定額減税とは?2024年6月から始まる所得税・住民税に関する制度を解説

更新日:2024年04月26日

定額減税とは

定額減税とは、所得税や住民税から一定額が控除される制度を指します。法案が成立すれば、2024年6月より所得税3万円、個人住民税1万円が減税される予定です。

本記事では、定額減税とはどのような制度なのか説明した上で、スケジュールや諸制度への影響も解説します。

目次

2024年所得税・住民税の定額減税とは

定額減税とは、2024年にひとり(納税者および配偶者を含む扶養親族)あたり所得税3万円、個人住民税1万円の合計4万円 が控除される制度のことです。2023年12月22日 に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」中に、定額減税に関する内容が盛り込まれています。

ここから、定額減税の目的や開始時期、定率減税との違いについて確認していきましょう。

参考:財務省「令和6年度税制改正の大綱の概要」

定額減税の目的は?

日本経済をデフレに後戻りさせないこと(デフレの完全脱却)が、定額減税を実施する主な目的です。また、急激な物価高による家計負担を軽減することも目的のひとつとして挙げられます。

なお、定額減税が当てはまるのは、所得税や住民税を納付している課税世帯のみです。そのため、住民税非課税世帯や住民税均等割のみ課税世帯には、10万円の給付 が実施されます(*)。

*すでに3万円給付されている住民税非課税世帯には、7万円を追加で給付予定

いつから始まる制度?

法案が成立すれば、2024年6月 より定額減税が実施される予定です。ただし、減税のタイミングや方法は、所得税と住民税、給与所得者・事業所得者・年金所得者で異なります。

たとえば、給与所得者で所得税源泉徴収税額が3万円を超える場合は、6月 に定額減税分控除される見込みです。定額減税の方法については、後ほど詳しく解説します。

なお、所得税は2024年1月分から1年間の所得、住民税は2023年度分が定額減税の対象 です。

定額減税と定率減税の違いとは

過去には、定額減税ではなく定率減税で所得税や住民税を減税したこともありました。定額減税が年収に関係なく決まった額を所得税から引く方式であるのに対し、定率減税はかかる税額に応じて一定割合を引く方式である点が主な違いです。

定額減税により減税するメリットとして、富裕層・高所得者層より、物価高による打撃を受けている層(低・中所得者層)への恩恵が大きい点が挙げられます。なぜなら、定額減税は所得税・住民税を一定額以上納付している人であれば、誰でも引かれる金額が同じためです。

100万円の所得税を納付している層(高所得者層)と、30万円の所得税を納付している層(低・中所得者層)で比較してみましょう。

仮に3%の定率減税を実施する場合、高所得者層は97万円、低・中所得者層は29万1千円納付することになります。一方、定額減税3万円を実施する場合、高所得者層の納付額は同じく97万円ですが、低・中所得者層は27万円です。

このことからも、定額減税は高所得者層より低・中所得者層への恩恵が大きいことがわかるでしょう。

そもそも税金の仕組みとは

税金の仕組みを把握しておいた方が、定額減税の内容を理解できます。ここから、所得税(国税)がかかる仕組みと、住民税(地方税)がかかる仕組みを確認していきましょう。

所得税がかかる仕組み

所得税とは、個人の所得に対してかかる税金のことです。1年間のすべての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に対して税率を適用し、税額を計算します。

日本における所得税の税率は、超過累進税率です。そのため、所得が多くなるに従って段階的に高くなります。たとえば、2023年4月1日時点において、課税所得300万円の人に課される税率は10% であるのに対し、課税所得3,000万円の人に課されるのは40%で す。

なお、会社員の場合、一般的に給与からの天引きで所得税を納付し、年末調整で過不足を調整します。一方、個人事業主は原則として2月16日から3月15日の間に確定申告し、自分で納付しなければなりません。

参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」

住民税がかかる仕組み

個人住民税とは、居住する地域の生活に必要なサービスをまかなうために課される税金のことです。個人住民税には、均等割と所得割があります。

均等割とは、非課税限度額を上回る所得がある人に対して定額の負担を求めるものです。市町村民税3,500円、道府県民税1,500円 を納付しなければなりません。

所得割とは、所得金額に応じて税額の負担を求めるものです。市町村民税6%、道府県民税4%の一律10%が課されます(指定都市に居住する場合は市町村民税8%、道府県民税2% )。

