更新日:2024年11月12日
所得金額調整控除は、特定の条件下で税負担を軽減するために設けられた制度です。この控除は、主に給与所得控除や公的年金等控除の調整に伴い導入され、多様なライフスタイルを持つ納税者に焦点を当てています。
子育て中の家庭や特別障害者を抱える家庭、さらには給与と年金収入を持つ方々にとって、この控除は大きな助けとなるでしょう。しかし、その計算方法や申告手続きは複雑で、知らないと損をすることもあります。
本記事では、所得金額調整控除の基礎知識からケース別の計算方法、さらには年末調整や確定申告での注意点まで詳しく解説します。
目次
所得金額調整控除は、特定の世帯に対して税負担を軽減する仕組みです。2020年に新設されました。子どもや特別障害者を養う世帯や、給与と年金の両方から収入を得ている人が対象です。
子どもや特別障害者がいる給与所得者に対しては、一定の条件を満たす場合、給与所得から一定額の控除が可能です。また、年金と給与の双方の所得がある人も、年金受給額に応じた控除を受けられます。
該当する世帯は所得税と住民税の負担が軽減され、家計への影響を緩和できるメリットがあります。
2020年の税制改正により、所得金額調整控除が新たに創設されました。この控除は、給与所得控除と公的年金等控除の見直しに伴う影響を緩和するために導入されたものです。
ここでは、この所得金額調整控除が設けられた背景について、給与所得控除と公的年金等控除の改正内容と、その影響を踏まえながら詳しく解説します。
今回の税制改正では、給与所得控除額が原則として一律10万円引き下げられ、基礎控除の控除額が原則として一律10万円引き上げられました。原則どおりであれば、10万円の課税所得増と同額の課税所得減が相殺され、納税額は変わりません。
しかし、同時に、給与所得控除額自体の上限が195万円に引き下げられました。その結果、給与等の収入金額が850万円を超える場合、課税所得減より課税所得増の方が大きくなり、税負担が増加することになりました。しかし、子育て世帯や特別障害者を有する家庭などの場合、税負担が増えることによる影響が少なくないため、その負担を緩和するために所得金額調整控除が設けられました。
今回の税制改正では、公的年金等控除額についても改正され、原則として一律10万円引き下げられました。しかし、上記のとおり、基礎控除額が原則として一律10万円引き上げられたため、公的年金等控除額が適用される人についても、原則どおりであれば、10万円の課税所得増と同額の課税所得減が相殺され、納税額は変わりません。
しかし、給与所得の収入と公的年金等の収入の両方がある人は、給与所得控除額の引き下げと、公的年金控除額の引き下げの両方の影響を受け、合わせて20万円の課税所得増になることから、その調整のために所得金額調整控除が設けられました。
所得金額調整控除の適用は、特定の条件を満たす給与所得者や年金受給者が対象になります。子どもや特別障害者を扶養している世帯や、給与所得と年金所得の両方を有する場合に適用される控除です。それぞれのケースごとに、具体的な適用条件や申告方法を理解し、適切に手続きをするようにしましょう。
子ども・特別障害者等を有する場合の所得金額調整控除は、特定の条件を満たす給与所得者が対象となります。この控除の適用要件は以下のとおりです。
・本人が特別障害者である ・23歳未満の扶養親族がいる ・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
所得金額調整控除の特徴は、扶養控除とは異なり、夫婦両方が適用を受けられる点です。つまり、夫婦ともに年間給与収入が850万円を超え、上記の条件を満たす場合、双方が控除を受られます。
また、申告者の所得上限が設定されていないため、配偶者控除や配偶者特別控除と違い、所得金額が1,000万円を超えていても適用対象です。
この控除を受けるには、年末調整または確定申告で申告する必要があります。年末調整の場合、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に必要事項を記入し、勤務先の指定期日までに提出しましょう。
給与所得と年金所得の双方を有する場合、所得金額調整控除の対象となる可能性があります。この控除を受けるための要件は以下の通りです。
これらの3つの条件を満たす場合、所得金額調整控除が適用されます。
ただし、この控除には注意点があります。年末調整では適用できず、確定申告でのみ申告が可能です。したがって、控除の適用を受けるには、確定申告をしなければなりません。
また、給与所得または年金所得のいずれかがない場合や、両方の合計が10万円以下の場合は適用されません。たとえば、給与所得が15万円で年金所得が0円の場合や、給与所得が6万円で年金所得が3万円の場合は対象外となります。
