扶養控除等申告書とは?給与所得者の年末調整との関係も解説

扶養控除等申告書

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、所得控除を受けるため、主に年末調整時に提出する書類のことです。対象者は、提出することで扶養控除・障害者控除・寡婦控除などを適用できます。

本記事では、扶養控除等申告書の概要や、書き方について詳しく解説します。※2023年11月30日に更新

目次

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、扶養控除などの所得控除を受けるために必要な書類です。

所得控除とは、要件を満たした場合に、各種所得合計額から差し引く金額を指します。所得税を計算するにあたって、各納税者の個人的事情を加味することが所得控除の主な目的です。

ここから、扶養控除等申告書の対象者や提出理由について説明します。

参考:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

扶養控除等申告書を提出する人

年末調整するためには、「扶養控除等申告書」を提出することと年末時点で会社に在籍していることが条件です。そのため、パートやアルバイトを含め、年末調整する給与所得者は基本的に扶養控除等申告書を提出します。

一方、給与の収入金額が2,000万円を超えるなどに該当する人は、年末調整の対象外です。年末調整対象外の人は、原則として扶養控除等申告書を提出する必要はありません。

参考:国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」

扶養控除等申告書を提出する理由

「扶養控除等申告書」を提出するのは、扶養控除や寡婦控除などの所得控除を受けるためです。給与所得者は書類を提出することにより、対象の家族がいることを申請し、所得から一部の金額を控除できます。

所得控除の対象であるのにもかかわらず提出しないと、税金が本来より高額になるでしょう。また、正しく税金の精算ができません。

扶養控除等申告書の提出期限

扶養控除等申告書の提出期限は、その年の初めての給与支給日の前日です。1月25日支給であれば、提出期限は1月24日です。

しかし、一般的に、年末調整の際に扶養控除等申告書を提出します。なぜなら、扶養控除等申告書の記載内容に基づきその年の源泉徴収税額を計算するためです。支給日の前日に会社に扶養控除等申告書を提出すると、給与計算担当者の業務負担が大きくなるでしょう。

扶養控除等申告書は年末調整で対応

扶養控除等申告書は、基本的に年末調整時に提出します。ここでは年末調整の概要について、確認していきましょう。

年末調整とは

年末調整とは、1年間に源泉徴収された税額の合計額と、本来納めるべき税額を一致させる精算手続きのことです。

個人事業主の場合、毎年2〜3月に確定申告で前年の所得を申告し、所得税や住民税を納付しなければなりません。一方、一般的に会社員の所得税や住民税は、勤務先が給与や賞与から天引きして代わりに納めています。天引きで納める税額はあくまで概算のため、年末調整で精算手続きが必要なのです。

なお、年間収入額が2,000万円を超えるなど、会社員でも確定申告しなければならない人がいます。年末調整で完結する会社員でも、初年度の住宅ローン控除を受ける場合、医療費控除を受ける場合などは、別途確定申告が必要です。

参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

年末調整の流れ

年末調整の大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 人事担当者が従業員に書類を配布
  2. 従業員が書類を作成して人事に提出
  3. 人事担当者が書類を確認する
  4. 人事が年末調整の計算をする
  5. 人事が各従業員の源泉徴収票や法定調書を作成する
  6. 人事が源泉徴収票や法定調書を税務署や自治体に提出する
  7. 会社が源泉徴収税を納付する

源泉徴収票とは、年間の収入や納付税額を記載した書類です。また、法定調書は所得税法などの規定で税務署への提出が義務付けられている資料を指します。

参考:国税庁「No.7401 法定調書の種類」

扶養控除等申告書以外に年末調整で提出する書類

扶養控除等申告書以外で、従業員が年末調整時に提出する書類は以下のとおりです。

  1. 保険料控除申告書
  2. 基礎控除申告書
  3. 配偶者控除等申告書
  4. 所得金額調整控除申告書
  5. 住宅借入金等特別控除申告書

1は、生命保険料や地震保険料などを支払った際に、控除を受けるための書類です。

2は基礎控除、3は配偶者控除・配偶者特別控除を受けるために記入します。4は給与所得者の総所得金額を計算する際に、一定金額を給与所得から控除するためのものです。2〜4は1枚の書類にまとめられています。

