給与計算でミス・間違いが発生した場合の対処法とは?ミスの予防方法も紹介

更新日:2024年07月25日

給与計算 ミス

給与計算のミスは、従業員の信頼を損ねるだけでなく、法的な問題を引き起こす可能性もあります。給与計算でミスが発生した場合、迅速かつ適切に対処しなければなりません。

本記事では、給与計算でミスが発覚した際の具体的な対処法について解説します。さらに、ミスの原因や発生しやすい例をあげ、予防方法についても詳しく解説します。チェック体制の強化やマニュアルの見直し、給与計算ソフトの活用など、実践的な対策を通じて、ミスを未然に防ぐ方法を把握しておきましょう。

目次

給与計算でミスが発覚したときの対処法と流れ

給与計算でミスが発覚した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。従業員の信頼を維持し、法的トラブルを避けるためには、まず説明と謝罪をして給与明細の訂正や過不足分の精算を速やかに実施することが重要です。ここでは、具体的な対処法とその流れについて詳しく解説します。

1.発覚した段階で説明と謝罪をする

給与計算のミスが発覚した場合、まず重要なことは該当する従業員に対し迅速かつ適切に対応することです。ミスが発覚した時点で、その従業員に事実関係を説明し、誠心誠意謝罪をする必要があります。単に後日修正をすると言うだけでは、従業員の信頼を損ないかねません。

ミスの内容を明確に示し、たとえば「○月○日の残業代が反映されていませんでした」などと説明します。そのうえで「差額は○月分の給与で調整いたします」など、具体的な是正方法を提示しましょう。さらに、再発防止に向けた是正策とチェック体制の強化を約束し、同様のミスを二度と起こさないという決意を相手の従業員に示すことが重要です。

2.給与明細の訂正をする

謝罪後、誤りのあった給与明細を訂正し、正しい内容に修正した新しい明細書に差し替える手配をします。

その際、基本給や各種手当、経費立替金など、支給項目の訂正が所得税額や雇用保険料に影響をおよぼす可能性があることにも注意しましょう。また、社会保険料の控除に誤りがあれば、年末調整時の所得税額の修正も必要です。

訂正により影響の出る項目は、次の通りです。

項目名 所得税に影響する
支給項目
雇用保険料に影響する
支給項目
基本給
各種手当
欠勤/遅刻早退控除
通勤手当
健康保険料
介護保険料
厚生年金保険料
雇用保険料

給与計算ミスのまま所得税を納めてしまうと、あとから修正手続きが生じてしまうため、給与計算のミスに気づいた時点で、できるだけ早期に訂正をしましょう。

3.給与の過不足分を当月中に精算する

給与の過不足は、労使双方にとって重大な問題です。使用者は労働基準法に基づき、適正な給与の支払いを義務付けられています。一方、労働者は正当な賃金を受け取る権利があります。このため、給与計算のミスが発覚した場合、迅速な是正が必要不可欠です。

ここでは、給与額が不足している場合と給与額が過払いの場合に分けて解説します。

給与額が不足している場合

給与計算の誤りにより、従業員に支払うべき金額に過不足が生じた場合、労働基準法第24条に基づき迅速な対応が求められます。

労働基準法第24条では、賃金は通貨で全額を直接労働者に支払う義務があり、毎月一回以上、一定の期日を定めて全額を支払わなければならないと規定されています。したがって、給与額に不足があれば「全額支払いの原則」に基づき、速やかに調整しなければなりません。

不足分の給与は当月中に支払わなければなりませんが、従業員の同意があれば翌月以降の調整であっても可能です。ただし、当月中の対応が望ましいことにかわりはありません。

参考)労働基準法第24条(賃金の支払)

給与額が過払いの場合

過払い分は当月に処理するのが望ましいとされています。

ただし、労使間で給与計算ミスへの対応として「翌月調整」を定めている場合や、従業員との合意が得られれば翌月での調整も可能です。労使協定で翌月調整を定めてあったとしても、実際に給与から過払い分を差し引く際には必ず従業員本人の同意を得ることが必須条件です。同意なく一方的に差し引くことはできません。

また、過払いが生じた場合、源泉所得税や雇用保険料の控除額も本来より過大になっている可能性があるため、注意が必要です。正しい金額に修正したうえで、過払い分の調整をしなければなりません。

給与計算でミスが発生する原因

給与計算は複雑な業務です。人件費は会社の大きな支出項目であり、従業員の生活を左右する重要な要素です。しかし、さまざまな要因によりミスが発生してしまうケースもあります。人的要因、業務プロセスの課題、システム面の問題など、ミスの原因は多岐にわたります。

給与計算でミスが発生する主な原因は、次のとおりです。

  • 給与の変更や改定に対応できていない
  • エクセルや手動での給与計算をしている
  • 複数名で作業をしている
  • 担当者の負担増加で集計のミスが起きた

