労働者名簿とは~対象者、記載内容、様式、保管期間について解説~

労働者名簿

労働者名簿は、労働者を雇っている会社が作成を義務化されている書類です。今回は、労働者名簿とはどのような書類で、何が記載する必要があるか徹底解説します。適切な保管方法や、作成時のポイントも紹介しますので、労働者名簿の作成に困っている方や、労務の担当者は、労働者名簿の作成時の参考にしてください。※2022年11月30日に更新

労働者名簿の概要

労働者名簿は、労働者の情報を記載する重要な書類です。労働者名簿とはどのようなもので、何が記載する必要があるか解説します。

法定三帳簿のひとつ

労働者名簿は、法定三帳簿のひとつです。法定三帳簿とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を指します。それぞれ、どのような内容が書いてあるか、解説します。

労働者名簿

企業で働く従業員の情報が記載された書類。従業員の名前や住所、社内の部署などが記載されている。

賃金台帳

従業員に支給されている給与(賃金)に関する情報が記載されている書類。従業員それぞれの労働時間や残業時間、各種手当が記載されている。従業員に配られる給与明細とは別に記録を残す必要がある。

出勤簿

従業員の出勤記録。従業員それぞれの出勤日数や労働時間が記載されている。時間外労働や休日出勤も記録する必要がある。

この3つの帳簿は、法律によって作成が義務化されています。

記載されている内容

労働者名簿に記載する内容は国によって定められており、その記載事項を満たす必要があります。内容は、従業員それぞれの名前や住所などの個人情報です。また、雇用日や社内の移動履歴も記載します。社内で管理される重要な情報であり、人事課や総務課が管理します。従業員一人ひとりに対して記録が必要で、情報が漏れてはいけません。記載内容に変更があった場合は、従業員から申告する必要があります。

全ての企業が作成の対象

労働者名簿の作成は、企業規模に関係なく全ての会社が対象です。これは、法定三帳簿の全てに当てはまります。個人事業主も、従業員を1人でも雇っていれば作成の義務がある書類です。労働者名簿を作成していない、記載漏れが判明した場合、罰則を受ける可能性があります。全従業員の情報をきちんと記入して作成する必要があり、厳重な管理が求められます。

労働者名簿を使用する場面

労働者名簿をいつ使用するか、どのような場面で役に立つかを解説します。使用する場面として挙げられる時は、以下の通りです。

  • 人事や労務の管理
  • 労働基準監督署の調査時
  • 年金事務所の調査時

人事や労務の管理

労働者名簿は、日常の人事や労働者管理をする時、非常に役立ちます。労働者名簿には、労働者の住所や入社年月日などその人に対する個人情報が多く記載されています。従業員に何かあったとき、すぐ調べられる書類です。また、従業員それぞれの人事異動や出向も記録に残るため、長年勤める従業員の移動遍歴もすぐに確認できます。労働者名簿は、従業員それぞれの個人情報であるため、常に更新する必要があります。

労働基準監督署の調査時

企業は、労働基準監督署の調査が入れば書類の提出が求められます。そのとき、労働者名簿も提出の義務があります。労働基準監督署は、企業が労働基準法違反の有無を調査します。もし、書類に不備があれば、罰金が発生する可能性もあるため、日頃から徹底した管理が必要です。いつ調査に入られても最新の情が記載された書類を提出できるように、準備しておきましょう。

年金事務所の調査時

労働基準監督署の調査だけではなく、年金事務所の調査が入る可能性もあります。年金事務所とは、社会保険料を適正に徴収・納付しているかの調査を行います。抜き打ちで行われる調査のため、日頃から書類を整備しましょう。調査の際は、他の法定三帳簿も提出が必要です。もし、不備や不正が発覚すると、会社に指導が入り、罰則・罰金を支払わなければいけません。雇用している従業員全員の記録に、漏れがないように確認しましょう。

労働者名簿の記載の対象者

従業員を雇っている企業は、原則全員を対象として労働者名簿に情報を記載しなければなりません。しかし、雇用方法によって、記載の必要がない労働者もいます。どの労働者の記載が必要かを確認してください。