個人住民税の納付方法は、特別徴収と普通徴収の2種類です。給与所得者は6月から翌年5月 までの毎月給料から天引きされるのに対し(特別徴収)、個人事業主などの場合は自治体から送られてくる納税通知書で年4回もしくは一括で納付します。

参考:財務省「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」

所得によって給付・定額減税の対象者が異なる

給付措置や定額減税の対象者は、所得によって異なります。ここから、給付金支給の対象者と定額減税の対象者、どちらも対象外の人について確認していきましょう。

給付金の対象者

10万円(7万円)の給付金の対象は、「住民税非課税世帯」と「住民税均等割のみの課税世帯」です。

住民税非課税世帯とは、個人住民税の均等割分も所得割分も課税されない世帯を指します。また、住民税均等割のみ課税世帯とは、均等割分が課税される一方で、所得割分は非課税の世帯のことです。

さらに、給付金対象世帯のうち子育て世帯には、子ども(18歳以下)ひとりあたり5万円の追加給付があります。

所得税減税(定額減税)の対象者

定額減税の対象になるのは、所得税と住民税どちらも納付している人です。ただし、納税額が4万円に満たない人に対しては、一部給付が実施されます。

減税しきれない人に対して補足で給付される金額は1万円単位です。そのため、仮に納税額が2万8千円の場合は、差額の1万2千円でなく、繰り上げした2万円が給付されます。

給付・定額減税どちらも対象外の人

定額減税は納税者の合計所得金額が1,805万円以下である場合に限るため、2024年分の所得税にかかる合計所得金額が1,805万円 を超えていれば、給付・定額減税どちらも対象外です。

また、収入が給与収入のみの場合は、給与収入が2,000万円 超の人が対象外となります。ただし、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の適用を受ける場合は、給与収入2,015万円 超の人が対象外です。

参考:国税庁「定額減税について」

定額減税の方法

定額減税の実施方法は、所得税と住民税で異なります。ここから、それぞれの方法を確認していきましょう。

所得税を減税する方法

給与所得者の場合、2024年6月1日以降に受け取る給与などの源泉徴収税額から金額を控除することで定額減税を実施します。一方、個人事業主の場合は、2025年の2〜3月(確定申告時)が定額減税実施のタイミングです(納税額が15万円 以上の場合は2024年7月の予定納税時)。公的年金所得者で定額減税の対象者は、2024年6月の年金支給時に減税されます。

なお、いずれも控除される金額はひとり(納税者および配偶者を含む扶養親族)あたり3万円です。

住民税を減税する方法

給与所得者の場合、2024年6月分の個人住民税が特別徴収されず、2024年7月分から2025年5月分の11か月に分けて 定額減税後の税額が徴収されます。

一方、個人事業主のように普通徴収されている場合は、第1期分の納付時が定額減税のタイミングです。定額減税前の税額をもとに算出した納税額から、金額が控除されます(控除しきれない場合は、第2期分以降から)。

公的年金から住民税が引かれる場合は、2024年10月分 の税額が定額減税のタイミングです。控除しきれない場合は12月分から引かれます。

なお、いずれも控除される金額はひとり(納税者および配偶者を含む扶養親族)あたり1万円です。

参考:東京都北区「令和6年度定額減税(住民税)」

給与所得者の所得税定額減税のポイント

すでに紹介したとおり、給与所得者の定額減税は個人事業主とは異なる方法で実施します。ここから、給与所得者の定額減税のポイントを確認していきましょう。

定額減税で実施するふたつの事務

定額減税にあたって、給与支払者はふたつの事務(月次減税事務・年調減税事務)を実施しなければなりません。

月次納税事務とは、2024年6月1日以降に支払う給与に対する源泉徴収税額からその時点の定額減税額を控除する事務です。また、年調減税事務とは、年末調整の際に年末調整時点の定額減税額に基づき精算する事務を指します。

月次減税で実施すること

2024年6月1日以降、最初に支払う給与などの源泉徴収税額から月次減税額を控除します。また、6月の給与や賞与から控除しきれない場合は、翌月(翌々月)から順次控除していく流れです。

源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者(基準日在職者)が、月次減税の対象となります。ただし、(2024年5月31日以前に)「退職した」「出国して非居住者になった」などに該当する場合は、月次減税の対象外です。

