更新日:2025年12月18日
住宅ローン控除は、基本的に年末調整でも対応できます。ただし、初年度は確定申告で対応することが求められるため、どちらのやり方も理解しておきましょう。本記事では、住宅ローン控除の概要を説明したうえで、確定申告や年末調整の書き方や気をつけるべき点についても説明します。
目次
住宅ローン控除とは、金融機関で住宅ローンなどを借り入れてマイホームを新築したり、取得したりしたときに、一定の要件を満たせば所得税の税額控除を受けられる制度です。住宅借入金等特別控除や住宅ローン減税などと呼ばれることもあります。
住宅ローン控除の要件や控除率は、居住年や住宅の種類などによってさまざまです。ここで、住宅ローン控除のメリットや受けられる対象者を解説します。
住宅ローン控除を適用するメリットとして、所得税の税額控除を受け、毎年支払う税金を抑えられる点があります。税額控除とは、課税所得金額に対して所定の税率をかけて算出した所得税額から一定の金額を控除することです。
2025年に新築住宅や買取再販住宅に居住する方が住宅ローン控除を適用する場合、住宅ローンの年末残高に対して控除率0.7%で控除を受けられます(最高35万円)。たとえば、年末時点における住宅ローン残高が3,500万円であれば、その年の控除額は24.5万円です(3,500万円 × 0.7%)。
そのため、上記のケースでは本来支払う予定の所得税額から24.5万円を控除できます。また、所得税から控除しきれない額がある場合は、翌年度の個人住民税に対しても住宅ローンを適用可能です。
参考)総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」
2025年の年末調整における住宅ローン控除の対象者は、住宅ローンなどを利用してマイホームを新築もしくは取得して、2025年中に生活の拠点として利用している(居住の用に供している)人です。また、新築・取得する住宅によって定められている各種要件も満たさなければなりません。
なお、住宅ローンなどを利用していなくても、一定の要件を満たせば「認定住宅等新築等特別税額控除」を受けられます。
参考)国税庁「マイホームを持ったとき」
住宅ローン控除を受けるための要件は、以下のケースによって異なります。
ここから、各住宅の定義や、2025年版の要件について解説します。
認定住宅を新築・取得して控除を受けるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
認定住宅とは、認定長期優良住宅や低炭素建築物、低炭素建築物とみなされる特定建築物のことです。認定長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置を講じられた優良な住宅」として所管行政庁から認定を受けた住宅を指します。また、低炭素建築物とは、二酸化炭素の排出抑制につながる建築物として認定を受けた住宅です。
控除できる期間は、13年間です。
ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅を取得して住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たさなければなりません。
ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅は、認定住宅以外の住宅でエネルギーの使用の合理化にある程度つながる住宅のことです。「ZEH(ゼッチ)」とは、家庭で1年間に消費する一次エネルギー量の収支が、正味ゼロまたはマイナスになる住宅を指します。
ZEH水準省エネ住宅などを取得したケースでも、控除期間は13年間です。
買取再販住宅や買取再販認定住宅等を取得して住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
買取再販住宅とは、宅地建物取引業者により特定の増改築などが実施された一定の居住用家屋のことです。また、買取再販住宅が認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅に該当する住宅を「買取再販認定住宅等」と呼びます。
「買取再販住宅を取得した場合」の控除期間は10年間、「買取再販住宅が認定住宅に該当する場合」「買取再販住宅がZEH水準省エネ住宅に該当する場合」「買取再販住宅が省エネ基準適合住宅に該当する場合」の控除期間は13年間です。
