給与所得者の保険料控除申告書とは何か?

保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書とは、従業員が年末調整の際に所得控除を受けるために、給与の支払者(会社など)に提出する申告書です。給与の支払者は、この申告書と「給与所得者の扶養控除等申告書」「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」などをもとに年末調整の計算をして、従業員の所得税を確定します。※2020年9月13日に更新

目次

保険料控除申告書で受けられる所得控除

保険料控除申告書のイメージ

保険料控除申告書で受けられる所得控除は、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除です。

生命保険料控除

生命保険料控除とは、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けられる所得控除(物的控除)のことです。なお、確定申告での「医療費控除」とは異なります。

生命保険料控除の対象

生命保険、介護医療保険については、保険金受取人が契約者か配偶者、その他の親族である保険が生命保険料控除の対象になります。財形保険や団体信用生命保険などは、生命保険料控除の対象になりません。個人年金保険についても、年金受取人が契約者またはその配偶者であり、保険料払込期間が10年以上であることなど、生命保険料控除の対象となる条件があります。

生命保険料控除の控除額

生命保険料控除は、新制度と旧制度の両方で運用されています(平成22年度の税制改正により)。平成23年12月31日までに契約した場合(旧制度)と、平成24年1月1日以降に契約した場合(新制度)とで、生命保険料控除の控除額の計算方法が異なります。

生命保険料控除の計算方法

前述のとおり、生命保険料控除の計算方法は、新制度と旧制度で違いがあります。また、所得税と住民税では控除額が異なります。旧制度では、所得税の控除限度額が、一般生命保険料・個人年金保険料それぞれ5万円です。住民税では3万5千円となります。新制度では、所得税については、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料、それぞれの控除限度額は最大で4万円です。住民税では、限度額が2万8千円となります。

新制度の控除額の表

生命保険料控除は、年間の保険料総額によって所得控除額が変わります。以下の表は、新制度(平成2411日以降に契約した保険)における保険料総額と控除額を対比した表です。

生命保険料控除額(所得税)

年間の保険料総額 控除額
20,000円以下 支払保険料などの全額
20,000円超 ~ 40,000円以下 支払保険料などの1/2 + 10,000円
40,000円超 ~ 80,000円以下 支払保険料などの1/4 + 20,000円
80,000円超 一律40,000円

生命保険料控除額(住民税)

年間の保険料総額 控除額
12,000円以下 支払保険料などの全額
12,000円超 ~ 32,000円以下 支払保険料など ? 1/2 + 6,000円
32,000円超 ~ 56,000円以下 支払保険料など ? 1/4 + 14,000円
56,000円超 一律28,000円

生命保険料控除を受けるには

勤務先で年末調整する場合は、保険料控除申告書に記入して勤務先に提出します。確定申告するのであれば、確定申告書の生命保険料控除に記入して生命保険料控除証明書を添付します。あるいは、確定申告書の提出時に生命保険料控除証明書を提示します。

生命保険料控除証明書とは

保険会社から発行される書類です。生命保険料の支払金額や、生命保険料控除を受けられることを証明できます。10月頃に保険会社から送られてくるため、大切に保管しておきましょう。紛失時には再発行してもらえますが、年末調整や確定申告の期限ぎりぎりになっての再発行となると、間に合わないかもしれませんので要注意です。

※参考:生命保険料控除|所得税|国税庁

地震保険料控除

地震保険料控除とは、特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けられる所得控除(物的控除)のことです。損害保険の分野で所得控除を受けられるのは、この地震保険料控除のみです。つまり、地震保険に加入していなければ、損害保険での所得控除を受けらないということになります。また地震保険料控除は、平成18年度の法改正によって廃止された損害保険料控除の代わりに創設された制度です。

地震保険料控除の控除額

所得税で年間払込保険料の全額(最高5万円)、住民税で年間払込保険料の2分の1(最高2万5000円)です。

地震保険料控除を受けるには

年末調整する場合は、保険料控除申告書を勤務先に提出します。確定申告する場合は、確定申告書に地震保険料控除について記入します。そして、地震保険料の支払金額や地震保険料控除を受けられることを証明する書類を確定申告書に添付するか、確定申告の際に提示します。

