更新日:2024年10月29日
扶養控除等申告書とは、給与所得者が税金の控除を受けるために提出する重要な書類です。年末調整の時期が近づくと、多くの会社員の方々が頭を悩ませる課題の一つではないでしょうか。正しく記入し提出することで、適切な税金控除を受けられるだけでなく、家計の負担も軽減できます。本記事では、扶養控除等申告書の基本的な内容から記入方法、年末調整時の注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整の際に勤務先に提出する重要な書類です。この申告書は、給与所得者が所得控除を受けるために必要なものであり、略して「扶養控除等申告書」「マル扶」などと呼ばれます。
扶養控除や配偶者控除をはじめとするさまざまな控除を申請するために、この書類の提出が必要です。書類の内容をもとに正確な税額が計算されます。
扶養控除等申告書の提出者には、一般社員だけでなくパートやアルバイトなど給与を得ているすべての給与所得者が含まれます。この申告書は、扶養控除の計算が必要かどうかを確認するためのものであり、扶養親族がいない場合でも提出を求められます。
ただし、給与収入が2,000万円を超える人やすでに退職している人など年末調整の対象外となる場合は、扶養控除等申告書の提出は不要です。
扶養控除の対象となる人(控除対象扶養親族)とは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在で16歳以上の人を指します。
扶養親族は、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
なお、納税者が年の途中で死亡または出国する場合は、その時点での状況で判断されます。
「扶養控除」と「配偶者控除」は、いずれも所得控除の一種ですが、対象となる人に違いがあるため注意しましょう。
扶養控除は、16歳以上の扶養親族を対象としており、その要件を満たす家族がいる場合に適用されます。
「配偶者控除」は配偶者に対して適用される控除です。適用を受けるためには、配偶者の年間所得が48万円以下(給与収入であれば年収103万円以下)であり、さらに納税者と生計を一にしている必要があります。また、「配偶者特別控除」という仕組みもあり、これは配偶者の所得が48万円を超え、133万円以下の場合に適用される制度です。ただし、どちらの控除も、納税者本人の年間合計所得が1,000万円を超えると適用されません。
扶養控除等申告書は、その年の最初の給与支払日前日までに提出しなければなりません。中途で就職した場合は、最初の給与支払日前日が提出期限です。
申告書に記入した内容に変更があった際は、その変更日以降、最初に給与が支払われる日の前日までに新しい内容について記入した申告書を提出する必要があります。
さらに、非居住者の親族に対する扶養控除や障害者控除を受ける場合は、その年の最後の給与支払日前日までに、その親族と生計を共にしている事実について記入した申告書を提出しなければなりません。
継続勤務中であれば、年末調整の時期に合わせて申告書を提出します。
扶養控除等申告書は、年末調整時に必ず渡される重要な書類であり、提出しないケースは少ないでしょう。しかし、もしこの申告書を提出しなかった場合には、さまざまな影響が生じてしまうため注意してください。
まず、所得税の控除を受けられず、結果として税金が高くなります。また、自分で確定申告をしなければなりません。
確定申告もしなかった場合には、罰則が科される可能性もあり、その結果、支払う税金がさらに増えてしまうことも考えられます。
そのため、扶養控除の対象となる家族がいない場合でも、必ず申告書を提出するようにしましょう。
毎年の年末調整や確定申告の時期になると、多くの人が「扶養控除等申告書」と向き合うことになります。この申告書は、個人の所得税を正確に計算するために欠かせない重要な書類です。しかし、その内容は複雑で、どの控除が自分に適用されるのか判断に迷う方も少なくありません。
この申告書を通じて確認できる控除には、さまざまな種類があります。配偶者や扶養家族に関する控除、障害者や特定の家族状況に対する控除など、個人の生活状況に応じた多様な控除が用意されているため、確認しておきましょう。
具体的には、以下のとおりです。
ここでは、扶養控除等申告書で確認できる主な控除の種類について、詳しく解説します。
「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、納税者本人の合計所得が1,000万円を超えない場合に適用される税制上の優遇措置です。