中古住宅を取得して住宅ローン控除を受けるには、「買取再販住宅などを取得したケース」の1〜4の要件を満たさなければなりません。また、中古住宅とは、建築後に使用されたことがあり、「買取再販住宅などを取得したケース」の4の基準を満たし、買取再販住宅に該当しない住宅のことです。
なお、控除期間は10年間と定められています。
「認定住宅を新築・取得したケース」「ZEH水準省エネ住宅などを取得したケース」「買取再販住宅などを取得したケース」「中古住宅を取得したケース」いずれにも該当しない場合は、以下の要件を満たす場合に限り住宅ローン控除を適用できます(控除期間:10年間)。
なお、2の要件を満たさなくても、家屋の床面積が40平方メートル以上あり、控除を受ける年の所得が1,000万円以下であれば、適用できる可能性があります。
住宅ローン控除を申請するには、確定申告が必要な場合と年末調整で対応できる場合があります。それぞれ確認していきましょう。
住宅ローンを借りて住宅を新築したり取得したりして、住宅ローン控除を適用する最初の年は、確定申告で手続きしなければなりません。
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得と、それに対する所得税などの額を確定させる手続きのことです。確定申告する際は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までに手続きしなければなりません。
住宅ローン控除を適用する2年目以降は、年末調整でも対応可能です。年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と、年税額を一致させるための精算手続きを指します。
なお、年末調整の対象者は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人です。給与総額が2,000万円を超える、個人事業を営んでいるなど、年末調整の対象外の人は、2年目以降も引き続き確定申告で手続きしなければなりません。
初年度に、住宅ローン控除を受けるための一般的な流れは、以下のとおりです。
続いて、2年目以降に住宅ローン控除を受けるための流れは、以下のとおりです(年末調整対象者の場合)。
確定申告や年末調整時に必要な書類については、後ほど詳しく解説します。
確定申告で住宅ローン控除を申請するにあたって、用意する書類は主に以下のとおりです。
住宅ローン控除を適用する際は、通常の確定申告で確定申告書に記入する項目に加えて第一表の「税金の計算」で「住宅耐震改修特別控除等」に控除額を表示して計算することがポイントです。また、第二表の「特例適用条文等」欄に居住開始年月日を記入し、頭部に住宅の種類に応じた表示をします。
さらに、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書には、入居日・住宅概要・借入残高などの記入が必要です。
参考)国税庁「手順4 税金の計算をする」
年末調整で住宅ローン控除を申請する際、以下の書類の添付が必要です。
それぞれ解説します。
控除申告書とは、住宅ローン控除を適用する初年度に確定申告すると国税庁から送られてくる書類です。正式名称は、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細」です。
控除申告書は、確定申告した年の10月ごろにまとめて送られてきます。年末調整の都度、対象年分の控除申告書に記入しましょう。
なお、控除申告書の書き方については、単独債務のケースと連帯債務のケースに分けて後ほど詳しく解説します。
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」とは、対象の住宅ローンの残高証明書のことです。主に以下の項目が記載されています。
なお、証明書は毎年11月下旬ごろに借入をしている金融機関から自宅に送られてきます。
一般的に、単独債務(※)における住宅借入金等特別控除申告書(給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書)の書き方の流れは以下のとおりです。
各手順について詳しく解説します。
※単独債務〜ひとりの申込人(債務者)が住宅ローンを借り入れる方法。単独債務の場合、金融機関は原則として1名のみの収入を基準に住宅ローンを審査する
上部に自分の住所や氏名などの基本情報を記入しましょう。上部右側に、自分の住所や氏名を記入します。
また、左側の「給与の支払者の名称」や「給与の支払者の所在地(住所)」は、勤務先の社名や住所を記入する欄です。「給与の支払者の法人番号」については、勤務先(給与の支払者)が記載するため対応する必要がありません。