この控除制度は、給与と年金の両方の収入がある方の税負担を軽減するために設けられました。適用対象となる人は、忘れずに確定申告するようにしましょう。
所得金額調整控除は、子どもの有無や、給与所得と年金所得の双方があるかなどの状況によって、控除額の計算方法が異なるのが特徴です。
ここでは、それぞれのケースにおける所得金額調整控除額の計算方法について、具体例を交えながら詳しく解説します。
年収が850万円以上で、子ども・特別障害者等がいる場合の所得金額調整控除額の計算方法は、以下のとおりです。
控除額=(給与収入金額-850万円)×10%
たとえば、給与収入が1,200万円の場合は、下図の通り15万円となります。1,000万円超の場合は1,000万円となるため、1,000万円から850万円を差し引いた150万円の10%が控除額です。
参考)国税庁|No.1411 所得金額調整控除
給与所得と年金所得の双方を有する場合の計算式は、以下のとおりです。
例として、以下の条件で合計所得金額を計算してみましょう。
(1) 給与所得の計算
130万円 ー 55万円 = 75万円
(2)公的年金等の雑所得
150万円 ー 110万円 = 40万円
(3)所得金額調整控除の適用
(1)+(2)= 115万円 > 10万円(適用対象)
(10万円 + 10万円)ー 10万円 = 10万円
(4)調整後の給与所得
(1) ー(3)= 65万円
(5)合計所得金額
調整後の給与所得 (4)+ 雑所得 (2)= 105万円
以上のとおり、合計所得金額は105万円となります。
参考)国税庁|No.1411 所得金額調整控除 参考)日本年金機構|所得金額の計算方法
年末調整で所得金額調整控除の適用を受けるには、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に正確に記入する必要があります。
※国税庁「令和5年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を引用して加工
まず、該当する要件を確認し、「要件」欄にチェックを入れます。次に、条件に応じて「☆扶養親族等」欄または「★特別障害者」欄に必要な情報を記載してください。扶養親族の情報は「☆」欄に、特別障害者に関する詳細は「★」欄に記入します。
記入ミスがないように確認し、期限内に申告書を提出するようにしましょう。
なお、年末調整では年金所得に関する申告はできません。年金所得と給与所得の両方がある人は、所得税の確定申告時に所得金額調整控除を申告する必要があります。
また、年収が2,000万円を超える会社員も年末調整の対象外となるため、同様に確定申告でこの控除を申告しなければなりません。
所得金額調整控除の適用を受けるためには、確定申告書に正確な情報を記入しなければなりません。以下に、手順を詳しく解説します。
※国税庁「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】」を引用して加工
確定申告書第一表の「給与」の「区分」欄には、以下に該当する控除の番号を記載します。
子どもや特別障害者等がいる場合は「1」 給与と年金の両方の所得がある場合は「2」 上記両方に該当する場合は「3」
「所得金額等」の「給与」欄には、「給与収入から給与所得控除と所得金額調整控除を引いた金額」を記入します。
確定申告書Bには、「配偶者や親族に関する事項」欄で、控除の適用要件となる人の「その他」欄に○をつけます。
所得金額調整控除は、税負担を軽減する有利な制度ですが、注意点もいくつかあります。
たとえば、給与収入が850万円を超えるか微妙な場合でも、申告書は提出するべきです。また、共働き夫婦はそれぞれ控除の適用を受けられる可能性があります。
ここでは、所得金額調整控除に関する注意点を詳しく解説するので、参考にしてください。
所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けるためには、年間の給与収入が850万円を超えるかどうかが重要な判断基準となります。しかし、年末調整の時期には、自身の年間収入を正確に把握できていない人も少なくありません。
このような状況下では、収入額が850万円を超えるか微妙な場合でも、所得金額調整控除申告書の提出をおすすめします。申告書を提出しない場合、要件を満たしていても控除を受けられないため注意しましょう。
所得金額調整控除の申告漏れは、罰則こそありませんが、本来節約できるはずの税金を余分に支払うことになります。この控除は比較的新しい制度のため、適用対象であることに気づかないケースも少なくありません。
年末調整で申請を忘れた場合でも、あとから確定申告で対応できます。この場合、「還付申告」をすることで、払いすぎた税金を取り戻すことが可能です。さらに、還付申告は過去5年分までさかのぼって行えるため、以前の年度分も含めて控除の適用を受けられる可能性があります。
