令和2年度の税制改正において、従来の寡婦(寡夫)控除が見直され、未婚のひとり親でも所得税の控除を受けられる「ひとり親控除」が創設されました。今回はひとり親控除について解説します。※2020年10月20日に更新
もともと令和元年までの寡婦(寡夫)控除は、戦争未亡人のための制度でした。そのため離婚や死別などの理由でひとり親となった方が対象であり、未婚のひとり親は対象外でした。しかし、未婚のひとり親が対象外になるのは不公平との理由から見直しが進められてきました。
これまで未婚のひとり親は寡婦(寡夫)控除が受けられませんでした。また女性のひとり親が寡婦控除を受ける場合と男性のひとり親が受ける場合とでは、男性のひとり親が寡夫控除を受ける場合の控除額が少なく、男女間でも扱いが異なっていました。そこで、昨今の生活様式の変化やひとり親の貧困問題に対応するため、令和2年度の税制改正で「ひとり親控除」という制度が新設されました。
それでは、ひとり親控除の適用要件や控除額などの説明をします。
ひとり親控除の適用要件は、その年の12月31日現在で婚姻をしていないことです(または配偶者の生死が明らかでない人)。加えて、以下の3つの要件全てに当てはまる人が、ひとり親控除の対象です。
※生計を同一にする子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと
※純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失、特定居住用財産の譲渡損失、上場株式等に係る譲渡損失、特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額の合計額のこと
上記の適用要件を満たしていれば、性別や婚姻歴に関係なく35万円の所得控除が令和2年分から適用されます。令和2年分は年末調整もしくは確定申告で控除が受けられ、令和3年以降は月々の源泉徴収、確定申告で適用されます。
今回の改正によって、今まで控除を受けられなかった未婚のひとり親が要件を満たせば控除を受けられるようになりました。その他の影響について解説します。
ひとり親控除を受けられる人は、従来の制度との比較で控除額が次のように変わります。
また、令和3年度分以後の個人住民税についても同様に改正され、ひとり親控除の控除額は30万円、寡婦控除の控除額は26万円です。
ひとり親ではない寡婦には引き続き寡婦控除が適用され、以下の要件を満たしていれば27万円の所得控除が令和2年分から適用されます。
【夫と離婚した場合】
【夫が死亡した場合】
改正前の寡婦控除の要件に所得金額と事実上の婚姻の要件が加わりました。これまで寡婦控除の対象ではなかった方が改正後の寡婦に該当することはありません。
今回の改正のポイントは、合計所得金額が500万円を超える人は適用が受けられなくなった点です。また、事実婚関係にある人は、ひとり親控除や改正後の寡婦控除の適用対象外です。
出典:財務省パンフレット「令和2年度税制改正」
ひとり親控除は令和2年分以後の所得税から適用され、令和2年分は年末調整および確定申告にて適用されます。ご自身で確定申告される方で、今回の改正によって控除額が変わる方は注意が必要です。
ひとり親控除や改正後の寡婦控除の適用は、令和2年の所得税分からです。給与所得者は、令和2年分が年末調整で調整され、令和3年以降は月々の源泉徴収で適用されます。すでに提出済みの令和2年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書には「ひとり親」の欄が設けられていないので、寡婦・特別の寡婦・寡夫に該当する場合は下記のように読みかえ適用します。
今回の改正で控除を受けられるようになった方、反対に受けられなくなった方は年末調整の時期に申し出ましょう。
今回の改正で、ひとり親であれば婚姻歴の有無や男女に関わらず、税制上の優遇を平等に受けられるようになりました。これまで対象でなかった人は、勤務先の窓口や確定申告相談窓口を利用するなどして、しっかりと申告し控除してもらうようにしましょう。
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令和2年度の税制改正において、従来の寡婦(寡夫)控除が見直され、未婚のひとり親でも所得税の控除を受けられる「ひとり親控除」が創設されました。今回はひとり親控除について解説します。※2020年10月20日に更新