なお、「税務署長」と記入されている欄には所轄の税務署名を記入します。不明な場合は空欄で構いません。
住所や氏名を記入したら、住宅ローンの年末残高や居住用割合などを記入します。まず、対象の不動産が「住宅のみ」であればA列、「土地等のみ」であればB列、「住宅及び土地等」であればC列の(1)〜(4)に記入が必要です。
今回は、以下のケースを想定して説明していきます。
年末残高:3,500万円 居住割合:100% 対象:住宅及び土地等 (認定住宅を取得した場合)
C(1)の欄には、年末残高証明書に記載されている「年末残高」の額(3,500万円)を転記しましょう。単独債務のため、C(2)の欄には(1)に記入した額(3,500万円)をそのまま記入します。
C(3)の欄を記入するには、控除申告書の下部に記載されている「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」の確認が必要です。(2)の欄とロ(もしくはホ、ロ+ホ+リ)を比較し、少ない額を記入します(今回は3,500万円と仮定)。
C(4)の欄には、居住割合やそれに応じた額を記入しましょう。今回は「100%」のため、「100%」とC(3)の額(3,500万円)を記入します。
続いて、(5)欄の「最高」の後に該当する限度額を記入しましょう。今回のケースでは、「5,000万円」です。
「最高」の下には、(4)行の合計を記入します。今回はC(4)のみ記載しているため、そのまま「3,500万円」と記入しましょう。
(5)に記入した内容を使って、(6)の欄で住宅借入金等特別控除額を計算しましょう。
計算にあたって、まず「最高」の後に該当するケースにおける最高控除額を記入します(今回は「35万円」)。続いて、(5)の額に0.7%をかけて計算しましょう(100円未満の端数切捨て)。「3,500万円 × 0.7% = 24万5,000円<35万円」のため、今回の住宅借入等特別控除額は「245,000円」です。
なお、住宅ローン控除は所得税から直接引く税額控除のため、今回のケースでは申告することで約24万5,000円が還付される可能性があります。
「年間所得の見積額」には、源泉徴収表の金額を記入します。源泉徴収票を確認して、「給与所得控除後の金額」を記入しましょう。
年間所得が2,000万円を超える場合は適用できません。2,000万円前後の見込みの場合は、注意が必要です。
なお、「備考」欄は災害で家屋に居住できなくなるなど、特別な事情がある場合に使用します。
連帯債務(※)の住宅借入金等特別控除申告書の書き方も、基本的には単独債務のケースと同じです。ただし、(1)(2)の欄の書き方に注意しましょう。
(1)のかっこには、連帯債務による借入金の額、(2)のかっこには自身の負担割合を記載し、下にそれに応じた額を記入します。連帯債務の負担割合がわからない場合は、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」のニ欄を確認しましょう。
※連帯債務〜ふたりで連帯して返済の義務を負うこと。親子連帯債務や夫婦連帯債務などがある
住宅ローン控除を適用する際は、以下の点に注意しましょう。
各注意点を解説します。
住宅ローン控除を適用できる期間を間違えないようにしましょう。入居する時期によって、適用可能な控除期間が異なる場合があります。
2025年に新築住宅に入居する場合、控除期間は最大13年です。しかし、過去には控除期間が最大10年に設定されていることもありました。
2025年に入居する場合でも、既存住宅を取得するケースで適用できるのは、最大10年までです。
年末調整の対象者が住宅ローン控除の申請を失念していた場合は、まず会社に伝えましょう。会社が年末調整に関する書類を提出する前であれば、対応可能な場合があります。
会社に伝えても年末調整に間に合わなければ、確定申告での対応が必要です。確定申告による住宅ローン控除の適用は、基本的に初年度と同じやり方でできます。
e-Taxを利用すれば、封筒に入れる作業や税務署に持ち込むまでの時間を省けて便利です。
住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細(控除申告書)は、確定申告した年に国税庁から送られてきます。住宅ローン控除の2年目以降の手続きを進めるにあたって控除申告書が見当たらない場合は、税務署に連絡して再発行してもらいましょう。
なお、再発行を依頼するには、一定の手間がかかります。控除申告書を受け取ったら、無くさないように大切に保管することを心がけましょう。
