更新日:2024年07月04日
ひとり親控除とは、ひとり親が一定金額の所得控除を受けられる制度を指します。適用するためには、婚姻をしていない・生計を一にする子どもがいる・合計所得が一定額以下などの要件を満たさなければなりません。
本記事では、ひとり親控除とは何かを説明した上で、対象者や要件について詳しく解説します。
目次
ひとり親控除とは、納税者がひとり親である際に、一定金額の所得控除を受けられる制度を指します。
2020年の税制改正に伴い、新たにひとり親控除の制度が誕生しました。また、ひとり親控除が新設されたタイミングで、「寡夫控除」が廃止されています。
寡夫控除とは、納税者が寡夫(妻と死別しているなどの人)である場合に、生計を一にする子がいるなどの要件を満たせば27万円の控除が受けられる制度です。男性が対象の寡夫控除が廃止される一方で、女性が対象の寡婦控除の制度はそのまま残っています。
ここから、ひとり親控除の対象者や控除額について確認していきましょう。
参考)国税庁「No.1171 ひとり親控除」
ひとり親控除適用の対象者は、シングルマザーやシングルファザーです。廃止された寡夫控除と異なり、性別による制限は設けられておりません。
ただし、ひとり親控除を適用するためには、生計を一にする子どもがいることや、合計所得金額が500万円以下であることなど、いくつかの要件を満たすことが必要です。要件については、のちほど詳しく解説します。
ひとり親控除を適用することで受けられる所得控除額は、35万円です。廃止された寡夫控除(27万円)と比較すると、控除額は増加しています。
なお、所得税と住民税でひとり親控除の控除額が異なる点に注意しましょう。ひとり親控除を適用することで所得税は35万円控除されるのに対し、住民税で控除されるのは30万円です。
ひとり親控除を適用するためには、主に以下の要件を満たさなければなりません。
それぞれ詳しく解説します。
納税の対象となる年の12月31日時点で、婚姻(*)をしていないことがひとり親控除を適用するための要件です。過去に結婚していたか、未婚のままであるかは関係ありません。
たとえば、もともとシングルマザーやシングルファザーであっても、再婚すればその年にひとり親控除を適用できない点に注意が必要です。
また、たとえ婚姻していても、配偶者の生死が明らかではない場合は、ひとり親控除の対象となる場合があります。「生死が明らかではない」ケースの具体例は、船舶の沈没などの事故で生死不明、3年以上生死が明らかでないなどです。
(*)両性の合意と婚姻届の提出することによって成立する、法律上の「結婚」のこと
事実婚の相手がいないことも、ひとり親控除を受けるための要件です。事実婚とは、婚姻届を提出していなくても、事実上夫婦としての実態を有する関係を指します。
事実婚の有無を確認する際の基準のひとつが、住民票への記載内容です。たとえば、住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」などといった記載があれば、各種要件を満たしていたとしても、ひとり親控除は適用できません。
なお、事実婚を証明する主な方法は、住民登録以外にも公正証書の作成やパートナーシップ制度の利用などです。事実婚を選べば夫婦別姓にできるなどのメリットがある一方で、「ひとり親控除」だけでなく「配偶者控除」などの制度も適用できなくなります。なぜなら、配偶者控除は「民法の規定による配偶者」であることを要件として定められているためです。
生計を一にする子どもがいることも、ひとり親控除を適用するための要件のひとつです。「生計を一にする」とは、日常の生活の資を共にすることを指します。
「生計を一にする」ためには、必ずしも同居が条件ではありません。単身赴任などの事情により子どもと別居している場合、子どもが修学や勤務などの都合で別居している場合でも、生活費や教育費などの送金があれば「生計を一にする」ことを意味します。
また、対象の子どもの総所得金額などが48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこともポイントです。さらに、「生計を一にする」場合でも、相手が子以外の扶養親族(孫など)の場合はひとり親控除を適用できません。
なお、子どもが成人を迎えたとしても、年収面などの要件を満たしていれば、ひとり親控除を適用できる可能性があります。
ひとり親控除を適用するには、合計所得金額の上限(500万円以下)も要件として定められています。
