更新日:2025年12月16日
障害者控除とは、障害(障がい)がある人自身やその家族が、一定の条件を満たす場合に適用できる所得控除を指します。適用を受けるためには、年末調整や確定申告での手続きが必要です。本記事では、障害者控除とは何かを説明したうえで、控除額や申請方法について詳しく解説します。
目次
障害者控除とは、障害(障がい)がある人やその家族が適用できる可能性のある所得控除を指します。税金を計算する際に障害者控除を適用することにより、所得から一定の金額を引いて所得税などを支払う負担を軽減可能です。
障害者控除にはいくつか種類があり、適用額もそれぞれ異なります。ここから、障害者控除の種類やその適用額、適用方法について確認していきましょう。
障害者控除には、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3種類があります。それぞれの適用額は、以下のとおりです。
なお、上記の金額は一人あたりの控除額です。そのため、該当者が複数人いる場合は、各控除額を合計した額を控除できます。たとえば、本人が「特別障害者」で同居する配偶者も「特別障害者」に該当する場合、控除額は115万円(40万円 + 75万円)です。
障害者控除を適用するには、年末調整や確定申告の手続きをしなければなりません。
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と年税額を一致させる精算の手続きのことです。多くの給与所得者は、勤務先に年末調整関連の申告書を提出することで、所得税の納税を完了できます。
確定申告とは、前年1月1日から12月31日までのすべての所得や納付すべき税額を計算して申告する手続きのことです。個人事業主やフリーランスなどで収入を得ている場合は、確定申告で障害者控除を適用します。
年末調整の手続きをするのは11月ごろ、所得税の確定申告手続きをするのは翌年2月16日から3月15日までです。具体的な手続きの流れについては、後ほど詳しく解説します。
参考)国税庁「No.1160 障害者控除」
2025年度の税制改正で、基礎控除額が改正されたり給与所得控除の最低保障額が引き上げられたりします(「55万円」から「65万円」)。一方で、障害者控除の控除額には変更がありません。
ただし、「扶養親族」や「同一生計配偶者」の合計所得要件に変更がある点に注意が必要です。いずれも、「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられたため、これまで障害者控除を適用できなかった方でも適用できる可能性があります。
参考)国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
障害者控除を適用するためには、一定の条件を満たさなければなりません。「障害者控除」「特別障害者控除」「同居特別障害者控除」に分けて、それぞれの対象者を詳しく解説します。
障害者控除を適用できる人のうち、「障害者控除」に該当するケースは以下のとおりです。
なお、身体障害者手帳が必要なケースでも、手帳の交付を申請中の場合や手帳の交付を受けるための医師の診断書を持っている場合には、障害者控除の適用を受けられます。
参考)国税庁「No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について」
障害者控除を適用できる人のうち、「特別障害者控除」に該当するケースは以下のとおりです。
このように、「障害者控除」を適用可能な人は障害の程度によって「特別障害者控除」の方を適用できる場合があります。
特別障害者である「同一生計配偶者」や「扶養親族」のうち、納税者本人・配偶者・納税者と生計を一にするその他親族のいずれかと常に同居しているケースで、同居特別障害者に該当します。
同一生計配偶者とは、対象年の12月31日時点で以下の要件をすべて満たす人のことです。
扶養親族とは、対象年の12月31日時点で配偶者以外の親族、都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から擁護を委託された老人のいずれかに該当する人を指します。また、同一生計配偶者と同様に、上記2〜4の要件をすべて満たさなければなりません。
なお、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合でも、条件を満たせば障害者控除を適用できます。
障害者控除を適用する手続きの流れは、年末調整の場合と確定申告の場合で異なります。それぞれの手順を確認していきましょう。
給与所得者が年末調整で勤務先に提出する主な書類は、以下のとおりです。