所得金額調整控除には2種類ありますが、これらは併用可能です。確定申告の際、給与収入の区分欄に3を記入することで、両方の控除を適用できます。
ただし、適用順序には注意しましょう。子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除が先に適用されるため、順序を誤ると計算結果が変わる可能性もあります。自分で税額を計算する場合は、この点に留意しましょう。
共働き世帯の場合、夫婦それぞれが所得金額調整控除を申告できます。この控除は、扶養控除とは異なり、夫婦のどちらか一方にしか適用できないという規定がありません。
そのため、23歳未満の子どもがいて、夫婦ともに年収が850万円を超えているケースでは、要件を満たせば双方が適用を受けられるのです。これは、共働き世帯にとって大きなメリットとなり得ます。
所得金額調整控除の適用において、2カ所以上から給与を得ている場合の判定方法に注意が必要です。
年末調整では、主たる給与の支払先、つまり給与所得者の扶養控除等申告書を提出している会社の給与のみが対象であり、従たる給与は含めずに850万円超かどうかを判断します。
一方、確定申告の場合は、すべての給与等を合算した金額が判定基準です。
このように、年末調整と確定申告では判定方法が異なるため、複数の給与所得がある人は留意しておきましょう。
所得金額調整控除は、給与所得控除や公的年金等控除の縮小による影響を緩和するための重要な救済措置です。子どもや特別障害者を有する世帯、給与所得と年金所得を両立する世帯にとっては、負担軽減のために欠かせない制度となっています。
各ケースに応じた控除額の計算方法や、年末調整・確定申告における手続きをしっかりと理解しておくことが重要です。
また、申告漏れや申告書の提出忘れを防ぐために、事前の準備や確認も欠かせません。
自身の状況に合った対策を講じることで税負担を軽減し、健全な経済運営をしていきましょう。
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所得金額調整控除は、特定の条件下で税負担を軽減するために設けられた制度です。この控除は、主に給与所得控除や公的年金等控除の調整に伴い導入され、多様なライフスタイルを持つ納税者に焦点を当てています。
子育て中の家庭や特別障害者を抱える家庭、さらには給与と年金収入を持つ方々にとって、この控除は大きな助けとなるでしょう。しかし、その計算方法や申告手続きは複雑で、知らないと損をすることもあります。
本記事では、所得金額調整控除の基礎知識からケース別の計算方法、さらには年末調整や確定申告での注意点まで詳しく解説します。
目次
所得金額調整控除とは
所得金額調整控除は、特定の世帯に対して税負担を軽減する仕組みです。2020年に新設されました。子どもや特別障害者を養う世帯や、給与と年金の両方から収入を得ている人が対象です。
子どもや特別障害者がいる給与所得者に対しては、一定の条件を満たす場合、給与所得から一定額の控除が可能です。また、年金と給与の双方の所得がある人も、年金受給額に応じた控除を受けられます。
該当する世帯は所得税と住民税の負担が軽減され、家計への影響を緩和できるメリットがあります。
所得金額調整控除が創設された背景
2020年の税制改正により、所得金額調整控除が新たに創設されました。この控除は、給与所得控除と公的年金等控除の見直しに伴う影響を緩和するために導入されたものです。
ここでは、この所得金額調整控除が設けられた背景について、給与所得控除と公的年金等控除の改正内容と、その影響を踏まえながら詳しく解説します。
給与所得控除額の縮小による影響
今回の税制改正では、給与所得控除額が原則として一律10万円引き下げられ、基礎控除の控除額が原則として一律10万円引き上げられました。原則どおりであれば、10万円の課税所得増と同額の課税所得減が相殺され、納税額は変わりません。
しかし、同時に、給与所得控除額自体の上限が195万円に引き下げられました。その結果、給与等の収入金額が850万円を超える場合、課税所得減より課税所得増の方が大きくなり、税負担が増加することになりました。しかし、子育て世帯や特別障害者を有する家庭などの場合、税負担が増えることによる影響が少なくないため、その負担を緩和するために所得金額調整控除が設けられました。
公的年金等控除額の縮小による影響
今回の税制改正では、公的年金等控除額についても改正され、原則として一律10万円引き下げられました。しかし、上記のとおり、基礎控除額が原則として一律10万円引き上げられたため、公的年金等控除額が適用される人についても、原則どおりであれば、10万円の課税所得増と同額の課税所得減が相殺され、納税額は変わりません。