未婚のひとり親も控除を受けられるように
もともと令和元年までの寡婦(寡夫)控除は、戦争未亡人のための制度でした。そのため離婚や死別などの理由でひとり親となった方が対象であり、未婚のひとり親は対象外でした。しかし、未婚のひとり親が対象外になるのは不公平との理由から見直しが進められてきました。
ひとり親控除が創設された背景
これまで未婚のひとり親は寡婦(寡夫)控除が受けられませんでした。また女性のひとり親が寡婦控除を受ける場合と男性のひとり親が受ける場合とでは、男性のひとり親が寡夫控除を受ける場合の控除額が少なく、男女間でも扱いが異なっていました。そこで、昨今の生活様式の変化やひとり親の貧困問題に対応するため、令和2年度の税制改正で「ひとり親控除」という制度が新設されました。
ひとり親控除の内容
それでは、ひとり親控除の適用要件や控除額などの説明をします。
適用要件
ひとり親控除の適用要件は、その年の12月31日現在で婚姻をしていないことです(または配偶者の生死が明らかでない人)。加えて、以下の3つの要件全てに当てはまる人が、ひとり親控除の対象です。
※生計を同一にする子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと
※純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失、特定居住用財産の譲渡損失、上場株式等に係る譲渡損失、特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額の合計額のこと
控除額と適用開始時期
上記の適用要件を満たしていれば、性別や婚姻歴に関係なく35万円の所得控除が令和2年分から適用されます。令和2年分は年末調整もしくは確定申告で控除が受けられ、令和3年以降は月々の源泉徴収、確定申告で適用されます。
改正による影響は?
今回の改正によって、今まで控除を受けられなかった未婚のひとり親が要件を満たせば控除を受けられるようになりました。その他の影響について解説します。
ひとり親控除の適用を受けられる人
ひとり親控除を受けられる人は、従来の制度との比較で控除額が次のように変わります。
また、令和3年度分以後の個人住民税についても同様に改正され、ひとり親控除の控除額は30万円、寡婦控除の控除額は26万円です。
ひとり親でない寡婦には寡婦控除が適用
ひとり親ではない寡婦には引き続き寡婦控除が適用され、以下の要件を満たしていれば27万円の所得控除が令和2年分から適用されます。
【夫と離婚した場合】
【夫が死亡した場合】
改正前の寡婦控除の要件に所得金額と事実上の婚姻の要件が加わりました。これまで寡婦控除の対象ではなかった方が改正後の寡婦に該当することはありません。
今回の改正のポイントは、合計所得金額が500万円を超える人は適用が受けられなくなった点です。また、事実婚関係にある人は、ひとり親控除や改正後の寡婦控除の適用対象外です。
出典:財務省パンフレット「令和2年度税制改正」
ひとり親控除の適用を受けるための手続き
ひとり親控除は令和2年分以後の所得税から適用され、令和2年分は年末調整および確定申告にて適用されます。ご自身で確定申告される方で、今回の改正によって控除額が変わる方は注意が必要です。
源泉徴収は令和3年分以降から
ひとり親控除や改正後の寡婦控除の適用は、令和2年の所得税分からです。給与所得者は、令和2年分が年末調整で調整され、令和3年以降は月々の源泉徴収で適用されます。すでに提出済みの令和2年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書には「ひとり親」の欄が設けられていないので、寡婦・特別の寡婦・寡夫に該当する場合は下記のように読みかえ適用します。
今回の改正で控除を受けられるようになった方、反対に受けられなくなった方は年末調整の時期に申し出ましょう。
ひとり親控除のまとめ
今回の改正で、ひとり親であれば婚姻歴の有無や男女に関わらず、税制上の優遇を平等に受けられるようになりました。これまで対象でなかった人は、勤務先の窓口や確定申告相談窓口を利用するなどして、しっかりと申告し控除してもらうようにしましょう。