就職活動や転職のとき、企業の採用情報を見ると必ず記載されているのが「基本給」です。基本給とは、諸手当を含まない基本となる給料のこと。通常、給料には残業代や通勤手当、役職手当、資格手当、インセンティブ手当などの諸手当が含まれますが、基本給はそれらを含みません。基本給は、日給月給制・年俸制など様々な給与体系において「軸」になる賃金であり、年齢や勤続年数、職種などの基準を総合的に考慮して決められます。
目次
「基本給」とは、給与の基礎となる賃金を指します。年齢・勤続年数・職種・技能などに基づいて決定され、会社ごとの「基本給表」によって定められるのが一般的です。
求人情報などでは「月給〇〇万円以上」と記載されることが多いため、基本給と月給が同じものと誤解されがちですが、両者は違います。
「月給」とは、月単位で定められた金額で支給される賃金です。基本給がそのまま月給となる場合もありますが、一般的には、役職手当などの毎月固定で支払われる手当を基本給に加えたものが月給と呼ばれます。
あらためて基本給について整理すると、以下のとおりです。
ここでは、基本給と混同しがちな「月給」「総支給額・差引支給額」「手取り給与」との違いについて解説します。
月給とは、基本給に諸手当を足したものです。諸手当は人によって異なるため、基本給が同額でも月給に差が出るのは十分にありえます。なお、手当とは、役職手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、営業手当、残業手当(時間外労働手当)、休日労働手当など、基本給を補う賃金のことですが、会社によって呼び方は異なります。月給を算出するときに基本給に足す諸手当は、役職手当や家族手当など、毎月の金額が固定されているものに限られます。たとえば、残業手当や休日労働手当などは毎月金額が変わってくるため、月給には含まれません。
総支給額とは、基本給にすべての手当を足したもので、「額面金額」とも呼ばれます。総支給額には、月給には含まれない残業手当や休日労働手当なども含まれています。差引支給額とは、総支給額から税金や社会保険料を差し引いたもので、「手取り金額」とも呼ばれます。
手取りとは、実際に従業員が受け取る金額を指し、総支給額から様々な控除項目を差し引いた後の金額です。この控除項目には、主に以下のようなものが含まれます。
一般的に、手取りは総支給額の70%から80%程度になるといわれています。つまり、給与明細に記載された総額の2割から3割が各種控除として差し引かれます。この手取り額は、個人の生活設計や家計管理において重要な指標となるため、給与明細をよく確認し、実際に使える金額を把握しておくことが大切です。
基本給の決め方には、以下の3つの方法があります。
これらの方法は、それぞれ異なる評価基準を用いて基本給を決定します。以下では、各方法の特徴とその適用方法について詳しく解説します。
仕事給型は、従業員の実際の業務内容や能力、実績に基づいて基本給を決定する方式です。この方式では、従来重視されてきた学歴や年齢、勤続年数といった要素は考慮されません。
この制度の特徴は、個人の実力が直接給与に反映されることです。そのため、キャリアの浅い社員でも、優れた成果をあげれば基本給の上昇につながる可能性があります。これにより従業員のモチベーション向上を期待できる点が仕事給型の大きな利点です。
一方で、継続的に高い成果を出せない場合、給与の伸び悩みや低下につながる可能性があります。仕事給型は欧米で普及した制度ですが、近年では日本企業にも徐々に導入されつつあります。
属人給型は、従業員の学歴、年齢、勤続年数といった個人の属性に基づいて基本給を決定する方式です。この給与体系では、仕事内容や業務遂行能力、成果などは基本給に反映されません。いわゆる年功序列型の給与制度であり、入社後の努力によって基本給を変えることはできません。
この方式の利点は、年齢が上がるにつれて基本給も確実に上がるため、将来のライフプランを安定的に立てやすい点です。しかし、従業員の努力や成果が基本給に反映されにくいため、モチベーションの向上が難しいという欠点もあります。
総合給型は、仕事給型と属人給型の特徴を組み合わせた方式です。この方式では、業務内容・能力・成果といった仕事関連の要素と、学歴・年齢・勤続年数などの個人的属性の両方を考慮して基本給を決定します。
従業員の実力や実績を反映させつつ、属人的要素も加味することにより、バランスの取れた評価が可能です。この柔軟なアプローチにより、日本の多くの企業で広く採用されています。総合給型は、従来の年功序列と成果主義のよいところを取り入れているため、日本企業に広く採用されています。
