倒産等によるもの」「定年によるもの」「労働契約期間満了等によるもの」「事業主からの働きかけによるもの」「労働者の判断によるもの」などさまざまです。
「離職者記入欄」の左に「事業主記入欄」があるため、会社側の考えと同じか確認しておきましょう。
具体的事情記載欄(離職者用)
離職理由の選択肢の下に、具体的事情記載欄があります。会社側で記入した「具体的事情記載欄(事業主用)」を確認したうえで、異議がない場合は「具体的事情記載欄(離職者用)」に「同上」と記載しましょう。
なお、退職理由によって失業手当の給付日数が変わるため、必ず事実を記入しましょう。
離職者本人の判断
「16離職者本人の判断」では、「有り」「無し」のいずれかを丸で囲みます。会社側が丸をつけた離職理由に異議がなければ、「無し」を丸で囲みましょう。
なお、万が一離職理由に異議がある場合は、提出するハローワークに対応方法を相談してください。その場合は、ハローワークが事実関係を調査して離職理由を判定します。
署名
すべての内容を確認したうえで、問題がなければ「17 7欄の自ら記載した事項に間違いがないことを認めます。」の下に退職者本人が署名します。
離職票2の具体的な書き方については、以下ハローワークの記入例も参考にしてください。
参考:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-2」
【人事担当者向け】離職証明書に記載が必要な項目
会社は離職証明書を作成する際、離職者氏名をはじめ以下の項目の記載が必要です。
「【退職者向け】離職票2(離職証明書)の記載事項・書き方」で説明したように、万が一退職者が会社の記載した内容に異議がある場合、ハローワークが調査します。手続きが滞らないように、あらかじめ退職者と理由についてよく話し合っておきましょう。
退職者と事業主の間で発生しがちなトラブル
退職者と事業主の間で起こりやすいトラブルについて、さまざまな例を挙げて解説します。事前に内容を知ることで、トラブルを回避しましょう。
離職票の未発行
もっとも多いトラブルとして、離職票が発行されないことが挙げられます。離職票が未発行となる理由は、以下の通りです。
退職後2週間以上経っても離職票が届かなければ、退職者から催促の連絡が入ることがあります。退職者から離職票の発行を依頼されると、事業主には発行する義務が生じます。
離職理由に対する認識のズレ
離職理由は、退職者が失業手当を受給する際に、金額や期間を左右する重要な項目です。基本的には離職証明書に企業が記載した後、退職者本人が内容を確認する必要があります。
しかし、本人の確認を省いて離職票を発行できるため、トラブルが起こってしまうことがあります。たとえば、解雇ひとつとっても、本人に責任がある重大な理由での解雇(重責解雇)なのか、そうではない解雇なのか、という違いがあります。
また、労働者の自己都合退職だったにもかかわらず、また、「一身上の都合」が離職理由である場合、離職票に記載されている項目に近いものへと分類されます。
退職者によるSNS等でのネガティブな情報発信
近年、退職後にインターネットや口コミで、退職者が事業主へのネガティブな情報発信をするというトラブルが発生するケースがあります。そのようなトラブルを起こさないためには、退職を希望する理由・時期・離職票発行の希望などをヒアリングしておくことが必要です。
万が一、いわれのないネガティブな情報発信を繰り返す被害を受けた場合は、弁護士や公的機関に相談し、解決しましょう。
離職票(離職証明書)発行時の注意点
退職者に退職理由を確認することを怠らないようにしましょう。万が一、会社と退職者で認識が異なる場合、「雇用保険被保険者離職票記載内容補正願」を提出して修正しなければならない可能性があります。
また、極力早めに離職証明書を発行しましょう。発行が滞ると、離職者が失業手当を受け取るタイミングが遅れかねません。
なお、会社側が正当理由なしに証明書の発行を拒むと、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(雇用保険法第83条)。
参考:e-Gov「雇用保険法第八十三条」
離職票を再発行する際の流れ・手続き
退職者が万が一離職票を紛失した場合は、ハローワーク窓口に「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」(公式ホームページでダウンロード可能)を提出すれば、再発行手続きが可能です。申請は、退職者本人・会社どちらもできます。
また、インターネット申請(e-Gov)での申請も可能です。具体的な申請方法については、以下を確認してください。
参考:ハローワークインターネットサービス「申請等をご利用の方へ」
参考:ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」
離職票・離職証明書と混同しやすい書類
以下の書類は、離職票や離職証明書と混同されやすいです。
それぞれの概要を紹介します。
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者資格喪失届は、会社が退職者を雇用保険から外す(退職したことを届け出る)ために、所轄のハローワークに届ける書類です。離職だけでなく、従業員が役員に昇格するケース、従業員が死亡したケースなどでも提出します。
なお、要件を満たす会社は、2020年4月より雇用保険被保険者資格喪失届の提出を電子申請で対応しなければなりません。
参考:厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。」
退職証明書
退職証明書とは、退職者が転職先から求められた際に退職したことの証明として提出したり、離職票の代わりに使用したりする書類です。離職票・離職証明書が公的証明であるのに対し、退職証明書は私的文書である点が異なります。
労働基準法第22条により、会社は退職者から退職証明書を請求された場合、遅滞なく交付しなければなりません。ただし、退職者が2年間行使しない場合は、時効となります(労働基準法第115条)。
参考:e-Gov「労働基準法第二十二条」
参考:e-Gov「労働基準法第百十五条」
離職票と離職証明書まとめ
離職票は退職希望者が退職前に会社へ要望し、ハローワークから会社に発行される書類です。退職希望者が現れた際は、退職前に離職票が必要であるかを確認しておきましょう。また、退職者と事業主との間で起こりやすいトラブルを知っておくことで、トラブルの回避が可能です。正しい離職票と離職証明書の発行方法をぜひ参考にし、退職希望者にはこれまでの労をねぎらい、離職後も真摯に向き合うようにしましょう。