配偶者控除は、納税者に控除の対象となる配偶者がいる際に利用できる所得控除です。対象となる配偶者には、一般の配偶者だけでなく、70歳以上の「老人控除対象配偶者」も含まれます。控除を受けるためには、配偶者の年間所得が48万円以下でなければなりません。
配偶者特別控除は、配偶者控除が適用されない場合でも、配偶者の年間所得が48万円を超えて133万円以下である場合に適用され、配偶者の所得に応じて控除額が変わります。
また、配偶者がその年に青色申告の事業専従者として給与を受け取っていない、もしくは白色申告の事業専従者でないことも要件に含まれます。
参考)国税庁|No.1191 配偶者控除 参考)国税庁|No.1195 配偶者特別控除
扶養控除は、申告者本人に扶養親族がいる場合に適用される所得控除です。扶養親族には、納税者と生計を一にしている配偶者以外の親族や里子、養護を委託された高齢者などが該当します。
扶養親族となるためには、年間の所得が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)であることや、青色申告者の事業専従者として給与を受けていないことなど、いくつかの要件を満たす必要があります。また、控除対象となる扶養親族は、年齢が16歳以上であることも必要です。
控除額は、以下のとおりです。
参考)国税庁|No.1180 扶養控除
障害者控除は、納税者本人や同一生計配偶者、または扶養親族が障害者である場合に適用される所得控除の制度です。
控除額は一律ではなく、障害の程度に応じて異なり、重度と認定された場合は「特別障害者控除」としてより大きな控除額が適用されます。
年末調整や確定申告の際に、所定の申告書を提出することで、この控除を受けられます。
参考)国税庁|No.1160 障害者控除
寡婦控除は、離婚や死別後に再婚していない女性を対象とする所得税および住民税の控除制度です。
この控除を受けられるのは、民法上で婚姻関係にあった夫と離婚または死別した女性であり、一定の条件を満たした場合に適用されます。
控除額は令和2年(2020年)から27万円に統一されており、寡婦控除を受けるためには、年末調整や確定申告での申請が必要です。これにより所得税や住民税の負担が軽減されます。
ひとり親控除は、令和2年(2020年)分から導入された新しい控除制度です。それ以前は未婚のひとり親が所得控除を受けられませんでしたが、この控除が設けられたことで、該当者が控除を受けられるようになりました。
ひとり親控除を利用できるのは、12月31日時点で婚姻していない、もしくは配偶者の生死が不明な人で以下の3つの条件を満たしている場合です。
控除額は、子どもの人数にかかわらず一律で所得税35万円、住民税30万円です。
会社員の場合は年末調整、自営業などの方は確定申告で適用を受けられます。
勤労学生控除は、働きながら学校に通う学生が受けられる所得控除です。所得税で27万円、住民税で26万円の控除が適用されます。この制度を利用するには、次の3つの条件に当てはまらなければなりません。
年収103万円以下の場合には、所得税は課税されないため勤労学生控除の対象は年収103万円を超え、130万円以下の学生に限られます。
勤労による所得とは、実際に働いて得た収入から各種控除を引いた金額であり、アルバイト代などです。両親からの仕送りや奨学金などは含まれません。
合計所得金額は、年収から控除を引いた額であり、年収130万円までは給与所得控除(55万円)を利用して75万円に抑えられます。ただし、株やFX、アフィリエイトなどの所得が10万円を超えると、勤労学生控除の対象外となるため注意が必要です。
扶養控除等申告書は、給与所得者が毎年提出する重要な書類です。この申告書を正確に記入することで、適切な所得税の源泉徴収や住民税の計算がなされます。
しかし、多くの人にとって、この書類の記入は複雑で難しいものと感じられがちです。ここでは、扶養控除等申告書の各項目について、わかりやすく解説します。
記入項目は、以下のとおりです。
実際の扶養控除等申告書を見ながら、記入方法を確認しましょう。
扶養控除等申告書の最上部は、年末調整を受けるすべての従業員が記入すべき基本情報です。以下の項目を記入しましょう。
個人番号の記入は、勤務先によって不要な場合があるため、確認するようにしましょう。扶養対象の配偶者や親族がいない場合は、基本情報のみを記入し、勤務先に提出すれば問題ありません。
