更新日:2024年11月05日
給与所得控除とは、給与収入のある人が税負担を軽減するため、所得から一定額を控除できる制度です。会社員にとって、必要経費を差し引ける重要な仕組みです。本記事では、給与収入から控除される「給与所得控除」について、仕組みや計算方法、「所得控除」との違いなどをわかりやすく解説します。具体例として、給与所得控除の対象となる収入や控除額の計算方法、収入103万円の壁との関係、特定支出控除なども紹介します。
目次
給与所得控除とは、会社員やアルバイトなどの給与所得者が受けられる、所得から一定の金額を控除する制度のことです。給与所得者は、事業所得者のように収入から経費を差し引けません。そこで、経費分として収入に応じて控除されるのが、給与所得控除です。
給与所得控除は、給与収入に対して適用される控除です。事業所得者が収入から必要経費を差し引くのと同様、給与所得者も給与収入から一定額を控除する仕組みです。
給与所得控除により、給与所得者は実質的に必要経費を差し引いた形で所得が計算され、税負担が軽減されます。給与所得者にとって、給与所得控除は節税の観点から重要な仕組みの一つです。
給与収入とは、いわゆる年収を指し、給与や賞与に加え休日出勤手当や残業代など、労働の対価として会社から支払われるすべての金額を含みます。また、自社製品の無料提供など、現物支給(現物給与)も給与収入に含まれます。
一方、給与所得は給与収入から給与所得控除を差し引いた金額です。つまり、給与収入と給与所得の違いは、給与所得控除が適用されているかどうかにあります。
給与所得控除の対象となる「給与収入」ですが、すべての手当が含まれるわけではありません。例えば、通勤手当は月額10万円以下のものは対象外です。また、転勤や出張などの旅費も、通常必要と認められるものは給与収入に含まれません。
その他、宿直や日直手当のうち一定金額以下のものや、社内規定に準じて支払われる慶弔金なども、給与収入の対象外です。
給与所得控除と所得控除は、似た名称ですが、まったく異なる制度です。給与所得控除は、会社員などが受けられる控除で、仕事に必要な経費を考慮しています。
一方、所得控除は個人的事情に応じて税負担を軽減する制度です。例えば、医療費控除や生命保険料控除など、個人の事情に応じて所得から控除されます。このように、所得控除は、納税者の税負担を公平にするための制度といえるでしょう。
源泉徴収票とは、会社が支払った給与や賞与、そして天引きされた所得税や社会保険料などの詳細を記載した書類です。企業は従業員の年間収入が確定した翌年1月31日までに交付する義務があり、退職者には退職後1か月以内に交付されます。
この書類には、支払われた金額から給与所得控除を差し引いた「給与所得控除後の金額」も記載されています。源泉徴収票は、税金や社会保険料の内訳を確認するための重要な書類であり、確定申告や各種手続きで必要です。
給与所得は、年間収入(給与収入)から、一定の控除額を差し引いて算出されます。この控除額が「給与所得控除」と呼ばれるものです。以下では、給与所得控除額の計算方法と計算例を解説します。
給与所得控除額は、給与収入に応じて異なる計算式で決まります。これは、給与収入から控除することで、会社員の必要経費として所得金額の計算に反映させるものです。
【令和2年分以降】
例えば、給与収入が1,625,000円以下の場合、控除額は55万円です。収入がそれ以上の場合、控除額が段階的に変動します。
給与収入が660万円未満の場合は、国税庁が公開している「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を参照するのがおすすめです。
参考)国税庁|No.1410 給与所得控除 参考)国税庁|令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表
例として、年間の給与収入が500万円の場合を考えてみましょう。この金額は、給与所得控除の計算表において、3,600,001円から6,600,000円までの区分に該当します。計算式に当てはめると、以下のとおりになります。
給与所得控除:5,000,000円✕20%+440,000円=1,440,000円
給与収入5,000,000円から給与所得控除を差し引いた金額は、3,560,000円になります。
給与所得控除と「収入103万の壁」には密接な関係があります。この「壁」とは、所得税が発生し始める年収のラインのことです。
給与所得控除の最低額は55万円であり、これに所得金額2,400万円以下の納税者に適用される基礎控除48万円を加えると、103万円になります。つまり、年間の給与収入が103万円以下であれば、課税所得がゼロとなり、所得税は発生しません。
【基礎控除の金額】
参考)国税庁|No.1199 基礎控除
しかし、収入が103万円を超えると、超過分に対して課税が始まります。例えば、年収が105万円の場合、2万円が課税対象です。この仕組みにより、パートやアルバイトの方々は、収入を103万円以下に抑えることで税負担を避けようと検討する場合があります。
