年末調整で住宅ローン控除を適用できるのは2年目から?必要書類も紹介

更新日:2025年01月03日

住宅ローン控除 年末調整

住宅ローン控除は、基本的に年末調整でも対応できます。ただし、初年度は確定申告で対応することが求められるため、どちらのやり方も理解しておきましょう。本記事では、住宅ローン控除の概要を説明したうえで、確定申告や年末調整の書き方や気をつけるべき点についても説明します。

目次

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、金融機関で住宅ローンなどを借り入れてマイホームを新築したり、取得したりしたときに、一定の要件を満たせば所得税の税額控除を受けられる制度です。住宅借入金等特別控除や住宅ローン減税などと呼ばれることもあります。

住宅ローン控除の要件や控除率は、居住年や住宅の種類などによってさまざまです。ここで、住宅ローン控除のメリットや受けられる対象者を解説します。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)のメリット

住宅ローン控除を適用するメリットとして、所得税の税額控除を受けて毎年支払う税金を抑えられる点が挙げられます。税額控除とは、課税所得金額に対して所定の税率をかけて算出した所得税額から一定の金額を控除することです。

2024年に新築住宅や買取再販住宅に居住する方が住宅ローン控除を適用する場合、住宅ローンの年末残高に対して控除率0.7%で控除を受けられます(最高35万円)。たとえば、年末時点における住宅ローン残高が3,500万円であれば、その年の控除額は24.5万円です(3,500万円 × 0.7%)。

そのため、上記のケースでは本来支払う予定の所得税額から24.5万円を控除できます。また、所得税から控除しきれない額がある場合は、翌年度の個人住民税に対しても住宅ローンを適用可能です。

参考)総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」

住宅ローン控除の対象者

住宅ローン控除の対象者は、住宅ローンなどを利用してマイホームを新築・取得した人です。また、一定の要件を満たさなければなりません。

控除を受けるための要件は、新築・取得する住宅によって異なります。分類方法は、以下のとおりです。

  1. 認定住宅(認定長期優良住宅など)を新築・取得した場合
  2. ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅を取得した場合
  3. 買取再販住宅・買取再販認定住宅などを取得した場合
  4. 中古住宅を取得した場合
  5. 1〜5以外の住宅を新築・取得した場合

たとえば、5に該当する場合は、以下の要件を満たさなければなりません(2024年に居住することを想定)。

  • 住宅を新築・取得してから6か月以内に入居して住み続けている
  • 床面積の2分の1以上が基本的に自分が住むためのものである
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上で分割返済を利用している
  • 対象年の所得金額が2,000万円以下
  • 家屋の床面積が50平方メートル以上
  • 2023年12月31日までに建築確認を受けているか、2024年6月30日までに建築されている

なお、住宅ローンを利用しなくても、一定の要件に当てはまれば認定住宅等新築等特別税額控除を受けられる場合があります。

参考)国税庁「マイホームを持ったとき」

住宅ローン控除の申請方法

住宅ローン控除を申請するには、確定申告が必要な場合と年末調整で対応できる場合があります。それぞれ確認していきましょう。

1年目は確定申告が必要

住宅ローンを借りて住宅を新築したり取得したりして、住宅ローン控除を適用する最初の年は、確定申告で手続きしなければなりません。

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得と、それに対する所得税などの額を確定させる手続きのことです。確定申告する際は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までに手続きしなければなりません。

2年目以降は年末調整でも対応可能

住宅ローン控除を適用する2年目以降は、年末調整でも対応可能です。年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と、年税額を一致させるための精算手続きを指します。

なお、年末調整の対象者は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人です。給与総額が2,000万円を超える、個人事業を営んでいるなど、年末調整の対象外の人は、2年目以降も引き続き確定申告で手続きしなければなりません。

住宅ローン控除を受けるための手続きの流れ

初年度に、住宅ローン控除を受けるための一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. 金融機関に申し込み、審査で承認を得たら住宅ローンを借りる
  2. 不動産の決済後、引渡しを受けて入居する
  3. 金融機関から住宅ローン残高証明書が送られてくる
  4. 必要書類を添付して確定申告する

続いて、2年目以降に住宅ローン控除を受けるための流れは、以下のとおりです(年末調整対象者の場合)。

  1. 「税務署から給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書」が送られてくる
  2. 金融機関から住宅ローンの残高証明書が送られてくる
  3. 勤務先で年末調整の手続きを進める

確定申告や年末調整時に必要な書類については、後ほど詳しく解説します。

確定申告で住宅ローン控除を申請する際の必要書類

確定申告で住宅ローン控除を申請するにあたって、用意する書類は主に以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 土地・建物の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
  • 住宅ローンの残高証明書
  • 本人確認書類(e-Taxの場合は提示不要)