Aの源泉控除対象配偶者の欄には、以下の内容を記入します。
所得の見積額は、年間の収入から必要経費を差し引いて算出します。給与所得の場合は、給与所得控除が必要経費です。また、公的年金等控除額も差し引きます。
たとえば、配偶者がパートタイムで年間103万円の給与収入を得ている場合、所得額の計算は次のようになります。
年間の収入額1,030,000円から給与所得控除額550,000円を引くと、給与所得額は480,000円です。この場合、申告書には「480,000」と記入します。
当年末時点で16歳以上であり、その年の所得の見積額が48万円以下(年収103万円以下)である同一生計の親族がいる場合に書き込む欄です。
扶養親族が非居住者の場合は、親族関係書類と送金関係書類の添付が必要です。
扶養控除等申告書には、特別な状況に応じた控除項目があります。ここでは、障害者、寡婦・ひとり親、勤労学生に関する控除の記入方法について解説します。
障害者控除を申告するには、以下の手順で記入します。
扶養控除等申告書の「寡婦・ひとり親」の欄は以下の手順で記入します。
扶養控除等申告書の「勤労学生」の欄は、以下のように記入します。
勤労学生控除は、一定の条件を満たす学生が対象であり、控除を受けるためには給与所得やその他の所得に制限がある点に注意しましょう。
同一世帯に複数の所得者がいる場合、扶養親族を重複して申告することはできません。たとえば、夫婦が共働きで子どもがいる場合、子どもを扶養親族として控除できるのは、夫か妻のどちらか一方のみです。
このような場合、もう一方の所得者は「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の欄に、扶養親族である子どもの氏名と控除を受ける所得者の情報(たとえば夫または妻の氏名)を記入します。
「住民税に関する事項」欄は、以下の条件に該当する場合に記入が必要です。
年末調整は従業員にとって、1年間の税金の精算する重要な手続きです。その中でも「扶養控除等申告書」は、正しく記入することで所得税の控除を受け、納める税金を減らせる重要な書類です。
しかし、この申告書は記入欄が多く複雑なため、記入もれやミスが発生しやすいという側面も持ち合わせています。そこで、扶養控除等申告書の内容や提出に関する注意点について詳しく解説していきます。
扶養控除等申告書は年末調整をする際に必須となる重要な書類です。この書類に不備があった場合、再提出が必要となり、年末調整に影響が出る可能性もあります。そのため、提出期限には余裕をもたせることが大切です。
一般的に、扶養控除等申告書の提出期限は12月中旬頃に設定されますが、従業員からの回収が早めに完了すれば、よりスムーズに年末調整を進められます。税務署への提出が遅れた場合には、不備の修正や再提出の際、対応を急がなければならなくなるため、早めに提出するよう従業員に促しておくことも必要です。
また、新入社員がいる場合、その年の初めての給与支給前に扶養控除等申告書を提出する必要があるため、忘れずに対応するよう注意を促しておきましょう。
扶養控除等申告書は、扶養親族の有無にかかわらず、すべての従業員から提出を受ける必要があります。この書類は年末調整に不可欠であり、未提出の場合、所得税の控除が適用されず、従業員の税負担が増加してしまうため注意しなければなりません。
また、確定申告が必要となり、場合によっては罰則や追加税金のリスクも生じます。従業員に対して提出の徹底を図り、期限や提出方法を明確に伝達することが重要です。未提出者へのフォローアップも含め、適切な管理体制を整備しましょう。
扶養控除等申告書は、従業員が複数の勤務先から給与を受け取っている場合、主たる勤務先にのみ提出されます。すべての勤務先に提出されるわけではありませんが、主たる勤務先で控除しきれない所得税がある場合、従たる勤務先でも申告書の提出を求める場合があります。
ダブルワークをしている従業員が他の勤務先で申告書をすでに提出している場合、提出は不要です。ただし、もう一方の勤務先で年間20万円超の給与がある場合、従たる勤務先での給与について確定申告が必要となるため、従業員に確認するようにしましょう。
年末調整の作業は多岐にわたるため、早めの準備が求められます。税制改正の影響を受ける年末調整業務は、作業が複雑になりやすく、人的ミスも発生しやすい業務です。そのため、従業員が申告書の目的や役割を正しく理解し、間違いなく記入できる環境を整えることが不可欠になってきます。
