更新日:2025年12月15日
寡婦控除とは、納税する人がひとり親にあたらない寡婦である場合に受けられる所得控除を指します。適用するためには、所得要件などを満たさなければなりません。本記事では、寡婦控除とひとり親控除の違いや、2025年度の税制改正による影響などを解説します。
目次
寡婦控除とは、納税する人がひとり親にあたらない寡婦である場合に受けられる所得控除のことです。2020年度より「ひとり親」や「寡婦」に該当する場合は「ひとり親控除」を受けられるようになったため、「ひとり親に該当しない寡婦」のみが寡婦控除の対象になりました。
ここから、所得控除や寡婦の概要について解説します。
所得控除とは、各種所得の合計額から引ける金額のことです。所得税額は、各種所得金額の合計から各種所得控除額の合計を引いた金額を基準として計算します。
寡婦控除は、16種類ある所得控除のひとつです。寡婦控除以外に、以下のような所得控除が存在します。
なお、所得控除は納税者本人や配偶者・親族など人に関する「人的控除」と、社会政策的配慮で納税者の支出に対して設けた「物的控除」に分けられます。寡婦控除は、納税者本人に関する所得控除のため、人的控除の一種です。
参考)国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
そもそも寡婦(かふ、やもめ)とは、夫のいない女性や夫を失った女性を指す言葉です。そのため、男性や夫と婚姻関係にある女性は寡婦に該当しません。
また、所得控除における寡婦とは、控除対象年の12月31日時点で「ひとり親」に該当せず、いくつかの要件を満たす人のことです。要件については、のちほど詳しく解説します。
参考)国税庁「No.1170 寡婦控除」
所得税における寡婦控除の控除額は一律で27万円です。
2019年以前は、「夫と死別しまたは夫と離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人」「扶養親族である子がいる人」「合計所得金額が500万円以下の人」の要件をすべて満たす(特別の寡婦)か、それ以外の寡婦か(一般の寡婦)かによって控除額に違いがありました。しかし、ひとり親控除の創設に伴い、特別の寡婦は廃止されています。
なお、住民税における控除額は26万円です。
2025年度の税制改正で、基礎控除・給与所得控除が見直されたり、特定親族特別控除が創設されたりしています。寡婦控除の控除額については、特段変更はありません。
しかし、寡婦控除の要件のひとつである合計所得を計算する際に、給与所得控除の最低保障額が影響を及ぼす可能性がある点に注意が必要です。また、「夫と離婚後に再婚せず扶養親族がいる」として寡婦控除を適用する場合は、扶養親族の所得要件が引き上げられていることも押さえておきましょう。
寡婦控除を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。
各要件について、詳しく解説します。
対象年において、「ひとり親」に該当しないことが寡婦控除の要件のひとつです。
「ひとり親」とは、所得控除のひとつであるひとり親控除を受けられる人を指します。そのため、ほかの要件を満たしていても、ひとり親控除を受けられる人は寡婦控除の対象外です。
なお、ひとり親控除の概要や受けるための要件については、のちほど詳しく解説します。
寡婦控除を受ける人は、合計所得が500万円以下でなければなりません。所得とは、収入から必要経費を差し引いた「もうけ」を指します。
所得の種類は、以下のとおりです。
給与所得は事業所得などと異なり、収入から必要経費を引けない分、給与収入から所得税法で定められた給与所得控除額を引いて計算します。給与所得控除額は、2025年度の税制改正では、給与所得控除について55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました。
そのため、以下のようなケースでは今まで所得要件を満たさなかった人が、税制改正に伴い要件を満たす可能性があります。
例:給与収入100万円、事業所得460万円
【2025年度税制改正前】 給与所得:100万円 − 55万円 = 45万円 合計所得:45万円 + 460万円 = 505万円 > 500万円
【2025年度税制改正後】 給与所得:100万円 − 65万円 = 35万円 合計所得:35万円 + 460万円 = 495万円 < 500万円
なお、給与収入360万円超の給与所得控除については、2025年度の税制改正以降も変更がありません。そのため、所得が給与収入のみの場合は、基本的に税制改正後も所得要件の計算結果は変わらないでしょう。
たとえば、給与収入が700万円であれば、2025年度の税制改正前も改正後も給与所得が520万円で、所得要件を満たしません。
「ひとり親」に該当しないことや合計所得金額が500万円以下であることに加え、A〜Cのいずれかに該当することも、寡婦控除を受けるための要件です。
それぞれの意味を確認していきましょう。
