毎月、会社から受け取る給与明細。その中に、どんな情報が書かれているか知っていますか?給与明細とは、給与の支払いと同時に従業員に交付するもので、勤怠の記録や社会保険の控除額など給与計算の根拠を明示したものです。生活を支える給料について、様々なことが分かる給与明細の内容を確認していきましょう。※2020年10月27日に更新
給与明細に記載する項目は一般的に、「勤怠項目」「支給項目」「控除項目」に分かれています。支給部分に示した総支給額から控除項目の合計額を差し引いた金額が、その月の口座振込額、従業員からしたら手取りの給与額となります。
給与明細の勤怠項目には、出勤・欠勤日数や有給休暇取得日数、残業した時間などを明記します。
給与明細の支給項目には、基本給に加え、時間外手当(残業手当)、通勤手当、住宅手当、家族手当など各種手当の金額を明記します。
給与明細の控除項目には、給与から天引き(徴収)した所得税や住民税といった税金、健康保険料、厚生年金保険保険料、雇用保険料、介護保険料などの控除額を明記します。
「支給項目」とは基本給や手当などの内訳を記載し、どのような名目で、どれくらいの金額が支払われるのかを示す項目です。
支給項目には原則として毎月同額になる固定の項目と、勤務日数や労働時間によって変動する項目があります。前者に該当するのは、基本給や職務手当、役職手当など。これらの項目の金額は、月によって変動しません。金額が変わるのは、給与改定がされた場合のみです。後者は時間外労働手当や深夜労働手当、休日労働手当が当てはまります。繁忙期でいつもより多く残業をしたり、休日に出勤した場合など、当月の勤務実績にともない支給額が変わります。
前述の通り、固定の支給項目に含まれるのは基本給と諸手当です。基本給は原則として月給や日給、時間給など、期間に応じて定額で支給されます。職務手当などの諸手当は、一定の要件を満たす場合に毎月の支給額が決められています。また、通勤手当や社宅補助などの現物給付も、就業規則に則って支給されるため、固定の支給項目に含まれます。
気を付けたいポイントとしては、欠勤や遅刻、早退があった場合です。欠勤などは勤務がなかったということになるため、労働の対価である給与は原則的に支払われません(ノーワーク・ノーペイの原則)。つまり実質的には控除の対象ですが、これらは支給項目に記載します。各種保険料や税金の計算を行う際、欠勤や遅刻・早退を控除した金額がもとになるため、実務上の利便性を考慮し、このような処理の方法が一般的であると言えます。
時間外勤務手当や休日勤務手当など、実績によって変動する項目については、月ごとに計算する必要があります。この際、1時間あたりの労働単価が算出の基準となります。月給制の場合、1時間あたりの労働単価の計算方法は以下の通りです。
1時間あたりの労働単価 = 月給の総額 ÷ 月平均の所定労働時間(※)
※月平均の所定労働時間は、年間労働日数×所定労働時間÷12で求められます。
1時間あたりの労働単価が出たら、これをもとに時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当を以下のように計算することができます(割増率はいずれも最低値です)。なお、深夜勤務に該当する時間帯は22時から翌5時です。
労働基準法において賃金は全額支払われることが原則とされていますが、法律や労使協定によって定められた項目については、給与から控除することが認められています。これらの項目が控除項目です。
控除項目は、「法定控除」と「その他控除」に分類できます。法定控除は法律によって控除しなければならない項目とされています。その他控除については、企業と従業員の間で労使協定によって給与から控除することを取り決めた項目です。協定控除とも呼ばれます。
法定控除に該当するものは以下の通りです。法定控除に当たる項目の中でも、税金(所得税、住民税)と社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険)に分けられます。
所得税は、年間所得に応じて課される税金のことです。従業員の給与から天引きした所得税は、企業が税務署に納付します(源泉徴収)。毎月、天引きされる所得税は見込み金額であるため、最終的に年収が確定した段階で差額が生じた場合、年末に調整を行うことになります。
住民税は、前年の所得に応じて課される税金のことです。従業員の給与から天引きした住民税は、企業が各自治体に納付します(特別徴収)。企業は自治体から届く「納入通知書」に記載されている住民税を確認する必要があります。
これらの社会保険料は、従業員と企業がそれぞれ負担します。給与から控除した従業員の負担分と企業の負担分をあわせて、健康保険組合、社会保険事務所に納めます。