合計所得は、年収とは異なる概念であることに注意しましょう。合計所得は、以下の合計に、退職所得金額と山林所得金額を加えた金額のことです。ただし、純損失や雑損失・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失・上場株式等にかかる譲渡損失などで繰越控除を受けている場合は、適用前の金額を指します。
なお、収入が給与のみの場合は、年収およそ677万円が上限の目安です。たとえば、合計所得金額が560万円の場合や、給与収入が700万円の場合は、控除を適用できません。
参考)国税庁「専門用語集ー合計所得金額」
以下のケースに該当する場合は、ひとり親控除を適用する際に注意しなければなりません。
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
1年の途中で配偶者と離婚した場合や配偶者と死別した場合は、他の要件を満たしていればその年にひとり親控除を受けられます。なぜなら、ひとり親控除は対象年の12月31日時点の状況で可否を判断されるためです。
その反対に、1年の途中で結婚したり、事実婚の状態になったりした場合は、その年のひとり親控除の対象になりません。婚姻届・離婚届を提出する際は、ひとり親控除のタイミングも意識しておきましょう。
元配偶者から子どもの養育費(*)を受け取っている場合、ひとり親控除を適用できない可能性があるため注意が必要です。
「同居」は「生計を一にする」ことの条件ではありません。たとえ子どもと一緒に暮らしているのは自分であっても、養育費の額などによって元配偶者が子どもと生計を一にしている(扶養している)と判断されることがあります。
なお、ひとり親控除は、子どもに対してひとりの親だけが適用できる制度です。そのため、元夫婦のうち一方がひとり親控除を適用すると、他方は適用できないことになります。
(*)子どもの監護や教育のために必要な費用。子どもを監護している親が、他方の親から受け取れる
子どもに一定の収入があるケースでも、ひとり親控除を適用する際に注意しなければなりません。なぜなら、納税者だけでなく子どもにも総所得金額の上限が設けられているためです。
生計を一にする子がいて各条件を満たしていても、子どもの合計所得金額が48万円(給与収入のみの場合は年収103万円)を超えていれば適用できません。子どもが学生であっても、アルバイトやパートによる給与収入、フードデリバリー配達員の雑所得(事業所得)などによって、上限を超えるケースはあるでしょう。
ひとり親控除の申請方法は、以下の2つです。
各申請方法とその手順について、詳しく解説します。
会社員などの給与所得者は、年末調整で「ひとり親控除」を申請できます。年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と年税額を一致させるための精算手続きのことです。
一般的に、以下の流れで年末調整します。
ここから、手順を確認していきましょう。
11月に入ると、会社の人事部などの部署が従業員に対して年末調整の書類を配布します。年末調整に関する書類は、以下のとおりです。
配布にあたって、会社側は従業員に提出期限を伝えます。
従業員は、書類を受け取ったら自身や家族に関係する書類の該当項目に記載していきます。そのうち、ひとり親控除に関連する書類は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
書類には、「C障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の項目があります。その中で、「ひとり親」の部分にレ点を入れれば、ひとり親控除自体の申請は完了です。
ひとり親控除以外に関する必要事項を記載し終えたら、会社(人事部など)に提出します。
会社は、年末調整の書類を従業員から回収したら、計算して法定調書を作成します。ひとり親控除を適用する従業員がいる場合は、要件を満たしている(例:事実婚状態にないかなど)ことの確認が必要です。
なお、法定調書とは源泉徴収票・支払調書・給与支払報告書のことです。源泉徴収票と支払調書は税務署、給与支払報告書は従業員が居住する市町村に提出します。
一部の会社員や個人事業主・フリーランスなどは、確定申告で「ひとり親控除」を申告しなければなりません。(所得税の)確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの額を計算して確定させる手続きを指します。
確定申告の一般的な流れは、以下のとおりです。
各手順を解説します。
年が明けたら、確定申告書類の作成を開始します。確定申告書の中で、ひとり親控除に関する書類は第一表と第二表です。