夫と離婚してから再婚せず、扶養親族がいる場合に条件を満たします。扶養親族とは、12月31日時点において、以下4つの要件をすべて満たしている人のことです。
2025年度の税制改正に伴い、扶養親族の合計所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられました。そのため、今まで親族の所得が原因で要件を満たさなかった場合でも、2025年度の税制改正以降は対象になる可能性があります。
夫と死別してから再婚していない場合も、条件を満たします。Aの条件と異なり、扶養親族がいることは条件に含まれておりません。
夫の生死が明らかでない一定の人に該当する場合も、条件を満たします。Bと同様に、扶養親族がいることは条件に含まれておりません。
「夫の生死が明らかでない一定の人」とは、夫が沈没した船舶に乗っていて行方不明になり、3か月以上生死が明らかでないなど、所得税法施行令第十一条に掲げる人の妻を指します。
なお、A〜Cいずれにおいても、「夫」は民法上の婚姻関係にある人のことです。また、死別・離婚などの後に婚姻をしていない場合でも、事実上婚姻関係にあると認められる人がいる場合は寡婦控除を受けられません。
参考)e-Gov 法令検索「所得税法施行令第十一条」
所得税に関する手続きについて、確定申告で対応しているか、年末調整で対応しているかによって寡婦控除を受ける方法が異なります。それぞれのケースで、寡婦控除を受ける方法を確認していきましょう。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの額を計算し、確定させるための手続きのことです。確定申告の対象者は、確定申告書の第一表と第二表の所定欄に記入することで寡婦控除を受けられます。
まず、確定申告書第一表の左側にある「所得から差し引かれる」の「寡婦、ひとり親控除」に記載されている「0000」の前に「27」と記入しましょう。次に、第二表の中央右にある「本人に関する事項」の「寡婦」に丸をつけて、該当する理由にチェックを入れれば所得税での寡婦控除を受けられます。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
年末調整とは、1年間に源泉徴収された税額合計と年税額を一致させる精算手続きのことです。原則として、給与の収入金額が2,000万円以内で、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人は年末調整で手続きできます。
年末調整で寡婦控除を受ける場合は、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出する際に、中央あたりに並んでいる「寡婦」「ひとり親」「勤労学生」の中から、「寡婦」を選択してチェックをつけましょう。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」
寡婦控除とひとり親控除の主な違いは、控除を受けられる人の範囲です。
ひとり親控除は性別を問わないため、要件を満たせば男性でも控除を受けられます。しかし、寡婦控除は女性のみが適用の対象です。
また、ひとり親控除では婚姻歴が問われません。一方、寡婦控除は夫と離婚や死別(生死不明含む)していることが求められます。
さらに、ひとり親控除は生計を一にする子どもがいる必要がある点も違いです。それに対して寡婦控除は、離婚の場合のみ扶養親族がいることが求められています。
なお、ひとり親控除を受ける場合も、基本的な手続きは同じです。確定申告書第一表・第二表や、「扶養控除等申告書」の所定欄に記入(チェック)しましょう。
ひとり親控除の対象者は、対象年の12月31日時点において婚姻をしていないか、配偶者の生死がわからない一定の人です。また、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
上記の「子ども」は対象年の総所得金額が58万円以下で、ほかの人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限定されます。
ひとり親控除の控除額は、一律35万円です。住民税については30万円の控除額が適用されます。
参考)国税庁「No.1171 ひとり親控除」
寡婦控除と扶養控除の主な違いとして、扶養親族の年齢や人数によって控除額が変わるかという点が挙げられます。
扶養控除とは、納税する人に控除対象の扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。配偶者以外の親族で納税者と生計を一にしている、年間の合計所得金額が58万円以下であるなどの要件をすべて満たす場合に、控除対象の扶養親族として認められます。
扶養控除は、「一般の控除対象扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族(同居老親以外・同居老親)」いずれに該当するかによって控除額が異なる点がポイントです。以下の表にそれぞれの控除額をまとめました。