*基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書は同じ書類を使用
障害者控除を適用する際は、上記のうち「扶養控除等(異動)申告書」への記載が必要です。「主たる給与から控除を受ける」のC「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄で、「障害者」の部分や該当する区分にチェックを入れましょう。「扶養親族」が該当する場合は、人数の記入も必要です。
また、「障害者又は勤労学生の内容」と記載された欄に、控除対象者の氏名や障害の等級など具体的な内容を記入します。
確定申告では、確定申告書第一表や確定申告書第二表などを提出する必要があります。
確定申告で障害者控除を適用する際には、確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の「勤労学生、障害者控除」に対象区分の該当する金額を記入する点がポイントです。たとえば、「特別障害者控除」に該当する場合は、「400000」と記入します。
また、確定申告書第二表で、「本人に関する事項」や「配偶者や親族に関する事項」に記入することもポイントです。
本人が障害者に該当する場合は、「本人に関する事項」の「障害者」もしくは「特別障害者」に丸をつけます。また、配偶者や扶養親族が対象の場合は、「配偶者や親族に関する事項」に配偶者・扶養親族の情報を記入したうえで、対象の配偶者・親族の行で「障」(障害者)もしくは「特障」(特別障害者)のいずれかに丸をつけましょう。
障害者控除について押さえておきたいことは、以下のとおりです。
それぞれ解説します。
所得税だけでなく、住民税を計算する際にも障害者控除を適用できます。住民税における控除額は以下のとおりです。
なお、本人が障害者で障害者控除を適用する場合、前年の合計所得が135万円以下(給与のみの場合は給与収入が204万3,999円以下)であれば、住民税が非課税となります。
参考)東京都「個人住民税」
所得税・住民税の障害者控除とは別に、相続税に対する障害者控除制度もあります。
相続税の障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者で要件を満たすと、相続税の額から一定額を引ける制度です。一般障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき10万円、特別障害者の場合は1年につき20万円を控除できます。
なお、所得税の障害者控除は「所得」から一定額を控除する制度であるのに対し、相続税の障害者控除は「税額」から控除する点に注意が必要です。
参考)国税庁「No.4167 障害者の税額控除」
年末調整の対象者が、年末調整の手続き時に障害者控除のことを失念していたとしても、確定申告で対応可能です。翌年2月16日から3月15日までに、忘れず手続きしましょう。
また、確定申告の際に控除を適用せず税額を多く申告していた場合には、「更正の請求書」を提出することにより正しい税額への訂正を求められます。
参考)国税庁「確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき」
年末調整では、生命保険料控除・地震保険料控除などの所得控除を適用する従業員に対して、各種証明書の添付を求めることがあります。ただし、障害者控除の適用においては、障害者手帳の写し(コピー)の提出は法律上の義務ではありません。
そこで、控除を適用できるか判断する必要がある場合は、障害者手帳の原本の提示を依頼して目視で等級を確認する、従業員に任意で写しの提出を依頼するなどの方法を検討しましょう。
所得控除は、障害者控除を含めて16種類あります。障害者控除以外の所得控除は、以下のとおりです。
所得控除には、基礎控除や配偶者控除のように納税者本人・配偶者・親族など、人に関する所得控除(人的控除)と、社会保険料控除や医療費控除のように納税者の支出に対する所得控除(物的控除)があります。障害者控除は、人的控除のひとつです。
控除額は、所得控除の種類によって異なります。たとえば、基礎控除の場合の控除額は以下のとおりです。
参考)国税庁「No.1199 基礎控除」
障害者控除を適用する際に、税金(※)を計算する流れは以下のとおりです。
ここから、以下のケースを想定して各手順における計算例を紹介します。
給与所得:400万円 適用する所得控除:基礎控除・障害者控除 障害者控除の種類:同居特別障害者
※個人住民税を計算する場合は、上記で計算する住民税所得割のほかに、定額の均等割がかかります。
自身の所得を把握したら、課税所得金額を計算しましょう。課税所得金額は、以下の計算式で計算できます。