しかし、給与所得の収入と公的年金等の収入の両方がある人は、給与所得控除額の引き下げと、公的年金控除額の引き下げの両方の影響を受け、合わせて20万円の課税所得増になることから、その調整のために所得金額調整控除が設けられました。
ケース別:所得金額調整控除の対象
所得金額調整控除の適用は、特定の条件を満たす給与所得者や年金受給者が対象になります。子どもや特別障害者を扶養している世帯や、給与所得と年金所得の両方を有する場合に適用される控除です。それぞれのケースごとに、具体的な適用条件や申告方法を理解し、適切に手続きをするようにしましょう。
子ども・特別障害者等を有する場合
子ども・特別障害者等を有する場合の所得金額調整控除は、特定の条件を満たす給与所得者が対象となります。この控除の適用要件は以下のとおりです。
・本人が特別障害者である
・23歳未満の扶養親族がいる
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
所得金額調整控除の特徴は、扶養控除とは異なり、夫婦両方が適用を受けられる点です。つまり、夫婦ともに年間給与収入が850万円を超え、上記の条件を満たす場合、双方が控除を受られます。
また、申告者の所得上限が設定されていないため、配偶者控除や配偶者特別控除と違い、所得金額が1,000万円を超えていても適用対象です。
この控除を受けるには、年末調整または確定申告で申告する必要があります。年末調整の場合、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に必要事項を記入し、勤務先の指定期日までに提出しましょう。
給与所得と年金所得の双方を有する場合
給与所得と年金所得の双方を有する場合、所得金額調整控除の対象となる可能性があります。この控除を受けるための要件は以下の通りです。
これらの3つの条件を満たす場合、所得金額調整控除が適用されます。
ただし、この控除には注意点があります。年末調整では適用できず、確定申告でのみ申告が可能です。したがって、控除の適用を受けるには、確定申告をしなければなりません。
また、給与所得または年金所得のいずれかがない場合や、両方の合計が10万円以下の場合は適用されません。たとえば、給与所得が15万円で年金所得が0円の場合や、給与所得が6万円で年金所得が3万円の場合は対象外となります。
この控除制度は、給与と年金の両方の収入がある方の税負担を軽減するために設けられました。適用対象となる人は、忘れずに確定申告するようにしましょう。
ケース別:所得金額調整控除額の計算方法
所得金額調整控除は、子どもの有無や、給与所得と年金所得の双方があるかなどの状況によって、控除額の計算方法が異なるのが特徴です。
ここでは、それぞれのケースにおける所得金額調整控除額の計算方法について、具体例を交えながら詳しく解説します。
子ども・特別障害者等を有する場合の計算方法
年収が850万円以上で、子ども・特別障害者等がいる場合の所得金額調整控除額の計算方法は、以下のとおりです。
控除額=(給与収入金額-850万円)×10%
たとえば、給与収入が1,200万円の場合は、下図の通り15万円となります。1,000万円超の場合は1,000万円となるため、1,000万円から850万円を差し引いた150万円の10%が控除額です。
参考)国税庁|No.1411 所得金額調整控除
給与所得と年金所得の双方を有する場合の計算方法
給与所得と年金所得の双方を有する場合の計算式は、以下のとおりです。
例として、以下の条件で合計所得金額を計算してみましょう。
(1) 給与所得の計算
130万円 ー 55万円 = 75万円
(2)公的年金等の雑所得
150万円 ー 110万円 = 40万円
(3)所得金額調整控除の適用
(1)+(2)= 115万円 > 10万円(適用対象)
(10万円 + 10万円)ー 10万円 = 10万円
(4)調整後の給与所得
(1) ー(3)= 65万円
(5)合計所得金額
調整後の給与所得 (4)+ 雑所得 (2)= 105万円
以上のとおり、合計所得金額は105万円となります。
参考)国税庁|No.1411 所得金額調整控除
参考)日本年金機構|所得金額の計算方法
年末調整における所得金額調整控除申告書の書き方
年末調整で所得金額調整控除の適用を受けるには、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に正確に記入する必要があります。
※国税庁「令和5年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を引用して加工
まず、該当する要件を確認し、「要件」欄にチェックを入れます。次に、条件に応じて「☆扶養親族等」欄または「★特別障害者」欄に必要な情報を記載してください。扶養親族の情報は「☆」欄に、特別障害者に関する詳細は「★」欄に記入します。
記入ミスがないように確認し、期限内に申告書を提出するようにしましょう。