金融機関で住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を作成した後のタイミングで繰上げ返済した場合や、借り換えをした場合には、再発行を依頼しなければなりません。なぜなら、当初見込みの年末残高が変動するためです。
また、年末残高等証明書は基本的に10月下旬ごろに自宅に送られてきます。繰上げ返済や借り換えをしていなくても、時期が到来したにもかかわらず見当たらない場合は早めに金融機関に連絡する方がよいでしょう。
住宅ローンのなかには、住宅ローン控除を適用できないケースもある点に注意しましょう。
たとえば、勤務先の従業員向け貸付を利用する際、その金利が無利子や0.2%未満の場合には適用できません。また、親から借りる場合も対象外です。
さらに、金融機関からの住宅ローンであっても、返済期間が短い場合や分割返済の形式になっていない場合は住宅ローン控除を適用できません。
参考)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
これから住宅ローンを借りる予定がある方や、年末調整の業務に携わる人事担当者などは、都度最新の情報をチェックすることを心がけましょう。主な理由は以下のとおりです。
税制改正によって、要件・控除期間・控除率・借入限度額などが変わることがあるため、最新情報を都度確認しなければなりません。
2025年度税制改正では、2024年度と同様の措置を引き続き実施することが決まりました。しかし、2025年末までの入居が対象のため、来年以降に入居した人も適用できるかについては2025年11月時点で発表されていません。
参考)財務省「住宅税制に関する資料」
年末残高証明書の添付が不要になることも、最新情報を理解しておかなければならない理由です。
2022年度の税制改正により、住宅ローン控除の適用手続きは、年末残高証明書を用いる「証明書方式」に代わって年末残高調書を用いる「調書方式」によることが定められました。調書方式とは、金融機関が税務署に年末残高調書を提出し、国税庁が納税者に年末残高情報を提供する仕組みです。
金融機関側のシステムが改正に対応できない場合は、引き続き証明書方式を採用することが経過措置として認められています。ただし、今後は調書方式が広がる見込みのため、あらかじめ理解しておきましょう。
参考)国税庁「住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について」
年末調整担当者は、住宅ローン控除を適用する従業員がいる場合に以下の点に注意しましょう。
年末調整担当者は、従業員によって申し受ける必要書類が異なることがある点に注意しましょう。
年末調整では、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を従業員に提出してもらいます。連帯債務の場合は、3つの書類に加えて連帯債務割合を確認できる書類も必要です。
なお、2019年以降に居住開始した人の控除証明書には、連帯債務割合が記載されているため、別途確認書類を申し受ける必要はありません。
2025年度の税制改正で、各種所得控除に関する見直しがある点に注意しましょう。
住宅ローン控除制度は、2024年度と基本的に変わりありません。一方で、「合計所得に応じて基礎控除が改正された」「給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられた」「特定親族特別控除が創設された」「扶養親族等の所得要件が改正された」など、所得控除についてはいくつかの変更点があります。
そのため、年末調整担当者は、年末調整時に計算方法などにミスがないよう配慮が必要です。
所得が2,000万円以下の給与所得者は、基本的に2年目以降の住宅ローン控除手続きを年末調整でできます。一方、初年度や年末調整時に手続きを失念した場合には、確定申告での対応が必要です。
住宅ローン控除の手続きをする際は、控除申告書に記入します。控除申告書は、初年度に確定申告してから届くため、大切に保管しておきましょう。
また、手続きには毎年10月下旬ごろ金融機関から送られてくる残高証明書も必要です。時期が来ても手元にない場合や、繰上げ返済・借り換えなどをした場合には、金融機関へ郵送の依頼をしておくとよいでしょう。
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(c) 2017 freewayjapan Co., Ltd.