控除額は扶養親族ひとりあたりの金額です。そのため、扶養親族が増えると控除できる金額も増加します。
なお、それぞれ要件を満たす場合、寡婦控除と扶養控除、ひとり親控除と扶養控除の組み合わせであれば同時に適用可能です。
参考)国税庁「No.1180 扶養控除」
2025年度税制改正で、新たに特定親族特別控除ができました。寡婦控除と特定親族特別控除の主な違いは、控除額です。寡婦控除は「27万円」、特定親族特別控除は特定親族の合計所得によって「3万円」から「63万円」を控除できます。
また、特定親族特別控除を適用するためには、特定親族がいなければなりません。納税者と生計を一にしていること、年齢が「19歳以上23歳未満」であること、年間の合計所得が「123万円以下」であることなどの要件を満たす配偶者以外の親族などが、特定親族です。
参考)国税庁「No.1177 特定親族特別控除」
従業員から寡婦控除を適用した申告を受け付ける際に、年末調整担当者は以下のポイントを押さえておきましょう。
それぞれ解説します。
従業員から寡婦控除を適用した申告書を受け付けた場合は、婚姻状況を判断するタイミングに注意しましょう。寡婦を判断するタイミングは、原則として「対象年の12月31日」です。
たとえば、1月10日に離婚や死別をしていても12月24日に再婚していれば、「寡婦」に該当しません。一方、年末ギリギリの時期でも、離婚もしくは死別した場合は、その年の寡婦控除を適用できる可能性があります。
従業員が「夫と離婚後に再婚せず、扶養親族がいる」ことで寡婦控除を適用する場合は、「扶養親族」としての要件を満たしているか確認しましょう。所得要件や納税者と生計を一にしているかなどが主なチェックポイントです。
なお、2025年度の税制改正で扶養親族の所得要件が引き上げられたため、今まで適用対象外であった従業員が寡婦控除を適用できる可能性があります。
寡婦控除の対象であるのにもかかわらず、従業員が申告を失念していた場合は、確定申告を案内しましょう。
年末調整書類などの法定調書の提出期限は、翌年1月31日とされています。期限を過ぎてからは原則として年末調整書類の修正はできないため、従業員自身による確定申告手続きが必要です。
なお、所得控除を適用することによる還付申告であれば、確定申告期限を過ぎても5年間は申告できます。
ここから、給与所得が300万円のケースで寡婦控除を適用する場合と適用しない場合に分けて、所得税・住民税の計算例を紹介します(所得は給与所得のみと仮定)。今回適用する所得控除は基礎控除と寡婦控除のみです。
合計所得が300万円の場合、所得税の基礎控除額は88万円(2025年分、2026年分)のため、寡婦控除を適用しない場合の課税所得は212万円です(300万円 − 88万円)。そこで、所得税額は11.45万円と計算できます(212万円 × 10% − 9.75万円)。
一方、寡婦控除を適用する場合の課税所得は185万円(300万円 − 88万円 − 27万円)のため、所得税額は9.25万円(185万円 × 5%)です。つまり、今回のケースでは、寡婦控除を適用することで約2.2万円分の所得税額を抑えられます。
税率については、国税庁のサイトを参考にしてください。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
合計所得が300万円の場合、住民税の基礎控除額は43万円のため、寡婦控除を適用しない場合の課税所得は257万円です(300万円 − 43万円)。所得割の住民税率は10%のため、住民税額(所得割)は25.7万円と計算できます(257万円 × 10%)。
一方、寡婦控除を適用する場合の課税所得は231万円(300万円 − 43万円 − 26万円)のため、住民税額(所得割)は23.1万円(231万円 × 10%)です。つまり、今回のケースでは、寡婦控除を適用することで約2.6万円以上税額を抑えられます。
なお、今回は住民税の均等割分については考慮しておりません。
参考)総務省「個人住民税」
「合計所得金額が500万円以下」で、「夫と離婚した後、婚姻しておらず扶養親族がいる」「夫と死別しているか、夫の生死が不明で一定の条件を満たす」のいずれかにあてはまる人は、基本的に寡婦控除を受けられます。ただし、ひとり親控除を受けられる人は適用できません。
2025年度の税制改正で、「扶養親族」の所得要件が引き上げられました。今まで親族の所得を理由に寡婦控除を適用できなかった人も、改正により適用できる可能性があるため、再度要件を確認しましょう。
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寡婦控除とは、納税する人がひとり親にあたらない寡婦である場合に受けられる所得控除を指します。適用するためには、所得要件などを満たさなければなりません。本記事では、寡婦控除とひとり親控除の違いや、2025年度の税制改正による影響などを解説します。
目次
寡婦控除とは