雇用保険は、労働者が失業した場合に生活を保障し、再就職を支援するために存在する社会保険制度です。雇用保険料の従業員負担分の料率と企業負担分の料率は、事業の種類(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業)により異なり、毎年見直されます。それぞれの負担分を合算して、年に一度、労災保険料とともに都道府県労働局に納めます。
前述の通り、その他控除は企業と従業員が労使協定によって、書面上で合意した控除項目を指します。逆に言えば、労使協定で取り決められていない項目については、いかなる場合でも給与から控除できないということです。その他控除の具体例には、以下のようなものが挙げられます。
従業員に対して、会社が所有する寮や社宅を貸与する場合、家賃料相当額が給与から控除されます。
従業員同士の親睦を深めることを目的とした会の費用として、給与から控除されます。
従業員の財産形成の手段として、給与から控除した金額を会社が積み立てます。
会社が加入する労働組合の組合費として、給与から控除されます。
給与明細は、労働基準法で作成が義務付けられているわけではありません。しかし、給与から所得税や社会保険料などを控除した場合は、所得税法や健康保険法などによって控除額を従業員に通知することが義務付けられています。また、給与を銀行振込によって支払う場合は、基本給や各種手当の金額、源泉所得税や社会保険料の種類別控除額、それらを加減した最終的な支給額を計算書に記載して従業員に交付する必要があります。この計算内容を通知するためにも、給与明細を交付するのが慣例です。
給与明細の形態に規定はなく、紙でも電子データでも問題はありません。以前は、給料袋を手渡されるのが当たり前の時代でした。近年は、給与明細の電子化・Web化が進んでおり、ネット経由で給与明細を発行する会社も増えています(参考:便利なの?給与明細書のWeb明細)。企業は紙や封筒にかかるお金を節約でき、経理担当者は手間を省くことが可能です。なお、会社には給与明細を保管する義務はありません。しかし、実際に従業員に支払った給与の金額を示す重要なデータであるため、後のトラブルなどに備えて一定期間は保管しておくのが望ましいと言えます。
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毎月、会社から受け取る給与明細。その中に、どんな情報が書かれているか知っていますか?給与明細とは、給与の支払いと同時に従業員に交付するもので、勤怠の記録や社会保険の控除額など給与計算の根拠を明示したものです。生活を支える給料について、様々なことが分かる給与明細の内容を確認していきましょう。※2020年10月27日に更新
給与明細の3つのポイント
給与明細の構成・記載項目
給与明細に記載する項目は一般的に、「勤怠項目」「支給項目」「控除項目」に分かれています。支給部分に示した総支給額から控除項目の合計額を差し引いた金額が、その月の口座振込額、従業員からしたら手取りの給与額となります。
勤怠項目
給与明細の勤怠項目には、出勤・欠勤日数や有給休暇取得日数、残業した時間などを明記します。
支給項目
給与明細の支給項目には、基本給に加え、時間外手当(残業手当)、通勤手当、住宅手当、家族手当など各種手当の金額を明記します。
控除項目
給与明細の控除項目には、給与から天引き(徴収)した所得税や住民税といった税金、健康保険料、厚生年金保険保険料、雇用保険料、介護保険料などの控除額を明記します。
給与明細の支給項目とは
「支給項目」とは基本給や手当などの内訳を記載し、どのような名目で、どれくらいの金額が支払われるのかを示す項目です。
支給項目は「固定」と「変動」
支給項目には原則として毎月同額になる固定の項目と、勤務日数や労働時間によって変動する項目があります。前者に該当するのは、基本給や職務手当、役職手当など。これらの項目の金額は、月によって変動しません。金額が変わるのは、給与改定がされた場合のみです。後者は時間外労働手当や深夜労働手当、休日労働手当が当てはまります。繁忙期でいつもより多く残業をしたり、休日に出勤した場合など、当月の勤務実績にともない支給額が変わります。
固定の支給項目で注意すべきポイント
前述の通り、固定の支給項目に含まれるのは基本給と諸手当です。基本給は原則として月給や日給、時間給など、期間に応じて定額で支給されます。職務手当などの諸手当は、一定の要件を満たす場合に毎月の支給額が決められています。また、通勤手当や社宅補助などの現物給付も、就業規則に則って支給されるため、固定の支給項目に含まれます。
欠勤、遅刻、早退があった場合
気を付けたいポイントとしては、欠勤や遅刻、早退があった場合です。欠勤などは勤務がなかったということになるため、労働の対価である給与は原則的に支払われません(ノーワーク・ノーペイの原則)。つまり実質的には控除の対象ですが、これらは支給項目に記載します。各種保険料や税金の計算を行う際、欠勤や遅刻・早退を控除した金額がもとになるため、実務上の利便性を考慮し、このような処理の方法が一般的であると言えます。
勤務実績によって変動する手当の計算