住宅ローン控除は、基本的に年末調整でも対応できます。ただし、初年度は確定申告で対応することが求められるため、どちらのやり方も理解しておきましょう。本記事では、住宅ローン控除の概要を説明したうえで、確定申告や年末調整の書き方や気をつけるべき点についても説明します。
目次
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、金融機関で住宅ローンなどを借り入れてマイホームを新築したり、取得したりしたときに、一定の要件を満たせば所得税の税額控除を受けられる制度です。住宅借入金等特別控除や住宅ローン減税などと呼ばれることもあります。
住宅ローン控除の要件や控除率は、居住年や住宅の種類などによってさまざまです。ここで、住宅ローン控除のメリットや受けられる対象者を解説します。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)のメリット
住宅ローン控除を適用するメリットとして、所得税の税額控除を受け、毎年支払う税金を抑えられる点があります。税額控除とは、課税所得金額に対して所定の税率をかけて算出した所得税額から一定の金額を控除することです。
2025年に新築住宅や買取再販住宅に居住する方が住宅ローン控除を適用する場合、住宅ローンの年末残高に対して控除率0.7%で控除を受けられます(最高35万円)。たとえば、年末時点における住宅ローン残高が3,500万円であれば、その年の控除額は24.5万円です(3,500万円 × 0.7%)。
そのため、上記のケースでは本来支払う予定の所得税額から24.5万円を控除できます。また、所得税から控除しきれない額がある場合は、翌年度の個人住民税に対しても住宅ローンを適用可能です。
参考)総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」
住宅ローン控除の対象者
2025年の年末調整における住宅ローン控除の対象者は、住宅ローンなどを利用してマイホームを新築もしくは取得して、2025年中に生活の拠点として利用している(居住の用に供している)人です。また、新築・取得する住宅によって定められている各種要件も満たさなければなりません。
なお、住宅ローンなどを利用していなくても、一定の要件を満たせば「認定住宅等新築等特別税額控除」を受けられます。
参考)国税庁「マイホームを持ったとき」
【2025年版】住宅ローン控除を受けるための要件
住宅ローン控除を受けるための要件は、以下のケースによって異なります。
ここから、各住宅の定義や、2025年版の要件について解説します。
認定住宅を新築・取得したケース
認定住宅を新築・取得して控除を受けるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
認定住宅とは、認定長期優良住宅や低炭素建築物、低炭素建築物とみなされる特定建築物のことです。認定長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置を講じられた優良な住宅」として所管行政庁から認定を受けた住宅を指します。また、低炭素建築物とは、二酸化炭素の排出抑制につながる建築物として認定を受けた住宅です。
控除できる期間は、13年間です。
ZEH水準省エネ住宅などを取得したケース
ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅を取得して住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たさなければなりません。
ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅は、認定住宅以外の住宅でエネルギーの使用の合理化にある程度つながる住宅のことです。「ZEH(ゼッチ)」とは、家庭で1年間に消費する一次エネルギー量の収支が、正味ゼロまたはマイナスになる住宅を指します。
ZEH水準省エネ住宅などを取得したケースでも、控除期間は13年間です。
買取再販住宅などを取得したケース
買取再販住宅や買取再販認定住宅等を取得して住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
(イ)〜「1982年1月1日以後に新築」
(ロ)〜「取得日前2年以内に耐震住宅と証明されている」
(ハ)〜「(イ)(ロ)以外の家屋で、家屋の取得日までに耐震改修について申請し、居住日までに耐震改修により家屋が(ロ)の基準に適合することについて証明がされている」
買取再販住宅とは、宅地建物取引業者により特定の増改築などが実施された一定の居住用家屋のことです。また、買取再販住宅が認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅に該当する住宅を「買取再販認定住宅等」と呼びます。