給与計算でミスを防ぐためには、こうした原因を正しく認識し、適切な対策を講じることが不可欠です。

給与の変更や改定に対応できていない

給与計算は、さまざまな要素の変化を正確に反映させなければならないため、煩雑な作業になりがちです。

まず、昇給・賞与・時間外労働・休日出勤・欠勤など、給与に影響を与える変動要素が多岐にわたります。これらの変化を適時に反映しなければ、古いデータのままの誤った計算となってしまいます。

また従業員ごと、年齢ごとに異なる社会保険料の控除額の算出には、制度の詳細を熟知している従業員があたらなければなりません。さらに、新しい制度の導入や税率の変更など、保険料の仕組み自体も刻々と変化していくため、最新情報の入手も欠かせません。

加えて、年に一度の給与額変更や扶養家族の変更などで固定給自体が変動するタイミングも多くあり、それに伴う社会保険料控除額の再計算も求められます。

このように、給与計算にはさまざまな変動要素がかかわっており、そのすべてを正確に捉えておかなければなりません。変更が頻繁に起これば、処理が追いつかず、なんらかの見落としが生じるリスクも高まります。

エクセルや手動での給与計算をしている

手動で給与計算をする場合、データの転記ミスや計算ミスが起こりやすく、エラーの発生するリスクが高まります。

給与計算には、労働時間を集計し残業代の計算から税金や社会保険料の計算まで、細かく正確な作業が求められます。さらに、制度が改正された際には、テンプレートの更新もしなければなりません。

手作業での給与計算は、担当者に大きな負担がかかります。また、計算が自動化されていないため、ミスが生じやすい状況でもあります。

複数名で作業をしている

給与計算業務は複雑で、細心の注意を払わなければならない作業です。複数の担当者がそれぞれの役割を分担している場合、作業の引き継ぎ時にデータの入力漏れなどのミスが発生しやすいことも難点です。

一方、1人ですべての作業をすれば体系的に業務を把握できるため、ミスが起こる可能性は低下します。しかし、会社規模が大きくなれば、分業体制は避けられません。そうした場合、固定された役割分担ではなく、各担当者が全体像を把握できる柔軟な環境づくりが必要です。

担当分野にとらわれず、相互に情報を共有し補完し合うことにより、ミスを最小限に抑えられます。そのためにも定期的な情報共有の場を設け、業務の流れを視覚化するなどの工夫が必要です。

担当者の負担増加で集計のミスが起きた

締め日から支給日までの期間が短く、給与計算に割ける時間が十分にない場合は要注意です。勤怠データの収集や集計を手作業でしていると、ミスにつながるリスクはより深刻化します。手作業は時間がかかり、ヒューマンエラーのリスクも高まります。可能な限り業務のシステム化を進め、効率化とミス削減を図るべきです。

さらに、人員不足やスキル不足も大きな問題です。従業員数に対して給与計算担当者が少ない場合、過剰な業務負担からミスが生じやすくなります。また、給与計算のルールを十分に理解していない担当者がいれば、さらにミスにつながるおそれがあります。そのためにも自社のやり方だけでなく、給与計算の基本ルールを押さえることが重要です。

給与計算で発生しやすいミスの例

給与計算は複雑な業務であり、さまざまな要素を正確に反映させる必要があります。そのため、少しの見落としや入力ミスであったとしても大きな誤りにつながりかねません。

給与計算で発生しやすいミスとして、次の例があげられます。

  • 異動や扶養変更に関する入力漏れ
  • 時間外労働の割増計算の漏れ
  • 保険料の控除・徴収漏れ
  • 各種手当の計上漏れ
  • 日割り計算の計算ミス

ここでは、それぞれについて紹介します。

異動や扶養変更に関する入力漏れ

給与計算のミスが起こりやすいのは「従業員の異動や扶養に関する環境の変化が原因」の入力漏れです。異動の場合は、内示が出る段階で入力することによりミスを予防できます。しかし、家族の増加や扶養から外れるなどのイレギュラーな変更は、とくに入力漏れが発生しやすいケースです。

従業員に税法上の扶養家族がいる場合、扶養人数に応じた一定額が年間所得から控除されます。しかし、たとえば子供の就職や配偶者の収入増により扶養から外れた場合、その家族に対する扶養控除は適用されません。従業員から扶養が外れたという報告があったにもかかわらず、それが給与計算に反映されなければ、源泉徴収される所得税額にも影響します。

反映漏れが発生した場合、年末調整により修正は可能ですが、ミスに気づかずに年末調整を終えて源泉徴収票を発行してしまうと、その後の修正に大きな手間がかかってしまいます。

時間外労働の割増計算の漏れ

従業員が残業や休日労働、深夜労働をした場合、企業は割増賃金を支払わなければなりません。日本の労働基準法では「1日8時間、週40時間」を超える労働に対して割増賃金を支払うことが規定されています。

割増賃金の計算方法は法律で定められており、労働した日や時間帯によって割増率が異なります。深夜労働や休日出勤の場合、通常の労働時間とは異なる割増率が適用されるため注意しましょう。

割増賃金の計算ミスを防ぐためには、労働状況や時間に応じた正確な割増率を確認し、適切に計算することが重要です。それを怠ると、給与の計算ミスによるリスクが高まります。