ただし、注意すべき点もあります。通勤手当は原則として103万円に含まれませんが、月額15万円を超える場合は課税対象です。また、複数の勤務先がある場合は、すべての収入を合算して計算する必要があります。
年末調整や確定申告の際は、この「103万の壁」を意識しつつ、適切な税務処理をすることが望まれます。年収が103万円前後の人は、給与所得控除と基礎控除を理解し、自身の税負担を適切に管理することが重要です。
給与所得者には、通常の給与所得控除に加えて、「特定支出控除」という制度が用意されています。この制度は、職務遂行に直接関わる個人負担の経費を、一定の条件下で所得から控除できるものです。
特定支出控除の適用を受けるには、職務関連の特定支出の総額が一定の基準額を上回る必要があり、その超過分が特定支出控除の対象となります。一定の基準額とは、その年の給与所得控除額の半分を超える金額です。
例えば、給与所得控除額が200万円の場合、特定支出が100万円を超えていれば、100万円を超えた金額に対して控除を申請できます。
控除の対象となる経費は、以下の7つです。
これらの支出の合計額が、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額を超えた場合、確定申告をすることで超過分を特定支出控除にできます。
給与所得控除は、給与所得者が仕事に必要な経費を計上できない代わりに、所得計算の際に一定額を控除する制度です。これにより、個々の経費がなくても自動的に控除され、税負担が軽減されます。
控除には給与収入から控除される「給与所得控除」と、個人の事情に応じて税負担が軽減される「所得控除」との2つがあります。
さらに、給与所得者には特定支出控除という制度もあり、職務遂行に関連する費用が一定額を超える場合には追加の控除が可能です。
給与所得控除制度の理解は、年末調整や確定申告での賢明な判断と手続きにつながります。年収が103万円を超えそうな場合は、課税所得について意識しておくとよいでしょう。
仕事に直接関係する費用を確認し、賢く控除を受けることで、節税効果を最大限に活かしましょう。
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給与所得控除とは、給与収入のある人が税負担を軽減するため、所得から一定額を控除できる制度です。会社員にとって、必要経費を差し引ける重要な仕組みです。本記事では、給与収入から控除される「給与所得控除」について、仕組みや計算方法、「所得控除」との違いなどをわかりやすく解説します。具体例として、給与所得控除の対象となる収入や控除額の計算方法、収入103万円の壁との関係、特定支出控除なども紹介します。
目次
給与所得控除とは
給与所得控除とは、会社員やアルバイトなどの給与所得者が受けられる、所得から一定の金額を控除する制度のことです。給与所得者は、事業所得者のように収入から経費を差し引けません。そこで、経費分として収入に応じて控除されるのが、給与所得控除です。
給与所得控除の対象は「給与収入」
給与所得控除は、給与収入に対して適用される控除です。事業所得者が収入から必要経費を差し引くのと同様、給与所得者も給与収入から一定額を控除する仕組みです。
給与所得控除により、給与所得者は実質的に必要経費を差し引いた形で所得が計算され、税負担が軽減されます。給与所得者にとって、給与所得控除は節税の観点から重要な仕組みの一つです。
給与収入と給与所得との違い
給与収入とは、いわゆる年収を指し、給与や賞与に加え休日出勤手当や残業代など、労働の対価として会社から支払われるすべての金額を含みます。また、自社製品の無料提供など、現物支給(現物給与)も給与収入に含まれます。
一方、給与所得は給与収入から給与所得控除を差し引いた金額です。つまり、給与収入と給与所得の違いは、給与所得控除が適用されているかどうかにあります。
給与収入に含まれないもの
給与所得控除の対象となる「給与収入」ですが、すべての手当が含まれるわけではありません。例えば、通勤手当は月額10万円以下のものは対象外です。また、転勤や出張などの旅費も、通常必要と認められるものは給与収入に含まれません。
その他、宿直や日直手当のうち一定金額以下のものや、社内規定に準じて支払われる慶弔金なども、給与収入の対象外です。
「給与所得控除」と「所得控除」の違い
給与所得控除と所得控除は、似た名称ですが、まったく異なる制度です。給与所得控除は、会社員などが受けられる控除で、仕事に必要な経費を考慮しています。
一方、所得控除は個人的事情に応じて税負担を軽減する制度です。例えば、医療費控除や生命保険料控除など、個人の事情に応じて所得から控除されます。このように、所得控除は、納税者の税負担を公平にするための制度といえるでしょう。
そもそも「源泉徴収票」とは