「買取再販住宅を取得した場合」の控除期間は10年間、「買取再販住宅が認定住宅に該当する場合」「買取再販住宅がZEH水準省エネ住宅に該当する場合」「買取再販住宅が省エネ基準適合住宅に該当する場合」の控除期間は13年間です。
中古住宅を取得したケース
中古住宅を取得して住宅ローン控除を受けるには、「買取再販住宅などを取得したケース」の1〜4の要件を満たさなければなりません。また、中古住宅とは、建築後に使用されたことがあり、「買取再販住宅などを取得したケース」の4の基準を満たし、買取再販住宅に該当しない住宅のことです。
なお、控除期間は10年間と定められています。
そのほかの住宅を新築・取得したケース
「認定住宅を新築・取得したケース」「ZEH水準省エネ住宅などを取得したケース」「買取再販住宅などを取得したケース」「中古住宅を取得したケース」いずれにも該当しない場合は、以下の要件を満たす場合に限り住宅ローン控除を適用できます(控除期間:10年間)。
なお、2の要件を満たさなくても、家屋の床面積が40平方メートル以上あり、控除を受ける年の所得が1,000万円以下であれば、適用できる可能性があります。
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除を申請するには、確定申告が必要な場合と年末調整で対応できる場合があります。それぞれ確認していきましょう。
1年目は確定申告が必要
住宅ローンを借りて住宅を新築したり取得したりして、住宅ローン控除を適用する最初の年は、確定申告で手続きしなければなりません。
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得と、それに対する所得税などの額を確定させる手続きのことです。確定申告する際は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までに手続きしなければなりません。
2年目以降は年末調整でも対応可能
住宅ローン控除を適用する2年目以降は、年末調整でも対応可能です。年末調整とは、源泉徴収された税額の年間合計額と、年税額を一致させるための精算手続きを指します。
なお、年末調整の対象者は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人です。給与総額が2,000万円を超える、個人事業を営んでいるなど、年末調整の対象外の人は、2年目以降も引き続き確定申告で手続きしなければなりません。
住宅ローン控除を受けるための手続きの流れ
初年度に、住宅ローン控除を受けるための一般的な流れは、以下のとおりです。
続いて、2年目以降に住宅ローン控除を受けるための流れは、以下のとおりです(年末調整対象者の場合)。
確定申告や年末調整時に必要な書類については、後ほど詳しく解説します。
確定申告で住宅ローン控除を申請する際の必要書類
確定申告で住宅ローン控除を申請するにあたって、用意する書類は主に以下のとおりです。
住宅ローン控除を適用する際は、通常の確定申告で確定申告書に記入する項目に加えて第一表の「税金の計算」で「住宅耐震改修特別控除等」に控除額を表示して計算することがポイントです。また、第二表の「特例適用条文等」欄に居住開始年月日を記入し、頭部に住宅の種類に応じた表示をします。
さらに、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書には、入居日・住宅概要・借入残高などの記入が必要です。
参考)国税庁「手順4 税金の計算をする」
年末調整で住宅ローン控除を申請する際の必要書類
年末調整で住宅ローン控除を申請する際、以下の書類の添付が必要です。
それぞれ解説します。
控除申告書
控除申告書とは、住宅ローン控除を適用する初年度に確定申告すると国税庁から送られてくる書類です。正式名称は、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細」です。
控除申告書は、確定申告した年の10月ごろにまとめて送られてきます。年末調整の都度、対象年分の控除申告書に記入しましょう。
なお、控除申告書の書き方については、単独債務のケースと連帯債務のケースに分けて後ほど詳しく解説します。
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」とは、対象の住宅ローンの残高証明書のことです。主に以下の項目が記載されています。
なお、証明書は毎年11月下旬ごろに借入をしている金融機関から自宅に送られてきます。
住宅借入金等特別控除申告書の書き方(単独債務)
一般的に、単独債務(※)における住宅借入金等特別控除申告書(給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書)の書き方の流れは以下のとおりです。
各手順について詳しく解説します。
※単独債務〜ひとりの申込人(債務者)が住宅ローンを借り入れる方法。単独債務の場合、金融機関は原則として1名のみの収入を基準に住宅ローンを審査する
1. 住所や氏名などを記入する