保険料の控除・徴収漏れ

通常、介護保険料は40歳になる誕生日の前日を含む月から支払いがはじまります。たとえば、4月3日生まれの場合は4月分から、4月1日生まれの場合は3月分から徴収しなければなりません。しかし従業員数が多い場合は、漏れが発生して給与計算時にミスが起こることもあります。

また、月の途中で退職した従業員の社会保険料は、控除の対象になりません。社会保険料は月単位で計算され、「資格喪失月の前月」までの分を徴収する仕組みです。誤って控除してしまわないよう、注意しましょう。

各種手当の計上漏れ

給与計算担当者は、基本給とは異なる各種手当を正確に反映する必要があります。これらの手当を正確に計上するためには、従業員に関する情報を常に最新の状態に保ち、昇格や資格取得などの変化を把握しておくことが重要です。

住宅・役職・通勤などの手当は、従業員ごとに金額が異なるため、正確な給与計算には従業員情報の確認が常に欠かせません。さらに、企業によっては、扶養手当や住宅手当などの手当を出勤日数に関係なく全額支給する場合もあれば、日割り計算する場合もあります。そのため、各手当の計算方法についても確認が必要です。

日割り計算の計算ミス

入社や退職が月末でない場合、給与は日割り計算をします。その際、手当の計算ミスに注意が必要です。日割り計算の方法は法律で決まっていないため、就業規則や賃金規定に明記し、従業員と共有することが重要です。さらに、社内ルールで計算方法を統一しておくと、担当者が変わった際も円滑に処理が進みます。これにより、トラブルを未然に防げます。

給与計算のミスの予防方法

給与計算は、複雑な計算や法の遵守が求められるため、ミスが発生しやすい領域です。こうしたミスを防ぐには、チェック体制の強化や業務手順のマニュアル化、スケジュール管理の徹底が欠かせません。

さらに、給与計算ソフトの導入やアウトソーシング活用など、業務の効率化と正確性向上に向けた対策も検討する必要があります。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

チェック体制の強化・見直し

給与計算は割増賃金や手当、控除など複雑な要素がかかわるため、ミスが発生しやすい業務です。ミスに気づくための体制づくりが欠かせません。

まずは、過去にミスが発生しがちであった項目を中心に、チェックリストを作成しましょう。そして、単に1人で確認するのではなく、複数の担当者によるダブルチェックやトリプルチェックの体制整備も重要です。

人的ミスを防ぐためにも、計算や入力作業を1人の担当者に集中させるのは避けましょう。1人に過度の負担がかかれば、疲れや慣れからミスが生じやすくなります。

作業を分散し、複数の目で確認し合う体制を構築することにより、ミス発見の精度が高まります。

マニュアルやスケジュール管理表の作成・見直し

ミスを最小限に抑えるためには、「マニュアル」による効率的な手順を構築と、年間や月間における「スケジュール管理表」による進捗管理が重要です。

具体的には、従業員の異動情報や扶養家族の変更など、毎月発生する人事情報の更新タイミングを決めておき、定期的に「人事情報を反映させる期間」を設けて入力漏れのリスク低減を目指します。また、給与計算の基準となる勤怠データの締め日を従業員に周知徹底し、スムーズに次の計算業務に移行できる体制を整備します。

また、締め日から最終の給与支給日までの期間を十分に確保し、計算に余裕を持たせることも重要です。

給与計算ソフトやアウトソーシングの利用

社内の人材やリソースが限られていて、人為的なミスを避けるのが難しい場合、社会保険労務士や税理士、代行業者に依頼する選択肢があります。専門家に依頼することにより、ミスのリスクを軽減しつつ、企業の業務負担を軽減できます。

一方で、給与計算をできるだけ低コストでミスなく処理したい場合や、従業員数が少ないため社内で処理したい場合には、給与計算ソフトの活用が有効的です。初心者でも使いやすいソフトを活用すれば、人為的ミスを抑えつつ効率的に給与計算業務を進められます。

さらに、給与計算ソフトは法改正に自動対応するため、保険料の改定など最新情報のチェックを担当者が自分でする必要はありません。これにより、情報の入手漏れも防げます。とくに中小規模の企業では、給与計算を外部に委託するよりも、ソフトを使って自社で対応する方がコスト削減につながる可能性があります。

給与計算のミスと対処法まとめ

給与計算でミスが発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。まず、ミスが発覚した段階で従業員に説明と謝罪をし、給与明細の訂正や過不足分の精算を当月中に実施することが重要です。

ミスの原因としては、給与の変更や改定に対応できていないことや「表計算ソフトの設定」「手動での計算」「複数人での作業」「担当者の負担増加」などがあげられます。

具体的なミスの例としては「異動や扶養変更の入力漏れ」「時間外労働の割増計算の漏れ」「保険料の控除・徴収漏れ」などがあります。

これらのミスを予防するためには、チェック体制の強化や見直し、マニュアルやスケジュール管理表の作成・更新、給与計算ソフトやアウトソーシングの活用が効果的です。

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