課税所得金額 = 所得金額 − 所得控除額
2025年・2026年の場合、所得金額400万円のときに適用できる基礎控除額は68万円です。また、同居特別障害者の区分における障害者特別控除の控除額は75万円のため、課税所得金額は257万円と計算できます(400万円 − 68万円 − 75万円)。
課税所得金額を算出したら、所定の税率をかけて対象の控除額を引きましょう。国税庁のサイトに掲載されている「所得税の速算表」を使用するとスムーズに計算できます。
課税所得金額が257万円の場合、所得税の税率は10%、控除額は9万7,500円です。そのため、15万9,500円と計算できます(257万円 × 10% − 9万7,500円)。
なお、日本では超過累進税率が採用されており、所得が多くなるほど税率も高くなる点が特徴です。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
2で算出した値から、税額控除額を引きます。
税額控除とは、課税所得金額に税率をかけて算出した所得税額から、一定額を控除できる制度のことです。総合課税の配当所得がある場合に適用できる「配当控除」、住宅ローンを利用して新築もしくは購入などをした際に利用できる可能性がある「住宅借入金等特別控除」などが、具体例として挙げられます。
今回は、税額控除の適用は想定していないため、2で計算した15万9,500円が所得税の額です。ただし、2037年までは、所得税に加えて復興特別所得税(対象年の基準所得税の2.1%)も申告・納付しなければなりません。
ここで、障害者控除の適用でどれくらい税金が減るのか見ていきましょう。
今回は、給与収入が500万円と想定します。また、障害者控除のほかに考慮する所得控除は、基礎控除のみです。
まず、給与収入から給与所得控除(※)を差し引いて給与所得を計算します。給与収入500万円の場合の給与所得は、356万円です(500万円 − 144万円)。
2025年・2026年において、給与所得356万円の場合の基礎控除額は68万円のため、課税所得金額は288万円と計算できます(356万円 − 68万円)。また、税率10%・控除額9万7,500円のため、障害者控除を適用しない場合の所得税額は19万500円です(288万円 × 10% − 9万7,500円)。
ここから、障害者控除の適用でどれくらい税額が減るのか、目安を障害者控除の種類別に紹介します。
※給与所得控除額は、給与収入によって異なります。
参考)国税庁「No.1410 給与所得控除」
「障害者」の区分の場合、障害者控除の控除額は「27万円」のため、課税所得金額は261万円(356万円 − 68万円 − 27万円)と計算できます。そのため、障害者控除を適用した場合の所得税額は16万3,500円です(261万円 × 10% − 9万7,500円)。
つまり、今回のケースで「障害者」区分の障害者控除を適用することで、所得税額は約2万7,000円減るでしょう。
「特別障害者」の区分の場合、障害者控除の控除額は「40万円」のため、課税所得金額は248万円(356万円 − 68万円 − 40万円)と計算できます。そのため、障害者控除を適用した場合の所得税額は15万500円です(248万円 × 10% − 9万7,500円)。
「特別障害者」区分の障害者控除を適用すると、今回のケースでは約4万円、所得税額が減るでしょう。
「同居特別障害者」の区分では、障害者控除の控除額は「75万円」です。課税所得金額は、213万円(356万円 − 68万円 − 75万円)と計算できます。障害者控除を適用した場合の所得税額は11万5,500円です(213万円 × 10% − 9万7,500円)。
「同居特別障害者」区分の障害者控除を適用することにより、今回のケースでは約7万5,000円分の所得税額が減るでしょう。
障害者控除以外にも、障害者が受けられる税制優遇制度がいくつか存在します。主な制度は以下のとおりです。
本来、1年間に個人から贈与で110万円超の財産を取得した場合には、贈与税がかかります。ただし、生活費に充てるため、一定の信託契約に基づき特定障害者の方を受益者とする財産の信託があった場合には一定額が非課税です。
特定障害者とは、特別障害者もしくは特別障害者以外の障害者のうち精神に障害がある方を指します。特定障害者の方は6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方は3,000万円まで贈与税がかかりません。
なお、適用を受けるためには、信託時に信託会社を通じて所轄の税務署に「障害者非課税信託申告書」の提出が必要です。