上部に自分の住所や氏名などの基本情報を記入しましょう。上部右側に、自分の住所や氏名を記入します。
また、左側の「給与の支払者の名称」や「給与の支払者の所在地(住所)」は、勤務先の社名や住所を記入する欄です。「給与の支払者の法人番号」については、勤務先(給与の支払者)が記載するため対応する必要がありません。
なお、「税務署長」と記入されている欄には所轄の税務署名を記入します。不明な場合は空欄で構いません。
2. 住宅借入金の年末残高や居住用割合などを記入する
住所や氏名を記入したら、住宅ローンの年末残高や居住用割合などを記入します。まず、対象の不動産が「住宅のみ」であればA列、「土地等のみ」であればB列、「住宅及び土地等」であればC列の(1)〜(4)に記入が必要です。
今回は、以下のケースを想定して説明していきます。
年末残高:3,500万円
居住割合:100%
対象:住宅及び土地等
(認定住宅を取得した場合)
C(1)の欄には、年末残高証明書に記載されている「年末残高」の額(3,500万円)を転記しましょう。単独債務のため、C(2)の欄には(1)に記入した額(3,500万円)をそのまま記入します。
C(3)の欄を記入するには、控除申告書の下部に記載されている「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」の確認が必要です。(2)の欄とロ(もしくはホ、ロ+ホ+リ)を比較し、少ない額を記入します(今回は3,500万円と仮定)。
C(4)の欄には、居住割合やそれに応じた額を記入しましょう。今回は「100%」のため、「100%」とC(3)の額(3,500万円)を記入します。
続いて、(5)欄の「最高」の後に該当する限度額を記入しましょう。今回のケースでは、「5,000万円」です。
「最高」の下には、(4)行の合計を記入します。今回はC(4)のみ記載しているため、そのまま「3,500万円」と記入しましょう。
3. 住宅借入金等特別控除額を計算する
(5)に記入した内容を使って、(6)の欄で住宅借入金等特別控除額を計算しましょう。
計算にあたって、まず「最高」の後に該当するケースにおける最高控除額を記入します(今回は「35万円」)。続いて、(5)の額に0.7%をかけて計算しましょう(100円未満の端数切捨て)。「3,500万円 × 0.7% = 24万5,000円<35万円」のため、今回の住宅借入等特別控除額は「245,000円」です。
なお、住宅ローン控除は所得税から直接引く税額控除のため、今回のケースでは申告することで約24万5,000円が還付される可能性があります。
4. 年間所得の見積額を記入する
「年間所得の見積額」には、源泉徴収表の金額を記入します。源泉徴収票を確認して、「給与所得控除後の金額」を記入しましょう。
年間所得が2,000万円を超える場合は適用できません。2,000万円前後の見込みの場合は、注意が必要です。
なお、「備考」欄は災害で家屋に居住できなくなるなど、特別な事情がある場合に使用します。
住宅借入金等特別控除申告書の書き方(連帯債務)
連帯債務(※)の住宅借入金等特別控除申告書の書き方も、基本的には単独債務のケースと同じです。ただし、(1)(2)の欄の書き方に注意しましょう。
(1)のかっこには、連帯債務による借入金の額、(2)のかっこには自身の負担割合を記載し、下にそれに応じた額を記入します。連帯債務の負担割合がわからない場合は、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」のニ欄を確認しましょう。
※連帯債務〜ふたりで連帯して返済の義務を負うこと。親子連帯債務や夫婦連帯債務などがある
住宅ローン控除を適用する際の注意点
住宅ローン控除を適用する際は、以下の点に注意しましょう。
各注意点を解説します。
住宅ローン控除の適用期間を間違えない
住宅ローン控除を適用できる期間を間違えないようにしましょう。入居する時期によって、適用可能な控除期間が異なる場合があります。
2025年に新築住宅に入居する場合、控除期間は最大13年です。しかし、過去には控除期間が最大10年に設定されていることもありました。
2025年に入居する場合でも、既存住宅を取得するケースで適用できるのは、最大10年までです。
年末調整での適用を忘れたら確定申告で対応する
年末調整の対象者が住宅ローン控除の申請を失念していた場合は、まず会社に伝えましょう。会社が年末調整に関する書類を提出する前であれば、対応可能な場合があります。
会社に伝えても年末調整に間に合わなければ、確定申告での対応が必要です。確定申告による住宅ローン控除の適用は、基本的に初年度と同じやり方でできます。
e-Taxを利用すれば、封筒に入れる作業や税務署に持ち込むまでの時間を省けて便利です。
住宅借入金等特別控除申告書がない場合は要再発行
住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細(控除申告書)は、確定申告した年に国税庁から送られてきます。住宅ローン控除の2年目以降の手続きを進めるにあたって控除申告書が見当たらない場合は、税務署に連絡して再発行してもらいましょう。
