障害者控除とは?対象者や年末調整・確定申告の申請方法を解説

更新日:2025年02月02日

障害者控除

障害者控除とは、障害(障がい)がある人自身やその家族が、一定の条件を満たす場合に適用できる所得控除を指します。適用を受けるためには、年末調整や確定申告での手続きが必要です。本記事では、障害者控除とは何かを説明したうえで、控除額や申請方法について詳しく解説します。

目次

障害者控除とは

障害者控除とは、障害(障がい)がある人やその家族が適用できる可能性のある所得控除を指します。税金を計算する際に障害者控除を適用することにより、所得から一定の金額を引いて所得税などを支払う負担を軽減可能です。

障害者控除にはいくつか種類があり、適用額もそれぞれ異なります。ここから、障害者控除の種類やその適用額、適用方法について確認していきましょう。

障害者控除の種類・適用額

障害者控除には、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3種類があります。それぞれの適用額は、以下のとおりです。

障害者控除の種類 控除額
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者 75万円

なお、上記の金額は一人あたりの控除額です。そのため、該当者が複数人いる場合は、各控除額を合計した額を控除できます。たとえば、本人が「特別障害者」で同居する配偶者も「特別障害者」に該当する場合、控除額は115万円(40万円 + 75万円)です。

障害者控除の適用方法

障害者控除を適用するには、年末調整や確定申告の手続きをしなければなりません。

年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と年税額を一致させる精算の手続きのことです。多くの給与所得者は、勤務先に年末調整関連の申告書を提出することで、所得税の納税を完了できます。

確定申告とは、前年1月1日から12月31日までのすべての所得や納付すべき税額を計算して申告する手続きのことです。個人事業主やフリーランスなどで収入を得ている場合は、確定申告で障害者控除を適用します。

年末調整の手続きをするのは11月ごろ、所得税の確定申告手続きをするのは翌年2月16日から3月15日までです。具体的な手続きの流れについては、後ほど詳しく解説します。

参考)国税庁「No.1160 障害者控除」

障害者控除の対象者

障害者控除を適用するためには、一定の条件を満たさなければなりません。「障害者控除」「特別障害者控除」「同居特別障害者控除」に分けて、それぞれの対象者を詳しく解説します。

障害者控除に該当するケース

障害者控除を適用できる人のうち、「障害者控除」に該当するケースは以下のとおりです。

  1. 児童相談所・知的障害者更生相談所・精神保健福祉センター・精神保健指定医の判定で、知的障害者と判定されている
  2. 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の規定に基づき、精神障害者保健福祉手帳を交付されている
  3. 「身体障害者福祉法」の規定で交付された身体障害者手帳に、「身体上の障害がある人」の記載がある
  4. 満65歳以上で精神または身体に障害があり、障害の程度が上記1、3に準ずるものとして市町村長などや福祉事務所長の認定を受けている
  5. 「戦傷病者特別援護法」の規定で、戦傷病者手帳の交付を受けている

なお、身体障害者手帳が必要なケースでも、手帳の交付を申請中の場合や手帳の交付を受けるための医師の診断書を持っている場合には、障害者控除の適用を受けられます。

参考)国税庁「No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について」

特別障害者控除に該当するケース

障害者控除を適用できる人のうち、「特別障害者控除」に該当するケースは以下のとおりです。

  1. 精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある
  2. 「障害者控除に該当するケース」1に該当する人のうち、重度の知的障害者と判定されている
  3. 「障害者控除に該当するケース」2に該当する人のうち、精神障害者保健福祉手帳に障害等級1級と記載されている
  4. 「障害者控除に該当するケース」3に該当する人のうち、身体障害者手帳に障害の程度が1級や2級と記載されている
  5. 満65歳以上で精神または身体に障害があり、障害の程度が上記1・2・4にいずれかに準ずるものとして市町村長などや福祉事務所長の認定を受けている
  6. 「障害者控除に該当するケース」5に該当する人のうち、障害の程度が恩給法の特別項症から第3項症にあたる
  7. 「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」で、厚生労働大臣の認定を受けている
  8. 対象年の12月31日時点で6か月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、引き続き複雑な介護を必要とする

このように、「障害者控除」を適用可能な人は障害の程度によって「特別障害者控除」の方を適用できる場合があります。

同居特別障害者に該当するケース

特別障害者である「同一生計配偶者」や「扶養親族」のうち、納税者本人・配偶者・納税者と生計を一にするその他親族のいずれかと常に同居しているケースで、同居特別障害者に該当します。