参考)国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金以外)を受け取る場合にも、所得税が非課税となります。給付を受ける権利を相続や贈与で取得した場合も、非課税対象です。
なお、障害者扶養共済制度とは、障害のある方を扶養している保護者が毎月一定の掛金を納付することにより、自分に万が一のことがあった場合に障害のある方に対して一定額の年金を支給する制度を指します。
一定の預貯金の利子(少額貯蓄の利子)などを受ける際も、非課税になる場合があります。対象は、身体障害者手帳の交付を受けている方などです。
銀行の預貯金・公社債・公社債投資信託などが対象の「マル優」、利付国債や公募地方債などが対象の「特別マル優」があります。それぞれ350万円まで非課税対象のため、両方適用する場合は最大700万円までの利息について非課税で受け取れます。
なお、マル優・特別マル優を利用するには、預け入れの日までに金融機関の窓口で手帳・証書やマイナンバーなどを提示しなければなりません。
参考)国税庁「障害者と税」
障害者控除とは、納税者本人やその配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合に適用できる所得控除です。障害の内容や同居の有無などによって、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の区分があり、それぞれ控除額が異なります。
2025年度の税制改正において、障害者控除の控除額には特段変更がありません。ただし、「扶養親族」や「同一生計配偶者」の合計所得要件に変更があるため、要件を確認する際に注意しましょう。
この記事は、給与計算ソフト「フリーウェイ給与計算」の株式会社フリーウェイジャパンが提供しています。フリーウェイ給与計算は、従業員5人まで永久無料のクラウド給与計算で、WindowsでもMacでも利用できます。
ブログTOPへ戻る
(c) 2017 freewayjapan Co., Ltd.
障害者控除とは、障害(障がい)がある人自身やその家族が、一定の条件を満たす場合に適用できる所得控除を指します。適用を受けるためには、年末調整や確定申告での手続きが必要です。本記事では、障害者控除とは何かを説明したうえで、控除額や申請方法について詳しく解説します。
目次
障害者控除とは
障害者控除とは、障害(障がい)がある人やその家族が適用できる可能性のある所得控除を指します。税金を計算する際に障害者控除を適用することにより、所得から一定の金額を引いて所得税などを支払う負担を軽減可能です。
障害者控除にはいくつか種類があり、適用額もそれぞれ異なります。ここから、障害者控除の種類やその適用額、適用方法について確認していきましょう。
障害者控除の種類・適用額
障害者控除には、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3種類があります。それぞれの適用額は、以下のとおりです。
なお、上記の金額は一人あたりの控除額です。そのため、該当者が複数人いる場合は、各控除額を合計した額を控除できます。たとえば、本人が「特別障害者」で同居する配偶者も「特別障害者」に該当する場合、控除額は115万円(40万円 + 75万円)です。
障害者控除の適用方法
障害者控除を適用するには、年末調整や確定申告の手続きをしなければなりません。
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と年税額を一致させる精算の手続きのことです。多くの給与所得者は、勤務先に年末調整関連の申告書を提出することで、所得税の納税を完了できます。
確定申告とは、前年1月1日から12月31日までのすべての所得や納付すべき税額を計算して申告する手続きのことです。個人事業主やフリーランスなどで収入を得ている場合は、確定申告で障害者控除を適用します。
年末調整の手続きをするのは11月ごろ、所得税の確定申告手続きをするのは翌年2月16日から3月15日までです。具体的な手続きの流れについては、後ほど詳しく解説します。
参考)国税庁「No.1160 障害者控除」
2025年度税制改正と障害者控除の関係
2025年度の税制改正で、基礎控除額が改正されたり給与所得控除の最低保障額が引き上げられたりします(「55万円」から「65万円」)。一方で、障害者控除の控除額には変更がありません。
ただし、「扶養親族」や「同一生計配偶者」の合計所得要件に変更がある点に注意が必要です。いずれも、「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられたため、これまで障害者控除を適用できなかった方でも適用できる可能性があります。