5は住宅ローン控除(2年目以降)を受ける人が対象です。

年末調整で提出する扶養控除等申告書は今年と翌年分

年末調整の際に会社に提出するのは、その年とその翌年の扶養控除等申告書です。たとえば、令和5年の年末調整時には、令和5年の扶養控除等申告書と、令和6年の扶養控除等申告書を提出します。その年の扶養控除等申告書はすでに前年の年末調整時に提出していますが、確定版という形であらためて提出します。

参考:国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」

扶養控除等申告書の書き方

以下、5つのパートに分けて考えることが扶養控除等申告書の書き方のポイントです。

  1. 基本情報
  2. 源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族
  3. 障害者・寡婦・ひとり親又は勤労学生
  4. 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
  5. 住民税に関する事項

各パートで記載することを詳しく解説します。

1. 基本情報

基本情報は、給与所得者や従業員に関する情報を記載する項目です。

「所轄税務署長等」には、給与支払者の所在地の所轄税務署や、従業員の居住する市区町村を記載します。また、「給与の支払者の名称(氏名)」に記載するのは、給与支払者の名称で、「給与の支払者の法人番号(個人番号)」に記載するのは給与支払者の法人番号もしくは個人番号です(勤務先が記載)。

「あなたの個人番号」には、従業員のマイナンバーを記載します。ただし、勤務先が従業員や対象家族のマイナンバーを帳簿に備え付けていれば、省略可能です。

「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」は、従業員が2か所以上から給与を受け取っており、他の給与支払者に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している場合に◯をつけます。

2. 源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族

源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族は、控除対象の配偶者や親族がいる場合に記入が必要です。

「源泉控除対象配偶者」には、従業員と生計を一にする配偶者で、対象年度の合計所得金額の見積額が95万円以下の人を記載します。氏名・個人番号・生年月日・所得の見積額・住所などの記入が必要です。

「控除対象扶養親族」には、以下の扶養親族の氏名・個人番号・生年月日・所得の見積額・住所などを記載します。

  • 年齢16歳以上の居住者
  • 年齢16歳以上30歳未満の非居住者
  • 年齢70歳以上の非居住者
  • 年齢30歳以上70歳未満で「留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人」「障害者」「対象年度に対象従業員から生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受ける人」

扶養親族とは、従業員と生計を一にする親族で、対象年度の合計所得金額見積額が48万円以下の人です。また、国内に「住所」を有し、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人を「居住者」、それ以外の個人を「非居住者」と呼びます。

「控除対象扶養親族」の「老人扶養親族」の欄では、対象の扶養親族の年齢が70歳以上で、従業員もしくは従業員の配偶者の直系尊属かつ、同居している場合に「同居老親等」にチェックをつけます。対象扶養親族が70歳以上で「同居老親等」の条件を満たさない場合は「その他」にチェックが必要です。

「特定扶養親族」は、対象の扶養親族の年齢が19歳以上23歳未満の場合にチェックします。そのほか、「非居住者である親族」の欄も該当する場合はチェックが必要です。

3. 障害者・寡婦・ひとり親又は勤労学生

障害者・寡婦・ひとり親又は勤労学生は、従業員本人もしくは同一生計配偶者・扶養親族で「障害者」に該当する場合や、従業員が「寡婦」「ひとり親」「勤労学生」に該当する場合に記載する項目です。

「障害者」は該当する人によって、「本人」「同一生計配偶者」「扶養家族」いずれかの列の該当する区分にチェックを入れます。また、従業員本人が「寡婦」「ひとり親」「勤労学生」の場合も、該当する箇所にチェックが必要です。

さらに、「障害者」または「勤労学生」に該当する場合は、対象者の氏名や該当する事実を「障害者又は勤労学生の内容」に記載しなければなりません。

4. 他の所得者が控除を受ける扶養親族等

他の所得者が控除を受ける扶養親族等は、従業員の世帯内に複数の所得者がいる場合に記載が必要になる可能性があります。

所得税法上、同一世帯に複数の所得者がいる場合は、重複しない限りいずれの扶養親族としても問題ありません。たとえば、長男を夫、長女を妻の扶養親族にすることもできます。