正社員・パート全員が含まれる

基本的に、雇用している全員が労働者名簿の記載対象です。正社員だけではなく、アルバイトやパートも含まれます。労働時間や労働日数に関わらず、その企業と雇用契約を結んでいる人は、記載します。ただし、出向している社員は、その社員がどの会社に在籍しているかどうかによって、記載の有無が変わります。自社に席を残して出向している社員は、元の会社・出向先の双方に記載義務があります。一時的に、出向先に移籍している社員は、出向先のみ記載する必要があります。どの会社に属しているか、が重要なポイントです。記入漏れや行き違いがないよう、確認してください。

代表者・役員・派遣労働者・日雇い労働者は対象外

労働者名簿に記載の義務がない労働者もいます。それは、日雇い労働者と派遣社員です。派遣社員は、派遣元の会社に属するため、派遣先の会社の労働者名簿に記載する義務はありません。また、会社の代表者と役員も労働者ではないため、労働者名簿での管理対象にはなりません。しかし、年金事務所の調査で社会保険の加入者を確認されたときに、提出を求められる可能性があります。社内の「労働者」つまり管理対象者を確認し、正しい管理が必要です。

労働者名簿に記載する内容

労働者名簿に記載する内容を詳しく解説します。記載する項目は以下の通りです。

  • 従業員の氏名、生年月日、性別
  • 従業員の住所
  • 雇用の年月日
  • 従業員の履歴
  • 業務の種類
  • 退職、死亡の年月日

それぞれの内容を、以下で詳しく解説します。

従業員の氏名・生年月日・性別

従業員の氏名、生年月日、性別は必ず記載してください。この際、戸籍に登録されている内容を正しく記載する必要があります。氏名の読み方が難しい場合は、読み仮名を振ると他の社員と混同する可能性が下がります。

結婚や養子縁組によって氏名を変更したときは、労働者名簿の記載内容も変更します。 記載内容の変更は、従業員の申告が必要です。変更があれば伝えるように、日頃からアナウンスしてください。

従業員の住所

従業員の住所も必須項目です。記載する住所は、従業員が住んでいる現住所を登録する必要があります。住民票の住所とは異なる可能性もあるため、確認してください。

また、従業員に引っ越しがあれば登録を変更します。引っ越しは、従業員の自己申告がなければ、情報の更新ができません。日頃から、記載内容に変更があれば申告するように伝えることが大切です。

雇用の年月日

従業員の雇用年月日を記載します。その従業員の採用決定日ではなく、雇用がスタートした日を記載してください。

いつから従業員として働いているか、確認が可能です。また、この日付から社会保険や賃金台帳の登録も始まります。雇用開始後に試用期間や研修期間がある場合、その開始日が雇用日として記載されます。勤務年数や実績にも大きく関係するため、記入内容に間違いがないように確認してください。

従業員の履歴

雇用した後、その従業員の異動や昇進などの履歴を記載します。部署名や役職を記載する企業もあります。従業員に出向や転勤があったときは、その記載も必要です。出向の際は、どの会社に籍を置いているかを確認してください。従業員の籍がどちらにあるかによって、その従業員を記載する労働者名簿が変わります。また、転勤の場合は、転籍先の事業所に労働者名簿の登録を移す必要があります。

業務の種類

従業員それぞれがどのような業務をしているか記載する企業もあります。これは、必須項目ではありません。もし、従業員が働いている間に労災が発生した場合、どの業務の担当だったかの確認などに使用されます。

社内の業務を、複数のカテゴリーに分けて記載する方法もおすすめです。例えば、事務・営業・広報・受付・販売などが挙げられます。従業員の部署が移動したとき、その都度、情報更新が必要となるため、記載の有無は慎重に決定しましょう。