参考)国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
障害者控除の対象者
障害者控除を適用するためには、一定の条件を満たさなければなりません。「障害者控除」「特別障害者控除」「同居特別障害者控除」に分けて、それぞれの対象者を詳しく解説します。
障害者控除に該当するケース
障害者控除を適用できる人のうち、「障害者控除」に該当するケースは以下のとおりです。
なお、身体障害者手帳が必要なケースでも、手帳の交付を申請中の場合や手帳の交付を受けるための医師の診断書を持っている場合には、障害者控除の適用を受けられます。
参考)国税庁「No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について」
特別障害者控除に該当するケース
障害者控除を適用できる人のうち、「特別障害者控除」に該当するケースは以下のとおりです。
このように、「障害者控除」を適用可能な人は障害の程度によって「特別障害者控除」の方を適用できる場合があります。
同居特別障害者に該当するケース
特別障害者である「同一生計配偶者」や「扶養親族」のうち、納税者本人・配偶者・納税者と生計を一にするその他親族のいずれかと常に同居しているケースで、同居特別障害者に該当します。
同一生計配偶者とは、対象年の12月31日時点で以下の要件をすべて満たす人のことです。
扶養親族とは、対象年の12月31日時点で配偶者以外の親族、都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から擁護を委託された老人のいずれかに該当する人を指します。また、同一生計配偶者と同様に、上記2〜4の要件をすべて満たさなければなりません。
なお、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合でも、条件を満たせば障害者控除を適用できます。
障害者控除適用手続きの流れ
障害者控除を適用する手続きの流れは、年末調整の場合と確定申告の場合で異なります。それぞれの手順を確認していきましょう。
年末調整の場合
給与所得者が年末調整で勤務先に提出する主な書類は、以下のとおりです。
*基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書は同じ書類を使用
障害者控除を適用する際は、上記のうち「扶養控除等(異動)申告書」への記載が必要です。「主たる給与から控除を受ける」のC「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄で、「障害者」の部分や該当する区分にチェックを入れましょう。「扶養親族」が該当する場合は、人数の記入も必要です。
また、「障害者又は勤労学生の内容」と記載された欄に、控除対象者の氏名や障害の等級など具体的な内容を記入します。
確定申告の場合
確定申告では、確定申告書第一表や確定申告書第二表などを提出する必要があります。
確定申告で障害者控除を適用する際には、確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の「勤労学生、障害者控除」に対象区分の該当する金額を記入する点がポイントです。たとえば、「特別障害者控除」に該当する場合は、「400000」と記入します。
また、確定申告書第二表で、「本人に関する事項」や「配偶者や親族に関する事項」に記入することもポイントです。
本人が障害者に該当する場合は、「本人に関する事項」の「障害者」もしくは「特別障害者」に丸をつけます。また、配偶者や扶養親族が対象の場合は、「配偶者や親族に関する事項」に配偶者・扶養親族の情報を記入したうえで、対象の配偶者・親族の行で「障」(障害者)もしくは「特障」(特別障害者)のいずれかに丸をつけましょう。
障害者控除について押さえておきたいこと
障害者控除について押さえておきたいことは、以下のとおりです。
それぞれ解説します。
住民税も障害者控除の対象になる
所得税だけでなく、住民税を計算する際にも障害者控除を適用できます。住民税における控除額は以下のとおりです。
なお、本人が障害者で障害者控除を適用する場合、前年の合計所得が135万円以下(給与のみの場合は給与収入が204万3,999円以下)であれば、住民税が非課税となります。
参考)東京都「個人住民税」
相続税にも別の障害者控除制度がある
所得税・住民税の障害者控除とは別に、相続税に対する障害者控除制度もあります。
相続税の障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者で要件を満たすと、相続税の額から一定額を引ける制度です。一般障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき10万円、特別障害者の場合は1年につき20万円を控除できます。