扶養親族を同一世帯内の所得者で分けている場合に、「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」に関する情報(氏名・続柄・住所・生年月日)や「控除を受ける他の所得者」の情報(氏名・続柄・住所・異動年月日)を記載しなければなりません。

5. 住民税に関する事項

住民税に関する事項は、16歳未満の扶養親族や退職手当等を有する配偶者・扶養親族について記載する項目です。

「16歳未満の扶養親族」には、年齢が16歳未満の扶養親族の情報を記載します。「控除対象外国外扶養親族」は、国内に住所を持たない16歳未満の扶養親族に該当する場合に「◯」が必要です。

「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」には、退職手当などの支払いを受ける配偶者や、扶養親族の情報を記載します。対象者に非居住者がいる場合は、「非居住者である親族」で該当する項目にチェックが必要です。

「(該当年)中の所得の見積額」には、対象者の退職所得を除いた合計所得金額の見積額を記載します。そのほか、対象者が「障害者」に該当する場合や、従業員本人が「寡婦」「ひとり親」に該当する場合は、それぞれチェックが必要です。

扶養控除等申告書で受けられる所得控除

扶養控除等申告書で受けられる所得控除は、以下の控除です。

  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除

扶養控除等申告書には源泉控除対象配偶者(後述)を記載する欄があります。しかし、配偶者控除または配偶者特別控除を受ける場合には、給与支払者(会社)へ別途「給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の提出が必要です。

ここから、扶養控除等申告書で受けられる所得控除の概要を確認していきましょう。

扶養控除

扶養控除とは、納税者に扶養対象親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。以下のように、条件によって受けられる控除額が異なります(2023年4月1日時点)。

区分 控除額 控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等 58万円

なお、扶養親族とは対象年の12月31日時点で、以下4つすべての要件を満たす人です。

  • 配偶者以外の親族
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間合計所得金額が48万円以下
  • 青色申告者の事業専従者として対象年を通じて一度も給与支払いを受けていないもしくは、白色申告者の事業専従者でない

参考:国税庁「No.1180 扶養控除」

障害者控除

障害者控除とは、納税者自身・同一生計配偶者・扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に適用できる控除のことです。障害者控除も、区分によって控除額が異なります(2023年4月1日時点)。

区分 控除額
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者 75万円

特別障害者の細かな区分については、国税庁のホームページを参考にしてください。

参考:国税庁「No.1160 障害者控除」

寡婦控除

寡婦控除とは、納税者自身が寡婦である場合に、受けられる所得控除のことです。2023年4月1日現在、寡婦控除として27万円の控除が受けられます。

「寡婦」とは、次に説明する「ひとり親」に該当せず、以下のどちらかに該当する人です。

  • 夫と離婚した後に婚姻せず、扶養親族がおり、合計所得金額が500万円以下
  • 夫と死別した後婚姻していない、もしくは夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下

なお、納税者と事実婚関係にある人などがいる場合は、寡婦控除の対象外です。

参考:国税庁「No.1170 寡婦控除」

ひとり親控除

ひとり親控除とは、納税者がひとり親である場合に受けられる所得控除のことです。2023年4月1日現在、ひとり親控除として35万円の控除が受けられます。

「ひとり親」に該当するには、対象年の12月31日時点で婚姻していないこと、配偶者の生死が明らかでないことが条件です。また、以下3つすべてを満たしていなければなりません。

  1. その人と事実婚関係などにあたる人がいない
  2. 生計を一にする子がいる
  3. 合計所得金額が500万円以下

さらに、生計を一にする子が、対象年の総所得金額が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないことも条件です。

参考:国税庁「No.1171 ひとり親控除」

勤労学生控除

勤労学生控除とは、納税者自身が勤労学生である場合に受けられる所得控除のことです。2023年4月1日現在、勤労学生控除として27万円の控除が受けられます。

「勤労学生」に該当するには、以下3つの要件をすべて満たしていなければなりません。

  1. 給与所得などの勤労による所得がある
  2. 合計所得金額が75万円以下、かつ1以外の所得が10万円以下
  3. 特定の学校の学生・生徒である

なお、「特定の学校」とは、学校教育法に規定する小学校・中学校・高等学校・大学・高等専門学校などを指します。対象か判断がつかない場合は、学校窓口での確認が必要です。