なお、再発行を依頼するには、一定の手間がかかります。控除申告書を受け取ったら、無くさないように大切に保管することを心がけましょう。
繰上げや借り換え時は金融機関に再発行依頼が必要
金融機関で住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を作成した後のタイミングで繰上げ返済した場合や、借り換えをした場合には、再発行を依頼しなければなりません。なぜなら、当初見込みの年末残高が変動するためです。
また、年末残高等証明書は基本的に10月下旬ごろに自宅に送られてきます。繰上げ返済や借り換えをしていなくても、時期が到来したにもかかわらず見当たらない場合は早めに金融機関に連絡する方がよいでしょう。
対象外の住宅ローンがある
住宅ローンのなかには、住宅ローン控除を適用できないケースもある点に注意しましょう。
たとえば、勤務先の従業員向け貸付を利用する際、その金利が無利子や0.2%未満の場合には適用できません。また、親から借りる場合も対象外です。
さらに、金融機関からの住宅ローンであっても、返済期間が短い場合や分割返済の形式になっていない場合は住宅ローン控除を適用できません。
参考)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
住宅ローン控除の最新情報も確認が必要
これから住宅ローンを借りる予定がある方や、年末調整の業務に携わる人事担当者などは、都度最新の情報をチェックすることを心がけましょう。主な理由は以下のとおりです。
それぞれ解説します。
税制改正で条件が変わることがある
税制改正によって、要件・控除期間・控除率・借入限度額などが変わることがあるため、最新情報を都度確認しなければなりません。
2025年度税制改正では、2024年度と同様の措置を引き続き実施することが決まりました。しかし、2025年末までの入居が対象のため、来年以降に入居した人も適用できるかについては2025年11月時点で発表されていません。
参考)財務省「住宅税制に関する資料」
年末残高証明書の添付が不要になる
年末残高証明書の添付が不要になることも、最新情報を理解しておかなければならない理由です。
2022年度の税制改正により、住宅ローン控除の適用手続きは、年末残高証明書を用いる「証明書方式」に代わって年末残高調書を用いる「調書方式」によることが定められました。調書方式とは、金融機関が税務署に年末残高調書を提出し、国税庁が納税者に年末残高情報を提供する仕組みです。
金融機関側のシステムが改正に対応できない場合は、引き続き証明書方式を採用することが経過措置として認められています。ただし、今後は調書方式が広がる見込みのため、あらかじめ理解しておきましょう。
参考)国税庁「住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について」
年末調整担当者が気をつけること
年末調整担当者は、住宅ローン控除を適用する従業員がいる場合に以下の点に注意しましょう。
それぞれ解説します。
従業員によって住宅ローン控除の必要書類が異なる
年末調整担当者は、従業員によって申し受ける必要書類が異なることがある点に注意しましょう。
年末調整では、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を従業員に提出してもらいます。連帯債務の場合は、3つの書類に加えて連帯債務割合を確認できる書類も必要です。
なお、2019年以降に居住開始した人の控除証明書には、連帯債務割合が記載されているため、別途確認書類を申し受ける必要はありません。
2025年税制改正で控除額に変更がある
2025年度の税制改正で、各種所得控除に関する見直しがある点に注意しましょう。
住宅ローン控除制度は、2024年度と基本的に変わりありません。一方で、「合計所得に応じて基礎控除が改正された」「給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられた」「特定親族特別控除が創設された」「扶養親族等の所得要件が改正された」など、所得控除についてはいくつかの変更点があります。
そのため、年末調整担当者は、年末調整時に計算方法などにミスがないよう配慮が必要です。
年末調整の住宅ローン控除まとめ
所得が2,000万円以下の給与所得者は、基本的に2年目以降の住宅ローン控除手続きを年末調整でできます。一方、初年度や年末調整時に手続きを失念した場合には、確定申告での対応が必要です。
住宅ローン控除の手続きをする際は、控除申告書に記入します。控除申告書は、初年度に確定申告してから届くため、大切に保管しておきましょう。
また、手続きには毎年10月下旬ごろ金融機関から送られてくる残高証明書も必要です。時期が来ても手元にない場合や、繰上げ返済・借り換えなどをした場合には、金融機関へ郵送の依頼をしておくとよいでしょう。