住宅ローン控除を適用する際は、通常の確定申告で確定申告書に記入する項目に加えて第一表の「税金の計算」で「住宅耐震改修特別控除等」に控除額を表示して計算することがポイントです。また、第二表の「特例適用条文等」欄に居住開始年月日を記入し、頭部に住宅の種類に応じた表示をします。

さらに、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書には、入居日・住宅概要・借入残高などの記入が必要です。

参考)国税庁「手順4 税金の計算をする」

年末調整で住宅ローン控除を申請する際の必要書類

年末調整で住宅ローン控除を申請する際、以下の書類の添付が必要です。

  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細(控除申告書)
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

それぞれ解説します。

控除申告書

控除申告書とは、住宅ローン控除を適用する初年度に確定申告すると国税庁から送られてくる書類を指します。正式名称は、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細」です。

控除申告書は、確定申告した年の10月ごろにまとめて送られてきます。年末調整の都度、対象年分の控除申告書に記入しましょう。

なお、控除申告書の書き方については、単独債務のケースと連帯債務のケースに分けて後ほど詳しく解説します。

住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」とは、対象の住宅ローンの残高証明書のことです。主に以下の項目が記載されています。

  • 借入人の情報(住所・氏名)
  • 借入金の内訳(例:住宅および土地)
  • 対象年における住宅ローンの年末残高
  • 住宅ローンを借入した時点での金額
  • 返済期間

なお、証明書は毎年11月下旬ごろに借入をしている金融機関から自宅に送られてきます。

住宅借入金等特別控除申告書の書き方(単独債務)

単独債務とは、ひとりの申込人(債務者)が住宅ローンを借り入れる方法です。そのため、金融機関は原則として一名のみの収入を基準に住宅ローンを審査します。

一般的に、単独債務における住宅借入金等特別控除申告書(給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書)の書き方の流れは以下のとおりです。

  1. 住所や氏名などを記入する
  2. 住宅借入金の年末残高や居住用割合などを記入する
  3. 年間所得の見積額を記入する

各手順について詳しく解説します。

1. 住所や氏名などを記入する

上部に自分の住所や氏名などの基本情報を記入しましょう。上部右側に、自分の住所や氏名を記入します。

また、左側の「給与の支払者の名称」や「給与の支払者の所在地(住所)」は、勤務先の社名や住所を記入する欄です。「給与の支払者の法人番号」については、勤務先(給与の支払者)が記載するため対応する必要がありません。

なお、「税務署長」と記入されている欄には所轄の税務署名を記入します。不明な場合は空欄で構いません。

2. 住宅借入金の年末残高や居住用割合などを記入する

住所や氏名を記入したら、次に住宅ローンの年末残高や居住用割合などの情報を記入していきます。A(住宅のみ)・B(土地等のみ)・C(住宅および土地等)のいずれか該当する部分に記入が必要です。

1の欄には、年末残高証明書に記載されている「年末残高」の額を転記しましょう。単独債務のため、2の欄には1に記入した額をそのまま記入します。

3の欄を記入するには、控除申告書の下部に記載されている「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」の確認が必要です。2の欄とロ(もしくはホ、ロ+ホ+リ)を比較し、少ない額を記入します。

4の欄には、居住割合やそれに応じた額を記入しましょう。居住割合は、下部のハでも確認できます。

5の欄には、4の欄の合計額の転記が必要です。次に、5の欄の額に控除率(0.7%)をかけて6の欄に記入します。

3. 年間所得の見積額を記入する

「年間所得の見積額」には、源泉徴収後の金額を記入します。源泉徴収票が手元にある場合は、「給与所得控除後の金額」を記入しましょう。

年間所得が2,000万円を超える場合は適用できません。2,000万円前後の見込みの場合は、注意が必要です。

なお、「備考」欄は災害で家屋に居住できなくなるなど、特別な事情がある場合に使用します。

住宅借入金等特別控除申告書の書き方(連帯債務)

連帯債務とは、ふたりで連帯して返済の義務を負うことです。親子連帯債務や夫婦連帯債務などがあります。

連帯債務の住宅借入金等特別控除申告書の書き方も、基本的には単独債務のケースと同じです。ただし、2の欄の書き方には気をつけなければなりません。

2の欄には自身の負担割合やそれに応じた額を記入します。連帯債務の負担割合がわからない場合は、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」のニ欄を確認しましょう。

住宅ローン控除を適用する際の注意点

住宅ローン控除を適用する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 住宅ローン控除の適用期間を間違えない
  • 年末調整での適用を忘れたら確定申告で対応する
  • 住宅借入金等特別控除申告書がない場合は要再発行
  • 繰上げや借り換え時は金融機関に再発行依頼が必要
  • 対象外の住宅ローンがある