参考:国税庁「No.1175 勤労学生控除」

配偶者の定義の違いを整理

2017年の書式変更により、扶養控除等申告書に「源泉控除対象配偶者」「同一生計配偶者」という文言が記載されました。配偶者には「控除対象配偶者」も存在します。

主に異なるのは、納税者と配偶者の所得(年収)制限です。今回はその部分を中心に解説します。

なお、源泉控除対象配偶者は、扶養親族の人数を数えるときに1人分として加算されます。

源泉控除対象配偶者

  • 納税者の所得:900万円以下(給与所得だけなら年収1,120万円以下)
  • 配偶者の所得:95万円以下(給与所得だけなら年収150万円以下)

控除対象配偶者

  • 納税者の所得:1,000万円以下(給与所得だけなら年収1,220万円以下)
  • 配偶者の所得:48万円以下(給与所得だけなら年収103万円以下)

同一生計配偶者(旧、控除対象配偶者)

  • 納税者の所得:制限なし
  • 配偶者の所得:48万円以下(給与所得だけなら年収103万円以下)

    ※その他の条件は共通していますので、簡単に紹介します。

  • 民法上の配偶者である(婚姻届を受理されている。内縁の妻は非該当。)
  • 納税者と同一生計である
  • 青色申告の専従者として、その年に1度も給与を受け取っていない
  • 白色申告の専従者ではない

【人事担当者向け】扶養控除等申告書回収のポイント

人事担当者が、扶養控除等申告書を回収する前後のポイントは以下のとおりです。

  • (配布時)従業員本人にあらかじめ扶養親族の年収を適切に把握するよう伝えておく
  • (回収後)記載ミス・記載漏れ、扶養家族に変更がないかなどをチェックする
  • (チェック後)記載内容で不明な点があれば、曖昧にせず従業員本人に直接確認する

扶養控除等申告書手続きを含む年末調整は、年に一度の大掛かりな作業です。そこで、事前に手続きのマニュアルを作成しておけば、人事担当者の負担を軽減できるでしょう。

扶養控除等申告書にまつわる疑問を解消

扶養控除等申告書について、よくある疑問や悩みは以下のとおりです。

  • 配偶者や扶養親族がいなければ提出しない?
  • 年の途中で就職(転職)した場合はどうする?
  • 2か所以上から給与をもらっている場合は?
  • 提出した扶養控除等申告書の内容に変更があったら?

それぞれに回答していきます。

配偶者や扶養親族がいなければ提出しない?

扶養対象となる配偶者や、扶養親族に該当する人がいない場合でも、給与支払者(会社など)へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。

年の途中で就職(転職)した場合はどうする?

年の中途で就職した方は、前の勤務先から交付された源泉徴収票を添付して扶養控除等申告書を提出します。

2か所以上から給与をもらっている場合は?

2か所以上から給与の支払いを受けている人は、そのうちの1か所(主たる勤務先)のみに扶養控除等申告書を提出します。両方に提出する必要はありません。ただし、主たる勤務先での源泉徴収税額が0円の場合など、主たる勤務先から支給される給与から控除しきれなかったときは、従たる勤務先にも扶養控除等申告書を提出します。

提出した扶養控除等申告書の内容に変更があったら?

年末調整のときに会社へ提出した扶養控除等申告書の記載内容に変更があったときは、その内容等を記載した扶養控除等申告書を会社に提出します。提出期限は、変更があった日の後の、最初の給与支給日の前日です。給与計算担当者の業務負担を考えると、変更があったら、すぐに提出しておくとよいでしょう。

扶養控除等申告書まとめ

給与所得者の扶養控除等申告書とは、各種所得控除を受けるために必要な書類です。一般的に、会社員などの給与所得者は年末調整時に保険料控除申告書などと一緒に勤務先へ提出しなければなりません。

扶養控除等申告書には、「基本情報」「源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族」「住民税に関する事項」などを記載します。年末調整時期が到来したら、扶養親族の年収などの情報を確認し、適切に扶養控除等申告書へ記入しましょう。

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