時間外勤務手当や休日勤務手当など、実績によって変動する項目については、月ごとに計算する必要があります。この際、1時間あたりの労働単価が算出の基準となります。月給制の場合、1時間あたりの労働単価の計算方法は以下の通りです。
1時間あたりの労働単価の計算方法(月給制)
1時間あたりの労働単価 = 月給の総額 ÷ 月平均の所定労働時間(※)
※月平均の所定労働時間は、年間労働日数×所定労働時間÷12で求められます。
手当の計算方法
1時間あたりの労働単価が出たら、これをもとに時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当を以下のように計算することができます(割増率はいずれも最低値です)。なお、深夜勤務に該当する時間帯は22時から翌5時です。
給与明細の控除項目
労働基準法において賃金は全額支払われることが原則とされていますが、法律や労使協定によって定められた項目については、給与から控除することが認められています。これらの項目が控除項目です。
「法定控除」と「その他控除」の違い
控除項目は、「法定控除」と「その他控除」に分類できます。法定控除は法律によって控除しなければならない項目とされています。その他控除については、企業と従業員の間で労使協定によって給与から控除することを取り決めた項目です。協定控除とも呼ばれます。
法定控除の具体例
法定控除に該当するものは以下の通りです。法定控除に当たる項目の中でも、税金(所得税、住民税)と社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険)に分けられます。
所得税
所得税は、年間所得に応じて課される税金のことです。従業員の給与から天引きした所得税は、企業が税務署に納付します(源泉徴収)。毎月、天引きされる所得税は見込み金額であるため、最終的に年収が確定した段階で差額が生じた場合、年末に調整を行うことになります。
住民税
住民税は、前年の所得に応じて課される税金のことです。従業員の給与から天引きした住民税は、企業が各自治体に納付します(特別徴収)。企業は自治体から届く「納入通知書」に記載されている住民税を確認する必要があります。
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料
これらの社会保険料は、従業員と企業がそれぞれ負担します。給与から控除した従業員の負担分と企業の負担分をあわせて、健康保険組合、社会保険事務所に納めます。
雇用保険料
雇用保険は、労働者が失業した場合に生活を保障し、再就職を支援するために存在する社会保険制度です。雇用保険料の従業員負担分の料率と企業負担分の料率は、事業の種類(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業)により異なり、毎年見直されます。それぞれの負担分を合算して、年に一度、労災保険料とともに都道府県労働局に納めます。
その他控除の具体例
前述の通り、その他控除は企業と従業員が労使協定によって、書面上で合意した控除項目を指します。逆に言えば、労使協定で取り決められていない項目については、いかなる場合でも給与から控除できないということです。その他控除の具体例には、以下のようなものが挙げられます。
寮や社宅費
従業員に対して、会社が所有する寮や社宅を貸与する場合、家賃料相当額が給与から控除されます。
親睦会費
従業員同士の親睦を深めることを目的とした会の費用として、給与から控除されます。
財形貯蓄
従業員の財産形成の手段として、給与から控除した金額を会社が積み立てます。
組合費
会社が加入する労働組合の組合費として、給与から控除されます。
給与明細の作成は会社の義務?
給与明細は、労働基準法で作成が義務付けられているわけではありません。しかし、給与から所得税や社会保険料などを控除した場合は、所得税法や健康保険法などによって控除額を従業員に通知することが義務付けられています。また、給与を銀行振込によって支払う場合は、基本給や各種手当の金額、源泉所得税や社会保険料の種類別控除額、それらを加減した最終的な支給額を計算書に記載して従業員に交付する必要があります。この計算内容を通知するためにも、給与明細を交付するのが慣例です。
給与明細の形態と保管義務
給与明細の形態に規定はなく、紙でも電子データでも問題はありません。以前は、給料袋を手渡されるのが当たり前の時代でした。近年は、給与明細の電子化・Web化が進んでおり、ネット経由で給与明細を発行する会社も増えています(参考:便利なの?給与明細書のWeb明細)。企業は紙や封筒にかかるお金を節約でき、経理担当者は手間を省くことが可能です。なお、会社には給与明細を保管する義務はありません。しかし、実際に従業員に支払った給与の金額を示す重要なデータであるため、後のトラブルなどに備えて一定期間は保管しておくのが望ましいと言えます。