寡婦控除とは?要件やひとり親控除との違いをわかりやすく解説

更新日:2024年11月13日

寡婦控除とは

寡婦控除とは、納税する人がひとり親にあたらない寡婦の場合に受けられる所得控除です。また、控除を受けるためには、合計所得金額が一定額以下であることも求められます。本記事では、寡婦控除の受け方やほかの控除との違いについても確認していきましょう。

目次

寡婦控除とは

寡婦控除とは、納税する人がひとり親にあたらない寡婦である場合に受けられる所得控除のことです。2020年度より「ひとり親」や「寡婦」に該当する場合は「ひとり親控除」を受けられるようになったため、「ひとり親に該当しない寡婦」のみが寡婦控除の対象になりました。

ここから、所得控除や寡婦の概要について解説します。

所得控除とは

所得控除とは、各種所得の合計額から引ける金額のことです。所得税額は、各種所得金額の合計から各種所得控除額の合計を引いた金額を基準として計算します。

寡婦控除は、15種類ある所得控除のひとつです。寡婦控除以外に、以下のような所得控除が存在します。

なお、所得控除は納税者本人や配偶者・親族など人に関する「人的控除」と、社会政策的配慮で納税者の支出に対して設けた「物的控除」に分けられます。寡婦控除は、納税者本人に関する所得控除のため、人的控除の一種です。

参考)国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

寡婦とは

そもそも寡婦(かふ、やもめ)とは、夫のいない女性や夫を失った女性を指す言葉です。そのため、男性や夫と婚姻関係にある女性は寡婦に該当しません。

また、所得控除における寡婦とは、控除対象年の12月31日時点で「ひとり親」に該当せず、いくつかの要件を満たす人のことです。要件については、のちほど詳しく解説します。

参考)国税庁「No.1170 寡婦控除」

寡婦控除の控除額

所得税における寡婦控除の控除額は一律で27万円です。

2019年以前は、「夫と死別しまたは夫と離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人」「扶養親族である子がいる人」「合計所得金額が500万円以下の人」の要件をすべて満たすか(特別の寡婦)か、それ以外の寡婦か(一般の寡婦)かによって控除額に違いがありました。しかし、ひとり親控除が創設されたことにより、特別の寡婦は廃止になっています。

なお、住民税における控除額は26万円です。

寡婦控除の要件

寡婦控除を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。

  • 「ひとり親」に該当しない
  • 合計所得金額が500万円以下である
  • 「夫と離婚後に再婚せず扶養親族がいる」「夫と死別後再婚していない」「夫の生死が明らかでない」のいずれかに該当する

各要件について、詳しく解説します。

「ひとり親」に該当しない

対象年において、「ひとり親」に該当しないことが寡婦控除の要件のひとつです。

「ひとり親」とは、所得控除のひとつであるひとり親控除を受けられる人を指します。そのため、ほかの要件を満たしていても、ひとり親控除を受けられる人は寡婦控除の対象外です。

なお、ひとり親控除の概要や受けるための要件については、のちほど詳しく解説します。

合計所得金額が500万円以下である

寡婦控除には、合計所得金額500万円以下という所得上限が設けられています。

所得とは、収入から必要経費を差し引いた「もうけ」のことです。給与所得や事業所得、利子所得など、全部で10種類の所得が存在します。

なお、給与所得の場合、事業所得のように必要経費を差し引きできません。その代わりに、給与収入から所得税法で定められた給与所得控除額を引いて計算できます。

参考)国税庁「No.1400 給与所得」

A〜Cいずれかに該当する

「ひとり親」に該当しないことや合計所得金額が500万円以下であることに加え、A〜Cのいずれかに該当することも、寡婦控除を受けるための要件です。

  • A. 夫と離婚後に再婚せず扶養親族がいる
  • B. 夫と死別後再婚していない
  • C. 夫の生死が明らかでない

それぞれの意味を確認していきましょう。

A. 夫と離婚後に再婚せず扶養親族がいる

夫と離婚してから再婚せず、扶養親族がいる場合に条件を満たしたことになります。扶養親族とは、対象年の12月31日時点において、以下4つの要件をすべて満たしている人のことです。

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)もしくは都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 青色申告者の事業専従者として対象年に一度の給与支払いも受けていない、もしくは白色申告者の事業専従者でない

B. 夫と死別後再婚していない

夫と死別してから再婚していない場合も、条件を満たします。Aの条件と異なり、扶養親族がいることは条件に含まれておりません。

C. 夫の生死が明らかでない

夫の生死が明らかでない一定の人に該当する場合も、条件を満たします。Bと同様に、扶養親族がいることは条件に含まれておりません。

「夫の生死が明らかでない一定の人」とは、夫が沈没した船舶に乗っていて行方不明になり、3か月以上生死が明らかでないなど、所得税法施行令第十一条に掲げる人の妻を指します。