基本給は、従業員の収入に大きな影響を与える重要な要素です。基本給が影響を及ぼす具体例としては、以下のものです。
これらはすべて基本給を基に計算されるため、基本給の多寡が直接的に反映される仕組みになっています。ここでは、それぞれについて解説します。
賞与(ボーナス)は、一般的に「基本給 × ●ヶ月」や「基本給 × 業績」などの計算式で算出されます。賞与は月給ではなく基本給をベースに決定されるため、基本給が高いほど賞与も増えます。
たとえば、賞与が「基本給の3ヶ月分」の場合を考えてみましょう。毎月の手取りが26万円の人でも、給与の内訳が「基本給20万円+手当6万円」の場合と「基本給13万円+手当13万円」の場合では、ボーナス額に21万円もの差が生じます。手取りが同じでも、基本給が低いとボーナスも少なくなってしまいます。
労働基準法では、法定労働時間を超える労働や法定休日、深夜労働に対して、従業員に割増賃金を支払わなければならないと企業に義務付けています。
割増賃金は、基礎時給に一定の割増率を乗じて計算されます。基礎時給は「基本給÷月の労働日数÷1日の所定労働時間」で算出可能です。基本給が高いほど、時間外手当や深夜手当、休日手当の金額も高くなります。
また、残業代は月々で金額が変動するため基本給に含まれないのが一般的です。ただし、会社によっては毎月一定の残業代を基本給に含める場合もあります(固定残業代 / 定額残業代 / みなし残業代)。ただしこの場合も、基本給に含まれている残業代以上の残業をした従業員がいれば、別途、残業代が発生します。
退職金は、賞与と同様に支給義務はなく、各企業の裁量に委ねられています。その支給の有無、金額、制度設計は会社ごとに異なるのが現状です。
多くの企業では、退職金を基本給と連動させる方式を採用しています。この場合、退職時や勤続期間中の平均基本給に、勤続年数に応じた支給率を乗じて計算するケースが一般的です。つまり、総支給額が高くても基本給が低ければ、退職金も少なくなる可能性があります。
ただし、この算定方法では退職金の支給額が膨らみすぎて、経営を圧迫しかねません。そのため、近年では異なるアプローチを採用する企業も増えつつあり、在籍年数に応じて退職金額を事前に設定する方式や、人事評価や保有資格を基に算出する方式などが導入されています。
基本給以外の手当は、給与の一部として多くの企業で支給されています。これらの手当には、法律により支給が義務付けられているものと、企業が自由に決定できるものがあります。以下で、表にまとめました。
会社規定の手当はある程度の自由裁量も可能ですが、法律で支払いが義務付けられている手当については、遵守しなければなりません。主なものは以下のとおりです。
企業が就業規則に基づき独自に設定する手当です。これには、業務の成果に応じて支給されるものや、仕事の特性や所持している資格に基づく手当など、様々な種類があります。
求人の情報を見ると、想定年収が書かれている場合があります。たとえば、「マネージャー(35歳):年収700万円」など。こういった記載を見ると、「自分より年収が高い、低い」と比較すると思いますが、注意が必要です。なぜなら、年収が高い=手取りが多い、というわけではないからです。
前述の通り、年収には経費の立て替え分が含まれています。極端な例かもしれませんが、内勤の事務職から外勤の営業職の仕事に転職したとしましょう。すると、内勤時代には発生しなかった経費(電車代、バス代、タクシー代、レンタカー代、駐車場代といった営業交通費など)が発生し、自分で立て替えなければなりません。後日、給与と一緒に振り込まれて精算されますが、その分も年収に含まれてしまうのです。つまり、立て替えた経費が増えると年収も増えてしまうのです。
基本給とは、社員の給与の基礎となる賃金部分を指します。この基本的な給与部分は、月給や手取り額とは異なり、各種手当や賞与に影響を与えるため、理解しておくことが重要です。
月給は基本給に各種手当を加えた額であり、手取り給与は税金や社会保険料を差し引いた後の金額です。基本給の決定方法には「仕事給型」「属人給型」「総合給型」の3つがあり、仕事内容や個人の能力、またはその両方を考慮して設定されます。
基本給は、賞与・時間外手当・休日手当・退職金などにも大きな影響を与えるため、給与の全体像を把握し、適切なキャリアプランを立てることが大切です。
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就職活動や転職のとき、企業の採用情報を見ると必ず記載されているのが「基本給」です。基本給とは、諸手当を含まない基本となる給料のこと。通常、給料には残業代や通勤手当、役職手当、資格手当、インセンティブ手当などの諸手当が含まれますが、基本給はそれらを含みません。基本給は、日給月給制・年俸制など様々な給与体系において「軸」になる賃金であり、年齢や勤続年数、職種などの基準を総合的に考慮して決められます。