まず、第一表の「所得から差し引かれる金額」にある「寡婦、ひとり親控除」にひとり親控除の額(350000)を記載します。また、区分欄に「1」の記載が必要です。
続いて、第二表の「本人に関する事項」で、「ひとり親」に⚪︎をつけます。
ひとり親控除以外の確定申告に必要な事項の記入(入力)も終えたら、確定申告書を提出します。提出方法は、以下のとおりです。
なお、確定申告は原則として2月16日から3月15日までに終えなければなりません。期限に遅れないようにしましょう。
ひとり親控除と混同しやすい制度のひとつが、寡婦控除です。主な違いとして、以下の点が挙げられます。
まず、寡婦控除の方が適用できる額が少ないです。一方で、寡婦控除は「子ども」がいる場合だけでなく、孫がいる場合なども対象になりえます。
また、寡婦控除は、女性(シングルマザー)のみが対象である点も違いです。さらに、寡婦控除は一度は婚姻関係にあることが求められます(未婚のケースは対象外)。
寡婦控除の概要については、次でより詳しく確認していきましょう。
寡婦控除とは、納税者自身が寡婦である場合に、一定金額の所得控除を受けられる制度です。ここから、対象者・要件・控除額や、申請方法について解説します。
寡婦控除の対象者は、合計所得金額が500万円以下の女性(シングルマザー)です。また、原則として対象年の12月31日に「ひとり親」に該当せず、以下いずれかの要件を満たすことが求められます。
寡婦控除対象の場合、27万円を控除できます。2019年以前は「一般」と「特別」で控除額が異なりましたが、2020年以降統一されました。
なお、ひとり親控除と寡婦控除の同時適用はできません。
寡婦控除の対象者は、ひとり親控除と同様に年末調整や確定申告で寡婦控除を申請可能です。
会社員などで年末調整する場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄で「寡婦」にレ点を入れます。
個人事業主などが確定申告する場合は、第一表の「寡婦、ひとり親控除」に金額(270000)の記載が必要です。また、第二表の「本人に関する事項」欄で「寡婦」に⚪︎をつけ、該当する事由にレ点を入れます。
扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。ひとり親控除と扶養控除の主な違いとして、以下の点が挙げられます。
納税者が対象者と「納税者と生計を一にしていること」、対象者の「合計所得金額が48万円以下であること」が要件である点は、ひとり親控除も扶養控除も同じです。ただし、扶養控除の対象は「子」ではなく「扶養親族」である点が異なります。
また、扶養控除は対象者のその年12月31日現在の年齢が16歳以上であることが要件である点も違いです。さらに、扶養控除の適用額には、年齢などの条件によって38万〜63万円の幅があります。
ひとり親控除・寡婦控除の組み合わせと異なり、ひとり親控除と扶養控除は両方適用できる場合があります。ただし、両方同時に適用できるのは、「子ども」が「16歳以上」のケースのみです。
たとえば、12月31日時点で年間の合計所得金額が48万円以下の大学生(20歳)の子どもがいる場合、その他の要件を満たせばひとり親控除の35万円と扶養控除の63万円(特定扶養親族に該当するため)を控除できる可能性があります。
なお、ひとり親控除ではなく寡婦控除に該当する場合も、状況次第で扶養控除と同時に適用可能です。
ひとり親控除とは、納税者がひとり親である際に、一定金額の所得控除を適用できる制度です。婚姻歴のある女性(シングルマザー)だけでなく、男性や未婚の場合でも適用できることがあります。
ただし、子どもと同居している場合でも、元配偶者から養育費を受け取っている場合は金額次第で対象にならないことがあるため注意が必要です。また、子どもが学生であっても、フードデリバリー配達員の雑所得(事業所得)などにより、合計所得の上限を超えることがあります。
控除を受けるには、年末調整や確定申告で申告しなければなりません。税負担の軽減につながるため、要件を満たす可能性がある場合は、忘れずひとり親控除を申告しましょう。
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ひとり親控除とは、ひとり親が一定金額の所得控除を受けられる制度を指します。適用するためには、婚姻をしていない・生計を一にする子どもがいる・合計所得が一定額以下などの要件を満たさなければなりません。
本記事では、ひとり親控除とは何かを説明した上で、対象者や要件について詳しく解説します。
目次
ひとり親控除とは
ひとり親控除とは、納税者がひとり親である際に、一定金額の所得控除を受けられる制度を指します。