また、「2024年6月2日以降に給与支払者のもとで勤務することになった」については、年末調整で対応します。

年調減税で実施すること

年調減税では、年末調整時点における定額減税額に基づき、年間の所得税額と精算します。原則として、年末調整を受けている方が年調所得税額から年調減税額を控除する対象者です。

なお、そもそも給与収入が2,000万円を超えている(給与収入のみの方)場合、そもそも定額減税を適用できません。給与所得以外がある場合は、個人事業主などと同様に合計所得金額が1,805万円を超えていると対象外です。

基準日在職者であれば月次減税事務は必須(収入や所得は無関係)

前述のように、給与収入または合計所得金額の金額によっては、年末調整または確定申告で精算された結果として、月次減税事務で減税された分を徴収される場合があります。ただし、それは結果の話であって、2024年6月1日時点で見積もった収入や所得がいくらであったとしても、基準日在職者であれば月次減税事務は必須となります。精算されると分かっていても、年末調整や確定申告で収入や所得が確定するまでは、月次減税事務が必須です。誤解している方もいるようですので注意しましょう。

参考:国税庁「給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた」

定額減税額シミュレーション

定額減税の対象となる場合に、どれだけ減税されるのか計算してみましょう。今回は自分(納税者)・同一生計の配偶者・中学生の長女がいる(3人家族)ケースで計算します。

本人・同一生計配偶者・扶養親族いずれも所得税控除額は3万円、住民税は1万円です。そのため、今回のケースにおける定額減税額は、合計12万円と計算できます(所得税3万円 × 3人 + 住民税1万円 × 3万円)。

【シミュレーションの結果】

同一生計(※居住者に限る)の家族情報 減税額(所得税) 減税額(住民税) 小計
本人(納税者):年収300万円 3万円 1万円 4万円
配偶者:所得48万円以下(=同一生計配偶者) 3万円 1万円 4万円
長女:所得なし(=同一生計扶養親族) 3万円 1万円 4万円
合計 12万円

定額減税のスケジュール

給与所得者と個人事業主の定額減税スケジュールを以下の表にまとめました。

定額減税スケジュール 給与所得者 個人事業主
2024年6月 給与所得者の源泉徴収税額から控除(所得税分) 6月徴収分の住民税から控除
同上 *住民税徴収なし *控除しきれない場合は8月以降に繰越
7月 7月より定額減税後の税額を11か月に分けて徴収(住民税分) 前年所得に基づく納税額が15万円以上の場合、予定納税時に控除(所得税)
2025年2月〜3月 確定申告時に納付額から控除(所得税)

定額減税による諸制度への影響

ふるさと納税や住宅ローン控除は、所得税や住民税に関係する制度です。ここから、定額減税による、ふるさと納税や住宅ローン控除への影響を解説します。

ふるさと納税に与える影響

ふるさと納税とは、故郷や応援したい自治体に寄付することで、寄付金のうち2,000円を超える部分について所得税の還付や住民税の控除を受けられる制度です。

ふるさと納税の上限額は所得によって異なりますが、定額減税に左右されません。なぜなら、ふるさと納税の特例控除の上限額の算定基礎となる金額は、定額減税の特別控除が適用される前の額であるためです。

参考:東京都荒川区「令和6年度特別区民税・都民税の定額減税」

住宅ローン控除に与える影響

住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは、住宅ローンを借り入れて住宅の新築・取得または増改築などをした際、年末のローン残高に応じて一定の割合を所得税(一部、翌年の住民税)から一定期間控除する制度です。

定額減税は、住宅ローン控除の金額にも影響はありません。なぜなら、定額減税は住宅ローン控除後の金額に対して実施されるためです。

定額減税まとめ

一般的に、定額減税とは2024年6月より実施予定の減税制度のことです。原則として、所得税3万円、個人住民税1万円が減税されます。

給与所得者と個人事業主では、定額減税の実施方法が異なる点に注意が必要です。給与所得者の所得税は2024年6月に受け取る給与などの源泉徴収税額から控除されるのに対し、個人事業主は2024年7月の予定納税や、2025年2〜3月の確定申告時に納付する所得税から控除されます。

自分の所得額や所得の種類を確認した上で、定額減税のスケジュールをチェックしましょう。

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