なお、年末調整では年金所得に関する申告はできません。年金所得と給与所得の両方がある人は、所得税の確定申告時に所得金額調整控除を申告する必要があります。
また、年収が2,000万円を超える会社員も年末調整の対象外となるため、同様に確定申告でこの控除を申告しなければなりません。
確定申告における所得金額調整控除の手続き
所得金額調整控除の適用を受けるためには、確定申告書に正確な情報を記入しなければなりません。以下に、手順を詳しく解説します。
※国税庁「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】」を引用して加工
確定申告書第一表の「給与」の「区分」欄には、以下に該当する控除の番号を記載します。
子どもや特別障害者等がいる場合は「1」
給与と年金の両方の所得がある場合は「2」
上記両方に該当する場合は「3」
「所得金額等」の「給与」欄には、「給与収入から給与所得控除と所得金額調整控除を引いた金額」を記入します。
確定申告書Bには、「配偶者や親族に関する事項」欄で、控除の適用要件となる人の「その他」欄に○をつけます。
所得金額調整控除に関する注意点
所得金額調整控除は、税負担を軽減する有利な制度ですが、注意点もいくつかあります。
たとえば、給与収入が850万円を超えるか微妙な場合でも、申告書は提出するべきです。また、共働き夫婦はそれぞれ控除の適用を受けられる可能性があります。
ここでは、所得金額調整控除に関する注意点を詳しく解説するので、参考にしてください。
給与収入850万円を超えるか明らかでない場合も申告書を提出する
所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けるためには、年間の給与収入が850万円を超えるかどうかが重要な判断基準となります。しかし、年末調整の時期には、自身の年間収入を正確に把握できていない人も少なくありません。
このような状況下では、収入額が850万円を超えるか微妙な場合でも、所得金額調整控除申告書の提出をおすすめします。申告書を提出しない場合、要件を満たしていても控除を受けられないため注意しましょう。
申告漏れに注意する
所得金額調整控除の申告漏れは、罰則こそありませんが、本来節約できるはずの税金を余分に支払うことになります。この控除は比較的新しい制度のため、適用対象であることに気づかないケースも少なくありません。
年末調整で申請を忘れた場合でも、あとから確定申告で対応できます。この場合、「還付申告」をすることで、払いすぎた税金を取り戻すことが可能です。さらに、還付申告は過去5年分までさかのぼって行えるため、以前の年度分も含めて控除の適用を受けられる可能性があります。
所得金額調整控除は併用できる
所得金額調整控除には2種類ありますが、これらは併用可能です。確定申告の際、給与収入の区分欄に3を記入することで、両方の控除を適用できます。
ただし、適用順序には注意しましょう。子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除が先に適用されるため、順序を誤ると計算結果が変わる可能性もあります。自分で税額を計算する場合は、この点に留意しましょう。
共働きの場合は夫婦それぞれが申告できる
共働き世帯の場合、夫婦それぞれが所得金額調整控除を申告できます。この控除は、扶養控除とは異なり、夫婦のどちらか一方にしか適用できないという規定がありません。
そのため、23歳未満の子どもがいて、夫婦ともに年収が850万円を超えているケースでは、要件を満たせば双方が適用を受けられるのです。これは、共働き世帯にとって大きなメリットとなり得ます。
2カ所以上から給与を得ている場合は判定方法に注意する
所得金額調整控除の適用において、2カ所以上から給与を得ている場合の判定方法に注意が必要です。
年末調整では、主たる給与の支払先、つまり給与所得者の扶養控除等申告書を提出している会社の給与のみが対象であり、従たる給与は含めずに850万円超かどうかを判断します。
一方、確定申告の場合は、すべての給与等を合算した金額が判定基準です。
このように、年末調整と確定申告では判定方法が異なるため、複数の給与所得がある人は留意しておきましょう。
所得金額調整控除まとめ
所得金額調整控除は、給与所得控除や公的年金等控除の縮小による影響を緩和するための重要な救済措置です。子どもや特別障害者を有する世帯、給与所得と年金所得を両立する世帯にとっては、負担軽減のために欠かせない制度となっています。
各ケースに応じた控除額の計算方法や、年末調整・確定申告における手続きをしっかりと理解しておくことが重要です。
また、申告漏れや申告書の提出忘れを防ぐために、事前の準備や確認も欠かせません。
自身の状況に合った対策を講じることで税負担を軽減し、健全な経済運営をしていきましょう。