所得金額調整控除とは~創設された背景、制度の内容、手続き~

syotokukingakutyouseikoujo_1

平成30年度の税制改正において、所得金額調整控除という所得控除が創設されました。所得金額調整控除は、令和2年分以降の所得税から適用されます。今回は所得金額調整控除の適用要件などについて解説します。※2020年10月27日更新

所得金額調整控除が創設された背景

平成30年度の税制改正において、給与所得控除額と公的年金等控除額が引き下げられましたが、この引き下げの影響により、所得金額調整控除が創設されました。

給与所得控除額の縮小による影響

今回の税制改正では、給与所得控除額が原則として一律10万円引き下げられ、基礎控除額が原則として一律10万円引き上げられました。原則どおりであれば、10万円の課税所得増と同額の課税所得減が相殺され、納税額は変わりません。

しかし、同時に、給与所得控除額自体の上限が195万円に引き下げられました。その結果、給与等の収入金額が850万円を超える場合、課税所得減より課税所得増の方が大きくなり、税負担が増加することになりました。しかし、子育て世帯や特別障害者を有する家庭などの場合、税負担が増えることによる影響が少なくないため、その負担を緩和するために所得金額調整控除が設けられました。

公的年金等控除額の縮小による影響

今回の税制改正では、公的年金等控除額についても改正され、原則として一律10万円引き下げられました。しかし、上記のとおり、基礎控除額が原則として一律10万円引き上げられたため、公的年金等控除額が適用される人についても、原則どおりであれば、10万円の課税所得増と同額の課税所得減が相殺され、納税額は変わりません。

しかし、給与所得の収入と公的年金等の収入の両方がある人は、給与所得控除額の引き下げと、公的年金控除額の引き下げの両方の影響を受け、合わせて20万円の課税所得増になることから、その調整のために所得金額調整控除が設けられました。

所得金額調整控除の内容

給与所得控除と公的年金等控除の縮小の背景について説明しましたが、この2つのケースについて所得金額調整控除の対象者や控除額について具体的に解説します。所得金額調整控除には2種類あり、いずれも総所得金額を計算する際に、給与所得の金額から控除できます。

1.子ども・特別障害者等を有する場合の所得金額調整控除

  • 適用対象者

    給与収入が850万円を超える給与所得者で、次のいずれかに該当する方

    • 納税者本人が特別障害者
    • 23歳未満の扶養親族を有する者
    • 特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族を有する者
  • 所得金額調整控除額
    (給与等の収入金額※ – 850万) × 10% (1円未満切上げ)

    ※1,000万円超の場合は1,000万円として計算する。

この控除は扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの所得者に適用するという制限がありません。例えば、夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、夫婦の間に1人の年齢23歳未満の扶養親族である子がいるような場合には、その夫婦両方がこの控除の適用を受けられます。

2.給与所得と年金所得の双方を有する場合の所得金額控除

  • 適用対象者

    給与所得控除後の給与所得の金額と公的年金等に係る雑所得の金額の両方を有していて、その合計額が10万円を超える方

  • 所得金額調整控除額
    (給与所得控除後の給与等の金額※ + 公的年金等に係る雑所得の金額※) − 10万円 

    ※10万円超の場合は10万円として計算する。

適用開始はいつから?

所得金額調整控除は、令和2年分以後の所得税について適用されます。具体的には、令和2年1月1日以後に支払うべき給与等から適用するため、令和2年の年末調整や、令和3年の確定申告から注意が必要です。

所得金額調整控除の適用を受けるための手続き

所得金額調整控除の適用を受けるには、年末調整または確定申告をする必要があります。

子ども・特別障害者等を有する場合の所得金額調整控除

年末調整で所得金額調整控除を受けることができます。控除を受けるためには、年末調整時に会社に、「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出する必要があります。「扶養控除等申告書」の提出だけでは控除を受けられませんのでご注意ください。

※参考(国税庁のホームページより)

2ケ所以上から給与等の支払いを受けている場合

また、2ケ所以上から給与等の支払いを受けている場合も注意が必要です。年末調整で所得金額調整控除を受ける場合、収入金額の判定はすべての合計金額ではなく、年末調整の対象の主たる給与の金額で判定されます。例えば、1ケ所から800万円の支払いを受けており、もう1ケ所から100万円の支払いを受けている場合、収入金額は900万円ではなく800万円と判定されるため、所得金額調整控除を受けることができません。このような場合は、確定申告をすれば控除を受けられます。

給与所得と年金所得の双方を有する場合の所得金額控除

年末調整で控除を受けることができないため、確定申告をする必要があります。

まとめ

所得金額調整控除は、給与等の収入金額が850万円超の場合に受けられる所得控除です。しかし、給与等の収入金額が850万円以下であっても、公的年金収入がある場合は控除を受けられる可能性があるため、注意が必要です。一方、会社においては、年末調整で控除を受けられる場合の適用要件をしっかり押さえると共に、システムを活用してミスのない処理ができるよう準備をしましょう。

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが制作しています。当社は、従業員5人まで永久無料の給与計算ソフト「フリーウェイ給与計算」を提供しています。フリーウェイ給与計算はクラウド給与計算で、WindowsでもMacでも利用できます。ご興味があれば、ぜひ利用してみてください。詳しくは、こちら↓

給与計算ソフトが永久無料のフリーウェイ
このエントリーをはてなブックマークに追加
pagetop