2020年の税制改正に伴い、新たにひとり親控除の制度が誕生しました。また、ひとり親控除が新設されたタイミングで、「寡夫控除」が廃止されています。
寡夫控除とは、納税者が寡夫(妻と死別しているなどの人)である場合に、生計を一にする子がいるなどの要件を満たせば27万円の控除が受けられる制度です。男性が対象の寡夫控除が廃止される一方で、女性が対象の寡婦控除の制度はそのまま残っています。
ここから、ひとり親控除の対象者や控除額について確認していきましょう。
参考)国税庁「No.1171 ひとり親控除」
ひとり親控除の対象者
ひとり親控除適用の対象者は、シングルマザーやシングルファザーです。廃止された寡夫控除と異なり、性別による制限は設けられておりません。
ただし、ひとり親控除を適用するためには、生計を一にする子どもがいることや、合計所得金額が500万円以下であることなど、いくつかの要件を満たすことが必要です。要件については、のちほど詳しく解説します。
ひとり親控除の控除額
ひとり親控除を適用することで受けられる所得控除額は、35万円です。廃止された寡夫控除(27万円)と比較すると、控除額は増加しています。
なお、所得税と住民税でひとり親控除の控除額が異なる点に注意しましょう。ひとり親控除を適用することで所得税は35万円控除されるのに対し、住民税で控除されるのは30万円です。
ひとり親控除を適用できる要件
ひとり親控除を適用するためには、主に以下の要件を満たさなければなりません。
それぞれ詳しく解説します。
参考)国税庁「No.1171 ひとり親控除」
婚姻をしていない・配偶者の生死が明らかでない
納税の対象となる年の12月31日時点で、婚姻(*)をしていないことがひとり親控除を適用するための要件です。過去に結婚していたか、未婚のままであるかは関係ありません。
たとえば、もともとシングルマザーやシングルファザーであっても、再婚すればその年にひとり親控除を適用できない点に注意が必要です。
また、たとえ婚姻していても、配偶者の生死が明らかではない場合は、ひとり親控除の対象となる場合があります。「生死が明らかではない」ケースの具体例は、船舶の沈没などの事故で生死不明、3年以上生死が明らかでないなどです。
(*)両性の合意と婚姻届の提出することによって成立する、法律上の「結婚」のこと
事実婚の相手がいない
事実婚の相手がいないことも、ひとり親控除を受けるための要件です。事実婚とは、婚姻届を提出していなくても、事実上夫婦としての実態を有する関係を指します。
事実婚の有無を確認する際の基準のひとつが、住民票への記載内容です。たとえば、住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」などといった記載があれば、各種要件を満たしていたとしても、ひとり親控除は適用できません。
なお、事実婚を証明する主な方法は、住民登録以外にも公正証書の作成やパートナーシップ制度の利用などです。事実婚を選べば夫婦別姓にできるなどのメリットがある一方で、「ひとり親控除」だけでなく「配偶者控除」などの制度も適用できなくなります。なぜなら、配偶者控除は「民法の規定による配偶者」であることを要件として定められているためです。
生計を一にする子がいる
生計を一にする子どもがいることも、ひとり親控除を適用するための要件のひとつです。「生計を一にする」とは、日常の生活の資を共にすることを指します。
「生計を一にする」ためには、必ずしも同居が条件ではありません。単身赴任などの事情により子どもと別居している場合、子どもが修学や勤務などの都合で別居している場合でも、生活費や教育費などの送金があれば「生計を一にする」ことを意味します。
また、対象の子どもの総所得金額などが48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこともポイントです。さらに、「生計を一にする」場合でも、相手が子以外の扶養親族(孫など)の場合はひとり親控除を適用できません。
なお、子どもが成人を迎えたとしても、年収面などの要件を満たしていれば、ひとり親控除を適用できる可能性があります。
合計所得金額が500万円以下
ひとり親控除を適用するには、合計所得金額の上限(500万円以下)も要件として定められています。
合計所得は、年収とは異なる概念であることに注意しましょう。合計所得は、以下の合計に、退職所得金額と山林所得金額を加えた金額のことです。ただし、純損失や雑損失・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失・上場株式等にかかる譲渡損失などで繰越控除を受けている場合は、適用前の金額を指します。