同一生計配偶者とは、対象年の12月31日時点で以下の要件をすべて満たす人のことです。

  1. 民法の規定による配偶者である(内縁関係を除く)
  2. 納税者と生計を一にしている
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下
  4. 青色申告者の事業専従者として、対象年を通して一度も給与の支払を受けていない、もしくは白色申告者の事業専従者でない

扶養親族とは、対象年の12月31日時点で配偶者以外の親族、都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から擁護を委託された老人のいずれかに該当する人を指します。また、同一生計配偶者と同様に、上記2〜4の要件をすべて満たさなければなりません。

なお、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合でも、条件を満たせば障害者控除を適用できます。

障害者控除適用手続きの流れ

障害者控除を適用する手続きの流れは、年末調整の場合と確定申告の場合で異なります。それぞれの手順を確認していきましょう。

年末調整の場合

給与所得者が年末調整で勤務先に提出する主な書類は、以下のとおりです。

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 基礎控除申告書
  • 配偶者控除等申告書
  • 所得金額調整控除申告書

*基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書は同じ書類を使用

障害者控除を適用する際は、上記のうち「扶養控除等(異動)申告書」への記載が必要です。「主たる給与から控除を受ける」のC「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄で、「障害者」の部分や該当する区分にチェックを入れましょう。「扶養親族」が該当する場合は、人数の記入も必要です。

また、「障害者又は勤労学生の内容」と記載された欄に、控除対象者の氏名や障害の等級など具体的な内容を記入します。

確定申告の場合

確定申告では、確定申告書第一表や確定申告書第二表などを提出しなければなりません。

確定申告で障害者控除を適用する際には、確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の「勤労学生、障害者控除」に対象区分の該当する金額を記入する点がポイントです。たとえば、「特別障害者控除」に該当する場合は、「400000」と記入します。

また、確定申告書第二表で、「本人に関する事項」や「配偶者や親族に関する事項」に記入することもポイントです。

本人が障害者に該当する場合は、「本人に関する事項」の「障害者」もしくは「特別障害者」に丸をつけます。また、配偶者や扶養親族が対象の場合は、「配偶者や親族に関する事項」に配偶者・扶養親族の情報を記入したうえで、対象の配偶者・親族の行で「障」(障害者)もしくは「特障」(特別障害者)のいずれかに丸をつけましょう。

障害者控除について押さえておきたいこと

障害者控除について押さえておきたいことは、以下のとおりです。

  • 住民税も障害者控除の対象になる
  • 相続税にも別の障害者控除制度がある
  • 年末調整で適用を忘れたら確定申告で対応

それぞれ解説します。

住民税も障害者控除の対象になる

所得税だけでなく、住民税を計算する際にも障害者控除を適用できます。住民税における控除額は以下のとおりです。

障害者控除の種類 控除額
障害者 26万円
特別障害者 30万円
同居特別障害者 53万円

なお、本人が障害者で障害者控除を適用する場合、前年の合計所得が135万円以下(給与のみの場合は給与収入が204万3,999円以下)であれば、住民税が非課税となります。

参考)東京都「個人住民税」

相続税にも別の障害者控除制度がある

所得税・住民税の障害者控除とは別に、相続税に対する障害者控除制度もあります。

相続税の障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者で要件を満たすと、相続税の額から一定額を引ける制度です。一般障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年に月10万円、特別障害者の場合は1年につき20万円を控除できます。

なお、所得税の障害者控除は「所得」から一定額を控除する制度であるのに対し、相続税の障害者控除は「税額」から控除する点に注意が必要です。

参考)国税庁「No.4167 障害者の税額控除」

年末調整で適用を忘れたら確定申告で対応

年末調整の対象者が、年末調整の手続き時に障害者控除のことを失念していたとしても、確定申告で対応可能です。翌年2月16日から3月15日までに、忘れず手続きしましょう。

また、確定申告の際に控除を適用せず税額を多く申告していた場合には、「更正の請求書」を提出することにより正しい税額への訂正を求められます。

参考)国税庁「確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき」

障害者控除以外の所得控除

障害者控除は、税負担面で調整する趣旨で設けられている所得控除の一種です。障害者控除以外にも、以下の所得控除が存在します。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

対象者や控除できる額は、各所得控除によって異なります。たとえば、基礎控除の控除額は以下のとおりです。

納税者本人の合計所得 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円 16万円
2,500万円超 0円