源泉徴収票とは、会社が支払った給与や賞与、そして天引きされた所得税や社会保険料などの詳細を記載した書類です。企業は従業員の年間収入が確定した翌年1月31日までに交付する義務があり、退職者には退職後1か月以内に交付されます。
この書類には、支払われた金額から給与所得控除を差し引いた「給与所得控除後の金額」も記載されています。源泉徴収票は、税金や社会保険料の内訳を確認するための重要な書類であり、確定申告や各種手続きで必要です。
年末調整に必要な給与所得控除額の計算方法
給与所得は、年間収入(給与収入)から、一定の控除額を差し引いて算出されます。この控除額が「給与所得控除」と呼ばれるものです。以下では、給与所得控除額の計算方法と計算例を解説します。
給与所得控除額の計算方法
給与所得控除額は、給与収入に応じて異なる計算式で決まります。これは、給与収入から控除することで、会社員の必要経費として所得金額の計算に反映させるものです。
【令和2年分以降】
例えば、給与収入が1,625,000円以下の場合、控除額は55万円です。収入がそれ以上の場合、控除額が段階的に変動します。
給与収入が660万円未満の場合は、国税庁が公開している「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を参照するのがおすすめです。
参考)国税庁|No.1410 給与所得控除
参考)国税庁|令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表
給与所得控除額の計算例
例として、年間の給与収入が500万円の場合を考えてみましょう。この金額は、給与所得控除の計算表において、3,600,001円から6,600,000円までの区分に該当します。計算式に当てはめると、以下のとおりになります。
給与所得控除:5,000,000円✕20%+440,000円=1,440,000円
給与収入5,000,000円から給与所得控除を差し引いた金額は、3,560,000円になります。
給与所得控除と「収入103万の壁」との関係性
給与所得控除と「収入103万の壁」には密接な関係があります。この「壁」とは、所得税が発生し始める年収のラインのことです。
給与所得控除の最低額は55万円であり、これに所得金額2,400万円以下の納税者に適用される基礎控除48万円を加えると、103万円になります。つまり、年間の給与収入が103万円以下であれば、課税所得がゼロとなり、所得税は発生しません。
【基礎控除の金額】
参考)国税庁|No.1199 基礎控除
しかし、収入が103万円を超えると、超過分に対して課税が始まります。例えば、年収が105万円の場合、2万円が課税対象です。この仕組みにより、パートやアルバイトの方々は、収入を103万円以下に抑えることで税負担を避けようと検討する場合があります。
ただし、注意すべき点もあります。通勤手当は原則として103万円に含まれませんが、月額15万円を超える場合は課税対象です。また、複数の勤務先がある場合は、すべての収入を合算して計算する必要があります。
年末調整や確定申告の際は、この「103万の壁」を意識しつつ、適切な税務処理をすることが望まれます。年収が103万円前後の人は、給与所得控除と基礎控除を理解し、自身の税負担を適切に管理することが重要です。
給与所得者の特定支出控除とは
給与所得者には、通常の給与所得控除に加えて、「特定支出控除」という制度が用意されています。この制度は、職務遂行に直接関わる個人負担の経費を、一定の条件下で所得から控除できるものです。
特定支出控除の適用を受けるには、職務関連の特定支出の総額が一定の基準額を上回る必要があり、その超過分が特定支出控除の対象となります。一定の基準額とは、その年の給与所得控除額の半分を超える金額です。
例えば、給与所得控除額が200万円の場合、特定支出が100万円を超えていれば、100万円を超えた金額に対して控除を申請できます。
控除の対象となる経費は、以下の7つです。
これらの支出の合計額が、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額を超えた場合、確定申告をすることで超過分を特定支出控除にできます。
給与所得控除まとめ
給与所得控除は、給与所得者が仕事に必要な経費を計上できない代わりに、所得計算の際に一定額を控除する制度です。これにより、個々の経費がなくても自動的に控除され、税負担が軽減されます。
控除には給与収入から控除される「給与所得控除」と、個人の事情に応じて税負担が軽減される「所得控除」との2つがあります。
さらに、給与所得者には特定支出控除という制度もあり、職務遂行に関連する費用が一定額を超える場合には追加の控除が可能です。
給与所得控除制度の理解は、年末調整や確定申告での賢明な判断と手続きにつながります。年収が103万円を超えそうな場合は、課税所得について意識しておくとよいでしょう。
仕事に直接関係する費用を確認し、賢く控除を受けることで、節税効果を最大限に活かしましょう。