※参考:地震保険料控除|所得税|国税庁

社会保険料控除

社会保険料控除とは、納税者本人やその配偶者、生計を共にしている親族などが社会保険料を支払う際に受けることができる所得控除(物的控除)のことです。

社会保険料控除の対象となる社会保険料

社会保険料控除が認められている社会保険料は、以下のものがあります(例示)。

  • 国民健康保険の保険料
  • 国民年金、厚生年金、船員保険の保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金基金の掛け金
  • 国民年金基金の掛け金
  • 健康保険、雇用保険の保険料
  • 農業者年金の掛け金
  • 共済組合の掛け金
  • その他、国によって公的なものと認められた保険料や掛け金

社会保険料控除の条件

納税者本人が支払ったのであれば、納税者本人の社会保険料だけでなく、同じ家計で生活している配偶者や親族の社会保険料も控除の対象になります。なお、社会保険料控除を申告する場合は、社会保障制度に係る権限のある機関から発行される「社会保険料控除証明書」を添付します。

会社員が他人の社会保険料を支払った場合

会社員の場合、社会保険料は毎月の給料から天引きされます。通常、控除については会社が手続きするため、納税者自身が特別な手続きをする必要はありません、ただし例外があります。20歳を超えた子供の国民年金を支払っている場合や、本来、配偶者が支払うべき社会保険料を支払っている場合などです。このような場合は、本人が社会保険料を支払ったことを会社側で把握できないため、家族の分の社会保険料を社会保険料控除の対象に含めたい場合には、保険料控除申告書を給与支払者(会社など)へ提出します。

社会保険料控除を受けるには

年末調整時に、保険料控除申告書を給与支払者(会社など)へ提出します。申告書に記載する内容は、社会保険料の種類、支払先、社会保険料を負担している人の名前と続柄、支払った社会保険料の金額です。国民年金の場合は、支払いを証明する書類も一緒に会社へ提出します。

※フリーランス・個人事業主の方は、確定申告することで社会保険料控除を受けられます。国民年金保険料の支払いについては、支払いを証明する書類を確定申告書に添付する必要があります。

※参照:社会保険料控除|所得税|国税庁

無職期間中に社会保険料を支払った場合

A社を辞め、数ヶ月の無職期間を経て、その年の途中でB社に入社したとします。B社では、前職(A社)の源泉徴収票に記載された社会保険料とB社に入社後の社会保険料を合算して、年末調整します。この場合、無職期間中に社会保険料を支払っていたとしても、その事実をB社が把握できないため、年末調整などの際に自ら申告して控除を受ける必要があります。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除とは、個人事業主が事業の廃止後に各種共済金を受けるために支払った掛金などについて受けられる所得控除(物的控除)です。

小規模企業共済等掛金控除の対象になる掛金

  • 小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
  • 確定拠出年金の掛金(企業型、個人型のいずれも対象)
  • 地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金

小規模企業共済等掛金控除の控除額

その年に支払った掛金の全額が控除されます。

小規模企業共済等掛金控除を受けるためには

勤務先で年末調整を受ける場合は、給与所得者の保険料控除申告書に「小規模企業共済掛金払込証明書」などの証明書を添付して給与支払者(勤務先)に提出するか、または提示します。確定申告する場合は、確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記入し、「小規模企業共済掛金払込証明書」などの証明書を確定申告書に添付するか提示します。

※参照:小規模企業共済等掛金控除|所得税|国税庁

様式が変わって配偶者特別控除は別の書類に

以前、この保険料控除申告書は、配偶者特別控除の申告書も兼ねていました。しかし様式が変更となったため、「給与所得者の配偶者控除等申告書」という別の書類の提出が必要になっています(令和2年から「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」に変わりました)。参考までに、国税庁ホームページで公開されている保険料控除申告書の様式をリストアップしておきますので、確認してみてください。

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