寡婦控除とは、納税する人がひとり親にあたらない寡婦である場合に受けられる所得控除のことです。2020年度より「ひとり親」や「寡婦」に該当する場合は「ひとり親控除」を受けられるようになったため、「ひとり親に該当しない寡婦」のみが寡婦控除の対象になりました。
ここから、所得控除や寡婦の概要について解説します。
所得控除とは
所得控除とは、各種所得の合計額から引ける金額のことです。所得税額は、各種所得金額の合計から各種所得控除額の合計を引いた金額を基準として計算します。
寡婦控除は、16種類ある所得控除のひとつです。寡婦控除以外に、以下のような所得控除が存在します。
なお、所得控除は納税者本人や配偶者・親族など人に関する「人的控除」と、社会政策的配慮で納税者の支出に対して設けた「物的控除」に分けられます。寡婦控除は、納税者本人に関する所得控除のため、人的控除の一種です。
参考)国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
寡婦とは
そもそも寡婦(かふ、やもめ)とは、夫のいない女性や夫を失った女性を指す言葉です。そのため、男性や夫と婚姻関係にある女性は寡婦に該当しません。
また、所得控除における寡婦とは、控除対象年の12月31日時点で「ひとり親」に該当せず、いくつかの要件を満たす人のことです。要件については、のちほど詳しく解説します。
参考)国税庁「No.1170 寡婦控除」
寡婦控除の控除額
所得税における寡婦控除の控除額は一律で27万円です。
2019年以前は、「夫と死別しまたは夫と離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人」「扶養親族である子がいる人」「合計所得金額が500万円以下の人」の要件をすべて満たす(特別の寡婦)か、それ以外の寡婦か(一般の寡婦)かによって控除額に違いがありました。しかし、ひとり親控除の創設に伴い、特別の寡婦は廃止されています。
なお、住民税における控除額は26万円です。
2025年税制改正が寡婦控除に与える影響
2025年度の税制改正で、基礎控除・給与所得控除が見直されたり、特定親族特別控除が創設されたりしています。寡婦控除の控除額については、特段変更はありません。
しかし、寡婦控除の要件のひとつである合計所得を計算する際に、給与所得控除の最低保障額が影響を及ぼす可能性がある点に注意が必要です。また、「夫と離婚後に再婚せず扶養親族がいる」として寡婦控除を適用する場合は、扶養親族の所得要件が引き上げられていることも押さえておきましょう。
寡婦控除の要件
寡婦控除を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。
各要件について、詳しく解説します。
「ひとり親」に該当しない
対象年において、「ひとり親」に該当しないことが寡婦控除の要件のひとつです。
「ひとり親」とは、所得控除のひとつであるひとり親控除を受けられる人を指します。そのため、ほかの要件を満たしていても、ひとり親控除を受けられる人は寡婦控除の対象外です。
なお、ひとり親控除の概要や受けるための要件については、のちほど詳しく解説します。
合計所得金額が500万円以下である
寡婦控除を受ける人は、合計所得が500万円以下でなければなりません。所得とは、収入から必要経費を差し引いた「もうけ」を指します。
所得の種類は、以下のとおりです。
給与所得は事業所得などと異なり、収入から必要経費を引けない分、給与収入から所得税法で定められた給与所得控除額を引いて計算します。給与所得控除額は、2025年度の税制改正では、給与所得控除について55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました。
そのため、以下のようなケースでは今まで所得要件を満たさなかった人が、税制改正に伴い要件を満たす可能性があります。
例:給与収入100万円、事業所得460万円
【2025年度税制改正前】
給与所得:100万円 − 55万円 = 45万円
合計所得:45万円 + 460万円 = 505万円 > 500万円
【2025年度税制改正後】
給与所得:100万円 − 65万円 = 35万円
合計所得:35万円 + 460万円 = 495万円 < 500万円
なお、給与収入360万円超の給与所得控除については、2025年度の税制改正以降も変更がありません。そのため、所得が給与収入のみの場合は、基本的に税制改正後も所得要件の計算結果は変わらないでしょう。
たとえば、給与収入が700万円であれば、2025年度の税制改正前も改正後も給与所得が520万円で、所得要件を満たしません。
A〜Cいずれかに該当する
「ひとり親」に該当しないことや合計所得金額が500万円以下であることに加え、A〜Cのいずれかに該当することも、寡婦控除を受けるための要件です。
それぞれの意味を確認していきましょう。
A. 夫と離婚後に再婚せず扶養親族がいる
夫と離婚してから再婚せず、扶養親族がいる場合に条件を満たします。扶養親族とは、12月31日時点において、以下4つの要件をすべて満たしている人のことです。