そうした作業の煩雑化を見越して、年末調整をデジタル化することも一つの方策といえるでしょう。クラウドサービスの活用で、業務の効率化や生産性向上について、検討してみてはいかがでしょうか。
扶養控除等申告書は、給与所得者にとって重要な書類であり、年末調整で適切な所得控除を受けるためのカギとなります。
この申告書は、扶養控除や配偶者控除、ひとり親控除など、さまざまな控除を適用するための基礎となる書類です。したがって、正確に記入しなければなりません。
まず、扶養の対象となる人とその要件を正しく理解し、配偶者控除と扶養控除の違いを把握しましょう。また、年末調整時のミスを避けるためにも、期限に余裕をもって申告書を提出することが重要です。
そのほか、配偶者や扶養親族がいない場合でも申告書の提出が必要な点にも注意しなければなりません。
扶養控除等申告書は、従業員の税金に直接影響する重要な書類です。正確な記入と適切な提出により、正しい税金計算が行われるだけでなく、不要なトラブルを避けることにつながります。
この機会に、扶養控除等申告書の重要性を再認識し、正確に申告しましょう。
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扶養控除等申告書とは、給与所得者が税金の控除を受けるために提出する重要な書類です。年末調整の時期が近づくと、多くの会社員の方々が頭を悩ませる課題の一つではないでしょうか。正しく記入し提出することで、適切な税金控除を受けられるだけでなく、家計の負担も軽減できます。本記事では、扶養控除等申告書の基本的な内容から記入方法、年末調整時の注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整の際に勤務先に提出する重要な書類です。この申告書は、給与所得者が所得控除を受けるために必要なものであり、略して「扶養控除等申告書」「マル扶」などと呼ばれます。
扶養控除や配偶者控除をはじめとするさまざまな控除を申請するために、この書類の提出が必要です。書類の内容をもとに正確な税額が計算されます。
扶養控除等申告書の提出者
扶養控除等申告書の提出者には、一般社員だけでなくパートやアルバイトなど給与を得ているすべての給与所得者が含まれます。この申告書は、扶養控除の計算が必要かどうかを確認するためのものであり、扶養親族がいない場合でも提出を求められます。
ただし、給与収入が2,000万円を超える人やすでに退職している人など年末調整の対象外となる場合は、扶養控除等申告書の提出は不要です。
扶養控除の対象
扶養控除の対象となる人(控除対象扶養親族)とは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在で16歳以上の人を指します。
扶養親族は、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
なお、納税者が年の途中で死亡または出国する場合は、その時点での状況で判断されます。
「扶養控除」と「配偶者控除」の違い
「扶養控除」と「配偶者控除」は、いずれも所得控除の一種ですが、対象となる人に違いがあるため注意しましょう。
扶養控除は、16歳以上の扶養親族を対象としており、その要件を満たす家族がいる場合に適用されます。
「配偶者控除」は配偶者に対して適用される控除です。適用を受けるためには、配偶者の年間所得が48万円以下(給与収入であれば年収103万円以下)であり、さらに納税者と生計を一にしている必要があります。また、「配偶者特別控除」という仕組みもあり、これは配偶者の所得が48万円を超え、133万円以下の場合に適用される制度です。ただし、どちらの控除も、納税者本人の年間合計所得が1,000万円を超えると適用されません。
扶養控除等申告書を提出するタイミング
扶養控除等申告書は、その年の最初の給与支払日前日までに提出しなければなりません。中途で就職した場合は、最初の給与支払日前日が提出期限です。
申告書に記入した内容に変更があった際は、その変更日以降、最初に給与が支払われる日の前日までに新しい内容について記入した申告書を提出する必要があります。
さらに、非居住者の親族に対する扶養控除や障害者控除を受ける場合は、その年の最後の給与支払日前日までに、その親族と生計を共にしている事実について記入した申告書を提出しなければなりません。
継続勤務中であれば、年末調整の時期に合わせて申告書を提出します。
扶養控除等申告書を提出しないとどうなる?