なお、所得税の障害者控除は「所得」から一定額を控除する制度であるのに対し、相続税の障害者控除は「税額」から控除する点に注意が必要です。
参考)国税庁「No.4167 障害者の税額控除」
年末調整で適用を忘れたら確定申告で対応
年末調整の対象者が、年末調整の手続き時に障害者控除のことを失念していたとしても、確定申告で対応可能です。翌年2月16日から3月15日までに、忘れず手続きしましょう。
また、確定申告の際に控除を適用せず税額を多く申告していた場合には、「更正の請求書」を提出することにより正しい税額への訂正を求められます。
参考)国税庁「確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき」
年末調整で障害者控除の申請を受け付ける場合のポイント
年末調整では、生命保険料控除・地震保険料控除などの所得控除を適用する従業員に対して、各種証明書の添付を求めることがあります。ただし、障害者控除の適用においては、障害者手帳の写し(コピー)の提出は法律上の義務ではありません。
そこで、控除を適用できるか判断する必要がある場合は、障害者手帳の原本の提示を依頼して目視で等級を確認する、従業員に任意で写しの提出を依頼するなどの方法を検討しましょう。
障害者控除以外の所得控除
所得控除は、障害者控除を含めて16種類あります。障害者控除以外の所得控除は、以下のとおりです。
所得控除には、基礎控除や配偶者控除のように納税者本人・配偶者・親族など、人に関する所得控除(人的控除)と、社会保険料控除や医療費控除のように納税者の支出に対する所得控除(物的控除)があります。障害者控除は、人的控除のひとつです。
控除額は、所得控除の種類によって異なります。たとえば、基礎控除の場合の控除額は以下のとおりです。
2025年、2026年分
2027年分以降
参考)国税庁「No.1199 基礎控除」
障害者控除を適用できる場合の税金計算方法
障害者控除を適用する際に、税金(※)を計算する流れは以下のとおりです。
ここから、以下のケースを想定して各手順における計算例を紹介します。
給与所得:400万円
適用する所得控除:基礎控除・障害者控除
障害者控除の種類:同居特別障害者
※個人住民税を計算する場合は、上記で計算する住民税所得割のほかに、定額の均等割がかかります。
1. 課税所得金額を計算する
自身の所得を把握したら、課税所得金額を計算しましょう。課税所得金額は、以下の計算式で計算できます。
課税所得金額 = 所得金額 − 所得控除額
2025年・2026年の場合、所得金額400万円のときに適用できる基礎控除額は68万円です。また、同居特別障害者の区分における障害者特別控除の控除額は75万円のため、課税所得金額は257万円と計算できます(400万円 − 68万円 − 75万円)。
2. 1に所定の税率をかける
課税所得金額を算出したら、所定の税率をかけて対象の控除額を引きましょう。国税庁のサイトに掲載されている「所得税の速算表」を使用するとスムーズに計算できます。
課税所得金額が257万円の場合、所得税の税率は10%、控除額は9万7,500円です。そのため、15万9,500円と計算できます(257万円 × 10% − 9万7,500円)。
なお、日本では超過累進税率が採用されており、所得が多くなるほど税率も高くなる点が特徴です。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
3. 2から税額控除額を引く
2で算出した値から、税額控除額を引きます。
税額控除とは、課税所得金額に税率をかけて算出した所得税額から、一定額を控除できる制度のことです。総合課税の配当所得がある場合に適用できる「配当控除」、住宅ローンを利用して新築もしくは購入などをした際に利用できる可能性がある「住宅借入金等特別控除」などが、具体例として挙げられます。
今回は、税額控除の適用は想定していないため、2で計算した15万9,500円が所得税の額です。ただし、2037年までは、所得税に加えて復興特別所得税(対象年の基準所得税の2.1%)も申告・納付しなければなりません。
障害者控除の適用で減る金額の目安
ここで、障害者控除の適用でどれくらい税金が減るのか見ていきましょう。
今回は、給与収入が500万円と想定します。また、障害者控除のほかに考慮する所得控除は、基礎控除のみです。
まず、給与収入から給与所得控除(※)を差し引いて給与所得を計算します。給与収入500万円の場合の給与所得は、356万円です(500万円 − 144万円)。