2025年度の税制改正に伴い、扶養親族の合計所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられました。そのため、今まで親族の所得が原因で要件を満たさなかった場合でも、2025年度の税制改正以降は対象になる可能性があります。
B. 夫と死別後再婚していない
夫と死別してから再婚していない場合も、条件を満たします。Aの条件と異なり、扶養親族がいることは条件に含まれておりません。
C. 夫の生死が明らかでない
夫の生死が明らかでない一定の人に該当する場合も、条件を満たします。Bと同様に、扶養親族がいることは条件に含まれておりません。
「夫の生死が明らかでない一定の人」とは、夫が沈没した船舶に乗っていて行方不明になり、3か月以上生死が明らかでないなど、所得税法施行令第十一条に掲げる人の妻を指します。
なお、A〜Cいずれにおいても、「夫」は民法上の婚姻関係にある人のことです。また、死別・離婚などの後に婚姻をしていない場合でも、事実上婚姻関係にあると認められる人がいる場合は寡婦控除を受けられません。
参考)e-Gov 法令検索「所得税法施行令第十一条」
寡婦控除を受ける方法
所得税に関する手続きについて、確定申告で対応しているか、年末調整で対応しているかによって寡婦控除を受ける方法が異なります。それぞれのケースで、寡婦控除を受ける方法を確認していきましょう。
確定申告している人の場合
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの額を計算し、確定させるための手続きのことです。確定申告の対象者は、確定申告書の第一表と第二表の所定欄に記入することで寡婦控除を受けられます。
まず、確定申告書第一表の左側にある「所得から差し引かれる」の「寡婦、ひとり親控除」に記載されている「0000」の前に「27」と記入しましょう。次に、第二表の中央右にある「本人に関する事項」の「寡婦」に丸をつけて、該当する理由にチェックを入れれば所得税での寡婦控除を受けられます。
参考)国税庁「No.2020 確定申告」
年末調整している人の場合
年末調整とは、1年間に源泉徴収された税額合計と年税額を一致させる精算手続きのことです。原則として、給与の収入金額が2,000万円以内で、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人は年末調整で手続きできます。
年末調整で寡婦控除を受ける場合は、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出する際に、中央あたりに並んでいる「寡婦」「ひとり親」「勤労学生」の中から、「寡婦」を選択してチェックをつけましょう。
参考)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」
寡婦控除とひとり親控除の違い
寡婦控除とひとり親控除の主な違いは、控除を受けられる人の範囲です。
ひとり親控除は性別を問わないため、要件を満たせば男性でも控除を受けられます。しかし、寡婦控除は女性のみが適用の対象です。
また、ひとり親控除では婚姻歴が問われません。一方、寡婦控除は夫と離婚や死別(生死不明含む)していることが求められます。
さらに、ひとり親控除は生計を一にする子どもがいる必要がある点も違いです。それに対して寡婦控除は、離婚の場合のみ扶養親族がいることが求められています。
なお、ひとり親控除を受ける場合も、基本的な手続きは同じです。確定申告書第一表・第二表や、「扶養控除等申告書」の所定欄に記入(チェック)しましょう。
ひとり親控除の対象者・控除額
ひとり親控除の対象者は、対象年の12月31日時点において婚姻をしていないか、配偶者の生死がわからない一定の人です。また、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
上記の「子ども」は対象年の総所得金額が58万円以下で、ほかの人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限定されます。
ひとり親控除の控除額は、一律35万円です。住民税については30万円の控除額が適用されます。
参考)国税庁「No.1171 ひとり親控除」
寡婦控除と扶養控除の違い
寡婦控除と扶養控除の主な違いとして、扶養親族の年齢や人数によって控除額が変わるかという点が挙げられます。
扶養控除とは、納税する人に控除対象の扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。配偶者以外の親族で納税者と生計を一にしている、年間の合計所得金額が58万円以下であるなどの要件をすべて満たす場合に、控除対象の扶養親族として認められます。