基礎控除は合計所得が2,500万円を超えない限り基本的に納税者が皆適用できる制度のため、障害者控除を適用する際にあわせて適用する可能性が高いでしょう。

参考)国税庁「No.1199 基礎控除」

障害者控除を適用できる場合の所得税計算方法

障害者控除を適用できる場合に、所得税を計算する際の流れは以下のとおりです。

  1. 課税所得金額を計算する
  2. 1に該当する所得税率をかける
  3. 2から税額控除額を引く

納税者本人が障害者に該当し、所得として事業所得が355万円あるケースで、基礎控除と障害者控除を適用する場合に各手順ですることについて、詳しく解説します。

1. 課税所得金額を計算する

自身の所得金額を把握したら、課税所得金額を計算します。

課税所得金額を求めるためには、「所得 − 所得控除」の計算が必要です。基礎控除・障害者控除・配偶者控除・生命保険料控除など、該当する所得控除を合計しましょう。

今回は、障害者控除(控除額:27万円)、基礎控除(控除額:48万円)が対象のため、所得から75万円の所得控除を引けます。つまり、課税所得金額は280万円です(355万円 − 75万円)。

2. 1に該当する所得税率をかける

1で計算した金額に対して所得税率をかけて、対象の控除額を引きます。

課税所得金額が280万円の場合、税率10%・控除額9万7,500円が適用されます(課税される所得1,950,000円から 3,299,000円まで)。そのため、今回の計算結果は18万2,500円です(280万円 × 10% − 9万7,500円)。

なお、日本は超過累進税率を採用しています。そのため、所得が多くなるほど、税率も高い点が特徴です。

参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」

3. 2から税額控除額を引く

2で算出した値から、税額控除額を引きます。

税額控除とは、総合課税の配当所得がある場合に適用可能な「配当控除」や住宅ローンに関する「住宅ローン借入金等控除」のように、課税所得金額に税率をかけて算出した所得税額から一定額を控除できる制度です。今回は、税額控除の対象がないため、そのまま所得税を18万2,500円と計算します。

なお、2037年までは、所得税に加えて復興特別所得税(対象年の基準所得税の2.1%)も申告・納付が必要です。

参考)国税庁「No.1000 所得税のしくみ」

障害者控除以外で障害者が受けられる主な税制優遇

障害者控除以外にも、障害者が受けられる税制優遇制度がいくつか存在します。主な制度は以下のとおりです。

  • 贈与税における非課税
  • 心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の所得税非課税
  • 少額貯蓄の利子などの非課税

それぞれ解説します。

贈与税における非課税

本来、1年間に個人から贈与で110万円超の財産を取得した場合には、贈与税がかかります。ただし、生活費に充てるため、一定の信託契約に基づき特定障害者の方を受益者とする財産の信託があった場合には一定額が非課税です。

特定障害者とは、特別障害者もしくは特別障害者以外の障害者のうち精神に障害がある方を指します。特定障害者の方は6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方は3,000万円まで贈与がかかりません。

なお、適用を受けるためには、信託時に信託会社を通じて所轄の税務署に「障害者非課税信託申告書」の提出が必要です。

参考)国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の所得税非課税

心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金以外)を受け取る場合にも、所得税が非課税となります。給付を受ける権利を相続や贈与で取得した場合も、非課税対象です。

なお、障害者扶養共済制度とは、障害のある方を扶養している保護者が毎月一定の掛金を納付することにより、自分に万が一のことがあった場合に障害のある方に対して一定額の年金を支給する制度を指します。

少額貯蓄の利子などの非課税

一定の預貯金の利子(少額貯蓄の利子)などを受ける際も、非課税になる場合があります。対象は、身体障害者手帳の交付を受けている方などです。

銀行の預貯金・公社債・公社債投資信託などが対象の「マル優」、利付国債や公募地方債などが対象の「特別マル優」があります。それぞれ350万円まで非課税対象のため、両方適用する場合は最大700万円までの利息について非課税で受け取り可能です。

なお、マル優・特別マル優を利用するには、預け入れの日までに金融機関の窓口で手帳・証書やマイナンバーなどを提示しなければなりません。

参考)国税庁「障害者と税」

障害者控除まとめ

障害者控除とは、納税者本人やその配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合に適用できる所得控除のことです。障害の内容や同居の有無などによって、障害者・特別障害者・同居特別障害者に分けられます。

障害者控除は、年末調整の際に適用手続きが可能です。また、年末調整で失念した場合や、フリーランスや個人事業主などに該当する場合は、確定申告で手続きします。

たとえば、「障害者」の区分における障害者控除の所得控除額は27万円です。また、ほかにも贈与税における非課税や少額貯蓄の利子などの非課税のように、障害者に該当する場合に適用できる制度がいくつかあります。税金の額に影響するため、見落とさないようにしましょう。

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