なお、収入が給与のみの場合は、年収およそ677万円が上限の目安です。たとえば、合計所得金額が560万円の場合や、給与収入が700万円の場合は、控除を適用できません。
参考)国税庁「専門用語集ー合計所得金額」
ひとり親控除で注意が必要なケース
以下のケースに該当する場合は、ひとり親控除を適用する際に注意しなければなりません。
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
1年の途中で離婚・死別したケース
1年の途中で配偶者と離婚した場合や配偶者と死別した場合は、他の要件を満たしていればその年にひとり親控除を受けられます。なぜなら、ひとり親控除は対象年の12月31日時点の状況で可否を判断されるためです。
その反対に、1年の途中で結婚したり、事実婚の状態になったりした場合は、その年のひとり親控除の対象になりません。婚姻届・離婚届を提出する際は、ひとり親控除のタイミングも意識しておきましょう。
元配偶者から養育費を受け取っているケース
元配偶者から子どもの養育費(*)を受け取っている場合、ひとり親控除を適用できない可能性があるため注意が必要です。
「同居」は「生計を一にする」ことの条件ではありません。たとえ子どもと一緒に暮らしているのは自分であっても、養育費の額などによって元配偶者が子どもと生計を一にしている(扶養している)と判断されることがあります。
なお、ひとり親控除は、子どもに対してひとりの親だけが適用できる制度です。そのため、元夫婦のうち一方がひとり親控除を適用すると、他方は適用できないことになります。
(*)子どもの監護や教育のために必要な費用。子どもを監護している親が、他方の親から受け取れる
子どもに一定の収入があるケース
子どもに一定の収入があるケースでも、ひとり親控除を適用する際に注意しなければなりません。なぜなら、納税者だけでなく子どもにも総所得金額の上限が設けられているためです。
生計を一にする子がいて各条件を満たしていても、子どもの合計所得金額が48万円(給与収入のみの場合は年収103万円)を超えていれば適用できません。子どもが学生であっても、アルバイトやパートによる給与収入、フードデリバリー配達員の雑所得(事業所得)などによって、上限を超えるケースはあるでしょう。
ひとり親控除の申請方法
ひとり親控除の申請方法は、以下の2つです。
各申請方法とその手順について、詳しく解説します。
年末調整で申請する方法
会社員などの給与所得者は、年末調整で「ひとり親控除」を申請できます。年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と年税額を一致させるための精算手続きのことです。
一般的に、以下の流れで年末調整します。
ここから、手順を確認していきましょう。
1. 会社が従業員に書類を配布する
11月に入ると、会社の人事部などの部署が従業員に対して年末調整の書類を配布します。年末調整に関する書類は、以下のとおりです。
配布にあたって、会社側は従業員に提出期限を伝えます。
2. 従業員が年末調整を作成して会社に提出する
従業員は、書類を受け取ったら自身や家族に関係する書類の該当項目に記載していきます。そのうち、ひとり親控除に関連する書類は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
書類には、「C障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の項目があります。その中で、「ひとり親」の部分にレ点を入れれば、ひとり親控除自体の申請は完了です。
ひとり親控除以外に関する必要事項を記載し終えたら、会社(人事部など)に提出します。
3. 会社が法定調書を作成して所管に提出する
会社は、年末調整の書類を従業員から回収したら、計算して法定調書を作成します。ひとり親控除を適用する従業員がいる場合は、要件を満たしている(例:事実婚状態にないかなど)ことの確認が必要です。
なお、法定調書とは源泉徴収票・支払調書・給与支払報告書のことです。源泉徴収票と支払調書は税務署、給与支払報告書は従業員が居住する市町村に提出します。
確定申告で申告する方法
一部の会社員や個人事業主・フリーランスなどは、確定申告で「ひとり親控除」を申告しなければなりません。(所得税の)確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの額を計算して確定させる手続きを指します。