扶養控除等申告書は、年末調整時に必ず渡される重要な書類であり、提出しないケースは少ないでしょう。しかし、もしこの申告書を提出しなかった場合には、さまざまな影響が生じてしまうため注意してください。
まず、所得税の控除を受けられず、結果として税金が高くなります。また、自分で確定申告をしなければなりません。
確定申告もしなかった場合には、罰則が科される可能性もあり、その結果、支払う税金がさらに増えてしまうことも考えられます。
そのため、扶養控除の対象となる家族がいない場合でも、必ず申告書を提出するようにしましょう。
扶養控除等申告書で確認できる控除の種類
毎年の年末調整や確定申告の時期になると、多くの人が「扶養控除等申告書」と向き合うことになります。この申告書は、個人の所得税を正確に計算するために欠かせない重要な書類です。しかし、その内容は複雑で、どの控除が自分に適用されるのか判断に迷う方も少なくありません。
この申告書を通じて確認できる控除には、さまざまな種類があります。配偶者や扶養家族に関する控除、障害者や特定の家族状況に対する控除など、個人の生活状況に応じた多様な控除が用意されているため、確認しておきましょう。
具体的には、以下のとおりです。
ここでは、扶養控除等申告書で確認できる主な控除の種類について、詳しく解説します。
配偶者控除・配偶者特別控除
「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、納税者本人の合計所得が1,000万円を超えない場合に適用される税制上の優遇措置です。
配偶者控除は、納税者に控除の対象となる配偶者がいる際に利用できる所得控除です。対象となる配偶者には、一般の配偶者だけでなく、70歳以上の「老人控除対象配偶者」も含まれます。控除を受けるためには、配偶者の年間所得が48万円以下でなければなりません。
配偶者特別控除は、配偶者控除が適用されない場合でも、配偶者の年間所得が48万円を超えて133万円以下である場合に適用され、配偶者の所得に応じて控除額が変わります。
また、配偶者がその年に青色申告の事業専従者として給与を受け取っていない、もしくは白色申告の事業専従者でないことも要件に含まれます。
参考)国税庁|No.1191 配偶者控除
参考)国税庁|No.1195 配偶者特別控除
扶養控除
扶養控除は、申告者本人に扶養親族がいる場合に適用される所得控除です。扶養親族には、納税者と生計を一にしている配偶者以外の親族や里子、養護を委託された高齢者などが該当します。
扶養親族となるためには、年間の所得が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)であることや、青色申告者の事業専従者として給与を受けていないことなど、いくつかの要件を満たす必要があります。また、控除対象となる扶養親族は、年齢が16歳以上であることも必要です。
控除額は、以下のとおりです。
参考)国税庁|No.1180 扶養控除
障害者控除
障害者控除は、納税者本人や同一生計配偶者、または扶養親族が障害者である場合に適用される所得控除の制度です。
控除額は一律ではなく、障害の程度に応じて異なり、重度と認定された場合は「特別障害者控除」としてより大きな控除額が適用されます。
年末調整や確定申告の際に、所定の申告書を提出することで、この控除を受けられます。
参考)国税庁|No.1160 障害者控除
寡婦控除
寡婦控除は、離婚や死別後に再婚していない女性を対象とする所得税および住民税の控除制度です。
この控除を受けられるのは、民法上で婚姻関係にあった夫と離婚または死別した女性であり、一定の条件を満たした場合に適用されます。
控除額は令和2年(2020年)から27万円に統一されており、寡婦控除を受けるためには、年末調整や確定申告での申請が必要です。これにより所得税や住民税の負担が軽減されます。
ひとり親控除
ひとり親控除は、令和2年(2020年)分から導入された新しい控除制度です。それ以前は未婚のひとり親が所得控除を受けられませんでしたが、この控除が設けられたことで、該当者が控除を受けられるようになりました。