目次
基本給とは
「基本給」とは、給与の基礎となる賃金を指します。年齢・勤続年数・職種・技能などに基づいて決定され、会社ごとの「基本給表」によって定められるのが一般的です。
求人情報などでは「月給〇〇万円以上」と記載されることが多いため、基本給と月給が同じものと誤解されがちですが、両者は違います。
「月給」とは、月単位で定められた金額で支給される賃金です。基本給がそのまま月給となる場合もありますが、一般的には、役職手当などの毎月固定で支払われる手当を基本給に加えたものが月給と呼ばれます。
あらためて基本給について整理すると、以下のとおりです。
ここでは、基本給と混同しがちな「月給」「総支給額・差引支給額」「手取り給与」との違いについて解説します。
基本給と月給の違い
月給とは、基本給に諸手当を足したものです。諸手当は人によって異なるため、基本給が同額でも月給に差が出るのは十分にありえます。なお、手当とは、役職手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、営業手当、残業手当(時間外労働手当)、休日労働手当など、基本給を補う賃金のことですが、会社によって呼び方は異なります。月給を算出するときに基本給に足す諸手当は、役職手当や家族手当など、毎月の金額が固定されているものに限られます。たとえば、残業手当や休日労働手当などは毎月金額が変わってくるため、月給には含まれません。
基本給と総支給額・差引支給額の違い
総支給額とは、基本給にすべての手当を足したもので、「額面金額」とも呼ばれます。総支給額には、月給には含まれない残業手当や休日労働手当なども含まれています。差引支給額とは、総支給額から税金や社会保険料を差し引いたもので、「手取り金額」とも呼ばれます。
基本給と手取り給与の違い
手取りとは、実際に従業員が受け取る金額を指し、総支給額から様々な控除項目を差し引いた後の金額です。この控除項目には、主に以下のようなものが含まれます。
一般的に、手取りは総支給額の70%から80%程度になるといわれています。つまり、給与明細に記載された総額の2割から3割が各種控除として差し引かれます。この手取り額は、個人の生活設計や家計管理において重要な指標となるため、給与明細をよく確認し、実際に使える金額を把握しておくことが大切です。
基本給の決め方
基本給の決め方には、以下の3つの方法があります。
これらの方法は、それぞれ異なる評価基準を用いて基本給を決定します。以下では、各方法の特徴とその適用方法について詳しく解説します。
仕事給型
仕事給型は、従業員の実際の業務内容や能力、実績に基づいて基本給を決定する方式です。この方式では、従来重視されてきた学歴や年齢、勤続年数といった要素は考慮されません。
この制度の特徴は、個人の実力が直接給与に反映されることです。そのため、キャリアの浅い社員でも、優れた成果をあげれば基本給の上昇につながる可能性があります。これにより従業員のモチベーション向上を期待できる点が仕事給型の大きな利点です。
一方で、継続的に高い成果を出せない場合、給与の伸び悩みや低下につながる可能性があります。仕事給型は欧米で普及した制度ですが、近年では日本企業にも徐々に導入されつつあります。
属人給型
属人給型は、従業員の学歴、年齢、勤続年数といった個人の属性に基づいて基本給を決定する方式です。この給与体系では、仕事内容や業務遂行能力、成果などは基本給に反映されません。いわゆる年功序列型の給与制度であり、入社後の努力によって基本給を変えることはできません。
この方式の利点は、年齢が上がるにつれて基本給も確実に上がるため、将来のライフプランを安定的に立てやすい点です。しかし、従業員の努力や成果が基本給に反映されにくいため、モチベーションの向上が難しいという欠点もあります。
総合給型
総合給型は、仕事給型と属人給型の特徴を組み合わせた方式です。この方式では、業務内容・能力・成果といった仕事関連の要素と、学歴・年齢・勤続年数などの個人的属性の両方を考慮して基本給を決定します。
従業員の実力や実績を反映させつつ、属人的要素も加味することにより、バランスの取れた評価が可能です。この柔軟なアプローチにより、日本の多くの企業で広く採用されています。総合給型は、従来の年功序列と成果主義のよいところを取り入れているため、日本企業に広く採用されています。
基本給が影響を及ぼすもの