扶養控除は、「一般の控除対象扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族(同居老親以外・同居老親)」いずれに該当するかによって控除額が異なる点がポイントです。以下の表にそれぞれの控除額をまとめました。
控除額は扶養親族ひとりあたりの金額です。そのため、扶養親族が増えると控除できる金額も増加します。
なお、それぞれ要件を満たす場合、寡婦控除と扶養控除、ひとり親控除と扶養控除の組み合わせであれば同時に適用可能です。
参考)国税庁「No.1180 扶養控除」
寡婦控除と特定親族特別控除の違い
2025年度税制改正で、新たに特定親族特別控除ができました。寡婦控除と特定親族特別控除の主な違いは、控除額です。寡婦控除は「27万円」、特定親族特別控除は特定親族の合計所得によって「3万円」から「63万円」を控除できます。
また、特定親族特別控除を適用するためには、特定親族がいなければなりません。納税者と生計を一にしていること、年齢が「19歳以上23歳未満」であること、年間の合計所得が「123万円以下」であることなどの要件を満たす配偶者以外の親族などが、特定親族です。
参考)国税庁「No.1177 特定親族特別控除」
【年末調整担当者】従業員が寡婦控除を申告する際のポイント
従業員から寡婦控除を適用した申告を受け付ける際に、年末調整担当者は以下のポイントを押さえておきましょう。
それぞれ解説します。
婚姻状況を判断するタイミングに気をつける
従業員から寡婦控除を適用した申告書を受け付けた場合は、婚姻状況を判断するタイミングに注意しましょう。寡婦を判断するタイミングは、原則として「対象年の12月31日」です。
たとえば、1月10日に離婚や死別をしていても12月24日に再婚していれば、「寡婦」に該当しません。一方、年末ギリギリの時期でも、離婚もしくは死別した場合は、その年の寡婦控除を適用できる可能性があります。
扶養親族がいる場合は要件を確認する
従業員が「夫と離婚後に再婚せず、扶養親族がいる」ことで寡婦控除を適用する場合は、「扶養親族」としての要件を満たしているか確認しましょう。所得要件や納税者と生計を一にしているかなどが主なチェックポイントです。
なお、2025年度の税制改正で扶養親族の所得要件が引き上げられたため、今まで適用対象外であった従業員が寡婦控除を適用できる可能性があります。
従業員が申告を失念していたら確定申告を案内する
寡婦控除の対象であるのにもかかわらず、従業員が申告を失念していた場合は、確定申告を案内しましょう。
年末調整書類などの法定調書の提出期限は、翌年1月31日とされています。期限を過ぎてからは原則として年末調整書類の修正はできないため、従業員自身による確定申告手続きが必要です。
なお、所得控除を適用することによる還付申告であれば、確定申告期限を過ぎても5年間は申告できます。
寡婦控除を適用する場合の税額の計算例
ここから、給与所得が300万円のケースで寡婦控除を適用する場合と適用しない場合に分けて、所得税・住民税の計算例を紹介します(所得は給与所得のみと仮定)。今回適用する所得控除は基礎控除と寡婦控除のみです。
所得税
合計所得が300万円の場合、所得税の基礎控除額は88万円(2025年分、2026年分)のため、寡婦控除を適用しない場合の課税所得は212万円です(300万円 − 88万円)。そこで、所得税額は11.45万円と計算できます(212万円 × 10% − 9.75万円)。
一方、寡婦控除を適用する場合の課税所得は185万円(300万円 − 88万円 − 27万円)のため、所得税額は9.25万円(185万円 × 5%)です。つまり、今回のケースでは、寡婦控除を適用することで約2.2万円分の所得税額を抑えられます。
税率については、国税庁のサイトを参考にしてください。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
住民税
合計所得が300万円の場合、住民税の基礎控除額は43万円のため、寡婦控除を適用しない場合の課税所得は257万円です(300万円 − 43万円)。所得割の住民税率は10%のため、住民税額(所得割)は25.7万円と計算できます(257万円 × 10%)。
一方、寡婦控除を適用する場合の課税所得は231万円(300万円 − 43万円 − 26万円)のため、住民税額(所得割)は23.1万円(231万円 × 10%)です。つまり、今回のケースでは、寡婦控除を適用することで約2.6万円以上税額を抑えられます。
なお、今回は住民税の均等割分については考慮しておりません。
参考)総務省「個人住民税」
寡婦控除まとめ
「合計所得金額が500万円以下」で、「夫と離婚した後、婚姻しておらず扶養親族がいる」「夫と死別しているか、夫の生死が不明で一定の条件を満たす」のいずれかにあてはまる人は、基本的に寡婦控除を受けられます。ただし、ひとり親控除を受けられる人は適用できません。
2025年度の税制改正で、「扶養親族」の所得要件が引き上げられました。今まで親族の所得を理由に寡婦控除を適用できなかった人も、改正により適用できる可能性があるため、再度要件を確認しましょう。