退職・死亡の年月日

退職日、または従業員の死亡日を記入します。退職日は、その従業員ときちんと認識を合わせる必要があります。退職者が会社を辞めた後にハローワークで失業手当を申請するときに必要な情報です。もし、退職日と会社に記載している日付が合わないと、問い合わせが来ます。もし、従業員が業務中に死亡したときは、労災の対象です。亡くなられた日付とその理由を明確に記録として残してください。

労働者名簿の保管方法

労働者名簿の保存方法は、法律で決まっていません。紙の書類で保管する方法と、パソコン内にデータで保管する方法が主流です。近年は、データ管理の企業が増えています。どちらの保管方法であったとしても、誰でも閲覧できる場所で管理するのではなく、担当者だけが扱える場所で保管しましょう。また、会社に調査が入り、書類の提出を求められたときには、すぐ印刷対応できる環境が必要です。労働者名簿の情報を第三者に開示するときは、労働者本人の承諾が必要です。就労規則に基づいて管理してください。

労働者名簿の保管期間

労働者名簿は、その従業員が退職した後、3年の保管義務があります。退職後、すぐに破棄しないように気をつけましょう。ハローワークが退職者について問い合わせる可能性もあります。もし、保管期間内に破棄・紛失があれば、罰金や罰則を受けます。退職者の名簿は、現従業員とは別に保管する方法がおすすめです。また、他の在籍する社員と混同しないよう、よく確認してください。

労働者名簿の作成に関する注意点

労働者名簿を作成するとき、気をつけたいポイントがあります。今回は、ポイントを4つご紹介します。ポイントを押さえて、正しく円滑に名簿を管理しましょう。

書式に厳格なルールはない

労働者名簿の作成は、企業に義務化されています。しかし、様式に厳格なルールや、ひな形の指定はありません。労働者名簿として記載すべき項目は定められています。その項目が正しく記載されていれば、名簿として認められる書類です。企業によっては、自社でそのテンプレートを作成している場合もあります。この方法で作成するときは、記載項目に漏れがないように確認してください。また、厚生労働省がテンプレートを公開しているため、それを活用する方法もおすすめです。または、それを参考にしてエクセルで労働者名簿を作成する方法もあります。

変更があれば随時更新する

労働者名簿は、常に最新の情報を更新する必要があります。更新する可能性がある項目は、結婚して苗字が変更される内容や、引っ越しに関する住所変更です。また、社内で部署や事業所が変更になった際も、更新してください。社内の移動や業務の種類に関する記載は、労務の担当者も最新の情報を知れる内容です。しかし、結婚や引っ越しは、労働者からの申告が無いと把握できません。労働者には、変更があれば報告するよう、呼びかける必要があります。

複数の事業所があれば、それぞれで作成する

労働者名簿の管理は、社内全体でひとつにまとめるものではありません。支社、工場、事務所などそれぞれの事業所に分けて登録する必要があります。これは、労働基準法107条に定められている内容です。それぞれの事業所ごとの管理が必要のため、労働者が他の事業所や支社に異動になると、登録場所を変更します。名簿を作成する場所は決まっていないため、本社で名簿を作成し、各事業所で保管する方法も可能です。

個人情報のため慎重に取り扱う

労働者名簿に記載義務のある項目は、どれも個人情報です。慎重に取り扱ってください。保管場所も重要です。名簿の保管を担当する人以外が、簡単に閲覧できない場所に保管しましょう。
労働者名簿の作成方法は、紙の作成とパソコン内でデータの作成があります。紙の名簿を保管する時は、誰もが見られる場所に置かないようにしてください。また、パソコンはパスワードを設定すると閲覧される可能性が下がります。徹底した管理下で、提出を求められた時はすぐに提出できるような準備が大切です。

労働者名簿のまとめ

労働者名簿は、働いている労働者の情報が記載されている重要な書類です。記載する労働者は雇用関係の指定があり、記載する項目も法律によって定められています。また、外部機関の調査が入ったときには、提出を求められる可能性もある書類です。

今回は、労働者名簿作成のポイントや保存方法もご紹介しました。ポイントを押さえて、労働者の最新情報を正しく保管してください。名簿の作成に関して悩まれている方がいれば、ぜひ参考にしてください。

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