ひとり親控除を利用できるのは、12月31日時点で婚姻していない、もしくは配偶者の生死が不明な人で以下の3つの条件を満たしている場合です。
控除額は、子どもの人数にかかわらず一律で所得税35万円、住民税30万円です。
会社員の場合は年末調整、自営業などの方は確定申告で適用を受けられます。
勤労学生控除
勤労学生控除は、働きながら学校に通う学生が受けられる所得控除です。所得税で27万円、住民税で26万円の控除が適用されます。この制度を利用するには、次の3つの条件に当てはまらなければなりません。
年収103万円以下の場合には、所得税は課税されないため勤労学生控除の対象は年収103万円を超え、130万円以下の学生に限られます。
勤労による所得とは、実際に働いて得た収入から各種控除を引いた金額であり、アルバイト代などです。両親からの仕送りや奨学金などは含まれません。
合計所得金額は、年収から控除を引いた額であり、年収130万円までは給与所得控除(55万円)を利用して75万円に抑えられます。ただし、株やFX、アフィリエイトなどの所得が10万円を超えると、勤労学生控除の対象外となるため注意が必要です。
扶養控除等申告書の書き方
扶養控除等申告書は、給与所得者が毎年提出する重要な書類です。この申告書を正確に記入することで、適切な所得税の源泉徴収や住民税の計算がなされます。
しかし、多くの人にとって、この書類の記入は複雑で難しいものと感じられがちです。ここでは、扶養控除等申告書の各項目について、わかりやすく解説します。
記入項目は、以下のとおりです。
実際の扶養控除等申告書を見ながら、記入方法を確認しましょう。
1.基本情報
扶養控除等申告書の最上部は、年末調整を受けるすべての従業員が記入すべき基本情報です。以下の項目を記入しましょう。
個人番号の記入は、勤務先によって不要な場合があるため、確認するようにしましょう。扶養対象の配偶者や親族がいない場合は、基本情報のみを記入し、勤務先に提出すれば問題ありません。
2.源泉控除対象配偶者
Aの源泉控除対象配偶者の欄には、以下の内容を記入します。
所得の見積額は、年間の収入から必要経費を差し引いて算出します。給与所得の場合は、給与所得控除が必要経費です。また、公的年金等控除額も差し引きます。
たとえば、配偶者がパートタイムで年間103万円の給与収入を得ている場合、所得額の計算は次のようになります。
年間の収入額1,030,000円から給与所得控除額550,000円を引くと、給与所得額は480,000円です。この場合、申告書には「480,000」と記入します。
3.控除対象扶養親族
当年末時点で16歳以上であり、その年の所得の見積額が48万円以下(年収103万円以下)である同一生計の親族がいる場合に書き込む欄です。
扶養親族が非居住者の場合は、親族関係書類と送金関係書類の添付が必要です。
4.障害者、寡婦・ひとり親又は勤労学生
扶養控除等申告書には、特別な状況に応じた控除項目があります。ここでは、障害者、寡婦・ひとり親、勤労学生に関する控除の記入方法について解説します。
障害者
障害者控除を申告するには、以下の手順で記入します。
寡婦・ひとり親
扶養控除等申告書の「寡婦・ひとり親」の欄は以下の手順で記入します。
勤労学生
扶養控除等申告書の「勤労学生」の欄は、以下のように記入します。
勤労学生控除は、一定の条件を満たす学生が対象であり、控除を受けるためには給与所得やその他の所得に制限がある点に注意しましょう。
5.他の所得者が控除を受ける扶養親族等
同一世帯に複数の所得者がいる場合、扶養親族を重複して申告することはできません。たとえば、夫婦が共働きで子どもがいる場合、子どもを扶養親族として控除できるのは、夫か妻のどちらか一方のみです。
このような場合、もう一方の所得者は「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の欄に、扶養親族である子どもの氏名と控除を受ける所得者の情報(たとえば夫または妻の氏名)を記入します。