確定申告の一般的な流れは、以下のとおりです。
各手順を解説します。
1. 確定申告書類を作成する
年が明けたら、確定申告書類の作成を開始します。確定申告書の中で、ひとり親控除に関する書類は第一表と第二表です。
まず、第一表の「所得から差し引かれる金額」にある「寡婦、ひとり親控除」にひとり親控除の額(350000)を記載します。また、区分欄に「1」の記載が必要です。
続いて、第二表の「本人に関する事項」で、「ひとり親」に⚪︎をつけます。
2. 確定申告書を提出する
ひとり親控除以外の確定申告に必要な事項の記入(入力)も終えたら、確定申告書を提出します。提出方法は、以下のとおりです。
なお、確定申告は原則として2月16日から3月15日までに終えなければなりません。期限に遅れないようにしましょう。
ひとり親控除と寡婦控除の違い
ひとり親控除と混同しやすい制度のひとつが、寡婦控除です。主な違いとして、以下の点が挙げられます。
まず、寡婦控除の方が適用できる額が少ないです。一方で、寡婦控除は「子ども」がいる場合だけでなく、孫がいる場合なども対象になりえます。
また、寡婦控除は、女性(シングルマザー)のみが対象である点も違いです。さらに、寡婦控除は一度は婚姻関係にあることが求められます(未婚のケースは対象外)。
寡婦控除の概要については、次でより詳しく確認していきましょう。
寡婦控除とは
寡婦控除とは、納税者自身が寡婦である場合に、一定金額の所得控除を受けられる制度です。ここから、対象者・要件・控除額や、申請方法について解説します。
寡婦控除の対象者・要件・控除額
寡婦控除の対象者は、合計所得金額が500万円以下の女性(シングルマザー)です。また、原則として対象年の12月31日に「ひとり親」に該当せず、以下いずれかの要件を満たすことが求められます。
寡婦控除対象の場合、27万円を控除できます。2019年以前は「一般」と「特別」で控除額が異なりましたが、2020年以降統一されました。
なお、ひとり親控除と寡婦控除の同時適用はできません。
寡婦控除の申請方法
寡婦控除の対象者は、ひとり親控除と同様に年末調整や確定申告で寡婦控除を申請可能です。
会社員などで年末調整する場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄で「寡婦」にレ点を入れます。
個人事業主などが確定申告する場合は、第一表の「寡婦、ひとり親控除」に金額(270000)の記載が必要です。また、第二表の「本人に関する事項」欄で「寡婦」に⚪︎をつけ、該当する事由にレ点を入れます。
ひとり親控除と扶養控除の違い
扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。ひとり親控除と扶養控除の主な違いとして、以下の点が挙げられます。
納税者が対象者と「納税者と生計を一にしていること」、対象者の「合計所得金額が48万円以下であること」が要件である点は、ひとり親控除も扶養控除も同じです。ただし、扶養控除の対象は「子」ではなく「扶養親族」である点が異なります。
また、扶養控除は対象者のその年12月31日現在の年齢が16歳以上であることが要件である点も違いです。さらに、扶養控除の適用額には、年齢などの条件によって38万〜63万円の幅があります。
ひとり親控除・扶養控除は両方適用できることがある
ひとり親控除・寡婦控除の組み合わせと異なり、ひとり親控除と扶養控除は両方適用できる場合があります。ただし、両方同時に適用できるのは、「子ども」が「16歳以上」のケースのみです。
たとえば、12月31日時点で年間の合計所得金額が48万円以下の大学生(20歳)の子どもがいる場合、その他の要件を満たせばひとり親控除の35万円と扶養控除の63万円(特定扶養親族に該当するため)を控除できる可能性があります。
なお、ひとり親控除ではなく寡婦控除に該当する場合も、状況次第で扶養控除と同時に適用可能です。
ひとり親控除まとめ
ひとり親控除とは、納税者がひとり親である際に、一定金額の所得控除を適用できる制度です。婚姻歴のある女性(シングルマザー)だけでなく、男性や未婚の場合でも適用できることがあります。
ただし、子どもと同居している場合でも、元配偶者から養育費を受け取っている場合は金額次第で対象にならないことがあるため注意が必要です。また、子どもが学生であっても、フードデリバリー配達員の雑所得(事業所得)などにより、合計所得の上限を超えることがあります。
控除を受けるには、年末調整や確定申告で申告しなければなりません。税負担の軽減につながるため、要件を満たす可能性がある場合は、忘れずひとり親控除を申告しましょう。