基本給は、従業員の収入に大きな影響を与える重要な要素です。基本給が影響を及ぼす具体例としては、以下のものです。
これらはすべて基本給を基に計算されるため、基本給の多寡が直接的に反映される仕組みになっています。ここでは、それぞれについて解説します。
賞与(ボーナス)の金額
賞与(ボーナス)は、一般的に「基本給 × ●ヶ月」や「基本給 × 業績」などの計算式で算出されます。賞与は月給ではなく基本給をベースに決定されるため、基本給が高いほど賞与も増えます。
たとえば、賞与が「基本給の3ヶ月分」の場合を考えてみましょう。毎月の手取りが26万円の人でも、給与の内訳が「基本給20万円+手当6万円」の場合と「基本給13万円+手当13万円」の場合では、ボーナス額に21万円もの差が生じます。手取りが同じでも、基本給が低いとボーナスも少なくなってしまいます。
時間外手当や休日手当など各種手当
労働基準法では、法定労働時間を超える労働や法定休日、深夜労働に対して、従業員に割増賃金を支払わなければならないと企業に義務付けています。
割増賃金は、基礎時給に一定の割増率を乗じて計算されます。基礎時給は「基本給÷月の労働日数÷1日の所定労働時間」で算出可能です。基本給が高いほど、時間外手当や深夜手当、休日手当の金額も高くなります。
また、残業代は月々で金額が変動するため基本給に含まれないのが一般的です。ただし、会社によっては毎月一定の残業代を基本給に含める場合もあります(固定残業代 / 定額残業代 / みなし残業代)。ただしこの場合も、基本給に含まれている残業代以上の残業をした従業員がいれば、別途、残業代が発生します。
退職金額
退職金は、賞与と同様に支給義務はなく、各企業の裁量に委ねられています。その支給の有無、金額、制度設計は会社ごとに異なるのが現状です。
多くの企業では、退職金を基本給と連動させる方式を採用しています。この場合、退職時や勤続期間中の平均基本給に、勤続年数に応じた支給率を乗じて計算するケースが一般的です。つまり、総支給額が高くても基本給が低ければ、退職金も少なくなる可能性があります。
ただし、この算定方法では退職金の支給額が膨らみすぎて、経営を圧迫しかねません。そのため、近年では異なるアプローチを採用する企業も増えつつあり、在籍年数に応じて退職金額を事前に設定する方式や、人事評価や保有資格を基に算出する方式などが導入されています。
基本給以外で支給される各種手当
基本給以外の手当は、給与の一部として多くの企業で支給されています。これらの手当には、法律により支給が義務付けられているものと、企業が自由に決定できるものがあります。以下で、表にまとめました。
支給することを法律で定められている手当
会社規定の手当はある程度の自由裁量も可能ですが、法律で支払いが義務付けられている手当については、遵守しなければなりません。主なものは以下のとおりです。
支給するか企業が任意に決められる手当
企業が就業規則に基づき独自に設定する手当です。これには、業務の成果に応じて支給されるものや、仕事の特性や所持している資格に基づく手当など、様々な種類があります。
職務手当
職能手当
家族手当
精勤手当
研修手当
経費の立替が増えると年収も増える
求人の情報を見ると、想定年収が書かれている場合があります。たとえば、「マネージャー(35歳):年収700万円」など。こういった記載を見ると、「自分より年収が高い、低い」と比較すると思いますが、注意が必要です。なぜなら、年収が高い=手取りが多い、というわけではないからです。
前述の通り、年収には経費の立て替え分が含まれています。極端な例かもしれませんが、内勤の事務職から外勤の営業職の仕事に転職したとしましょう。すると、内勤時代には発生しなかった経費(電車代、バス代、タクシー代、レンタカー代、駐車場代といった営業交通費など)が発生し、自分で立て替えなければなりません。後日、給与と一緒に振り込まれて精算されますが、その分も年収に含まれてしまうのです。つまり、立て替えた経費が増えると年収も増えてしまうのです。
基本給まとめ
基本給とは、社員の給与の基礎となる賃金部分を指します。この基本的な給与部分は、月給や手取り額とは異なり、各種手当や賞与に影響を与えるため、理解しておくことが重要です。
月給は基本給に各種手当を加えた額であり、手取り給与は税金や社会保険料を差し引いた後の金額です。基本給の決定方法には「仕事給型」「属人給型」「総合給型」の3つがあり、仕事内容や個人の能力、またはその両方を考慮して設定されます。
基本給は、賞与・時間外手当・休日手当・退職金などにも大きな影響を与えるため、給与の全体像を把握し、適切なキャリアプランを立てることが大切です。