なお、A〜Cいずれにおいても、「夫」は民法上の婚姻関係にある人のことです。また、死別・離婚などののちに婚姻をしていない場合でも、事実上婚姻関係にあると認められる人がいる場合は寡婦控除を受けられません。

参考)e-Gov 法令検索「所得税法施行令第十一条」

寡婦控除を受ける方法

所得税に関する手続きについて、確定申告で対応しているか、年末調整で対応しているかによって寡婦控除を受ける方法が異なります。それぞれのケースで、寡婦控除を受ける方法を確認していきましょう。

確定申告している人の場合

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの額を計算し、確定させるための手続きのことです。確定申告の対象者は、確定申告書の第一表と第二表の所定欄に記入することで、寡婦控除を受けられます。

まず、確定申告書第一表の左側にある「所得から差し引かれる」の「寡婦、ひとり親控除」に記載されている「0000」の前に「27」と記入しましょう。次に、第二表の中央右にある「本人に関する事項」の「寡婦」に丸をつけて、該当する理由にチェックを入れれば所得税での寡婦控除を受けられます。

参考)国税庁「No.2020 確定申告」

年末調整している人の場合

年末調整とは、1年間に源泉徴収された税額合計と年税額を一致させる精算手続きのことです。原則として、給与の収入金額が2,000万円以内で、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人は年末調整で手続きできます。

年末調整で寡婦控除を受ける場合は、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出する際に、中央あたりに並んでいる「寡婦」「ひとり親」「勤労学生」の中から、「寡婦」を選択してチェックをつけましょう。

参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」

寡婦控除とひとり親控除の違い

寡婦控除とひとり親控除の主な違いは、控除を受けられる人の範囲です。

ひとり親控除は性別を問わないため、要件を満たせば男性でも控除を受けられます。しかし、寡婦控除は女性のみが適用の対象です。

また、ひとり親控除では婚姻歴が問われません。一方、寡婦控除は夫と離婚や死別(生死不明含む)していることが求められます。

さらに、ひとり親控除は生計を一にする子どもがいる必要がある点も違いです。それに対して寡婦控除は、離婚の場合のみ扶養親族がいることが求められています。

なお、ひとり親控除を受ける場合も、基本的な手続きは同じです。確定申告書第一表・第二表や、「扶養控除等申告書」の所定欄に記入(チェック)しましょう。

ひとり親控除の対象者・控除額

ひとり親控除の対象者は、対象年の12月31日時点において婚姻をしていないか、配偶者の生死がわからない一定の人です。また、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

  • 事実婚関係にあると認められる相手がいない
  • 生計を一にする「子ども」がいる
  • 合計所得金額が500万円以下

上記の「子ども」は対象年の総所得金額が48万円以下で、ほかの人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限定されます。

ひとり親控除の控除額は、一律35万円です。住民税については30万円の控除額が適用されます。

参考)国税庁「No.1171 ひとり親控除」

寡婦控除と扶養控除の違い

寡婦控除と扶養控除の主な違いとして、扶養親族の年齢や人数によって控除額が変わるかという点が挙げられます。

扶養控除とは、納税する人に控除対象の扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。配偶者以外の親族で納税者と生計を一にしている、年間の合計所得金額が48万円以下であるなどの要件をすべて満たす場合に、控除対象の扶養親族として認められます。

扶養控除は、「一般の控除対象扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族(同居老親以外・同居老親)」いずれに該当するかによって控除額が異なる点がポイントです。以下の表にそれぞれの控除額をまとめました。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族(同居老親等以外) 48万円
老人扶養親族(同居老親) 58万円

控除額は扶養親族ひとりあたりの金額です。そのため、扶養親族が増えると控除できる金額も増加します。

なお、それぞれ要件を満たす場合、寡婦控除と扶養控除、ひとり親控除と扶養控除の組み合わせであれば同時に適用可能です。

参考)国税庁「No.1180 扶養控除」

寡婦控除まとめ

寡婦控除は、合計所得金額が500万円以下で、「夫と離婚した後婚姻しておらず扶養家族がいる」「夫と死別しているか、夫の生死が不明で一定の条件を満たす」のいずれかにあてはまる人が受けられます。ただし、要件を満たしていてもひとり親控除を受けられる人は対象外です。

寡婦控除を受ければ、所得税の計算にあたって一律27万円の控除を適用できます。該当する方は、確定申告や年末調整の際に忘れずに手続きをしましょう。

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