2025年・2026年において、給与所得356万円の場合の基礎控除額は68万円のため、課税所得金額は288万円と計算できます(356万円 − 68万円)。また、税率10%・控除額9万7,500円のため、障害者控除を適用しない場合の所得税額は19万500円です(288万円 × 10% − 9万7,500円)。
ここから、障害者控除の適用でどれくらい税額が減るのか、目安を障害者控除の種類別に紹介します。
※給与所得控除額は、給与収入によって異なります。
参考)国税庁「No.1410 給与所得控除」
「障害者」の場合
「障害者」の区分の場合、障害者控除の控除額は「27万円」のため、課税所得金額は261万円(356万円 − 68万円 − 27万円)と計算できます。そのため、障害者控除を適用した場合の所得税額は16万3,500円です(261万円 × 10% − 9万7,500円)。
つまり、今回のケースで「障害者」区分の障害者控除を適用することで、所得税額は約2万7,000円減るでしょう。
「特別障害者」の場合
「特別障害者」の区分の場合、障害者控除の控除額は「40万円」のため、課税所得金額は248万円(356万円 − 68万円 − 40万円)と計算できます。そのため、障害者控除を適用した場合の所得税額は15万500円です(248万円 × 10% − 9万7,500円)。
「特別障害者」区分の障害者控除を適用すると、今回のケースでは約4万円、所得税額が減るでしょう。
「同居特別障害者」の場合
「同居特別障害者」の区分では、障害者控除の控除額は「75万円」です。課税所得金額は、213万円(356万円 − 68万円 − 75万円)と計算できます。障害者控除を適用した場合の所得税額は11万5,500円です(213万円 × 10% − 9万7,500円)。
「同居特別障害者」区分の障害者控除を適用することにより、今回のケースでは約7万5,000円分の所得税額が減るでしょう。
障害者控除以外で障害者が受けられる主な税制優遇
障害者控除以外にも、障害者が受けられる税制優遇制度がいくつか存在します。主な制度は以下のとおりです。
それぞれ解説します。
贈与税における非課税
本来、1年間に個人から贈与で110万円超の財産を取得した場合には、贈与税がかかります。ただし、生活費に充てるため、一定の信託契約に基づき特定障害者の方を受益者とする財産の信託があった場合には一定額が非課税です。
特定障害者とは、特別障害者もしくは特別障害者以外の障害者のうち精神に障害がある方を指します。特定障害者の方は6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方は3,000万円まで贈与税がかかりません。
なお、適用を受けるためには、信託時に信託会社を通じて所轄の税務署に「障害者非課税信託申告書」の提出が必要です。
参考)国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の所得税非課税
心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金以外)を受け取る場合にも、所得税が非課税となります。給付を受ける権利を相続や贈与で取得した場合も、非課税対象です。
なお、障害者扶養共済制度とは、障害のある方を扶養している保護者が毎月一定の掛金を納付することにより、自分に万が一のことがあった場合に障害のある方に対して一定額の年金を支給する制度を指します。
少額貯蓄の利子などの非課税
一定の預貯金の利子(少額貯蓄の利子)などを受ける際も、非課税になる場合があります。対象は、身体障害者手帳の交付を受けている方などです。
銀行の預貯金・公社債・公社債投資信託などが対象の「マル優」、利付国債や公募地方債などが対象の「特別マル優」があります。それぞれ350万円まで非課税対象のため、両方適用する場合は最大700万円までの利息について非課税で受け取れます。
なお、マル優・特別マル優を利用するには、預け入れの日までに金融機関の窓口で手帳・証書やマイナンバーなどを提示しなければなりません。
参考)国税庁「障害者と税」
障害者控除まとめ
障害者控除とは、納税者本人やその配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合に適用できる所得控除です。障害の内容や同居の有無などによって、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の区分があり、それぞれ控除額が異なります。
2025年度の税制改正において、障害者控除の控除額には特段変更がありません。ただし、「扶養親族」や「同一生計配偶者」の合計所得要件に変更があるため、要件を確認する際に注意しましょう。