各注意点を解説します。

住宅ローン控除の適用期間を間違えない

住宅ローン控除を適用できる期間を間違えないようにしましょう。入居する時期によって、適用可能な控除期間が異なる場合があります。

2024年に新築住宅に入居する場合、控除期間は最大13年です。しかし、過去には控除期間が最大10年に設定されていることもありました。

また、2024年に入居する場合でも、既存住宅を取得するケースで適用できるのは、最大10年までです。

年末調整での適用を忘れたら確定申告で対応する

年末調整の対象者が住宅ローン控除の申請を失念していた場合は、まず会社に伝えましょう。会社が年末調整に関する書類を提出する前であれば、対応可能な場合があります。

会社に伝えても年末調整に間に合わなければ、確定申告での対応が必要です。確定申告による住宅ローン控除の適用は、基本的に初年度と同じやり方でできます。

e-Taxを利用すれば、封筒に入れる作業や税務署に持ち込むまでの時間を省けて便利です。

住宅借入金等特別控除申告書がない場合は要再発行

住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細(控除申告書)は、確定申告した年に国税庁から送られてきます。住宅ローン控除の2年目以降の手続きを進めるにあたって控除申告書が見当たらない場合は、税務署に連絡して再発行してもらいましょう。

なお、再発行を依頼するには、一定の手間がかかります。控除申告書を受け取ったら、無くさないように大切に保管することを心がけましょう。

繰上げや借り換え時は金融機関に再発行依頼が必要

金融機関で住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を作成した後のタイミングで繰上げ返済した場合や、借り換えをした場合には、再発行を依頼しなければなりません。なぜなら、当初見込みの年末残高が変動するためです。

また、年末残高等証明書は基本的に10月下旬ごろに自宅に送られてきます。繰上げ返済や借り換えをしていなくても、時期が到来したにもかかわらず見当たらない場合は早めに金融機関に連絡した方がよいでしょう。

対象外の住宅ローンがある

住宅ローンのなかには、住宅ローン控除を適用できないケースもある点に注意しましょう。

たとえば、勤務先の従業員向け貸付を利用する際、その金利が無利子や0.2%未満の場合には適用できません。また、親から借りる場合も対象外です。

さらに、金融機関からの住宅ローンであっても、返済期間が短い場合や分割返済の形式になっていない場合は住宅ローン控除を適用できません。

参考)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」

住宅ローン控除の最新情報も確認が必要

これから住宅ローンを借りる予定がある方や、年末調整の業務に携わる人事担当者などは、都度最新の情報をチェックすることを心がけましょう。主な理由は以下のとおりです。

  • 税制改正で条件が変わることがある
  • 年末残高証明書の添付が不要になる

それぞれ解説します。

税制改正で条件が変わることがある

税制改正によって、要件・控除期間・控除率・借入限度額などが変わることがあるのが、住宅ローン控除を検討中の人が最新情報をチェックしなければならない理由です。

たとえば、2022年・2023年に認定長期優良住宅に入居する場合の借入限度額は5,000万円で統一されていました。それに対し、2024年に入居する場合は、子育て世帯などは5,000万円、それ以外は4,500万円と借入限度額が分けられています。

参考)財務省「住宅税制に関する資料」

年末残高証明書の添付が不要になる

年末残高証明書の添付が不要になることも、最新情報を理解しておかなければならない理由です。

2022年度の税制改正により、住宅ローン控除の適用手続きは、年末残高証明書を用いる「証明書方式」に代わって年末残高調書を用いる「調書方式」によることが定められました。調書方式とは、金融機関が税務署に年末残高調書を提出し、国税庁が納税者に年末残高情報を提供する仕組みです。

金融機関側のシステムが改正に対応できない場合は、引き続き証明書方式を採用することが経過措置として認められています。ただし、今後は調書方式が広がる見込みのため、あらかじめ理解しておきましょう。

参考)国税庁「住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について」

年末調整の住宅ローン控除まとめ

所得が2,000万円以下の給与所得者は、基本的に2年目以降の住宅ローン控除手続きを年末調整でできます。一方、初年度や年末調整時に手続きを失念した場合には、確定申告での対応が必要です。

住宅ローン控除の手続きをする際は、控除申告書に記入します。控除申告書は、初年度に確定申告してから届くため、大切に保管しておきましょう。

また、手続きには毎年10月下旬ごろ金融機関から送られてくる残高証明書も必要です。時期が来ても手元にない場合や、繰上げ返済・借り換えなどをした場合には、金融機関へ郵送の依頼をしておくとよいでしょう。

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