6.住民税に関する事項
「住民税に関する事項」欄は、以下の条件に該当する場合に記入が必要です。
扶養控除等申告書に関する年末調整の注意点
年末調整は従業員にとって、1年間の税金の精算する重要な手続きです。その中でも「扶養控除等申告書」は、正しく記入することで所得税の控除を受け、納める税金を減らせる重要な書類です。
しかし、この申告書は記入欄が多く複雑なため、記入もれやミスが発生しやすいという側面も持ち合わせています。そこで、扶養控除等申告書の内容や提出に関する注意点について詳しく解説していきます。
扶養控除等申告書の提出期限は余裕をもたせる
扶養控除等申告書は年末調整をする際に必須となる重要な書類です。この書類に不備があった場合、再提出が必要となり、年末調整に影響が出る可能性もあります。そのため、提出期限には余裕をもたせることが大切です。
一般的に、扶養控除等申告書の提出期限は12月中旬頃に設定されますが、従業員からの回収が早めに完了すれば、よりスムーズに年末調整を進められます。税務署への提出が遅れた場合には、不備の修正や再提出の際、対応を急がなければならなくなるため、早めに提出するよう従業員に促しておくことも必要です。
また、新入社員がいる場合、その年の初めての給与支給前に扶養控除等申告書を提出する必要があるため、忘れずに対応するよう注意を促しておきましょう。
配偶者や扶養親族がいない場合も提出が必要
扶養控除等申告書は、扶養親族の有無にかかわらず、すべての従業員から提出を受ける必要があります。この書類は年末調整に不可欠であり、未提出の場合、所得税の控除が適用されず、従業員の税負担が増加してしまうため注意しなければなりません。
また、確定申告が必要となり、場合によっては罰則や追加税金のリスクも生じます。従業員に対して提出の徹底を図り、期限や提出方法を明確に伝達することが重要です。未提出者へのフォローアップも含め、適切な管理体制を整備しましょう。
2カ所以上から給料をもらっている場合は1カ所のみに提出する
扶養控除等申告書は、従業員が複数の勤務先から給与を受け取っている場合、主たる勤務先にのみ提出されます。すべての勤務先に提出されるわけではありませんが、主たる勤務先で控除しきれない所得税がある場合、従たる勤務先でも申告書の提出を求める場合があります。
ダブルワークをしている従業員が他の勤務先で申告書をすでに提出している場合、提出は不要です。ただし、もう一方の勤務先で年間20万円超の給与がある場合、従たる勤務先での給与について確定申告が必要となるため、従業員に確認するようにしましょう。
記入もれやミスが生じないよう注意する
年末調整の作業は多岐にわたるため、早めの準備が求められます。税制改正の影響を受ける年末調整業務は、作業が複雑になりやすく、人的ミスも発生しやすい業務です。そのため、従業員が申告書の目的や役割を正しく理解し、間違いなく記入できる環境を整えることが不可欠になってきます。
そうした作業の煩雑化を見越して、年末調整をデジタル化することも一つの方策といえるでしょう。クラウドサービスの活用で、業務の効率化や生産性向上について、検討してみてはいかがでしょうか。
扶養控除等申告書まとめ
扶養控除等申告書は、給与所得者にとって重要な書類であり、年末調整で適切な所得控除を受けるためのカギとなります。
この申告書は、扶養控除や配偶者控除、ひとり親控除など、さまざまな控除を適用するための基礎となる書類です。したがって、正確に記入しなければなりません。
まず、扶養の対象となる人とその要件を正しく理解し、配偶者控除と扶養控除の違いを把握しましょう。また、年末調整時のミスを避けるためにも、期限に余裕をもって申告書を提出することが重要です。
そのほか、配偶者や扶養親族がいない場合でも申告書の提出が必要な点にも注意しなければなりません。
扶養控除等申告書は、従業員の税金に直接影響する重要な書類です。正確な記入と適切な提出により、正しい税金計算が行われるだけでなく、不要なトラブルを避けることにつながります。
この機会に、扶養控除等申告書の重要性を再認識し、正確に申告しましょう。